⑨-59-248
⑨-59-248
「しかし君達は魔虫と戦って死亡したと報告を受けていたんだが」
「あのなんちゃって騎士ですね」
「うむ」
「僕等と共に魔虫と戦っている時に尻尾を撒いて逃げ出しましたよ」
「な、何だって!?」
「途中まで順調に数を減らしてたんですが。主に僕とバイヨ達で」
「うむ、だろうな。それで」
「大ヤスデが現れて、調子に乗って斬りかかって」
「斬りかかった!?奴は毒ガスを出すだろう」
「えぇ。それで3人殺られて逃げて行きました」
「・・・何たる事だ」
「それ以前に魔虫に1人殺されていたので残り4人。半分になって戦えるかと捨て台詞を」
「4人。報告に来た時は3人だったが」
「ここから村に向かう時僕達は馬車で行ったのですが、彼らは徒歩で行ったのです」
「と、徒歩!?村まで徒歩だと3日、馬だと2日だろう?」
「えぇ。彼らは金が無いようでしたね」
「・・・そうだったな。それで」
「戦闘から逃げて先に村に帰った彼らは僕等の馬車を奪って帰ったのです」
「何だと!?」
「帰る途中、恐らく速度を出し過ぎ角を曲がれず横転して馬車は大破。その残骸を発見しています。その周辺に彼らの仲間と思われる者の死体を発見しました。これがそのカードです」
「む。君」
「はい。間違いありません」
「何たる体たらく・・・」
「馬車を奪われたと証明する村長の手紙ももらって来ました、これを」
「・・・なるほど、確かに」
「加えて彼らは僕等の食料を強奪しようとし「何だと!?」、女性陣に暴行を働こうとし「何ですって!?」、3人を捕まえましたが調査継続の為に返せと脅され止む無く契約を交わす事で合意しました。これがその契約書です」
「むむむ・・・確かに。この”情報を渡す”とは?」
「彼らには調査能力が有りませんので僕等の情報を渡すというものです」
「共同で調査をしていたのではないのかね?」
「彼らは野営地で酒を飲んでましたね」
「「・・・」」
「50万か。この契約書は私が預かろう」
「えっ。しかし」
「私がブルバス家から回収しよう。どうかな?」
「・・・分かりました。お願いします」
「うむ。任せてくれ」
「あと、馬車の弁償も請求していただけると・・・」
「任せてくれ」
「お願いします」
「ふぅ・・・」
「マスター・・・」
「マルコ君、ンナバイヨ君」
「「はい」」
「正直、事が大き過ぎて今直ぐ査定は出来そうにない」
「分かります」
「時間をくれないかね」
「僕等の方は構いません」
「私達も構いませんよ」
「すまんな。しかし損はさせない、安心してくれ」
「「よろしく」」
「これからどうするね」
「僕等はゆっくり休みますよ」
「私達もだね」
「うむ。ただ遠出は控えてくれ。宿泊施設を教えるか1日1回はギルドに顔を見せてくれ」
「「分かりました」」
僕等はギルド本館を出た。
もう陽が沈んで残光が1日の終わりを強制させる。
「バイヨ達の宿は聞いた。後日売却金を持って行く」
「分かった。よろしく頼む」
「それじゃぁそれまでな」
「あぁ」
「マルコ」
「ん?」
「・・・ありがとね」
「何がだ?」
「・・・色々よ」
「・・・?」
「私からも礼を言うよ。世話になったわ」
「そりゃお互い様だろ」
「だからよ」
「・・・まぁ、よく分からんが。そういう事なら僕等からも、ありがとうな」
「えぇ」
「じゃぁ、またな」
「あぁ。またね」
通りを歩いていた。
この時間でも他の街とは違い、首都はまだ人も多い。
「ふぅ。終わったわね」
「まだ、精算がまだだよぉ」
「一段落って事よ」
「ゴタゴタが多くて余計に疲れたね」
「そうね」
「どこに向かってるの?」
「病院で詳しく見てもらおうかと思ってね」
「左手?」
「あぁ」
「・・・」
「気にするな、って言っても無理だろうが。気にするなよ」
「・・・うん」
僕等は病院に向かい診察を受けた。
上級治癒ポーション2個を使っただけあり問題無くくっ付いていると言われた。
3日の通院で問題無く治癒されるそうだ。
ポーションを3本飲んだが耐性はついておらず、ただしばらくポーションは飲んでは駄目らしい。これ以上飲むと不味いのだとか。
医者の治療を受けている時、熱心にマヌイが聞いていた。
宿に帰って無事に依頼を達成した祝いと、サーヤ君の《身体強化》習得のお祝いを兼ねて、豪華な食事会をした。
「みんなご苦労様だった。少しイレギュラーが・・・イレギュラーだらけだったが無事に達成出来た。ありがとう!」
「ホントに出発からして不安だったわね」
「ホントだねー」
「まぁなんちゃって騎士も、ギルドマスターが何とかして下さるらしいですから。期待していますわ」
「契約書、スティーゲンさんに渡してなかったらどうしてたの?」
「ブルバス家に直接出向いたか、闇金に横流ししてたか、裁判起こしてたか・・・」
「色々あるんだねー」
「左腕も3日の通院で良いと。マヌイの《治癒》のお陰だな」
「・・・あたしなんて」
「マヌイが居なかったら障害が残ってたかもしれないだろ?自信を持て、そしてこれからもパーティを頼むぞ!」
「・・・うん!」
「ケセラも!みんなの盾として良く守ってくれた」
「・・・い、いや。私なんて」
「なんだ、どうした2人共辛気臭い」
「あたしはもう大丈夫だよー!」
「どうしたケセラ」
「私は盾役として責務を果たせていただろうか」
「いたよ」
「いたわよ」
「いたよ」
「いましたよ」
「い、いや。その、武技も持ってない私が・・・」
「あぁ、そういう事ね」
「まーた「メンド臭い事言ってるよー」・・・マヌイに取られたな」
「誰も傷付かなかったんだから成功だったのよ」
「そうよ。増長は不味いけど正確に分析出来ないのも不味いわよ」
「あ、あぁ」
「そもそも作戦考えたの僕だぞ。ケセラが悩むって事は僕の作戦が不味いって事になるだろ」
「時々不味い時有るわね」
「そうだね」
「カズヒコさんの無茶が過ぎる時が有りますわ」
「・・・この肉料理美味いな」
「でもサーヤが《身体強化》ねぇ」
「凄いねー!」
「えぇ!」
「ケセラもうかうかしてられないぞ」
「うむ?」
「今はLvはケセラの方が上だが、将来サーヤ君の方がパワーは上回るかもしれないな」
「《頑健》君はサーヤの方が上だしね」
「ステータスの【STR】は同じCだしねー」
「頑張りますわ!」
「フッ、そうだな」
「明日からどうする?」
「明日はウリク商会に魔虫を売りに行こう」
「そうだねぇ」
「100匹以上で収納袋もパンパンですし」
「上級ポーションの補充もしたい」
「そうね」
「スタミナポーションもだねー」
「矢も結構使いましたし」
「そういやケセラの剣は崖下に落ちたんだった。買わないとな」
「そうだったわね」
「明日は丸々休日にしようか」
「そうね」
「しかし悪魔も諜報員も居なかったのは良かったのか悪かったのか・・・」
「悪魔が居なくて良かったね」
「そうだね」
「諜報員は残念でしたけど」
「でも私達の他にバイヨ達3人だけだと盗賊団が居ても厳しかったんじゃないかしら」
「そうですわね。あのなんちゃって騎士は足手纏いでしたでしょうし」
「まぁ、今日はお祝いだし、反省は明日にでもしよっか」
『はーい』
食事が終わって部屋に戻りまったりする。
「・・・」
「どうした。ケセラ」
「あ、いや・・・」
「マヌイの2属性を黙っていた事か」
「・・・」
「悪いとは思っていないぞ」
「いや、私は・・・」
「豚族で2属性持ち。隠すのは当然だ」
「カズ兄ぃ」
「いや、そうではない・・・」
「・・・そうか。まぁマヌイに頼んでみたらどうだ」
「?」
「さっきも、医者に《治癒》を色々聞いていたし」
「ケセラ姉ぇはどこか悪いの?」
「いや、私は別に」
「マヌイ、ちょっと来い」
「うん?」
「ごにょごにょ・・・」
「そ、そっか・・・大丈夫だよ。男じゃなく女のお尻なら大丈夫だよ」
「痔ではない!」
「ごにょごにょ・・・」
「そ、そうだね。冬の野営は響くよね」
「違うと言うとろーが!」
「ごにょごにょ・・・」
「《身体強化》で踏ん張った時に傷が開く!?かわいそう!」
「やめんかー!」
「どうした、興奮して」
「お、お前だろうが・・・」
「ん?」
「全く・・・そんな事ではない」
「じゃぁ何だ?」
「・・・その」
「ん?」
「・・・わ、私をパーティに入れてくれないだろうか」
「もう入ってるだろ?」
「いや、その。正式に、君達の家族に、私も入れてくれないだろうか」
『!?』
「・・・はぁ~全く何を言いだすのやら」




