⑨-33-222
⑨-33-222
「貴様!そんな約束をして大丈夫なのか!」
「あんたが探せねぇからやってんでしょうが」
「なっ、何だと!」
「マ、マルコ君!」
「マルコさん!」
「じゃぁ探しに行きますよ」
「よーし!どこでも探しやがれ!」
『そうだそうだ!』
「じゃぁ、厩舎に行きましょう」
サ―――ッ
村人達の顔色が変わる。
「ん?どした?早く行こうぜ」
「い、いや、ちょっと・・・」
「調査官、行きますよ」
「ちょちょちょ調査官様。お疲れでしょう、お茶でも飲まれては?」
「む?そうだな、では馳走になろう」
ふぅぅぅ
スティーゲンさんと受付嬢だけじゃなく彼の部下達も溜息をついた。
「じゃぁ厩舎で待ってるんで終わったら来てくださいね」
「うむ」
サ―――ッ
「いや、調査官。そんな場合じゃないでしょう!」
「スティーゲン。良いではないか茶くらい」
「あぁ、もう、この人は!」
「スティーゲン?」
「マルコ君!すぐ行くぞ!」
「・・・分かりました」
僕達は厩舎へと向かう。
村人達は顔面蒼白だ。
女に抱かれた赤ん坊も泣き出している。
「茶を飲むって・・・何で待とうとしたのよ」
「死刑台への廊下は長ければ長いほど苦しむだろう」
「ちょ、こわっ」
「怖いよカズ兄ぃ」
「いいえ!当然ですわ!」
「うむ!畜生共に遠慮は要らん」
厩舎に着いた。
馬が繋がれている。
床下にはしっかり魔導ペンが視える。
「先ずは馬を出しましょうか」
「うむ。おい!」
『はっ!』
「藁も出してください」
「うむ。おい!」
『はっ!』
「ちょ、調査官殿!蓋が!?」
「何!?」
『あわわわ・・・』
「蓋をどかしてみろ!」
「はい!」
「せーのっ!」
ガラン
静寂の中にその音は響いた。
「こっ、これは!?」
「どうした!何を見つけた!?」
「装備です!冒険者の装備が大量に!」
「何だと!見せろ!」
「お終いだ・・・」
村長は膝から崩れ落ちた。
「くそっ!」
俺が沼に蹴落とした男が逃げ出したが直ぐに取り押さえられた。
次々に運び出される冒険者達の遺品。
その中に俺が魔導ペンを忍び込ませた装備が運び出されて来た。
「うわあぁぁぁ!」
俺は駆け出し装備にしがみつく。
「え、マルコ!?」
「マル兄ぃ?」
「マルコさん!?」
「マルコ!?」
4人も慌てて俺の後を付いてくる。
装備に抱きついた拍子にペンをバレないように取り戻す。
「うわあぁぁぁ!こんな事になってぇぇぇ!(カードの名前覚えてる?)」
(確か・・・キリマー)
「キリマーァァァ!」
「友人だったのか」
「そうだったのね・・・それで」
「くっ、泣かせるじゃないか」
「「「「しらー」」」」
「村長!」
「こんな・・・ブツブツ」
「村長!!」
「なんで・・・ブツブツ」
「駄目だな。こいつを引っ立てろ!」
『はっ!』
「村人全員捕えるのだ!」
『はっ!』
村人は全員捕縛された。
赤ん坊を抱いた女も一緒に。
それを悲しそうな目でマヌイが見ている。
「僕達も変わらないのかな?」
マヌイ「えっ?」
「あいつ等は冒険者を殺して金を稼いでいた。僕等は魔物を殺して金を稼い でいる」
マヌイ「・・・」
ケセラ「・・・違う価値観、か」
マヌイ「・・・運が悪かったって事?」
「あぁ」
ケセラ「運?」
「馬鹿な親の元に生まれた運、だ」
ケセラ「それはどうしようもないじゃないか!」
「そうだ。どうしようもない。君が魔法を使えないエルフで生まれた事もど うしようもない」
ケセラ「・・・」
「子供がいるならやっちゃいけなかったんだ。あいつ等のせいだ。僕等じゃ ない」
マヌイ「・・・うん」
「僕等が告発しなきゃ更に冒険者に犠牲が出ていただろう。僕は正しいん だ」
マヌイ「うん」
「あの子達は助かるかもしれんしな」
マヌイ「え?」
「孤児院に預けられるかもしれない」
マヌイ「あぁ、そっか!」
「僕達だけ先に帰れないかな。風呂、入りたいだろう?」
ミキ 「そうね」
マヌイ「うん、入りたい」
サーヤ「はい」
ケセラ「さっぱりしたいな」
「ちょっとスティーゲンさんに聞いてみるよ」
スティーゲンに聞くと席を立って調査官に聞きに行ってくれた。
しばらくして帰って来た。
帰って良いらしい。
村長以下、取り調べに素直に白状しているという。
これならもう大丈夫という事らしい。
調査官の気が変わるのもなんだし直ぐに村を発った。
野営地で食事を摂る。
「マヌイ」
「ん?」
「スティーゲンさんに聞いて来たけど。多分孤児院送りになるだろうって」
「そう!良かった」
「まぁ、まだ確定じゃないからな。変な気を持たせるのも嫌だったんだが」
「んーん。ありがと」
「いや」
「はぁ~」
「どうしたの?」
「また上位種はタダ働きかぁ」
「買取されるだろう」
「上位種だから討伐報酬も高いのよ」
「また、とは」
「ルンバキアで・・・ね」
「・・・そうだね」
「すまんな」
「え?」
「思い出させたか」
「・・・んーん。大丈夫」
「ケセラは盾をどうするか考えておけよ」
「あぁ、そうだったな」
「帰ったらゆっくりしましょうか」
「3人はスキルの習得だな」
「そうだったわね」
「でもそんなに直ぐに習得出来ませんわ」
「すこし冒険者稼業は休もう。充電だ」
「それに午前中修行して午後狩りに行っても良いしね」
その日、久しぶりの風呂に入った。
翌日は急ぎ足で向かったおかげで公都の夕方門限に間に合った。
宿で疲れを癒す。
翌朝の朝食時にウリク商会からの言伝をもらう。
恐らくカルドンの買取の件だろう。
食事後に商会へ向かった。
オランドさんが応対する。
「マルコさん。何でも国の調査班と同行なされたとか?」
「えぇ。今は詳しい事は言えないんですけど」
「分かりました。忙しくなるというのはその件だったのですね」
「えぇ、そうなんですよ」
「終わったのですか?」
「一段落、といった所です」
「そうですか。ではまた公都で活動を?」
「はい。特に呼ばれなければそのつもりです」
「そうですか。では先日のカルドンの買取金をお先にお渡ししますね」
「はい」
「カルドンの買取金、60万エナを御納め下さい」
「どうも」
「それで盾の件はどうされます?」
「セラナ」
「あぁ。このデザインでお願いしたい」
「分かりました。マジックアイテムになさるという事で魔法付与はどんな種類のになさいますか?」
「軽量化、で、お願いしたい」
「良いのか?盾なら防御力強化でも良いんじゃないか?」
「マルコ達と連携を取るなら軽い方が良いと思う」
「・・・そうか。君がそう判断したのならそれで良いだろう」
「あぁ、そういう事でお願いしたい」
「承りました。見積もりはまた後日」
「分かりました」
「それでスキル習得の件ですが」
「えぇ」
「私共の方は紹介の準備が出来ております。如何されます?」
「今日から行きます!」
「私も」
「うむ。私もそうしよう」
「承知しました。ではこの後に御案内致します」
「2,3日は冒険者は休もうと思ってるんですが、再開した時に午前中だけ修行出来るようにお願いしたいんですが」
「分かりました。伝えておきましょう」
「よろしくお願いします」
「それで賃金の方なんですが」
「あぁ、要りません。こちらからお願いするんですから」
「いえ、そうはいきません。働く以上受け取って頂かなければ。それにお金を得る方が身に付き易いものですよ」
「なるほど。では彼女らに説明をお願いします」
「はい。厳しくさせて頂きますので」
「よ、よろしくお願いします!」
「ふふ、お願いしますね」
「よろしく頼む」




