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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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騎士達は少し離れた位置で野営をしたいた。

酒の匂いがする。


   「飲んでるのかあいつ等は」

ミキ 「みたいね」

   「凄いな」

マヌイ「ホントだよねー。帰らずの森でお酒飲むなんて」

サーヤ「豪胆というか単なる馬鹿ですわ」

ケセラ「どんな時にも英雄は酒を手放さないというのが騎士の男達の英雄譚なの     だ」

バイヨ「冒険者にも偶に居るぞ」

   「・・・あぁ、そういえば僕等にも覚えが有るな」

ミキ 「居たわね、そんな冒険者」

バイヨ「所でマルコ」

   「何だバイヨ」

バイヨ「魔虫だが」

   「うん」

バイヨ「どう思う?」

   「僕は魔虫に詳しくないんで聞きたいんだが」

バイヨ「あぁ」

   「あんな別々の種同士が群れるものなのか?」

バイヨ「いや。私も初めて見たな」

ティア「私も」

エマ 「私もよ」

   「だよねぇ。カマキリが群れてるの生まれた時以外で初めて見たよ」

ミキ 「カナブンも居たわよね」

   「いや、あれはコガネムシだ」

ティア「どう違うのよ!」

   「丸っこいのがコガネムシで平べったいのがカナブンで他にも・・・」

ミキ 「どっちでもいいわっ!」


   「つまり、居るはずのない奴らが居て、群れるはずが無いのに群れていた     と」

バイヨ「そうだな」

   「異常な森で異常な魔物の生態。関連は有ると見た方が良いだろう」

バイヨ「魔虫が原因だと?」

   「原因か、別の原因のせいでそうなったのかは分からんが」

   〈おぉーい!女共ぉ!酌をせい、酌をぉ!〉

バイヨ「それでこれからどうする?」

   「まだ始まったばかりだ。魔虫も、倒した奴等だけが問題だっただけかもし    れん。他に居るか探そう」

バイヨ「なるほどな。では〈酌をしろー!〉明日も魔虫を探そう」

   「あぁ。そうしよう」

バイヨ「夜番はどうする?」

   「勿論僕等とバイヨ達でやる」

ティア「あいつ等は?」

   「あいつ等に命を預けるくらいなら甲虫の背中で寝るよ」

バイヨ「ふっ、確かにその方が安全だな」

ティア「でも。酒飲んで夜番もしないで呑気に寝るって、釈然としないわ!」

   「ゆっくり寝かせてやれ」

ティア「でも・・・」

   「僕は結構遠くでも索敵出来る。今日で分かっただろ?」

ティア「えぇ」

   「寝てても分かるから、もし魔虫が近づいて来た場合君等を静かに起こす」

ティア「えぇ」

   「あいつ等が襲われてる間に逃げるか戦うか決める」

   「「「!?」」」

エマ 「囮に使うって訳?」

   「人聞きの悪い。女性を守るのが騎士の務めだろう?」

ティア「怖い人ね」

   「彼らも騎士冥利に尽きて本望だろうさ」




4人用テントに5人入っている。


「サーヤ君」

「はい」


サーヤ君が収納袋から魔虫の一部を出した。


「えっ!?収納してたの?サーヤ姉ぇ」

「そうよ」

「いつの間に」

「トイレじゃなかったって訳だ」

「あっ、そっかー!」

「なるほどな」

「マヌイはまだまだだな」

「うぅー」

「それで・・・どう?」

「うーむ。ランタンの灯りだと分からんな」

「まぁ、そうよね」

「ぱっと見、普通の虫だが」

「まぁ、私達初めて魔虫を見るしね」

「異常が有ったとしてもそれが異常だと判断出来るほどの知識が無い」

「明日からもう少し奥に入るからデータも集まると良いけど」

「魔虫が人を食べていたのだろうか」

「虫には食われたくねーなぁ。食われても魔犬とか狼とかの方が良いなぁ」

「そ、そうか?」

「犬とかまだ感情が有るじゃない?怒ったり逃げたり」

「まぁな」

「虫って無機質だよね。ただ無感情に食うだけって・・・なんかヤダ」

「食べられるのも嫌だよ」

「そうだよな。食べられないように気を引き締めて行きましょう!」

『はーい』


「そういえばマルコ」

「うん?」

「2日前に私に闇魔法の事を聞いて来ただろ?」

「ん~、覚えてないな」

「ティアが闇魔導士だと気付いていたのか?」

「僕の索敵力は知ってるな?」

「あぁ」

「もの凄く勘が鋭いんだよ」

「・・・確かにスキルは2つしかない訳だし・・・」

「じゃぁな」

「・・・あ、あぁ」


俺はテントを出て1人用テントに入る。

ケセラとパーティ登録してから4人用テントにケセラには寝てもらっている。

その晩は騎士達が良からぬ事をしないか気を付けていたが酒を飲んだせいだろうか、何も起こらず朝を迎えた。

野営の片付けをして8人で奥地に向かう。




「騎士達起きなかったね」

「弛んでるわね」

「なんちゃって騎士達よ」

「セラナも、あんな奴らの騎士道なんか参考にするなよ」

「誰がするか!」


相変わらず外縁部を探索していた。

徐々に奥地に向かう予定だ。


「むっ」

「魔虫か?」

「恐らくな」

「菊池君。後ろの3人に合図を」

「分かったわ」


3人がやって来た。


バイヨ「どうした」

   「恐らく魔虫だ」

バイヨ「そうか。やるのか?」

   「7匹居る」

   「「「!?」」」

バイヨ「多いな」

ティア「不味いわね」

エマ 「どうしよう」

   「流石に昨日の堅さを見るとな」

ミキ 「矢は外殻には効かないしね」

マヌイ「弓は魔虫には不向きだねぇ」

   「ルーラ君」

サーヤ「はい」

   「ハンマーだ」

サーヤ「分かりました」

   「ティア」

ティア「何?」

   「《バインド》は単体対象か?」

ティア「いえ、複数いけるわ」

   「何匹までだ?」

ティア「4匹よ」

   「「「「「!?」」」」」

   「・・・4匹?」

ティア「えぇ」

   「凄いじゃないか!」

ティア「え、そ、そう?」

   「仮に昨日のを参考にするとだな」

ティア「え、えぇ」

   「最初の斉射で2匹殺せるだろ」

ティア「えぇ」

   「5匹が向かって来る」

ティア「えぇ」

   「ティアが4匹足止めして、1匹をセラナが盾で受け止め、バイヨが仕留め    る」

ティア「なるほど」

   「4匹が動けない間に僕や弓で順次殺して行く。バイヨとセラナも加われば    殲滅速度も速くなる」

マヌイ「凄いね!」

ティア「そ、そう?」

   「拘束時間は?」

ティア「相手と私の力量差も関係するわ」

   「なるほど、実践する前に試してみたいな。僕にやってもらうか」

   『!?』

ミキ 「だ、大丈夫なの?」

   「そうか。ティア、人間に使っても大丈夫なのか?」

ティア「え、えぇ。拘束するだけの魔法だからね。大丈夫、なはず」

ミキ 「はずって何よ、はずって」

ティア「自分に掛けてくれって人初めてだから・・・」

ミキ 「人に使ったこと有るんでしょ?」

ティア「有るけど大概碌でもない連中相手に痛めつける目的で使ってたから、     《バインド》が原因で傷付いたのか分からないし・・・」

   「まぁ、大丈夫だろう。ちょっと掛けてもらうか」

ミキ 「はぁ~、全く」

マヌイ「マル兄ぃらしいと言えば」

サーヤ「らしいわね」

ケセラ「魔虫が居るのに大丈夫なのか?」

   「あぁ。結構離れてる」

ケセラ「だから何で分かるんだ」

   「そんな事今はどうでも良いだろ!」

ケセラ「い、いや、良いのか?」

   「もし掛かったら、藻掻いたら拘束は解けるのか?」

ティア「えぇ。拘束時間が縮むわね」

   「じゃぁ何もしなければずっと拘束されたままか」

ティア「私の魔力量次第ね」

   「なるほど」

ティア「ホントにやるの?」

   「勿論だ。やってくれ」

ティア「・・・知らないわよ。~~~~~~~~~~、《バインド》!」


俺の足元の影から影が伸びて俺を掴む。


「うお!」


なるほど。

元の影が無くなる訳ではない。

魔法で影をコピーして操るみたいなものだろうか。

魔法の影を視ても魔力が有るのが分かる。

普通の影には当然無い。


「拘束を強めたり弱めたりは?」

「魔力でね」

「なるほど」


これは解けるのだろうか。

藻掻けば拘束時間が短くなるという話だったが。

意識して解けないか。

《カウンター》はどうだろうか。

掴んでるのは自分への攻撃だ。

攻撃されていると意識して発動させてみよう。

《罠》はどうだ?

拘束、一種の罠だ。

というか罠そのものだ。

《罠》で解除しようとすればそのスキルエネルギーも乗るんじゃないか?

それにいつか金庫の鍵を調べる為に魔力を流した事が有ったな。

あれを応用して俺の体表に魔力を放出すれば相手の影の魔力の結合力を断てるのではないだろうか。

《魔力検知》も合わせてスキル4つ同時か、《魔力操作》をフルで使わんとな。


「フン!」


ズバッ


『えっ!?』


俺は拘束を振りほどくというよりは、引き千切る感じで逃れた。


ティア「ウ・・・ソ、でしょ?」

   「いけたな」

バイヨ「《バインド》を解くだと!?」

   「強力な拘束力だ。あの甲虫を拘束出来たのも頷ける。これが4つも出るの    か、凄いな」

ティア「あなた何者なの?」

   「ん?」

ティア「《バインド》を解く人は今まで居たわ」

   「だろうな。拘束時間が短くなるんだろ?」

ティア「えぇ、そう。藻掻けば藻掻くほどね」

   「だったら」

ティア「《バインド》には耐久力が有るのよ」

   「耐久力」

ティア「藻掻くほどその耐久力が減っていって、終いには耐久力が無くなって     《バインド》自体も無くなるわ」

   「なるほど」

ティア「あれを見て」


ティアが指さした場所を見る。

俺が拘束されていた所だ。


ティア「《バインド》が残ってるでしょう」

ミキ 「ホントね」

ティア「耐久力が無くなっていないのよ」

   「へぇ~」

ティア「こんな事は初めて。あなた何をしたの?」

   「すまない」

ティア「えっ」

   「意識はしていなかったが、君の初めての相手になってしまったの        か・・・」

ティア「は?」

   「責任を取れ、という事であれば僕は今パーティのリーダーをやっていて」

ティア「何の話をしているのよ!」

   「金銭的な補償ではどうだろうか」

ティア「だから何の話をしてるのよ!」

ミキ 「お金で解決って・・・最低ね」

   「そうは言っても・・・僕が抜けても構わないのかい?」

ミキ 「それは困るけどさ・・・」

マヌイ「うん、まだマル兄ぃに教えて欲しい事あるし」

サーヤ「一緒に旅をしようって言って下さったじゃありませんか」

   「もし君が金銭では駄目だというのなら・・・どうだろう」

ティア「ちょ、あの、何を話してるの?」

   「君がバイヨのパーティを抜けて僕等のパーティに入るというのは」

ティア「は?」

ミキ 「まぁ。それなら責任も取る事にもなる・・・か」

マヌイ「ティア姉ぇか。いいよ、私は」

サーヤ「ティアさん。私達のパーティは厳しいですけど皆優しいですから直ぐに溶    け込めますよ」

ティア「いや、あの・・・」

   「僕等は冒険者だけど実は吟遊詩人でもあるんだ。パーティには楽器がある    から君も好きな物を使うと良い」

ティア「は?吟遊?」

   「結婚式用の曲を・・・あの曲やるか!」

ミキ 「!?良いわね!でもあの曲ってどっちよ」

   「メンデルスゾーンかワーグナーか?」

ミキ 「でもどっちにしろ楽器が無いわよ」

   「そうだな。作・・・れるか?」

ミキ 「作るのが先か、結婚が先か」

ティア「だから何の話をしてるのよ!」


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