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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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⑨-28-217

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僕達は猪を殺しつつ森の北西を進んでいた。


「いたな。バカでかい魔力だぞ」

「いよいよね」

「すーはーすーはー」

「大丈夫よ、マヌイ。カズヒコさんだもの」

「うん」

「・・・」

「カルドンはヒトの味を占めている。俺達を見たら必ず襲って来る」

『了解!』

「サーヤとケセラはバリスタの準備」

「「了解」」

「ミキとマヌイは2人の護衛だ」

「「了解」」

「俺は《罠》を張る」

「罠?通用するかしら?」

「昨夜窯でワイアーを作った」

「ワイアー!?」

「金属のロープだ」

「へー」

「ふー」

「カズヒコ、大丈夫か。震えてるぞ」

「武者震いだよ」




俺は1本の巨木を見つけて《罠》を《隠蔽》して張った。

その少し離れた所にバリスタを設置している2人を見つける。

他の2人も周囲を警戒していた。

カルドンらしき魔力に向かう。

俺が囮だ。

うまく誘導しなければいけない。

失敗したら逃げるようには言ってある。大丈夫だ。

《魔力検知》の射程に入った。

カルドンを藪越しに視る。

結構遠くからだからデカさが把握出来ないが・・・

なるほど。猪だ。

頭に瘤のようなものが有る。

あれが脂肪の塊なのだろう。

たしかにあれでブッ飛ばされたら敵わんな。

でっかいゴム弾を食らうようなものか。

よーし、上手く誘導しなければ。

後退しつつ誘うんだ。


「やーい!お前の母ちゃんでーべーそー!」

「ブキイィィィ!」


よし!釣れた!

親を馬鹿にされたら怒り出すのは洋の東西、異世界を問わず同じ様だ。

このまま後退しつつ・・・はやっ!?

ジグザグに逃げてるせいもありアッという間に間を詰められた。

間に合わん!

一旦ここでやり過ごそう。

俺は木の裏に隠れた。

木越しにカルドンを視る。

カルドンは速度を緩めずそのまま向かって来る。

隠れてる木の直ぐ向こうだ。

カルドンは木を避け・・・ない!?

このまま突っ込むだと!?


ドドドドドドドドドッ

バキィィ


すんでの所で飛び退いて躱した。


カルドンはそのまま走って行った。

俺が居た所には切り株、いや折り株があった。


「・・・マジか」


脂肪の塊で自身への衝撃も吸収したのだろうか。

カルドンが向こうで方向転換をしている。

俺はカルドンに向かって走った。


「ブキィィィ!」


カルドンも走り出す。

しかし走り出した直後なので速度に乗っていない。

ぶつかる直前で斜め前に飛び退く。

受け身を取りつつ体勢を立て直しそのまま走り出した。


「ブッキイィィィ!」


怒ったのか!?

2度も躱されてイラついたのだろうか。

幸いこの辺は勾配が激しいから直線的な動きは速度が乗りにくい。

ここは上り坂だ速度を緩めざるを得ま・・・

そっ、そのまま突っ込んでくるだとぉ!?

俺は坂の頂上から体を投げ出して飛び出した直後っ、


「ブオオォォォ!」


坂を発射台の様にしてカルドンが俺の背後から彼方へ飛んで行った。


ダアァァンダアァァンドザアァァァ


飛んで行った先の木々を体で薙ぎ払いながら体をバタつかせている。

起きようと藻掻いているようだ。

そういえばこの辺りは見たこと有るぞ。

《罠》を張った所に近い筈だ。

向こうでミキが手をある方向に指しているのが見えた。

その先に行けと言う事だろう。

直ぐに起き上がって指している方へ走る。

肩越しに振り返る。

起き上がったばかりのようだ。

目が合った・・・と思う。


「ブモオオォォォ!」


やはり合ってたらしい。

視線を戻しがむしゃらに走る。

走る先に巨木が見えた。

バリスタ射撃地点は・・・あそこら辺か。

俺は立ち止まって振り返る。


「ふー」

「プギイィィィ!」


ドドドドドドドドドッ


覚悟を決めるとかそんなもんじゃねぇ、

最早やるしかない!

と、


ドゥオッ


カルドンの横っ腹に鉄槍が突き刺さる。

その衝撃で体がブレて突撃方向がズレた。

しかしギリギリ俺に当たるか当たらないかの位置。

しかも俺の前には突き立った鉄槍がリンボーダンスのバーよろしく迫って来る。

既に走行猪線からズレてあの脂肪の塊には当たらないだろうが、

このままでは鉄槍にブチ当たる。

衝突直前、腕をカルドンの横っ面にブチ当て《受け流し》、

《カウンター》発動、

《カウンター》の力でカルドンをいなすも勿論相手は動くはずもない。

しかしその反動で俺はブッ飛ばされ鉄槍を躱す。

カルドンはそのまま巨木の横を走っていくが、

刺さった鉄槍が巨木に当たりテコの原理で傷口を広げる。


「プギャアァァァ!」


大量の出血に叫ぶカルドン。

更に、


ドタアァァン


巨木を通り過ぎる時にくくり《罠》に掛かっていたカルドンは、

ビイィンと張られたワイヤーを引き千切れず反動で倒れる。

そこに矢が飛んで来て腹に刺さっていく。


「ブアァァ!」


斬りかかろうかと一瞬考えたが、あの牙に突き上げられる事を想像して止めた。

バリスタと弓に仕留めてもらおう。

最悪、鉄槍に雷だ。

考えてる内にも矢が突き刺さっていく。

やはり弓は連射性が高いな。

おっ、体毛に弾かれたぞ、マヌイだな。ふふふ、まだまだだな。

カルドンはようやく立ち上がった。

しかしかなり弱っている様子。

しかしその視線は俺を掴んで離さない。

俺しか見えていないようだ。

猪突猛進極まれり。

ここまで来ると好感が持てる。

俺が引導を渡してやる、来い!


「ブオオアアァァァ!」


カルドンが走って来る。

さっきまでの勢いは無い。

俺は《受け流し》て《カウンター》で吹っ飛んで躱す。


ビイィィン


俺は巨木の両横にくくり《罠》を張っていた、

残りの《罠》を踏んで、ワイヤーを張った反動で倒れるカルドン。

倒れて動けなくなった腹に、


ドゥオッ


鉄槍が突き刺さる。


「ブゥゴオオォォォ!」


大量の出血だ。

倒れて上を向いてる側面には最初の鉄槍が刺さっていない。

恐らく倒れた時に下敷きにして槍は抜けたが傷口が更に広がったのだろう。

更に腹に矢が突き刺さる。

ヨロヨロとしながらも起き上がろうとするカルドン。

踏ん張っている後ろ足の膝・・・足首裏を斬りつける。


ガクッ


もう走れないだろう。


「ブルアァァァ!」


ドゥオッ


更に鉄槍が腹に刺さって地面に倒れ伏し動けなくなった。

俺は近づいて目を突き刺した。


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