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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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⑨-30-219

⑨-30-219




翌日は北西の奥で5匹を殺して依頼達成だ。

村長も村人達も明らかに微妙な表情だ。

もっと隠そうとしろよ。


「それじゃぁ、これで依頼達成だな」

「あ、あぁ。そうだな」

「ではこれで帰らせてもらう」

「あ、あぁ」


僕達はラドニウスを連れ村を出て行こうとする。

遠くで俺を睨んでいる奴がいた。




野営地で夕食を摂る。


「呆気なかったわね」

「そうだねぇ」

「予定通りと言えば予定通りですが」

「この後はギルドに報告するのだろう?」

「それなんだが、当局に報告した方が良いのかな?」

「うーむ。いや、筋としてギルドが先だろう」

「そうか。証人として一緒に行く事になるかもしれんなぁ」

「まぁ、しょうがないんじゃない?」

「うん、しょうがないよ」

「それは、仕方ありませんね」

「一緒に行動するとなると・・・風呂とストーブは無理だろうなぁ」

『!?』

「それは!・・・どうなの」

「それは・・・辛いねぇ!」

「悩みますわ!」

「うーむ」

「久々に原始的な生活を味わうか」

「いや・・・でもねぇ・・・」

「風呂が・・・うーん・・・」

「どうしましょう・・・」

「腰が・・・冷えるな・・・」


その日は寝るまで悩み続ける女性陣であった。




公都が見えて来た。

カルドンや証明部位をラドニウスの荷台に移す。

そのラドニウスを見て気が付いた。


「あれ、こいつって確か・・・」

「そうだよ!野衾の時の子だよ!今頃気が付いたの?」

「そっか、そうだったのか」

「ブオオォォ」

「また世話になったねぇ」

「ブオォ」

「今回も荷物一杯よろしくね!」

「ブオォ!」

「はいはい、分かってますよ!野菜ですよね、野菜」

「ブウゥゥ」

「いてて・・・はいはい、高級野菜ね」

「ブォ」

「何だかんだ言って通じ合ってるじゃない」




門衛は野衾の時以上に驚いていた。

ウリク商会を目指す。


「おやおやマルコさん。今日はどういった御用でしょう」

「オランドさん。今日は商会の倉庫をお貸しいただけないかと思いまして」

「倉庫?」

「えぇ」

「置く物はその荷台に?」

「えぇ。ただ大きいので以前の倉庫よりも大きい所が有ればと思いまして。無ければ他を当たってみますが」

「えぇ。以前から御使い頂いている倉庫よりも大きな倉庫はありますよ。少し離れた場所にですが」

「では、お願い出来ますか」

「承知しました。中身を拝見しても?」

「どうぞどうぞ」

「では失礼します・・・!?」

「よしよし。もう少し待っててねぇ」

「ブオォ」

「マルコさん少しお話が」

「歩きながらにしませんか」

「・・・分かりました。御案内致しますので御一緒にどうぞ」

「分かりました」


僕とオランドさんを先頭に一行は倉庫へ向かう。


「マルコさん」

「はい」

「商人の世界は難しいのですよ」

「でしょうね」

「相手の懐具合や人間関係、家族の好みまで調べての折衝や接待」

「お察ししますよ」

「ただあなたとの取引はそういった物が無くストレスが無い。こう言っては何ですが、やり易い相手だと思っています」

「複雑なのは嫌いなんですよ、単純に考えてます」

「冒険者は最初はそうなんですよ、しかし大金が絡むと・・・」

「でしょうね」

「ズバリお聞きします。条件は?」

「彼女ら3人の《縫製》《皮革》《薬学》の習得補助です」

「御安い御用です。他には」

「契約を交わしていただけませんか」

「どのような?」

「僕達の情報を他言しない、という」

「そ、それは・・・商人としては・・・」

「あ、いえ。ある1点のみの情報に対してです」

「1点のみの情報・・・でしたら」

「誰にも言わない、勿論エウベルトさんにも」

「・・・少し考えさせて頂けますか」

「どうぞ、ちなみにお聞きしても?」

「旦那様を裏切るような内容では・・・」

「僕達の情報、秘密を話すんですよ。それがエウベルトさんに損害を与えるとは思いませんが」

「うーむ」

「より大きな商機の逸失、という程度の事でしたら話は終わりです。信義の問題ですから」

「信義・・・重ねて御聞きしますが当方に損害を与えるような・・・」

「喋ったらあなたの命を狙う、という程度のものです」

「ゴクリ・・・」

「その程度の秘密、と捉えてください」

「バレればあなた達の命に関わる、という事ですか」

「仰る通り」

「・・・分かりました。誓いましょう」

「結構。では倉庫で交わしましょう」

「はい」


倉庫に入り荷台からカルドンを降ろす様子を見ながら応接室に向かう。


「では契約書を作成します」

「お願いします。情報の欄は空けておいてください。僕が書き込みます」

「承知しました」


オランドさんが契約内容を書き込んでいき、お互いに署名をする。

それから空欄に収納袋と書き込んだ。


「!?」

「こっ、これは!・・・なるほど、そういう事でしたか」

「そういう事でした」

「それで・・・バリスタも・・・」

「えぇ。カルドン戦では大活躍でしたよ」

「はっはっは、それはそれは」

「おっと。これも他言無用ですよ」

「はっはっは。勿論ですとも」

「目立ちたくないのでね」

「えぇ、そうでしょうとも。正直我が商会もいまだ持っていないのですよ」

「ほぅ」

「ここ数年の商会ですからね。中規模ですし。しかしなるほど、命に関わりますなぁ。特に冒険者だと奪い合いに」

「ただでさえ綺麗な女性陣なのに収納袋を持ってると知られると、ねぇ」

「えぇえぇ、そうですな。いや!分かりました!旦那様にも御話しは致しませんとも」

「エウベルトさんを信用していないという事じゃなく、知っている人間を最小限にしたいんですよ」

「えぇえぇ、私への信頼を裏切る事はないでしょう」

「お願いします」

「それで、マルコさん」

「えぇ」

「他に条件は?」

「条件?」

「カルドンを卸す条件ですよ」

「その2つですね」

「・・・それだけですか?」

「えぇ」

「他言無用の契約はあなた方の秘密という、いわば交換条件でしょう?」

「命の価値を持つ契約を交わす、それが重要なのです」

「・・・なるほど。分かりました」

「それで、証明部位と魔石は直ぐに渡していただきたいのですよ」

「なるほど、ギルドへの報告ですね」

「はい」

「承知しました。少々お待ちください」


オランドさんは部屋を出て行った。

部下に指示を出したのだろう、戻って来た。


「スキルの習得の方は何時からにします?」

「僕等はこれから少し忙しくなりそうなので、また声を掛けます」

「承知しました。では何時でも声を掛けてください」

「はい、よろしくお願いします」


証明部位と魔石を受け取るまでしばし談笑する。


「カルドンは素材としてどうなんですか?」

「肉は美味、牙や骨も高価ですが何といっても頭の脂肪でしょう」

「あぁ、やっぱり」

「えぇ。衝撃吸収材としてかなりのものです」

「それで防具のマジックアイテムを作る事は可能ですか?」

「マジックアイテム?え、えぇ。上位種ですから魔力が高いので大丈夫ですよ」

「盾を作ってください」

「盾?」

「セラナの盾です」

「!?」

「い、いや!私は今ので十分だが」

「セラナ~」

「う、うぅ」

「なるほど、衝撃吸収用の盾ですか。でもそうすると金属も魔力の高い物にしませんと」

「えぇ、お願いします。デザインはまた後日お知らせします」

「分かりました。では脂肪は買い取らず取り置きしておきましょう」

「あ、いえ。買い取ってもらって構いませんよ」

「え、しかし」

「最初に売るって言いましたからね」

「・・・そうですか、分かりました、ではその様に」

「えぇ、あ、そうだ。脂肪の油って何かに使います?」

「油ですか?いえ、特には・・・」

「でしたらそれも取りおいてください、買い取ります」

「あ、しかしその程度でしたら無料で構いませんよ、使いませんし」

「そうですか、ではお願いしますね」

「はい、承知しました」


証明部位と魔石が運ばれて来たので倉庫を後にする。

オランドさんも商会館へ1度戻るらしい。

一緒に来た道を歩く。

ふと、近くの建物が目に入った。

人気が全くない。


「あそこ、倉庫街なのに人気が無いですね」

「え、あ、あぁ。ラグリ商会ですね。うちとも取引が有るのですよ」

「ほぉ」

「ただ会長やエウベルト様とティンゲンさんの3人しか詳しい内容は分からないのです」

「へぇ。オランドさんと僕達みたいな関係って事ですかね」

「はっはっは。そうでしょうなぁ」


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