⑨-37-226
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「それで?」
「うん?」
「どうするの?」
「何を?」
「もし悪魔だったら」
「1匹なら・・・3パーティ居るんだ、大丈夫なんじゃないか?」
「まぁ、Cランクだしね」
「2匹なら?」
「逃げよう」
「・・・」
「そうね」
「うん」
「そうしましょう」
「そうなのか?」
「血を採取するのも危険だろ。依頼失敗で構わんよ。嫌ならお前らが行けと言ってやる」
「まぁ、そうだな。1匹でも軍が手古摺った訳だしな」
「諜報員だったら?」
「捕まえる」
「殺さないのか?」
「情報を吐かせる必要がある。他に居ないとも限らないしな」
「うむ、そうだな」
「目的は仇討ちだ。それはティラミルティの弱体化だ。より多くの情報を引き出す事が仇討ちに繋がる」
「カズ兄ぃ」
「マヌイ。危険は有るが任せてくれ」
「うん」
「幸せが最優先よ。復讐はその次」
「復讐して障害物を取り除かなきゃ幸せに至れないんだよ。とはいえ死んでは元も子もない。引き戻す役は君に任せるよ」
「任されたわ。引き摺ってでも・・・引き摺るのはサーヤに任せるわね」
「任されました!」
「及ばずながら、私も力になろう」
「及ばずながらってなぁ、嫌味だねぇ」
「む」
「パーティ唯一の盾役だよ。出来る限りとか、パーティの為にとかの方が良いんじゃね?」
「そういう事言わないの」
「貴族社会ってのはメンド臭そうだ」
「むむぅ」
「頼りにしてるよ!ケセラ姉ぇ」
「マヌイ・・・あぁ、任せてくれ」
「明日はどうするの?」
「休息を取るか。ゆっくり休んでくれ」
「大仕事の前だもんね」
「そうだね」
「あと。エウベルトさんを見舞いに行こう」
「そうね。長期の不在になりそうだから今の内に行っておきましょう」
「そうですね。何か持って行きます?」
「カルドンで十分だと思うが」
「はっはっは。商人だからそうだろうな」
「私は修行に行ってくるよ」
「いいのか?」
「午後休むから大丈夫」
「そうだな。私もそうしよう」
「えぇー。私も何か習得しようかしら」
「《木工》とかはどぅよ?」
「笛作ってたし。割と早く習得出来たりするんじゃない?」
「私が樵ぃ?」
「矢も作れんじゃね?」
「・・・そうね」
「楽器も作れんじゃね?」
「うーん。考えておくわ」
「あぁ。そうしてくれ。じゃぁ僕は午前中奴隷王の像でも見に行くかな」
「あぁー!私も見たい!」
「私もです!」
「そ、そうか。じゃぁみんな揃ったら中央広場で昼を食べながら見るか」
『さんせーい!』
中央広場からの帰りにエウベルトさんを見舞いに行った。
エウベルトさんはベッドから体を起こして書類を見ていた所だった。
ベッド脇で話しかける。
「これはこれはお揃いで。お久しぶりですな」
「エウベルトさん。この度はご愁傷様です」
「これはどうも。幸い私は軽傷で済みましたが・・・」
「彼らの為にも早く元気になって商会を大きくしてください。それが慰めになると思います」
「ありがとうございます。そういえばカルドンを卸して頂いたそうで」
「えぇ。お見舞い代わりです」
「はっはっは。これは大層な物を頂きましたな。早く良くならねば」
「えぇ。それでどんな魔物だったんです?」
「残念ながら見る暇も無く逃げて来まして」
「そうですか。しかしそのお陰で助かったのですから賢明な判断だったと思います」
「そう言って頂けると・・・そういえばスキル修行をされているとか」
「はい。オランドさんに紹介いただいて、お世話になっています」
「そうですか」
「いつ大怪我をして冒険者家業を引退するか分かりませんから」
「はっはっは。私を見ると正に、ですな」
「商人として必要なスキルは何でしょう?」
「必要なスキルですか・・・」
エウベルトさんは正面を向いて遠くを見るように呟いた。
「真実を見抜く力・・・ですかな」
「真実・・・流石数年で商会をここまで大きくした方の言葉は重いですね」
「・・・いや、はっはっは。商人は人との折衝が戦いでもありますからな」
「人との折衝ですか。僕には無理そうです」
「おや、カルドンにも勝るお方が?」
「魔物は単純です。人は裏切る。魔物の方が余程やり易いです」
「・・・そうですなぁ。その通りですなぁ」
エウベルトさんはまた遠くを見ているようだ。
「僕達は明日から長期の依頼が入りまして」
「そ、そうですか。ではしばらく会えませんな」
「えぇ。その間に元気になってください」
「分かりました。ありがとうございます」
「帰ったらまた寄りますから」
「えぇ。そうして下さい」
「では」
その日は明日からの準備をして早く床に就いた。
翌朝。
冒険者ギルド本館に入る。
黒人の受付嬢に案内され応接室に入った。
以前まで使っていた部屋よりも広い部屋だ。
3パーティとギルドマスターと受付嬢が入るので相応の広さが必要だったのだろう。
僕達が最初だったようで冒険者らしき人物はまだ誰も居ない。
「揃うまでここで待っててね」
「分かりました」
少し待っていると部屋のドアが開いた。
「紹介するわね。え~っと。マルコ君。パーティ名とか有るの?」
「無いです」
「そう。じゃぁ~、お互い自己紹介して」
受付嬢に伴われて入って来たのは女3人のパーティだった。
「パーティリーダーのマルコです」
「サブリーダーのジーナです」
「アヤです」
「ルーラです」
「セラナだ」
「ンナバイヨだ」
俺と同じか少し高く体格の良い女が名乗った。
「ティアよ」
ローブを着たヒト族の女が名乗る。
「エマ」
獣人の女が名乗った。
「じゃぁ。席に着いて親睦を深めつつ待っててね」
最初に名乗ったのだからリーダーなのだろう。
彼女に話しかける。
「え~っと。ッナッバ・・・」
「ンナバイヨ。バイヨでいい」
「バイヨさん、よろしく。リーダーですか?」
「一応な」
「一応?」
「戦闘中は盾やってるからティアがリーダーになる」
「あ~、そーゆースタイル」
「あぁ」
「3人ですもんね」
「まぁな」
「ドワーフですか?」
「そうだ。女のドワーフは初めてか?」
「えぇ。男は師匠が知人に居ます」
「師匠?」
「ッナッ・・・カルトさんです」
「はっはっは。あぁ、鍛冶屋のおっさんか。腕は確かだよ。ってぇ事はあんたも《鍛冶》を?」
「いえ。習得出来ない落ちこぼれです」
「へー。まぁ冒険者の片手間だ、根気良く頑張んな」
「はい、そうします」
「Dランクって聞いてるけど」
「え~っと・・・」
「ティアよ」
「ティアさん。そうです。今回マスター権限でCランクにされて無理やり呼ばれて堪ったもんじゃないですよ」
「ふーん。自分から頼んだんじゃないの?」
「とんでもない。誰も帰って来ない調査なんて怖くて受けませんよ」
「ハーレムパーティだからメッキが剥がれるのが怖いからかしら?」
「え~っと・・・」
「私は」
「待って!思い出す!え~っと・・・ママ!」
「エマよ!」
「惜しいぃ~半分合ってたのにぃ~」
「半分って、たった2文字くらい覚えなさいよ!」
「まぁ~まぁ~落ち着いて」
「イラッ」
ガチャッ
「おぅ、集まって・・・ないな。あれ?もう1パーティ足らないのか?」
「そうですね、スティーゲンさん」
「あ~、あの人達か・・・面倒な」
「うわ~、トラブルの予感~」
「じゃぁ、ただ待ってるのもあれだし。先に説明を始めるかね」
「そうですね」
「分かった」
「今回の目的地はここより南西徒歩3日の位置にある村だ。
村の外に広がる森の更に奥に入った者が全員未帰還になっている。
今回の依頼はその奥地に入り調査をして貰う事だ」
「質問」
「マルコ君」
「生存者がいた場合は」
「可能なら救出して欲しい」
「不可能な場合は?」
「見捨ててくれ。君達が帰って来る事が出来ない場合、その報告も受けられない為、貴重な情報が失われる恐れがある」
「了解です」
「うむ。今回の調査では可能な限り原因対象を討伐してくれ。何か質問は?」
「はい」
「マルコ君」
「調査して原因を特定、討伐した場合。村長に達成のサインを貰うんですか?」
「そうだが?」
「よろしいので?」
「むっ!う~ん、そうだな。村長のサインは必要無いだろう。私から手紙を書こう、渡しておいてくれ」
「分かりました」
「今回は何人もの行方不明者を出している。パーティ間の連携を「ガチャッ」」
「何だ!我々を待たずに始めるとは無礼ではないか!」




