⑨-46-235
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「ぎゃあぁぁぁ!」
「何だ!」
「何が起きた!」
「あいつ等の方からだぞ!」
連中がやって来た。
「あっ!?おい!どうした!」
「おい!貴様!こいつに何をした!」
「そいつに触るなよ」
「何だと?」
「強盗未遂の現行犯だ。後日ギルドに叩きだす」
「何だと!おい!お前本当なのか!?」
「ち、ちが・・・う」
「違うと言ってるぞ」
「犯罪者は嘘を言うもんだ」
「騎士が嘘を吐くものか!」
「お前らホントに騎士なの?」
「な、何を!」
「何か証明出来る物持ってんのか?」
「そそ、そんな物お前に見せる必要は無い!」
「どうした!」
「あっ!若!」
「何事だ!」
「こいつがそいつを何かして」
「何を言っているか分からんわ!爺!」
「ははっ、ここに」
「どういう事だ!」
「お前!これはどういう事だ?」
「だからこいつが強盗犯だって言ってんだよ」
「強盗だと?」
「そうだ」
「本当か?」
「ちが・・・い、ます」
「違うと言っているぞ」
「嘘吐きが正直に喋る訳ねーだろ、馬鹿か」
「ぬぐっ。何を取られたのだ!」
「未遂だ」
「何を取られようとされたのだ」
「食料だ」
『!?』
「そ、それは・・・」
「どうした」
「私が食料を分けて貰って来いと命じたのだが」
「盗ろうとしたな」
「本当なのか!?」
「ち、違い・・・ます」
「違うと言っている!」
「何と言って来たか聞いてみろ」
「・・・何と言ったのだ?」
「寄越せ・・・と」
「・・・」
「分かったら向こうへ行け!しっしっ」
「待ってくれ!すまなかった!」
「爺!?何を謝る!?」
「若」
「平民から食料を徴発するのは当然であろう」
「はぁ~、若ぁ」
「おい!貴様!調査継続の為に食料を徴発する!大人しく差し出せ!」
「戦闘準備!」
俺の声に女性陣が武器を構えだす。
「ななな何をする!?」
「待ってくれ!すまなかった!」
「そっちがその気なら何時でも受けて立つぜ?」
「いや!その気は無い、無いんだ!」
「何を言っている爺!食料が無ければ調査も出来んではないか!」
「それは彼らも同じでありましょう!」
「平民から徴発するのは当然だろう!」
「おい、バカ息子」
「だだだ誰が馬鹿息子だ!」
「ここはお前の家の領地か」
「何を言っている!ここ公都周辺は恐れ多くも大公直轄地だぞ!知らんのか!」
「その大公直轄地で別の領地持ちの貴族が勝手に徴発しようとした訳か」
「あっ!?」
「分かった分かった。国には僕から報告しといてやるよ」
「待って!待ってくれ!」
「じじい、馬鹿どもを連れてさっさと向こうに帰れ。あ、こいつは渡さんぞ」
「はぁ~若ぁ~」
「どどどどうしたら良いのだ!?爺!?」
「はぁ~分かりません。私は疲れました。休ませて頂きます」
「なっ、爺!?待て!」
騎士達は帰って行った。
「おら!きりきり歩け!」ドコッ
「いてっ!蹴るんじゃぁねぇ!」
「お前自分の立場が分かってないようだな」
「何だと!?」
「・・・お前騎士じゃねーな?」
「ななな何を言ってる!」
「うむ。恐らくあのバカ息子が家督を継いだら騎士にするという約束で付いているのだろう」
「なるほど」
「で、どうするの?こいつ」
「コイツとは何だコイツとは!?」
「フン!」
「ぐわあぁぁ!」
股間を蹴り上げると気絶した。
「恐れ多くも影のリーダーにそんな口を利くとは許さんぞ!」
「いや、あの・・・」
「剥いて縛って転がしておこう」
「分かりました」
「ルーラ姉ぇ、手伝う」
「ありがとう、アヤ」
「どうするのだ、マルコ」
「うーん。いっその事みんな殺すか」
「「「!?」」」
「スティーゲンさんも良いって言ってたし」
「スティーゲンさんはブッ飛ばしても良いって言ったのよ」
「もし無事に帰って下手に嘘八百訴えられて実家の力でメンド臭い事になったらメンド臭いだろ」
「それはメンド臭いわね」
「だろう」
「でも向こうは殺そうとしていないのに私達が殺す訳にはいかないでしょ」
「うーん。その通りだな。すまなかった。イラついてたよ、すまん」
「良いのよ、私も気持ちは同じ。でもそういう事よ。我慢して」
「あいつ等との会話は疲れるんだよ。何も生まれない。通じないんだ。まだラドニウスと喋ってる方が通じるよ」
「・・・分かるけどね」
「装備を剥ぎ終わったよ、マル兄ぃ」
「ありがと。ルーラ君もな」
「いいえ」
「貴族ってメンド臭いね」
「アヤ、すまんな嫌な思いをさせて」
「んーん、大丈夫だよ。でも短気を起こしちゃ駄目だよ」
「・・・そうだな。じゃぁこうしよう」
「ん?」
「僕達を殺すよう仕向けるんだ」
『!?』
「それなら正当防衛だ。問題無いだろう」
「私達も危ないでしょ!」
「そこは上手くやる。任せて欲しい」
「駄目駄目!駄目よ!」
「うーん。じゃぁやっぱり魔物に襲わせるか」
「え」
「今日もやったろ。あれを何回かやる」
「うーん、それであれば良いかな」
「駄目だよー」
「しかしアヤ。あいつ等は確実に足を引っ張る。今日は僕達は虫に無視されて良かったが、次は僕等も襲われるかもしれないぞ」
「うーん。それはあるかもしれないけど」
「ああいう連中は敵よりも厄介なんだ。始末出来る時に始末しておいた方が良い」
「でもまだ何もされてないし・・・」
「されてからじゃぁ遅いんだ。24時間あいつ等に備える必要が出てくる。前面の魔物だけじゃなく背中も気にしないといけない、大変な労力だ。分かるだろう?」
「・・・うん。でも、それだと今まで襲って来た冒険者達と同じだよ」
「うん?」
「奪う為に殺すのと変わらないよ。殺したいから殺すんじゃぁ」
「殺したいから殺す訳じゃぁないんだ、必要が有るからなんだが・・・まぁいい」
「マル兄ぃ」
「アヤが嫌がるなら殺さないよ。しっかり考えたんだろ?」
「・・・うん」
「じゃぁアヤの意見を尊重する」
「マル兄ぃ」
「だが、もしもの場合は責任もって手伝えよ」
「うん!」
明けて早朝。
朝食を終えて片付けをしている中、あいつ等がやって来た。
じじいが前に出る。
「交渉したい」
「何のだ?」
「調査と捕虜の件でだ」
「捕虜とはまた。犯罪者だぞ」
「・・・調査と犯罪者の件でだ」
「良いだろう」
「先ず調査の件だ。元々3パーティによる合同の依頼だったはずだ。そちらの情報を我々に教えて共に調査をしようではないか」
「条件は?」
「条件?」
「情報を教える条件だよ」
「何だと!合同調査だと言っておるだろうがっ!」
「若は黙ってて下さい!」
「爺!?」
「元々合同だったのを勝手にムルキアを出発するわ、馬車を奪おうとするわ、餌にしたなどと冤罪を擦り付けるわ、挙句、食料を奪おうとして険悪にしたのはお前等だ。そういった迷惑を鑑みて情報を渡す条件だよ」
「う、うむぅ・・・」
「貴様等は我らに従っていれば良いのだ!」
「交渉は決裂だな」
「待ってくれ!若は黙って!」
「爺!?」
「幾ら出せば良い」
「10万エナだな」
「10万だと!?きさま「若!」」
「15万だ」
「上がっておるではないか!ふざけるな!」
「20万」
「分かった!20万エナ払おう!」
「何を言ってる!?20万など「黙ってろ!」」
「じ、爺!?」
「20万払いたいが生憎今持ち合わせておらん。ムルキアに帰ったら払おう」
「払えるのか?」
「当ては有る」
「契約書にしてもらおう」
「いいだろう」
「・・・分かった」
「うむ。次はほ・・・犯罪者の引き渡しだ」
「いいだろう」
「我々も先日の魔虫で1人失った。これから戦う上で必要だから金銭で引き渡して貰えないだろうか。その場合罪も忘れて貰う条件でだ」
「1人10万だ」
「・・・高くないか?」
「罪も忘れるのだろう?」
「罪が無くなれば拘束する必要も無くなる。忘れるだけでその値段は高い」
「お前は引き渡す条件を聞いた。罪を忘れるのはオプションだ」
「むぅ・・・良かろう」
「1人10万で良いな?」
「あぁ1人・・・1人?」
「あぁ」
俺は女性陣に合図を送る。
彼女らは3人の囚人を連れて来た。
3人共猿轡を噛まされている。
「あっ!?お前等2人、姿を見ないと思ったら!?」
「昨晩女のテントに忍び込もうとしてな」
「なっ、何だと!?」
「夜番をしているにも関わらず大胆な犯行だったよ」
「クソがぁ・・・」
「ランタンでテントに浮かび上がった体を拭いてる姿に欲情でもしたのかねぇ」
「ぐううぅぅぅ・・・」
3人は血管を浮かび上がらせ怒りを我慢しているじじいにかなりビビっている。
「わ、分かった・・・1人10万、30万払おう」
「それはいいが合計50万払えるのか?」
「大丈夫だ。ブルバス家に援助して貰う」
「契約書にも書いてもらうぞ?」
「構わない」
「良いだろう」
皮紙と魔導ペンを用意する。
「魔導ペンを持っているのか・・・」
「こういう事も有ろうかと思ってね」
契約書を作っていく。
さっきまでの条件を書いてお互いの名前を書き込む前にじじいにだけ書かせる。
「これでいいか?」
「いや、まだだ」
「何?」
「坊ちゃんの名前を書いてもらおう」
「!?」
「私の名を?」
「そ、それは・・・」
「どうした、ブルバス家が関わるんだ、ブルバス家の者の名が必要だろうが」
「・・・」
「まさかブルバス家の契約書にブルバスの名前が入らないって、つまり坊ちゃんはブルバスの者じゃないって事か?」
「何を言う無礼な!書けば良いのだろう書けば!」
「わ、若・・・」
「私はブルバス家を背負って立つ男だぞ!50万エナなぞ端金だ!」
「・・・」
「よーし、これで契約は成立だ。じゃぁ情報と犯罪者を開放する。あ、犯罪者は僕等に近づかせるなよ。次は殺すからな」




