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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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⑨-26-215

⑨-26-215




村内に宿を用意したと言う村長の言を固辞して森の中で野営をしていた。


「皆すまなかった。私が依頼を受けようと言ったばかりに不快な思いをさせてしまった」

「はっはっは。気にするなよ」

「しかし」

「そうよ。あんなの普通よ」

「普通じゃ無いと思うけど、前にも有ったのは確かだね」

「大丈夫ですよ」

「村人があんなだとは」

「まぁ、今までの冒険者が依頼を放って居なくなったらしいから、そのせいだろう」

「地も有るでしょうけどね」

「厭らしい目で見てたよねぇ」

「えぇ。突っかかって来たらブッ殺してやりますわ!」

「許可も取ったしね」

「まぁ、さっさと猪殺して依頼を終わらそうぜ」

「そうね」




翌日。

野営道具を全部片づけて収納し猪狩りに出発した。

狩りの結果、今日は7匹と数が少ない。


「これ、村の周辺はもう居ないんじゃないか?」

「えぇ。そうよね」

「やっぱり冒険者達がある程度間引いてたんじゃないかな」

「私もそう思うわ」

「確かに少ないな」

「とりあえず、村に持って行くか」




村に狩った猪を卸す。

村長のサインと証明部位、魔石をもらう。


「もう村の周辺には居ないと思うぞ」

「奥から来るんだ」

「奥?」

「あぁ、北西の奥からな」

「分かった。明日は北西を進んでみる」

「あぁ、頼んだ」


その日も鍛冶をこなして休んだ。

日課のようになっている。

燃料の木の枝などはそこら中に転がっている。

森に入ったら拾っておこう。


翌日は北西に向かう。


「地面に落ちていた枝と木の上の枯れた枝は分けてくれよ」

「何故だ?」

「地面に落ちていた枝は水分を含んで燃えにくいんだ」

「ほー」

「冬だと霜が降りるだろう」

「なるほど」

「夏でも地面からの水分を含むんだ」

「ほほー」

「だから焚火に当てて乾か・・・」

「どうした?」

「足跡だ」

『でかっ!?』

「えっ、猪?」

「鹿かもしれん。しかしどっちにしろかなり大きい」

「ディッキーディアと比べると?」

「比べ物にならんな」

「ちょ、どうする!?」

「足跡を追う」

「大丈夫?」

「今の所はね」

「・・・そ、そうか。そうね。分かったわ」

「大丈夫なのか?」

「カズ兄ぃが大丈夫って言ってる内は大丈夫だよ」

「そうか、信頼されてるんだな」

「僕だと良いが」

「ん?」

「いや・・・こっちだ」


勾配のある獣道を足跡を探して歩いて行く。


「猪だな」

「分かるの?」

「2本の蹄が有るのはさっきと同じだ」

「えぇ」

「その後ろに副蹄が2つ有る。鹿じゃない」

「へぇー」

「この大きさだと・・・軽トラ以上だな」

「ウソでしょっ!?」

「「「けいとら?」」」

「・・・高さが僕くらいって事だ」

「「「ウソでしょ!?」」」

「カルドンだ!」

「ケセラ?」

「猪の上位種!カルドンだ!」

「・・・マジか」

「上位種かぁ」

「またですか」

「付近には居ないのよね?」

「あぁ、大丈夫だ・・・岩になんかなってなければな」

「岩?」

「トロールみたいにね」

「あぁ、なるほどな。ならないはずだぞ」

「サーヤ君、図鑑をマヌイに」

「はい」

「え~っと・・・カルドン、猪の魔物の上位種、大きな物はラドニウスを超える」

『マジで!?』

「え~っと・・・力が強く走る速度も速い。頭に脂肪の塊が有り衝撃を吸収する」

「追突用の衝撃緩和か」

「え~っと・・・背中の毛は硬く狙うなら腹、だって」

「冒険者が居なくなったっていう説明がついたな」

『!?』

「カルドン・・・か」

「あぁ、恐らくな」

「村に知らせないと」

「こういう場合どうなるの?仮に上位種倒しても1匹分?」

「あの村人なら言いそうだな」

「・・・」

「どうされました?」

「ん?あ、いや、ちょっと気になってな」

「何が?」

「・・・今日の成果は?」

「4匹です」

「よし、今日は帰ろう」

「もう?」

「あぁ、気になる事を確かめに行く」

「分かったわ」

「うん」

「はい」

「了解だ」




「今日は4匹か」

「あぁ。奥に進んだがあまり居なかったな」

「もっと奥に居るんだよ」

「そうか」

「あぁ、頼んだよ」

「あぁ。所で」

「ん?」

「以前の冒険者達だがどう居なくなったんだ?北西の森に行って居なくなったのか、朝起きたら村から居なくなっていたのか」


ガタンッ


奥で解体している若い男が物を落としたようだ。


「何やってる!」

「す、すまねぇ」

「ったく!」

「ほ、北西の森に行ってそのまま居なくなったんだ」

「そうか」


奥の男達がチラチラこっちを見ている。


「証明部位と魔石を早くしてくれないか」

「あ、あぁ。すまん。おい!早くしろ!」

「あ、あぁ!分かった!」


証明部位と魔石、サインを受け取る。


「じゃぁ、またな」

「あ、あぁ。よろしくな」


村を出て行った。




「確認って?」


野営地への道すがら。


「済んだよ」

「で?」

「最初に会った時の村人の態度だ」

「村人の態度?」

「あぁ。僕達が気に入らない風だったが」

「そうだったよね」

「しかし帰ろうとしたら引き留められた」

「はい」

「気に入らなければそのまま帰らせても良かったんじゃないか」

「ん~。冒険者が居なくなってたから困ってたんじゃないかな?」

「どうしても帰らせたくない感じだった」

「猪を討伐して欲しいからだろう?」

「先に何組かのパーティが来ていた。だから猪も数が少なくなっていた」

「そうだな。冒険者がある程度狩ってたんだろう」

「カズヒコの索敵でも2日で11匹だもんね」

「村人、特に男達の目つきだ」

「悪かったよねー」

「気持ち悪いですわ」

「嫌いな冒険者を見る目じゃなく・・・メスを狙うオスの目だった」

『・・・』

「村長に聞いたら冒険者達は北西に行ったまま居なくなったと言っていた」

「そうね」

「1人も村には帰っていない」

「うん」

「全員カルドンに殺られたか、そのまま逃げたか、或いは」

「あるいは?」

「もし上位種に遭遇して逃げた後どうする?」

「村に知らせるね」

「あっ」

「どうした?」

「もし村に帰っていたら?」

「上位種は知られて討伐依頼になっていただろう?」

「なっていないという事は?」

「?うーん」

「村人が黙っている?」

「!?何の為に?」

「僕達は荷物を収納袋に入れている」

「あぁ」

「収納袋を持っていない冒険者は?」

「宿に置いて・・・まさか!?」

「知らせに帰った冒険者を村人が殺してるって事?」

「その可能性も・・・ある」

『・・・』

「カズ兄ぃが、冒険者が居なくなった状況を聞いた時に物を落とした人いたよね」

「そうね」

「カズヒコさんの問いに反応して落としたのだとしたら」

「その後の目つきも、今思うと隠し事がバレないか不安そうな感じだったわね」

「・・・むぅ」

「どうします?」

「最悪を想定して行動する」

「つまり村人が犯人と仮定して行動するって事ね」

「あぁ」

「具体的にはどうするの?」

「今夜村に忍び込んで様子を探ってみる」

「何か準備してるかもしれないわね」

「そうしましょう」

「いや、僕1人で行く。君達は野営地で待っててくれ」

「はぁ?何言ってんの、一緒に行くわよ」

「え」

「そうだよ」

「そうですよ」

「うむ」

「いや、潜入は君達無理だろ」

「カズヒコも無理だろう?」

『・・・』

「いや、僕の方が経験が有る。君達は全く無いだろう」

「じゃぁ、こうしましょう」

「ん?」

「カズヒコが1人で潜入。私達は村から離れた位置で退路を確保」

「うん、そうしよう」

「そうしましょう」

「私も一緒に潜入した方が」

「ケセラは私達の盾でしょ」

「う、うむ」

「はぁ~、分かった。それでいこう」

『了解!』



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