⑩-14-264
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俺達は怪しい動きをしていた反応に向かって駆けた。
村の中で待機していたので結構走った。
魔導ランタンを掲げながら走る。
反応は村の外だ。
「ルーラ!クロスボウだ!」
「はい!」
立ち止まって単射式を受け取る。
矢を番え構える。
30mほどか。
風は無い、当たれ!
「ギャンッ!」
「何か居るぞ!」
「ブラックドッグだ!」
「ホントか!?」
「走れ!」
現場に駆け付けると真っ黒な犬。
ランタンに照らされて他の色は判別出来ないだろうがこいつは黒だ。真っ黒だ!
『ブラックドッグ!』
「ガウウウゥゥゥ」
森の手前の原っぱで真っ赤な目が俺達を睨みつける。
矢が肩に突き刺さっておりこいつで間違いないだろう。
そんなに毛深くは無い。
俺達に向かって唸っているその口からは血が滴っている。
滴った先には子供が横たわっていた。
「くそっ!」
「間に合わなかったか!」
「どういう事!?」
「何でだろ!?」
「マルコさんの索敵を!?」
「セラナ!前に出ろ!」
「りょ、了解!」
「気を付けろ!回復と火魔法を使うぞ!」
「ウソでしょ!?」
「2属性!?」
「何で分かる!?」
「そんな事!今はどうでもいいだろ!」
「そ、そうね!」
「森に逃げられる前に仕留めないと!」
「いや!奴はやる気だぞ!」
「ガウアッ!」
ガイン!
ケセラが黒犬の前爪を盾で弾く。
「セラナの背後から撃て!」
「「「了解!」」」
ヒュヒュヒュン
ササッ
「早い!?」
「避けられたわ!」
「バイヨ達もセラナの後ろに付け!」
「しかし!」
「バイヨじゃ速さに追いつけんぞ!」
「た、確かに!」
「ティアは事前詠唱だ!」
「分かった!」
何だコイツは。
普通の犬じゃない。
後ろ足が前足と比べて長過ぎる。
長過ぎるから後ろ足の膝を常に曲げた状態だ。
移動時に伸ばすもんだから尻がせり上がっている。
そうこう考えてる間にも矢を射かけるが尽く避けている。
当たらにゃ武技も意味無いしな・・・
「アオオオォォォ!」
「遠吠え!?」
「狼かっての!」
「マヌイ!連射式だ!」
「分かった!」
マヌイは俺がさっき使った単射式を使っていた。
マヌイはサーヤに近づき単射式を収納し連射式を取りだす。
ミキ、サーヤは弓だ。
「グルアァ!」
黒犬が立ち上がって前足を振りかぶってケセラに襲い掛かった。
「ウソだろ!」
「くっ!」
バイン!
かなりの衝撃だったらしく盾を持っていかれた。
ヒュヒュヒュヒュン
ササッ
攻撃後の硬直を狙うも後ろ足で飛び退って避けた。
「4人で斉射する!」
「「「「了解!」」」」
「アヤは避けた瞬間を風魔法だ!」
「分かった!」
ミキにも目配せを送る。
ミキは頷いた。
「攻撃を受けたら《バインド》だ!」
「分かったわ!」
各自の詠唱終わりを雰囲気で掴む。
「撃て!」
ヒュヒュヒュヒュン
サッ
4本の矢を1本1本避ける訳にはいかない。
大きくジャンプして纏めて飛び退いた先に、
「「《風刃》!」」
ザクザクッ
「ギャイン!」
「《バインド》!」
影の手が黒犬を捕まえる。
「今だ!」
「待て!バイヨ!」
バイヨが駆けて大剣を振りかぶる。
「マイティスト」
「ゴアアァァ!」
「ぎゃああぁぁ!」
「バイヨォ!」
黒犬が炎を吐いた。
恐らく《ファイアーサージ》だ。
「くそっ!増援が来るぞぉ!」
「えぇ!?」
「増援!?」
「さっきのは《呼寄せ》だぁ!」
「何て事!」
「動くなティア!」
「だってバイヨが!」
「くそっ!《バインド》が解けたぞ!」
「どうするの!?」
「ジーナ、ルーラ、エマは増援に対処しろ!」
「「了解!」」
「でもバイヨが!」
「セラナは黒犬に付けぇ!」
「分かった!」
「アヤ!俺と来い!」
「うん!」
バウバウバウ!
「来たわ!」
「兎に角数を減らせ!」
「「了解!」」
「バイヨが・・・」
「盾を鳴らせ!」
バンバンバン
黒犬がケセラに注意を惹かれる。
その隙にマヌイとバイヨの下に走った。
「1人で担いで戻れ!」
「分かった!」
バイヨを肩に担いで戻ろうとするが流石にドワーフ相手だと早く戻れない。
折角ダメージを与えたからだろう、
黒犬がこちらを向いて牙を剥く。
「グルアァ!」
右前足で飛び掛かって来た。
右手のマチェーテを逆手に持ち、
前足に合わせて《受け流す》。
刃で《受け流し》たのでそのまま斬れていって同時に《カウンター》と重なり、
肩口まで斬り裂いた。
「ギャウアァァァ!」
手首を返してそのまま振り払うが黒犬は地面を転がって避けた。
手甲から棒ナイフを取って投げる。
「ギャウッ」
転がって体勢が崩れた所に命中した。
その隙にマヌイに指示を出す。
「ポーションに《治癒》だ!」
「分かった!」
「ティアは増援に《バインド》しろぉ!」
「わ、分かった!」
「セラナ!俺の前に!」
「了解!」
黒犬が立ち上がる。
「傷が塞がってく!?」
「回復魔法だ!」
「そうか!」
黒犬は俺達を真っ赤な目で睨みつつ下がっていき、
やがて夜の闇に消えて行った。




