②-06-23
②-06-23
「短いとはいえ結構有用だな」
「ホントですね!」
あれから暫く《魔力感知》で魔力反応を探っていたのだが、森という環境では思いの外役に立った。
藪の中にいる幼虫や木の裏にいる幼虫など。
近距離にいても気付かない幼虫を探知出来た。
「幼虫くらいなら分かるが幼虫の死体は探知出来んな」
「ある程度大きな魔力、多い魔力?」
「強さって言えば良いのかな」
「なるほどねー。でも一緒に居たのに、なんで私は習得出来なかったんでしょう?」
「う~ん。『理解しました』って言ってたから理解しきれてないとか?」
「えぇ。一緒に居たんですから理解してますよー」
「う~ん。自分の中だけで消化してるのと、人に教えるのとでは違うって言うし。知ってるだけで理解してるのとは違うんじゃない?」
「え~。・・・まぁがんばってみます」
「まぁ僕が持ってるから菊池君は取らないってのもアリだと思うし」
「でも索敵・・・ですよね。あると便利ですし」
「確かに・・・まぁ、がんばってくれ。質問はいつでも答えるから」
「よろしくお願いします!」
そんなこんなで結構な時間を掛けて実験とその後の実験をやってたおかげで東門が閉まる時間が近くなっていた。
「おう!お前ら!がんばってるようだな!」
「ガルトさん!お久しぶりです!」
「あぁ。どうだ冒険者は?」
「まだGランクです」
「はっはっは。そうかそうか。まだ1ヶ月経ってないんだろう。そう気にすんなよ」
「はい。命を大事にやっていきます」
「あぁ。それが1番だ。何を狩ってるんだ?」
「ゴブリンをメインに」
「何っ!?ゴブリンを?大丈夫なのか?」
「はい?問題ないですね」
「そ、そうか。それなら良いんだけどよ。ホントにGランクか。結構やるなお前ら」
「そ、そうですかね。ははは。じゃ失礼しまーす」
「おう!またなっ!」
「ゴブリンメインだと不味かったのかな」
「Gランクにしては、ってことじゃないですか?」
「ゴブリンはEランクだもんな。しかも2人きり」
「今のままだと遅からずDランクになりますもんね」
「そ、そうだな。これからは魔犬メインってことにしとくか」
「そうですね。余計な勘繰りを入れられない為にもそうしましょう」
あんまり目立ちたくない僕達は目立つ様な業績などは口にしないよう気を付けることにし、納品館に入っていった。
「おう!毎日精が出るなっ!」
「・・・あぁ!感じます!来てます。来てます!」
「な、なんだぁ」
「ちょっと」ガスッ
「ぐほぁ?あっ、おっちゃん毎度ー!」
「お、おぅ。何かあったのか?」
「いえー。おほほほ」
「これ今日の分です。お願いしまーす!」
「おお!良い感じで稼いでるな!っていうかおめぇらランクアップしてねーらしいじゃねーか」
「えっ、あっ、はい」もじもじ
「さっさとしとけよ?」
「ははは・・・どうもでしたー」
「ちょっと、先輩!」
「すまんすまん。目を瞑っても存在が分かるのが面白くて・・・」
「いいなー」
「ただな・・・」
「ど、どうしました?」
「これパッシブスキルで常時発動してんだけど、結構魔力使うみたいで・・・今魔力切れ状態」
「えー!?切れないんですか?」
「ちょっと待って・・・お、切れたよ。意識集中することでon/off出来るっぽい」
「森だと必要ですけど、街中では切った方がいいですね」
「あぁ、そうするよ」
宿に帰って夕飯を食べ、部屋で休息を取る。
「いやぁ、疲れたな」
「明日休みにします?」
「あぁ・・・そうだな。そういや最近休みを取ってなかったから休むか」
「そうしましょう」
「索敵系かー。斥候だな、レンジャー」
「ステータス的にも合ってるんじゃないですか?」
「そうだな。ローグ・・・レンジャー。これでいいんじゃー?」
「~~~~~~」
「待て待て詠唱するんじゃない。全く休む暇もないな」
「疲れてるんですからこれ以上疲れさせないで下さいよ」
それから僕達は日課である菊池君の《風刃》と歯磨きをして寝る準備を終えた。
全く、菊池君のせいで《頑健》さんがLvアップするんじゃないかね。
翌日は休日として午前中は装備の手入れを念入りに済ませ、午後は各々好きにすることにした。
菊池君は情報収集を兼ねて街をブラつくらしい。
俺は《魔力感知》をonにして宿の近所を散策したあと、部屋で横になっている。
そう言えばあの時はそのまま流したけど少し考えてみようか。
土にも魔力があるのか。
薬草に魔力があるのなら土にも魔力があるだろう。
しかし土には魔力が無くて養分を吸って光合成をして魔力を作っていると考えると。
しかしそれだと魔力を作っているのは植物ってことになる。
それだと魔物は俺達人間じゃなく植物を食った方が早いのではないか?
恐らくこの仮説は間違っている。
やはり土にも魔力があると考えるのが自然だ。
しかし土と言っても単なる無機物だけじゃない。
土の中には微生物がいるし水もある、様々な有機・無機物が織りなすファンタジーな世界だ。
ということは土に魔力があるということはそれらそれぞれに魔力があるということではないのか?
つまり自然のサイクルと一緒なのでは。
土から生まれた植物を食べた動物が死んで土に還る。
そのサイクルの中に当然魔力も入っている。
更にそのサイクルには空気も関わっている。
つまり空気にも魔力が?
土が無機物なら空気も無機物だ、有り得る。
この概念はこの世界の人はどう思っているのだろうか。
下に降りてエルドさんかエルザちゃんに聞いてみよう。
「この世界は魔力であふれているんだよ!」
「えぇ?そうなのかい?」
「うん。土にも木にも空気にも。魔力はあるんだよ」
「そーなんだー。エルザちゃん物知りだねー」
「うふふ。あとね、スキルをつかったらつかれるでしょ。でもきゅうけいしたら魔力たまるでしょ。食べたものが魔力にかわるのをまってるんだって。だからお昼もうちで食べてねー」
「はっはっは。分かったよお昼ご飯も頼もうかな」
「うん!いっぱい食べてー!」
エルドさんもニコニコしている。
商売上手な子だ。
「エルザちゃんはどんなスキルが欲しいのかな?」
「んーとね。私はね。こどもを産むスキルが欲しいー」
「「ブフー!!」」
「エ、エルザちゃん。子供を産む前に結婚しないとね」
「あっ、そっかー。じゃー、けっこんするスキルが欲しい!」
「じゃー、エルドさんと相談してがんばろうね」
「うん!」
昼食を食べ終え部屋に戻った俺は考えをまとめる。
どうやらこの世界の常識でも魔力は何にでも存在し循環してるということだ。
しかし。
《魔力感知》でエルザちゃんやエルドさん、他の客の存在は感知できた。
しかし自分自身の存在は・・・
魔力があるのは感じる。
スキルを使う時にも、魔法を使う時にも。
自分の魔力は感じるが、自分の存在を感じない。
《魔力感知》を習得する前から自分の魔力を感じていたのに。
そう言えばステータスにはありがちなHPやMPとかは表示されていなかった。
魔力は存在しないのだろうか。
いや、そんなはずはない。
現に他人の魔力は感知出来ているのだから。
ふふふ。まるで目みたいなものだな。
他人は見えるが自分を見ることは出来ない。
・・・目か。
思えばあの幼虫は目を退化させ魔力の感知器官を進化させたのだろう。
進化・・・
魔力を感じるのであればその器官を進化させる。
《魔力感知》は・・・offにしておこう。雑念が入る。
自分の内なる魔力に集中する。
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魔力は感じる。
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しかしこれは《魔力感知》で感じる魔力とは違う気がする。
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違う。ぼんやりとだが違うと分かる。
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恐らく・・・エネルギー。
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エネルギーには違いないのだろう。
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エネルギーの内に何か・・・
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《魔力検知》を習得しますか?
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はい?