⑨-27-216
⑨-27-216
野営地には向かわず村の近くで待機している。
日も暮れ始めたので村では外に出る者もいない。
テントは無理でもストーブを出して温まっていた。
「どう?」
「食事中らしいな」
「分かるのか?」
「各家に炊煙が立っているだろう」
「あぁ、なるほど」
「どこかに集まるようなら何かの相談事をするかもしれん。そこに行く」
「分かったわ」
やがて完全に日が暮れ、人が外に出てきたのを感知した。
「集まりだしたようだ。行って来る」
「分かるのか!?」
「しー!静かに」
「す、すまない」
夜の村には見張りもいない。
簡単に潜入出来た。
1番人が集まっている建物に向かう。
「くっそう!あの野郎ブッ殺してやる!」
「ぎゃははは!沼に落とされたもんな」
「てめぇに殺せるのかよぉ!」
「やってやらぁ!あの野郎!」
「男はカルドンに食われっちまうかもしれねぇぜ」
「女は逃げて欲しいなぁ」
「逃げて来ても俺達が食うんだけどな」
『ぎゃははは!』
「俺はあのデカい胸のエルフだなぁ」
「俺も」
「俺も」
「あんなにデカいのは、そうそうお目にかかれねぇぜ!」
「ホントだよな!」
「あんまりデカいのもなぁ。俺はグラマーなヒト族だな!」
「俺も」
「俺も」
「俺はスレンダーな奴だなぁ」
「俺は獣人だ」
「俺はどいつでもいいやぁ」
「おめぇは何でも良いんだもんな」
「あぁ、早く犯りてぇぜ」
「俺達を脅しやがった女を犯るのは考えただけで勃っちまうぜ」
「こいつ、ホントに勃ってるぜ!」
『ぎゃははははは!』
「金も持ってそうだもんな」
「馬車で来るんだからな。期待出来るだろう」
「しかし良く11匹も仕留められたな」
「そうだな。もう村周辺にはいねぇと思ってたが」
「あと9匹。このまま終わるって・・・無いよな?」
『うーん』
「村長?」
「仮に終わったとしてもまた依頼を出せば良かろう」
「さっすが村長!」
「そうだな。しばらく経ってからまた出しゃぁいい」
「しかしそれだと脅された恨みを晴らせねぇぜ」
『うーん』
「おめぇは5人相手に勝てるのかよぉ」
「・・・無理だな!」
『ぎゃははははは!』
「村総出でも無理じゃね?」
「あぁ。男の方は後ろからのを避けてたぜ」
「あの野郎!ブッ殺してやる」
「おめぇハジくなよ!おめぇだけじゃなく俺らぁまで殺されちまうよ」
「そうそう。生きてりゃまたおこぼれに与れるってもんだぜ」
「そうそう」
「おまえら分かってると思うがワシが1番だからな!」
「分かってますよ、村長」
「あんたが思いついたんだ、分かってますよ」
「それなら良いが。隠し場所は大丈夫だろうな」
「えぇ、勿論ですぜ」
「絶ってぇ思いつかねぇ所に隠してますから」
「まさかラドニウスの足元に有るとは思うめぇ」
「役人が来てもその役人も厩舎を使う」
「使ってる間は馬が蓋をしてくれてるってぇ寸法だ」
「馬を出す時は帰る時。そん時にゃぁ探してなんていねぇってな」
「一応デコイで沼にガラクタ沈めてるし」
「あー!早く犯りてぇなぁー!」
俺はダッシュで厩舎に向かう。
ラドニウスが居る。
まだ起きてるようだな。
その足元を視てみる・・・
なるほど。
何かスペースが有る様だ。
マジックアイテムでも置いてあれば視えるんだがな、無いようだ。
(ラドニウス、ちょっとどいてくれないか)
「ブオォ」
(ちょ、ちょっとだけ。ちょっと、ちょ、あいててて)
「ブウウゥ」
(これは駄目だ。獣人のマヌイか《馬術》のケセラか・・・全員呼ぶか)
俺はダッシュでみんなの元に向かう。
「お待たせ」
「カズ兄ぃ!」
「カズヒコさん!」
「カズヒコ!」
「で、どうだったの?」
「最悪の展開だ」
『はぁ~』
「とりあえず来てくれ」
「えっ!?大丈夫?」
「今ならな」
全員で厩舎に向かう。
(ここに冒険者の遺品が有るのね)
(あぁ、恐らくな)
(どうするの?)
(ギルドカードが有れば証拠になる)
⦅なるほど⦆
(マヌイかケセラ、ラドニウスを退かせられないか)
(2人でやったら?)
(お、おぉ。そうだな。頼む)
(うん!)
(分かった)
ケセラが轡を取ってマヌイが気を静める。
「ブフゥ」
(何で俺の言う事は聞かないんだろ)
(変な事考えてるからだよ)
(いや、別に(早くしなさいよ!)はーい)
藁をどかして蓋を見つける。
重そうな蓋だ。
ラドニウスの体重にも耐えてたもんな。
しかし蓋の隅が1ヶ所窪んでおり取っ手が畳まれている。
取っ手にロープを結んで引っ張って蓋を開けた。
ランタンを絞って辺りに光が漏れないようにする。
穴の中を照らした。
(冒険者の装備や道具ね。決まりだわ)
(ブッ殺してやります!)
(待て待て。証拠品だけを持って行く)
ギルドカードを探して数枚を取りだした。
(全部を取りださないの?)
(全部無いと怪しまれて場所を変えられるかもしれん)
(なるほど)
(魔導ペンを出してくれ)
(どうするの)
(置いていく)
(どうして?)
(後で見つけ易くする為だ)
(なるほどね)
(良し。元に戻そう)
⦅了解⦆
元に戻してラドニウスも戻す。
(番を頼むよ)
「ブウゥ」
(最高級野菜を買ってやろう)
「ブオオォォォ」
(良し。取引成立だな)
「ブオ」
(大人しくしてるんだよ)
「ブォ」
(よしよし。行くぞ)
僕達は野営地に向かった。
遅くなった食事をしつつ、村人達の会話を伝える。
「ブッ殺してやります!」
「あやつらめぇ~ぐぬぬぬ」
「1番人気はケセラだったな。やっぱ要因は胸の大きさがデカいね。あっ、デカいってのは胸じゃなくて要因がって事で、あっ、いや、胸もなんだけど「うるせぇー!」いてぇ!?」
「どうしてくれよう~」
「2番はサーヤ君だな。グラマーさが要因だった」
「ブッッッッッッッッッ殺してやります!」
「菊池君とマヌイは同点かな。菊池君はスレンダーでお姉さんっぽい所が、マヌイは獣人好きの票が入ってました」
「「ブッ殺す!」」
「カズヒコさんは胸の大きい女性が好みなんですか!?」
「サーヤ君」
「はい」
「何を言ってるんだ!」
「カズヒコ様・・・」
「そんな事当り前だろう!」
「えぇ!?」
「世の男が巨乳好きなのは当たり前だぞ!むしろ貧乳好きって言ってる奴は女の目を気にして得点稼ぎに言って「オラァ!」いってぇ!?」
「みんな!世の中の男は2種類しか居ないのよ」
「「「2種類しか?」」」
「えぇ、そう。2種類だけ」
「その2種類とは?」
「上から舐める様に見る男か、下から舐める様に見る男かのどちらかよ」
「どっちも舐める様に見てんじゃん!?」
「そうよ!男ってそんなもん!」
「えぇっ!?」
「確かにな!」
「ちなみに僕は両方だ「じゃかまっしーわっ!」あぁぁ!」
「ふうぅ。それで。これからどうするの」
「ぐふぅ・・・はい、あいつ等は依頼が達成された場合そのまま僕等を見逃して、ほとぼりが冷めてまたやるつもりの様です」
「20匹狩っても大丈夫って事か」
「はい」
「じゃぁ、このままあいつ等を見逃すの?」
「いえ、それだとみなさんの気が済まないと思いますので」
「そうね!」
「うん!」
「そうですわ!」
「そうだ!」
「依頼は達成して公都に帰ってギルドに報告。ギルドか国が調査に乗り出して村人が捕まるっていうのはどうでしょうか」
『・・・』
「罪は?」
「冒険者を複数殺してますから死罪でしょう」
「森で死体を見つけたって言うんじゃない?」
「報告していない時点で確信犯です。追及は必至です」
『・・・』
「良いんじゃないかしら」
「そうだね」
「私の手で罰を下したいですが罪が世に知られるのは良いですわ!」
「うむ!恐らく公都を引き回されて公開処刑だろう。良いと思う!」
「それで。カルドンはどうするの?」
「退治しようと思う」
『!?』
「上位種だぞ!?」
「カルドンを避けて依頼の20匹殺す事は可能だと思う。だが国が調査を始めるのに時間が掛かったりした場合、もし僕等の後に来る冒険者がいたらどうだろうか」
『・・・』
「村人に殺された冒険者もいただろうがカルドンに殺された者もいただろう」
『・・・』
「村の為に依頼を受けてやって来た冒険者を・・・これ以上犠牲にしたくない」
「手は有るの?」
「勿論だ。無ければ言わないよ」
「そうだね!」
「えぇ!カズヒコさんですもの!」
「バリスタが有る」
『!?』
「早速使う!?」
「まぁ、でも大きいんでしょ?バリスタくらいないとねぇ」
「バリスタはサーヤ君とケセラの2人で運用する」
「しかし私は盾役だぞ!」
「足跡見たろ。あんなの防げねぇよ」
「む、むぅ」
「僕が囮をやる。射撃はサーヤ君、君だ」
「・・・はい!」




