②-05-22
②-05-22
翌日ギルド本館の受付嬢に高ランカーのスキル構成を聞いてみた。
登録した女性とは別の女性だった。
「だいたい身体強化系に武器系に補助系が多いですねー」
「生活系は取ったりしないんですか?」
「それはわざわざ教えませんねー。冒険とあまり関係ありませんし、こちらからも聞きませんし。あっ、聞くのはちょっとマナー違反っていうかー」
「なるほどー」
「依頼で『このスキル持ってる方募集』っていうのありますけどねー。高ランク依頼で必要スキルを調べるならそういった依頼票を見るのも良いかもしれませんねー」
「なるほどー。ありがとーございましたー」
「いいえー」
パーティメンバー募集掲示板があったので見てみる。
「確かにスキル載せてるな。載せてると誘い易いし誘われ易いのだろうね」
「ですね。こう見てみるとさっき言われた通り、身体強化系に武器系に補助系が多いですね」
「武器系に武技ってのが有るな。Lvを上げると覚えるらしい」
「色んな武器が有りますね」
「身体強化して専用武器で必殺技!って感じかね」
「みたいですね」
「魔法使いがいないな」
「直ぐ誘われるんでしょう」
「そりゃそうか」
「依頼達成の為だけの臨時の募集も有りますね」
「ほー、色んな形態があるんだね」
しばらく掲示板を見ていたら菊池君が興奮した様子で声を掛けてきた。
何処か違う所に行ってたみたいだ。
「先輩!採集依頼に森の木の実とか薬草とか有るんですよ!」
「何っ!・・・でも薬草なんて俺は知らんぞ。見たことも無いし」
「市場に行って聞いてみましょうよ。どんな実か薬草か」
「それは良い。今は秋だからこっちの世界でも生るんだな。余ったら僕達が食べればいいしな」
「そうですね!行きましょう!」
「採集依頼受けます?」
「いや、もし間違った物を納品したら駄目だし、市場で確認した物を森で入手し、本当にそれで合ってるか確認出来たら依頼を受けて即納品すれば良いんじゃないかな」
「そうですね。依頼受けてから取りに行く必要ありませんよね」
「先に受注されるかもしれないが、そん時はそん時だろう」
「ですね。依頼を受けるのがメインじゃないですし」
「採集をメインにするんじゃなく、ついでにしよう。あと市場じゃなく納品館で見せてもらえないかな」
「あっ、そうですね。その方が確実ですね。おっちゃん見せてくれるかなー」
「納品依頼の木の実と薬草を見せてくれ?」
「はい。現物を見ないと採集出来そうにないので・・・」
「なるほどな・・・。いいぜ、ちょっと待ってな」
おっちゃんは奥に引っ込んだ。
そして結構な種類をトレイに入れて持ってきてくれた。
「大体採集依頼される物を持ってきたぞ」
「「ありがとうございます!!」」
「ちょっと疑問に思ったことが有るんですけど」
「何だ」
「ギルドを通さず直接依頼主や必要な人に売るのはどうなんですか?」
「あぁ、『卸し』か。おめぇら田舎もんであんまり世の仕組み知らねぇようだから教えといた方が良いかな」
「よろしくお願いします」
「あぁ。ハッキリ言うと『物』によるな」
「物による」
「あぁ。例えば薬に使う素材だと冒険者は高く売りたいが、そうすると薬の末端価格は高くなるわな」
「そうですね」
「そうすると貧しい人達は薬を買えなくなる。人が死んでいく。人口が減る。街が寂れる。簡単に言うとそーゆーことだ」
「なるほどー。おっちゃんインテリですね」
「ははは、年の功ってやつよ」
「だから公共性の高いものは安定した価格で安く売りたいってのが暗黙の了解なのさ」
「因みにこの薬草って・・・」
「薬草は薬やポーションの材料だ。因みに違いは薬は対症療法で使用され魔力含有量は低め、ポーションは即効性でその分魔力含有量も多い」
「なるほど。肉屋で冒険者が直接卸してるって聞いたんですけど」
「肉なんかはモンスターのが結構出回ってるから高くない。飲食は競争社会だからな、企業努力ってやつで他と違いをつけなきゃならねぇんだろうよ。
ギルドとしても特に文句を言うほどじゃねーな。嫌ならその店のを買わなきゃいいだけだし」
「おっちゃんひょっとして偉い人?」
「良く分かったな。冒険者ギルドと商人・職人ギルドとの価格交渉を担当したりしてる」
「「おみそれしましたー」」
「よせよせ。んなことされても何も出やしねーぞ」
その後数日は狩りに更に慣れてきたこともあり、また採集依頼をこなせば3000エナを超える稼ぎを出すほどになっていた。
ゴブリンを狩り過ぎたのだろうか。
出会うのに結構な時間が掛かるようになっていたので狩場を東の森から南の森に変えた。魔物の分布も東のと変わりないのも決め手の1つだ。
予想通り南の森でも以前通りの稼ぎを得られて安定した生活を送っていた。
そんな毎日を送ることで心に余裕が出来たせいだろうか、1つの疑問が俺の中で大きくなっていた。
「菊池君。今回からはちょっと実験をしたいんだが・・・」
「実験?」
「あぁ。ちょっと疑問があってね」
「どんな疑問です?」
「幼虫なんだが」
「幼虫がどうかしましたか?」
「あいつら目が無いじゃないか」
「そういえば、有る印象はないですね」
「どうやって僕達を認識してるのかなって」
「臭いでしょう?」
「だとすると死体の方へ行くと思うんだよね」
「う~ん。食べてる最中に襲われたくないから先ず生きてるのを襲う・・・とか?」
「そういった疑問を解消したくてちょっと実験したいんだよ」
「なるほど。じゃぁ、狩りの終わりにやるのでしたら構いませんよ」
「あぁ。お金が1番だからな、当然だ」
狩りのルーティーンが終わり、実験の時間を取ってもらった。
幼虫を捕まえて身体を調べる。
「イモムシやケムシと違ってこういうのを前世では地虫って言うんだ」
「へー、(おぇ)」
「だ、大丈夫か?」
「は、はい」
「地虫は名前の通り地中にいるんだが、魔虫ともなると地上に出て餌を食うんだな」
「へー、(おぇ)」
「じ、地虫だからか目は退化してるんだがこいつもそれらしきものは見当たらない」
「へー、(おぇ)」
「となると君が言ってたように臭いか・・・他に何か感覚器官があるのか?」
「へー、(おぇ)」
「という訳でちょっと実験をする」
「了解です(おぇ)」
「狩りが終わるまで地中に埋めておいた大きな布だ。大分僕達の臭いは消えてるだろうこの布を幼虫に掛けて我々は風下に回る。こいつがどう行動するか観察する」
「了解です」
布を幼虫に被せ尖った木の枝で布の上から突き刺し固定する。
「ピギィ」
布が被さった幼虫を離して結構距離を取ると、真っすぐ僕達のもとに這ってきた。
「目ではないな。ちょっと僕達だけ場所を移動してみよう」
僕達が移動すると幼虫はそれについてくるように這っていた。
僕達は木の裏に回る。
すると幼虫は木に激突するが木を回り込んで僕達に向かって来た。
「目は完全に見えてないな。臭いも風下に移動したし影響は少ないだろう」
「地面を歩いた際の振動とか?」
「なるほど。では菊池君は横に行ってくれ」
俺は動かず菊池君は俺の横に走っていったが幼虫は布を被ったまま俺の方へ一直線だ。
幼虫は弱弱しく這って来たのでトドメを刺しておく。
「振動ではないな」
「じゃぁ、何でしょうね」
「もう少し実験したい」
「分かりました、(おぇ)」
幼虫の死骸を餌に幼虫を誘き寄せることにした。
丁度僕達と死骸を挟んだ向こうから誘き出された複数の幼虫が死骸に近づくも、ある程度の距離でこちらに方向を変えて這い寄ってきた。
「(おぇ)?」
「明らかに途中で方向転換したな。~~~~~~~~~~《雷撃》!」
「恐らく魔力、もしくは生命そのものを感知していると思われる」
「魔力か生命そのもの?」
「あぁ、ただ恐らく魔力だ」
「何故です?」
「こいつらは最初幼虫に向かっていた。恐らく仲間の死体を食うためだろう」
「えぇ」
「死体に反応したのだろうから魔力だろう」
「死体だから生命反応は無いのは分かりますが、死体にも魔力が?」
「薬やポーションは魔力を含有しているという。恐らく素になる薬草に魔力があるのだろう。薬草は土から養分を取り入れる。ならば土にも魔力が?
いや今はそんなことはいい。
普段食べてる肉や野菜なんかにも魔力は含まれていて、僕等はそれを取り込んで魔力にしているんだと思う。そうすると肉である死体にも生きてた時ほどではないが魔力が残ってるのは当然だろうな」
「なるほど。では私達に向かって来たのは?」
「恐らくだが・・・」
「はい」
「より大きな魔力に反応したのではないだろうか」
「!?」
「そうだとすれば全く恐ろしい奴らだ。より強い魔力を取り込むために命を懸けて食いつこうとする。普通の生物ではない、まさに『魔物』だな」
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《魔力感知》を理解しました
《魔力感知》を習得しますか?
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「なんだとっ!?」
「ど、どうしましたっ!?」
「心の声が、いや頭にか?声が聞こえた」
「まさかスキル習得の!?」
「あぁ、そのまさかだ」
「なんていうスキルですか!?」
「《魔力感知》だそうだ」
「めっちゃ有用そう!取りましょうよ!」
「そ、そうだな。取りまーす!」
「軽っ」
ステータス画面を確認してみると載っていたので安心した。
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頑健Lv2、病気耐性Lv1、殺菌Lv2、隠蔽Lv1
雷魔法Lv1
魔力感知Lv1←New
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「どんな感じですか?」
「目を瞑っても菊池君を感じるぞ」
「え?」
「感じる感じる・・・」
と言いつつ俺は目を瞑ったまま菊池君から後ずさっていく。
「感じない」
目を開けると菊池君から2mしか離れていなかった。
「2m・・・だと」
「短っ」
「ま、まぁまだLv1だから・・・」
「そ、そうですよ。まだLv1なんだからこれからですよ、先輩!」
「Lv上げがんばろう」
「そうそう!いやぁ、実験もやってみるもんですねー」