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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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森を奥地に進む。

流石にあれだけの数の巨大魔虫が移動すれば痕跡が残っていた。


バイヨ「ありがとう。昨晩はぐっすり寝られたよ」

   「気にするな、と言いたい所だが」

バイヨ「?」

   「その分働いてくれ」

バイヨ「はっはっは。分かった。頼りにしてくれていい」


ティア「ジーナ達は野営ではいつも昨日みたいな感じなの?」

ミキ 「そうよ」

エマ 「良いな~」

ティア「じゃぁ村までの野宿は苦痛だったんじゃないの?」

ミキ 「えぇ、そりゃぁもう」

マヌイ「だよねぇ~」

サーヤ「そうですわね」

エマ 「そうだよねー」

マヌイ「戦った後は尚更お風呂に入りたいよねぇ」

   「「だよねー」」

ケセラ「そういえば。マルコは山刀を2本差しにしたんだな」

ミキ 「えぇ。昨日の4匹倒した時に1本だと足りなかったからって」

マヌイ「この魔虫の時だけにするか悩んでるって言ってたよ」

サーヤ「マルコさんは重いのや嵩張るのを嫌ってますもんね」

マヌイ「動き辛いのはヤダって言ってたね」

ティア「まぁ。昨日、甲虫に吹っ飛ばされたのを見ると・・・ね」

エマ 「あれ狙ってやったって言ってたけど、どうなの?」

ミキ 「まぁ、あの人ならやるかなって。ダメージも無かったしね」

ティア「震えてたのも、ビビってたんじゃなくてホントに武者震いだったのね」




   「感有り。5匹だ」

バイヨ「居たか。どうする?」

   「勿論殺ろう。昨日も最初の攻撃で5,6匹は殺れてたしな」

バイヨ「分かった」

   「昨日と同じく、僕が釣って来て《バインド》から4人で攻撃だ」

ティア「分かったわ」

   「よし、近づこう」


魔虫に向かって歩いて行くと開けた場所に出た。


   「崖か・・・」

ミキ 「といってもここらは山じゃないからそんなに高くないわね」

マヌイ「でも十分高いよ」


ガラッ


   「足跡は奥に向かってるな」

バイヨ「虫も近いのか?」

   「あぁ。もう直ぐだ」

バイヨ「では用心し」


ガラガラ

ズザザザザ


ケセラ「何だっ!?」

バイヨ「土砂崩れだ!?」

   「崖から離れろ!」

   『きゃああぁぁ!』


ドザザザザアァァァ


マヌイ「ケセラ姉ぇ!」

ミキ 「サーヤ!」

   「マヌイ!」


   「ううぅぅ・・・」


崖が崩れてマヌイの悲鳴が聞こえた俺は振り返った時にマヌイが崖下に落ちそうになったのが見えた。

思わず飛び込んでマヌイの手を握ったが・・・


「ううぅぅぅ・・・」


マヌイはケセラを掴んでいた。

ケセラを掴んだマヌイ、2人分が俺の左手に掛かっている。


ドドドドドドドッ


バイヨ「大丈夫かマルコ!?」

ティア「今助けるわ!」

エマ 「今引き上げて・・・!?」


ザザザァ


音がする方を見ると藪から魔虫が姿を現した所だった。


バイヨ「クソッ!こんな時に!」


虫達の方を見た拍子に俺達の右隣で、落ちそうになってるサーヤを掴んだミキが居た。


「ジーナ!引っ張り上げられるか!?」

「・・・うぅ無理ぃ。バックパックが邪魔で身動き出来ないぃぃぃ」


ミキはうつ伏せで崖から身を乗り出してサーヤを掴んでおり、身じろぎも出来ないようだ。


バイヨ「クソッ!私が時間を稼ぐ!《バインド》の詠唱を!」

ティア「わ、分かったわ!」

エマ 「私はマルコ達を!」

バイヨ「駄目だ!エマも牽制してくれ!1人では押さえられん!」

エマ 「で、でも!」


「カズヒコ!今まで世話になった!」

「何を言ってる!」

「マヌイを助けてくれ!」

「許さんぞ!護衛依頼は未達だぁ!最後まで務めを果たせぇ!」

「しかし、それだとみんなが!」

「うるせぇ!手を放したら殺すぞ!」

「し、しかし!」

「命令に従えぇ!リーダーは俺だぁ!」

「あ、ぐ・・・」


周りを見るとサーヤのクロスボウとハンマーが落ちていた。


「サーヤ!」

「は、はい!」

「ペグを俺に放れ!」

「は、はい!」


サーヤはテントのロープを地面に固定するペグを収納袋から取りだし俺の下に投げて寄越した。


「マヌイ!」

「なぁにぃぃぃ」

「俺を信じろ!必ず助けてやる!」

「わかったぁぁぁ」

「今から俺は手を放す」

「「「「!?」」」」

「だがお前は決して放すな!俺の腕に爪を立てて肉に食い込ませてでも少しの間だけ持たせろ!」

「でもぉぉぉ」

「命令だ!」

「・・・うんんん」

「よし!ケセラも!放したら殺すからな!」

「わ、分かった!」

「ミキもサーヤも!少し待ってろ!」

「分かった!」

「はい!」


俺は右手でペグを持った。


「ふおぉぉぉ」


深呼吸する。


「おらっ!」

「カズ兄ぃ!?」

「カズヒコ!?」


俺はペグをマヌイとケセラ、2人を支えている左手に刺し込む。

鮮血がマヌイとケセラの顔に振りかかる。


「ぐおおぉぉぉ」


捻じり込む。


「ぬぐぅぅぅ」

「カズ兄ぃ!」


腕に突き立ったところでハンマーを持つ。


「ふうぅぅぅ」

「カズ兄ぃ!」

「うおおぉぉ!」


ペグにハンマーを振り下ろす。


カイン!カイン!カイン!カイン!カイン!


地面に突き刺さった感触を得る。

それからハンマーを放してマチェーテを掴む。


「ふぐぅぅぅ」

「カズ兄ぃ!?」

「うおらぁ!」


俺はマチェーテを左手に振り下ろした。


「うぐうぅぅぅ」


1振りでは切断出来なかったようだ。クソッ

もう1度、クソッ

もう1度!


「うあぁぁぁ!」


左手を失った俺はバランスを崩し後ろに倒れた。


ミキ 「カズヒコ!」

ティア「マルコ!?」

エマ 「嘘でしょ!?」

バイヨ「何だ!?どうなってる!?」


俺はバックパックを探り投網を掴んで崖下に降ろす。


「ケセラァ!掴めるかぁ!?」

「あ、あぁ!掴める!」

「上がって来いぃ!」

「分かった!」


支えていた網に荷重がかかる。


「ぐうぉぉぉ」


ケセラが上がって来るまでの時間が長く感じられる。

崖端に手が見えた。

一気に身体を崖上に投げ出しケセラが姿を現した。

《身体強化》を使ったのか!?


「カっ、カズヒコ!?腕が!?」

「マヌイを救えぇ!」

「あ、あぁ!」

「ミキはまだ持つかぁ!?」

「まだいけるわ!」


マヌイがケセラに上げられてきた。

ケセラと2人して俺の下に来る。


「カズ兄ぃ!」

「カズヒコ!」

「まだ2人が残ってるだろうが!」

「で、でも!」

「何やってる!2人を救えぇ!」

「わ、分かった!」

「分かった!」

「ケセラは虫に向かえぇ!」

「わ、分かった!」


ケセラは崖下に落とした剣の代わりに俺のマチェーテと盾を拾いバイヨ達の下に走る。

ミキにマヌイが加わりサーヤを救い上げた。


「カズヒコ!?」

「カズヒコ様!?」

「カズ兄ぃ!」

「後は任せたぞ、ミキィ・・・」

「分かったわ!」

「カズ兄ぃ・・・」

「サーヤ!収納袋を置いてバイヨ達に加勢して!」

「で、でも!」

「行きなさい!命令よ!」

「・・・はい!」

「マヌイはカズヒコの左手を持ってきて!」

「カズ兄ぃ・・・」

「しっかりしなさい!上級ポーションでくっ付けるのよ!」

「う、うん!」


マヌイはペグを抜き取った俺の左手をミキに渡す。


「マヌイはこのポーションを接合面に掛けて!」

「うん!」

「カズヒコ!このポーションを飲んで!」


俺はミキに上級ポーションを飲まされる。


「2本使うたぁ贅沢だねぇ・・・」

「次はスタミナポーションよ!飲んで!」

「えっ、でも2本までじゃ・・・」

「死んだら意味無いでしょ!」

「う、うん・・・」

「げえっぷ・・・」

「マヌイは《治癒》よ。私もバイヨに加わるわ!」

「う、うん!」


ミキは走って行った。


「マヌイィ・・・」

「カズ兄ぃぃぃごめんなさいぃぃぃ」

「良く・・・頑張ったなぁ・・・」

「カズ兄ぃぃぃごめんなさいぃぃぃ!」

「良く・・・ケセラを助けたぁ・・・」

「うああぁぁぁ!」

「強くぅ・・・なったなぁ・・・」

「うああぁぁぁ!」

「少しぃ・・・疲れたぁ・・・」

「カズ兄ぃ!?」

「少しぃ・・・眠るぞぉ・・・」

「カズ兄ぃぃぃ!」


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