⑨-38-227
⑨-38-227
『・・・』
プレートメイルの8人が入って来た。
「・・・紹介しよう。3パーティ目の方達だ。リーダー顔合わせを」
「マルコです」
「ンナバイヨだ」
「ん~。女ばかりではないか。今回の旅は楽しめそうだな」
「左様ですな」
「どうした?貴族は初めてか?苦しゅうないぞ。ほっほっほ」
「スティーゲンさーん!」
「マ、マルコ君!仕方ないのだ。上からねじ込められてな」
「達成出来るものも出来なくなりますよ~」
「そこを何とか!あの村の様に頼むよ!」
「いや~も~騙された~!」
「頼むよ!」
「報酬安すぎたよ~」
「貸し1つって事でさ」
「受付嬢にも貸してるんですけど~」
「ドキィ~」
「最低でもセクハラは止めてくださいぃ~」
「わ、分かったから!」
「はぁ~」
「オホン。全員揃ったようなので席に着いてくれ!」
「まだ紹介が済んでないであろう?」
「他のリーダーは名乗ったよ」
「では私も名乗ろうではないか」
「時間が無いので席に着いてくれ」
「なっ、無礼者!私を誰だと心得る!」
「ブラウゴ・ブルバス君。ブルバス家の3男。ちなみに爵位は無い」
「きっ、貴様!よくも!」
「ギルドマスターの仕事の邪魔をするならこの依頼は破棄したとみなすが?」
「ぐぐぐ・・・」
「若、ここは我慢ですぞ」
「ぬぐぐぐ・・・」
「若、堪えて」
「早く説明せんか!」
「君が遅れたから待っていたのだよ」
「ぐぬぬぬ・・・」
「破棄する~?破棄する~?」
(あのマスターもストレス溜まってたんだな)
(そうね)
「・・・説明は以上だ。何か質問は?」
「僕達からは無いで~す。2回目ですし~」
「フッ、私達もだ」
「スティーゲン!」
「何だねブラウゴ」
「様を付けろ様を!」
「君もマスターを付け忘れているよ」
「ぐぬぬぬ・・・」
「若」
「そいつらがDランクというのは本当か!?」
「あぁ、そうだ。だがか「納得いかん!」」
「どうせ伝手を伝って無理やり入って来たのであろう!」
⦅お前が言うなー・・・⦆
「こいつ等は必要無い!と言いたい所だが、男だけ外すなら女達はそのままで構わん」
「あ、僕等は破棄しますんで。後よろしくお願いします」
「ちょ、ちょーっと待とうか!マルコ君!こっちに来給え!」
「何です?」
(この依頼は断って貰っては困るのだ)
(契約でしたら違約金を)
(待て待て待て!金の問題ではないのだ!)
(・・・まさか)
(そう、そのまさかだ。国が関わっている)
(何で!?)
(分からんよ!ただ予想をするならば)
(するならば?)
(やはりルンバキアの悪魔騒動を受けての事だと思う)
(ふむ~)
(なっ、頼む)
(国が関わるんなら何故あの坊ちゃんをねじ込まれたんです?)
(貴族の都合って奴さ。あっちを立てればこっちが立たず)
(はぁ~。分かりましたよ)
(ありがとう!マルコ君)
(ただあいつ等が手を出してきたらブッ飛ばしますよ)
(構わんよ)
(良いんですか?)
(あぁ。あいつの家は男爵。大公家直轄冒険者ギルドに盾突く事など出来ん)
(じゃぁ何でブッ込まれてなんか?)
(男爵から上ぇ~の方にな)
(はら~。じゃぁ尚更ブッ飛ばせないんじゃ?)
(男爵家でも持て余してるらしい)
(ぶっ)
(貴族を気取って威張ってはいるが本人は爵位は無く、問題を起こすと家に迷惑が掛かる)
(じゃぁ、僕がブッ飛ばしても正当性を?)
(私が保証しよう)
(はぁ~。分かりましたよ)
「よし!じゃぁ目的地に向かってくれ!」
「了解で~す」
「分かった」
「待て!スティーゲン!どういう事だ!?その男を外す相談をしていたのではなかったのか!」
「な訳ないだろ。さっさと行け!」
「何だと貴様!」
「ブルバス家には私の方から報告しておく。お前らは行かなくて良いぞ」
「なっ!?ちょ、ちょっと待ってくれないかギルドマスター殿!若っ!これ以上は不味いです!」
「しかし爺よ!この怒りは何処へ!?」
「また晴らす機会も有りましょう。参加出来なければ意味は有りませんぞ!」
「ぬぐぐぐ・・・これも神が与え給うた試練なのか・・・往くぞ!皆の者!」
『はっ!』
「若!怒りを内に収められるとは、立派になられて・・・爺は嬉しゅう御座います」
8人は部屋を出て行った。
「スティーゲンさん」
「あぁ、分かっている。言わなくても分かっている」
「いや、彼らの神って?」
「あ、あぁ。唯一神教、エリス教だよ」
「「唯一神!?」」
「あぁ、そうだが」
「北部の宗教じゃ?」
「宗教の自由が認められているからね」
「唯一神教も認められると」
「そういう訳だ。ちなみに北部から亡命してきた者やら奴隷王の協力者だった貴族やらには多少いるな」
「ふーん」
「知らないようだから教えておくが、エリス教と言う。唯一絶対の神だ」
「エリス教。女神なんですか?」
「いや、男性神だ」
「へー」
「信徒は神の名を呼ばない。唯一絶対であるから特定する名を呼んではならないらしい」
「でも名前は有るんですね」
「聖典に載っているらしい」
「へー」
「君の宗教は?」
「精霊信仰です」
「なるほど」
「エリス教は北部に多いと聞きましたが」
「あぁ。向こうの国教になっている」
「そう・・・ですか」
「ちなみにベルバキアの国教って?」
「八神教だな。アレク3公国はみんなそうだ」
「でも街にも政治的にも宗教色が強いとは感じませんね」
「建国王が払拭してね。王の死後の継承戦争で息を吹き返したんだけど、宗教的な事件が多発してね。やはり王の路線を継承したって聞いてるよ」
「さーすが!」
「しかし出発しなくて良いのかね?」
「あっ、いっけね!」
「ンナバイヨ達も待ってなくて良かったのに」
「いや。面白い話を聞けたよ」
「そう。だったら良かったんだけど」
「あいつ等が待ってるだろう。文句言われる前に集まろうか」
「うむ」
僕達は1階へ降りて行った。
「あれ?」
「居ないな?」
「君!8人の騎士風の男達は?」
「出て行かれましたよ?」
『えー!?』
「先に行ったんですかね」
「・・・だろうな」
「スティーゲンさん。お察ししますよ」
「はぁ~」
「冒険者ってあんなのばっかりですか」
「そうだよ。街中で真面に働けない奴や碌でもない奴らの最後の職でもあるんだ」
「「な、なるほどー」」
「暴力で街の人に迷惑かけるよりは魔物を狩らせて少しでも貢献してもらうってね。その生活の中で更生するなり真面になるなりしてくれたら良いんだが」
「親の心子知らずってやつですか」
「そこまでは無いよ。どう仕様もない者はその内命を落とす。彼らを見たろ?言っても聞かない」
「僕等に言って良いんですか」
「だから将来有望な者に期待をかけるのは国の為でも有るんだ。冒険者を全部平等になんて扱ってられない。毎日酒飲んで騒ぎを起こす奴らの世話なんぞ誰が好き好んでやるかね」
「マ、マスターも大変なんですね」
「彼らは特に飲食店にツケが溜まっているらしい。報酬の一部前払いを要求してきた事もある」
『ぶっ』
「報酬の前払い!?」
「実家からの援助も食い潰した、いや、飲み潰したようだしな。停止されてるみたいだ」
「典型的な放蕩息子!」
「報酬の前払いなら私達も以前ありましたね。マスターからの条件提示でしたけど」
「そうなのか。まぁ君達なら分かるがね。私も君達をマスター権限で依頼限定Cランクにしたのだし」
「スティーゲンさんの期待に応えられるよう頑張ってみますよ」
「頼むよ・・・最悪彼らは放って君等2パーティで達成してくれ給え」
「分かりました」
「分かった」
馬車屋に向かった。
「おっ、あんたらかい」
「おやっさん、どーもー」
「今日はあいつも居るよ」
「良かった。長期で借りたいんだけど」
「どこまで行くんだい?」
「この村なんだけど」
地図を広げて目的の村を指す。
マヌイ達はラドニウスの方へ向かっていた。
「あぁ、ここか。ここならラドニウスじゃなく馬だと2日で行けるよ」
「ホッ、ホント!?」
「あぁ。本当さ」
「じゃぁ馬で行くか」
「そうだな。早く着いた方が良いだろう」
「ッナ・・・さん」
「バイヨで良い。2台借りるか?」
「うーん」
「納品しなければならないから納品用の馬車が要るだろう」
「2台だと報酬より保証金の方が高くなるかもしれないし」
「無事に帰って来たら良いじゃないか」
「それはそうなんだけどねぇ」
「じゃぁ往きは1台にして、結果2台必要になったら最寄りの街か村で借りよう」
「そうしましょう」
「ではここは私が借りよう」
「え?」
「君等はカード上はDランクだろ?Cだと10万エナで借りられる」
「へー。あ、じゃぁ金額は半分ずつで」
「あぁ、そうしよう」
「おーい。今日は馬で行くぞー」
「えー、そうなの?」
「馬だと2日で着くんだって」
「そうなんだ。じゃぁしょうがないねー」
「ブオォォ!」
「いててて!しょうがないじゃないか、お前遅いんだもん!」
「ブオオォォ!」
「あいててて!分かった!帰って来たらまた野菜差し入れするから」
「ブオ」
「えっ、高級?お前働いてないのにそれは、いててて!分かったよ!高級野菜な!」
「ブオォ」
「君達のリーダーはラドニウスと話せるスキルでも持ってるのか?」
『・・・』




