②-11-28
②-11-28
帰路でゴブリンを見つけたが隠れて戦わないようにした。
魔犬や魔幼虫が数匹出たが菊池君のコンボで十分だった。
当然その死体の魔石は回収した。菊池君が。
日はまだ高い。
昼を食べつつ街へ向かう。
昼食と言ってもガッツリ食べない。いや食べられない。
腹が膨れると動きが鈍るし、飯の臭いで魔物も寄ってくるし。
人間がうまいと感じるものは他の動物にもうまいのだ。
だからあまり味気がないものを流し込むだけだ。
東門から街に入る。
小さい街なので東西の2門しかないのだ。
利便性よりも防衛上の理由だろう。
ガルトさんに冒険者カードを見せる。
「おめぇらか。何の魔物だ?ゴブリンか?」
「はい。ゴブリンを持って帰ってきました」
「皮や肉なら売れるが微々たるもんだぞ」
「その積み重ねが大事なんですよ」
「はっはっは!その通りだな。そうやって真面目にがんばっていくんだぞ!」
「「はい!」」
「よーし!通ってよし」
「「お疲れ様でーす!」」
「《隠蔽》のLv上がったんじゃないですか?」
「まだまだ。俺の隠蔽はこんなモンじゃないぜ」
「なんでドヤ顔してるんですか」
納品館の前に着いた。
「菊池君、本館へ行って依頼を受けて来てくれないか。僕はここで待ってるから」
「了解しました!行ってきまーす!」
美姫は本館へ入って採集掲示板を見る。
「おっ、あったあった」
まだ残っていたことに安堵しつつカウンターに向かう。
しかし例の受付嬢だとランクアップの話になるだろう。
あのおっとりした女性が良い。
「すいませんー。この依頼を受けますー」
「はーい。マイタケ採集依頼ですねー。あら、大丈夫ですかー。お嬢さんはGランクですけど、これDランクですよー?」
「はいー。大丈夫ですー。よろしくお願いしますー」
「分かりましたー。がんばってくださいねー」
「ありがとうございますー」
「あっ!ミキさ・・・」
何か背後から聞こえてきたようだが美姫はまっしぐらに本館を出ていった。
「せんぱーい!残ってましたよー!」
「やったぜ!6000エナか!過去最高更新だな!」
ハイタッチで菊池君を迎える。
「おっちゃんは面倒くさいからお兄さんいるか確認してくれ」
「分かりました」
先に納品館へ入る菊池君。
「大丈夫です。今お兄さんしかいません」
俺も入りお兄さんに話しかける。
「すいません。採集依頼の納品をお願いします」
「はい。魔物の納品のようですね、奥へどうぞ」
俺の背負子を見て奥へ通されて個室へ入った。
「先ずはギルドカードと依頼票を」
「「はい」」
「カズさんとミキさん・・・と。えっ!マイタケのふんがっふっふ!?」
「ちょっと声が大きいですよ」
「むー!むー!・・・す、すいません。先日の方ですよね。その布の中が・・・?」
「はい」
「拝見しましょう」
台の上に布に包まれたの塊を置き、布を剥がしていく。
「おぉ、まさにマイタケ。ホントに狩ってくるとは・・・」
「内緒でお願いしますよ」
「も、勿論ですよ。しかし傷も少なくすばらしい状態だ」
「査定も変わってきます?」
「えぇ、勿論です。体は食用で毒袋も無傷なのが価値あるマイタケですからね。
因みにどうやって倒したかは・・・」
「勿論秘密です」
「そうですよね、失礼しました。少し興奮してしまったもので。では解体査定を始めます。見物していきますか?待合で待っていただいても構いませんが」
「僕は見物させていただきます。君はどうする?」
「私も見物します」
「分かりました。では始めますね」
お兄さんは手袋をしてマイタケを巨大シンクに入れて丸洗いをしている。
「こうやって眠り粉を落として下準備をするんです」
「「なるほど」」
「あの蛇口から水が出てますが水道ですか?結構な勢いですが」
「えぇ、水圧を増やす魔導具ですよ」
「「まどうぐ!?」」
「えぇ。もしかして初めて見るのですか?結構ありふれたものですけど」
「初めて見ました!」
「そうなんですね。ほら、ここに魔石を入れてこのレバーをこうすると圧力が増してこの蛇口から水が出てくる訳です。普通の水道よりも勢いが違います」
「「ほほー!」」
「風呂屋とかにも備えてたりしますよ。シャワーと言います」
「風呂屋?この街では見たこと無いんですけど」
「高級ホテルに有りますけどね」
「大衆浴場とかは・・・」
「この街には無いですねー」
「「はぁ~」」
「隣街には有りますけど」
「ホントですかっ!」
「はい」
2人は無言無表情でハイタッチしている。
「なんて名前の街ですか?」
「コンテです。ここから西へ3日ほど馬車で行ったところに在りますよ」
「コンテ」
「魔石をエネルギーとして使うので一般にはランニングコストが高過ぎて無理でしょうね。それにこの大きさですし」
畳半畳の立方体くらいの大きさだ。
「これって作ったんですか?」
「いえ。ダンジョン産ですよ」
「ダンジョン産!?」
「そうです」
「えっ、でもダンジョンで手に入れてもこの大きさを持って帰るんですか?」
「だから結構値段もするんですよね。お金のある冒険者なんかは収納袋に入れて持って帰りますけどね」
「「収納袋?」」
「はい。その見た目からは想像もつかないくらいの量が入る魔導具です」
「「欲しー!!」」
「収納袋は何百万って値が付くそうですね」
「「ですよねー!」」
「因みに一般に出回ってる魔導具のほとんどはダンジョン産です。それほど魔導具を作るのは難しいのです」
「「へー」」
「ランタンもダンジョン産ですよ」
「えっ!あんなのも?」
「えぇ。レアアイテムじゃないので結構出回るんです」
「「ほほー」」
「丸洗いも終わったので解体の続きをしますね」
「あっ、すいません。お願いします」
シンクから解体台にマイタケを移して表面を調べていく。
「表面の傷は2か所の矢傷、魔石を取ったであろう裂傷が1か所。それだけ。ホントにきれいですね。矢では倒せませんからこの裂傷が致命傷ということに。ここに秘密があるという訳ですか」
「いや~、やっぱり専門家には丸裸にされちゃいますね。丸洗いの後だけに」
「価格板の買取額は基本ですからね。あまりに酷い状態だと減額になるんですよ。魔石は・・・無いな。持ってます?」
「・・・はい。これです」
「魔石を抜いて死んだのか」
「魔物って魔石を抜かれると死ぬんですか?」
「全てがそうではないですけどね。スケルトンなんかは確実に倒せます」
「「ふむふむ」」
「魔石は要ります?要らないならこちらで買い取りますけど?」
「!?魔石込みの採集依頼なのでは?」
「いえ。基本、依頼がマイタケって載ってあればマイタケのみです。魔石も必要なら備考欄に別途書かなければいけません」
「!じゃ、じゃあ今回討伐報酬は無いですけども・・・」
「無いですね、常設討伐依頼ではないので。ただ、今ここにマイタケが在るのでDGPは勿論認定されます」
「あっ、GPはどうでもいいです。討伐報酬は無いけど魔石の買取代は別途頂けると。因みにお幾らで?」
「1000エナです」
「「!!」」
「つまり僕達は今回全部納品すると7000エナ支払われると?」
「そうです」
2人は無言無表情で両手でハイタッチしていた。