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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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2匹立ての馬車を1台借りて門を出たしばらくの所で止めた。

天蓋付きの馬車だ。

晴れてはいるが3月に入ったばかり、まだ寒い。


バイヨ「どうした?」

   「少し改造したい」

バイヨ「改造?」

   「あぁ」

ミキ 「サスペンション?」

   「そうだ」

バイヨ「さす・・・何だ?」

ミキ 「乗り心地を良くする装置よ」

バイヨ「ふーん。しかし大丈夫なのか?」

   「弁償になったら僕等が払うから気にしないでくれ」

バイヨ「まぁ、そう言うなら」

ティア「壊さないでよね。折角借りたんだから」

エマ 「そうだよ。もう1台借りるんなら自分達で借りてよね」

   「分かってる」


僕は手早く車輪を外し、軸受けを外し、自前のに付け替えていく。


「結構な改造だな」

「毎日研究していたのよね」

「あの重ねた板は?」

「さぁ?」


力仕事は8人も居るので手伝って貰って1時間程でサスペンションを取り付け終えた。


「良し。乗ってみよう」


ケセラを御者に、従来の車輪等は荷台に乗せて幌馬車は走り始めた。


「おっ。確かに・・・揺れが少ないな」

「・・・確かにね」

「・・・良いわね」

「凄いよ!マル兄ぃ!」

「はい。揺れが軽減されてますわ!」

「マルコ!良いわよこれ!」

「セラナはどうだ?」

「うむ。馬達も負担が減っているようだ、良いぞ!」

「ううむ。じゃぁもう少し減らせるかも・・・ブツブツ」

「マル兄ぃが入ったよ」

「あぁなったら長いのよね」

「まぁそのお陰で楽になった訳だしね」

「床からの振動をダイレクトに感じてみるか・・・ブツブツ」

「きゃぁ!ちょっとスカートの中を覗かないでよ!」ゲスッ

「いてっ!ちょ、ちが、床に寝て振動を感じてただけで、いてっ!」

「7人居るのに寝るなぁー!」

「いてっ!蹴るな!ってか戦うかもしれないのにスカート履いてんじゃねぇよ!」

「五月蠅いわね!マジックアイテムよ!私が何着ようがあんたに関係無いでしょ!」

「ま、まぁ、確かに・・・それはすまなかった。けど蹴らなくても良いだろう」

「条件反射よ!嫌なら2度とするなっ!」

「いてぇ、魔女が」

「何か言った!?」

「僕達には今情報が必要だ、そう言ったんだよ」

「それを探しに行くんでしょ!」

「だからそう言ってんだろが!寒すぎて脳みそ凍ってんのか!?」

「何おう!」

「止めろティア、馬車の上だぞ」

「バイヨ。こいつが」

「座りなさいよマルコ。いくら揺れが低減したからって危ないわよ」

「不解凍脳みそコッチコチ!へへ~「おすっ!」んだっはぁ!」

「座れっての」

「は、はい・・・」


「マルコ。山刀使いか」

「そうだ。あ、僕は戦力に数えなくて良いぞ。メインは彼女らだ」

「ほう」

「ふん!やっぱりハーレムね!」

「安心してくれ。君には全くこれっぽっちも一寸たりとて丸っきり一切てんで興味が無い」

「やかましぃーわっ!」

「彼女らは?」

「御者をやってくれてるセラナは僕等の盾役だ」

「彼女が?」

「あぁ。今はアーマーを脱いでいるが。僕だと思った?」

「あぁ」

「残念でしたー。敵もそう思ってる所に彼女らの矢が飛んで来るのさ」

「ほー。3人は弓か」

「あぁ」

「君は?」

「ん?」

「君の役割だよ」

「相手をイライラさせる役だ」

「イライラ」

「あぁ。そうやって隙を作って彼女らが仕留める」

「へぇー」

「ふん!良い御身分だ事ね!」

「モテないからって僕に当たるなよ」

「こいつ!」

「待てって」


バイヨがティアの襟を片手で摘まみ持ち上げた。


「座っときなさい」

「・・・はーい」

「すっげぇ力持ちだな」

「ドワーフだからな」

「そうなの?」

「そうなの」

「ふーん。君等は?」

「私が大剣だ」

「ドワーフはハンマーか斧だと思ってたが」

「はっはっは。多いがね。私は剣だ」

「ふーん」

「ティアが魔導士。エマが弓だ」

「3人でCランクか。凄いね」

「まぁね。そこら辺のとは違うって自信は有るよ」

「なるほどね~」

「鍵は君かな?」

「鍵?」

「カルドンを倒した鍵だよ」

「「「「「・・・」」」」」

「コネを持ってるのは君だけじゃないよ」

「コネなんてもんじゃない。不利益ばっかりだ。さっきも言ったが嫌々参加させられてるんだ」

「会話を聞くとそうだったね。どこの出身だい?」

「南だ」

「南と言うと、ソルスキアか」

「と」

「ルボアールか」

「そう」

「それにしては「マルコ!」」

「何だセラナ!」

「前を見てくれ!」

「前?」


荷台と御者席を区切っていた布を捲って前を見ると何処かで見た集団が居た。

全員歩いている。


「さっきの騎士連中だな」

「あぁ。どうする?」

「どうする?」

「停めるか?」

「冗談!このまま無視して進んでくれ」

「分かった!」


席に戻る。


「さっきの騎士達か」

「あぁ」

「乗せないのか?」

「馬車は8人くらいまでだろ」

「荷物くらいは載せられるぞ」

「載せたいのか?」

「御免だね」

「じゃぁ、言うなよ」

「一応な」


やがて通り過ぎた。


「あっ!貴様等!待て!停めろ!」

「停まらんか!」

「待てー!」


「あいつらプレートメイル着て荷物背負って3日間歩くつもりなのか」

「凄いわね」

「セラナはどう思う?」

「普通は馬を連れて行くが・・・」

「だよねぇ・・・「あっ!こけたよ!」」

「金が無いらしいからな」

「体力は有りそうだな」

「あっ、もう走れないよ!」

「だろうな」

「ルーラ姉ぇ、あたし達軽装で良かったね。あんな重かったら逃げられないよ」

「そうね」

「バイヨ」

「うん?」

「貴族って長子しか相続出来ないのか?」

「あぁ。国によって違うだろうがベルバキアは確かそうだったはずだ」

「じゃぁあいつは継げない訳か」

「それで継承戦争が起こったらしい」

「は~。なるほどね~」

「じゃぁ、数を産むほど困るんじゃないの?」

「いや。貴族は平民と違って病気で死ぬ確率が高いんだ」

「ふむ?」

(遺伝病かしら?)

(恐らくな)

「なのである程度数を産む必要がある」

「女目線からしたら迷惑だけど」

「ハーレムか?しかし貴族の女ともなれば生活は約束されるから困る事はない。産んだ子が跡を継げば権力も絶大だ」

「産むのが仕事って所がよ」

「それは貴族だから仕方ないだろう。血を後世に残すのも務めだ。王に務める義務もある」

「ルンバキアも長子相続かい?」

「ルンバキアも・・・確かそうだったはずだ」

「へー。ベオグランデは?」

「ベオグランデ公国もそうだ」

「・・・ふーん」

「どうした?」

「いや、別に。何故あいつは冒険者なんかをやってる?軍隊に入るなりして功を成せば良いじゃないか」

「貴族の子弟が家を出る理由はパターンがある」

「パターン」

「1つ。自分で名を成す為に。これが主に冒険者だ。職人や学者もいる」

「軍に入るのは違うのかい?」

「家の名を持ち込んでは意味が無い」

「なるほど」

「1つ。なんとなくだ」

「え?」

「そういう性格の者もいるのだ」

「貴族なのに」

「そういう者にはそういう価値観が我慢ならんのだろう」

「ほー」

「1つ。家の為にだ」

「家の為?」

「家の為に冒険者になる、学者になる、軍に入る」

「自分の為とどう違う?」

「死んでも家の名を上げられる」

「・・・なるほど。じゃぁあいつは」

「あぁ。家から体よく放り出されたのだろう。金もある程度持たされたようだし」

「この依頼を達成すれば名を成せる・・・か」

「例え死んでもな」

「酒を飲む気持ちも分かるな」

「そうね」

「爵位を複数持っていなければ嫡子以外には分けられない。平民だ。誰の助けも無いにせよ家の助けがあるにせよ、己で掴み取らねばならない」

「だったら尚更周りと協力してやらなきゃならないだろうに、あいつは間違った道を行っちまったな」

「爺って?」

「恐らく家から出す時に世話役も付けたのだろう」

「しかし病気で死ぬ事が多いんだろう?」

「その通りだ。だから有能な者は近場に置いておく」

「「「「「・・・」」」」」

「ヤケに詳しいのね」

「目指してるからな」

「跡を継ぐ事をかい?」

「ふっ・・・貴族になる事をだ」

「そりゃ大したもんだ」

「冒険者やってる奴は大体そうだろう」

「僕等は違うもんねー」

「ねー」

「アヤ。付き合わなくて良いのよ」

「じゃぁ何の為に冒険者を?」

「金だよ」

「金か。まぁ真っ当な理由だな」


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