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HappyHunting♡  作者: 六郎
第2章 冒険者 (コンテ:カズー、ミキティ)
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②-10-27

②-10-27




朝から昨日教えてもらった南西の森に来ていた。

途中で魔物に出会ったが実験などする間もなく片付けた。


「今朝依頼板見たがまだ残ってたね。俺達はそんなに朝早くないからあの分だと残ってるだろう」

「そう願ってますよ!」

「あと《風刃》は極力使わない方向で頼む」

「どうしてです」

「傷があまりない方が買取にしても査定が高くなると思う」

「それはありますね」


「昨日の夜にも作戦を練ったが確認するぞ。先ず俺が転倒用の罠を設置。これはマイタケが近づいて来た用かつ時間稼ぎのためだ。次に菊池君のクロスボウで攻撃。殺せそうなら殺してくれ。次にクロスボウがあまり効かなかった場合、俺が《殺菌》しつつ近づいて《雷撃》で攻撃。これでも殺せなかったら剣で攻撃する。これでも無理な場合一旦退却する。退却時に追いかけて来ても罠で時間を稼げる」

「了解です」

「そして俺には命綱を巻いておく。もし俺が寝たら引っ張ってくれ。俺が足手まといになったら見捨てて逃げろ。いいな」

「・・・分かりました」


本番の前に《殺菌》を展開しつつ魔法が撃てるか実験をし、成功したのを確認した。


森を抜け草原を抜け、更に森に入ると先ほどの森とは植生が変わっていた。


「湿度が高い感じだな」

「苔とか見られますし、これは出そうな雰囲気ですよ」


更に奥地へ入っていく。

シダ類や地衣類が地面や木を覆っている。

そして少し拓けた場所が見えた。

そしてそこに彼はいた。


「・・・舞って・・・るんですかね」

「・・・舞って・・・るんだと思う」


彼、マイタケは僕達には踊っているように見えた。

ダンスではなく奉納舞のような。

太い胴体に小さな手足。

頭にキノコならぬマイタケが群生していて、さながら髪の毛のようだ。

そう言えば胴体も何となく顔のようにも見える。

彼が舞う度に粉が日差しを受けて光を反射していた。


「彼の足元を見たまえ」

「彼って・・・はい」

「苔などの地衣類がないだろう」

「えぇ、そうですね」

「恐らく胞子を飛ばしてあの場所を満たそうとしてるんじゃないか?」

「なるほど。自分たちの生息地を作ってるんですか。知能があるんですかね」

「いや本能的なものだろう。そもそも胞子を飛ばしてるだけだから元々の生態だ。問題は舞う必要があるのかだが」

「謎ですね」

「あぁ、謎だ。非常に興味があるな。このまま追跡して詳しく調べたい」

「早く罠を設置してください」

「・・・了解しました」


1匹しかいないのでかなり余裕がある。

罠を設置しようとしたが、


「むっ、そうだ。罠に《隠蔽》を掛けてみたらどうだろうか」


罠に《隠蔽》を掛けて菊池君を呼ぶ。


「菊池君。この木の根元を見てくれ」

「はい?はい・・・あっ、ロープがありますね」

「《隠蔽》を掛けてみたんだが効果はあったかい?」

「おー!《隠蔽》!注視しなきゃ分かりませんでしたよ」

「おぉ、使えるな」


罠も設置し終わり命綱を巻いてもらう。


「危なくなったら引き返してくださいね」

「分かってる」

「別にゴブリンで稼げるんですからね」

「あぁ、分かってる」

「おやつは持ちました?」

「50エナ分までは持った」


よしっと、菊池君が巻き終わって俺の背中に両手を置いた。


「手が震えてますよ」

「武者震いだ」

「またですか」

「大丈夫さ。僕はスピード系だから逃げ足は速い、任せてくれ」

「はい」

「稼いで美味いもん食おう」

「はい」

「じゃぁ、行ってくる」

「・・・気を付けて」


濡らしたマスクをつけて俺は向かった。


胞子の範囲は5mと聞いたが安全のため菊池君には10m以内には近づかないようにしてもらった。

俺は匍匐で藪を出てマイタケに近づいていく。

マイタケは舞に夢中で俺には気付くマイ。

合図を送ってクロスボウを撃ってもらった。


サシュ


ボルトが突き刺さりマイタケは舞を止めこちらを見る。

見るといっても目はない。

ゆったりと振り返りこちらに歩いてくる。

体の皴が顔に見えなくもない。表情がないぶん結構不気味だ。


俺は立ち上がって両手を突き出し《殺菌》を前面に展開するようにする。

両方とも歩みはゆったりとしている。

とても命のやり取りをしている風ではない。

なんなら車の車庫入れをやってる風にも・・・見えない。


サシュ


2本目のボルトが突き刺さったがやはりダメージは見た感じないようだ。


やがて毒の範囲5mに入る。

周りがキラキラしているのが分かる。

しかし《殺菌》の効果だろうか、胞子はどんどん消えていってるような感じだ。

と、マイタケの様子がおかしい。

ゆったりとした、ある意味優雅な動きだったが引き攣ってるというか痙攣してるように見える。

もしや《殺菌》の射程か?


そうか!

しまった!くそっ、駄目だ、反省はこいつを殺ってからだ。


殺し方は2通り考えられる。

1つはこのまま《殺菌》を続ける。その場合時間がどれだけ掛かるか分からないのが問題だ。

2つ目は近づいて雷だ。雷で死ななくても大ダメージだろう。そのまま《殺菌》してれば恐らく大丈夫だ。


考えた末俺は1つ目を取ることにした。

もし仕留め切れなければ雷を使うつもりだ。


効いてる。効いてるんだが、なんか物語の主人公みたいに苦しみながらも1歩ずつジリジリと近づいてくる。俺は「来るなー!」とでも叫べばいいのだろうか。


もっと《殺菌》を強力に出来ないだろうか。

《魔力検知》《魔力操作》で手に魔力を集めるというのはどうだろう。


俺は目を瞑り《魔力検知》《魔力操作》で手に俺の魔力を集めるよう集中する。

純粋な魔力ではなく、俺の魔力を。

少し集まってる感じがするな。これでどうだろう。

あれ?

《殺菌》しつつ雷撃てるんなら《魔力感知》も発動してるはずだ。

確か有効範囲は2mだったから少し近づいてみるか。

《殺菌》も近づいた方が効くだろう。

目を瞑ったまま身体の内に集中しつつも少しずつ歩いていくと、やがて前方に強い魔力を感じることが出来た。これはマイタケに違いない!

そこで止まってそのまま《殺菌》し続けると少しずつだが魔力が小さくなっていくのが分かった。


やがてマイタケであろう魔力は小さくなって消えていった。

目を開けて確認するとマイタケは2m先で倒れて動かないでいた。


「ふー」


一応その周りを《殺菌》しておく。


「先輩!」


菊池君が叫んだ。


「ちょっと待て!まだこっちに来るなよ!」


周囲を歩いて眠り粉がないか体を張って毒見をする。


「大丈夫そうだ!来ていいぞ!」

「はい!」


菊池君が駆け寄ってきた。


「心配しましたよ!予定にないことして!」

「すまん。すっかり忘れていたんだが」

「どうしたんです」

「最初宿でマイタケを《殺菌》で殺せると思ったんだが」

「えぇ、私も思いましたよ」

「その後、眠り粉が最大の問題になってそれに意識がいっちゃってさ」

「えぇ」

「《殺菌》で眠り粉を乗せた胞子を殺してマイタケを他の方法で殺す作戦を考えてしまったんだ」

「あぁ!そういえば・・・そーですね」

「《殺菌》で眠り粉を乗せた胞子を殺せればそのままマイタケも殺せることに実戦で気付いてさ」

「結果としては良かったんじゃないですか。危なげも無かったですし。ただ・・・」

「ただ?」

「やってる姿はシュールでしたよ。両手突き出して目を瞑って。なんか超能力使ってる絵でしたね」

「はっはっは。容易に想像出来るな」

「3分くらいそのままの格好でしたよ」

「3分!?そんなに!?」

「えぇ」

「僕はそんなに長く感じなかったが・・・そうかあの時もそうだったな」


「しかしこのやり方だとほぼ無傷で殺せるな」

「すごいですね!あっ・・・でもこれ納品したら怪しまれません?」

「むっ!確かに。どーするか・・・魔石を抜いて殺したってことにするか」

「おっ、いいですね。確か魔石はこの顔に見えなくもないヤツの中です」

「魔石が無くなれば生きていけないよね?魔物って」

「・・・さぁ。でもギルドのお姉さんは『魔石が有るのが魔物』って言ってたし」

「考えすぎてもな。1回これで持って行ってみよう」

「そうしましょう」


「うむ。ナイフは横じゃなく縦に裂けやすいな。中に・・・あった」

「おお!結構大きいですね!」

「マイタケってランク幾つなの?」

「Dです」

「D!?マジで!?これ狩り続けたらCランクになれるのかよ」

「またおっちゃんに五月蠅く言われますね」

「受付のお姉さんも言ってたしな」


マイタケを布で包んで背負子に乗せ・・・いや背負子を担いでから乗せよう。


俺は背負子を背負い木に手を付き中腰になった。


「いきますよ。ヨッコラ!」


菊池君がマイタケを持ち上げ背負子に乗せロープで固定する。


「オッケーでーす!」


「よっこいしょーいち!」


俺は木に手を付いたままゆっくり立ち上がり背負子をフィットさせる。


「結構重いな、でも無理ではない。よし行こうか。道中の魔物は少数は菊池君に任せ、多ければ俺も背負子を置いて参戦する。いいね?」


「はーい!任せてくださーい」


クロスボウと《風刃》の2段構えの菊池君なら少数なら大丈夫だろう。


無事マイタケも狩れて僕達の気分は軽い。背中は重いが。

マイタケを殺し終わって近づいてきた菊池君の目が赤かったのは突っ込まない方が良いだろう。

今の状態で腹にグーパンは危険だ。


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