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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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⑨-23-212

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それから数日はケセラとの連携を高める練習に費やした。

勿論、逃走の練習も怠らない。

その間、野衾戦でボコボコになった大楯を直しておいた。

当分使わないだろうが、いざ使う時になって十分な性能を発揮してもらいたい。


そんな中鍛冶のカルトから連絡が有った。

移動用の窯が出来たと言う。

喜び勇んで会いに行く。


「いよぅ!」

「ご無沙汰です」

「ようやく納得いくもんが作れたぜ」

「拝見します」

「あぁ、こっちだ」


カルトに案内された所に置かれていたのは収納袋にギリギリ入る窯だった。


「素晴らしいです!」

「そうかそうか!」

「普通に使えるんですか!?」

「あたぼうよ!単純に通常の窯の小型版と思やぁいい」

「凄い・・・」

「移動させる時はその荷台に載せな。荷台はオマケだ」

「ありがとうございます!」

「こちらこそだ。久しぶりに熱中出来る仕事をくれたんだ」

「以前作っていただいた物は、野営で活躍していますよ」

「そうかいそうかい。使ってくれてるんだな!」

「えぇ。良い物を作っていただきました」

「はっはっは。また面白れぇもん頼むぜ」

「分かりました。また依頼させていただきます」

「あぁ。よろしくな。あとな」

「えぇ」

「ちっと小型化するのに手間がかかっちまってな」

「そうでしょうとも。仰ってください」

「20万ほどに・・・な」

「ルーラ君」

「はい」

「おぉ!流石だな!」

「いえ、一流の仕事に対する当然の額ですよ」

「そうかそうか!はっはっは」




カルトは上機嫌で僕達を見送った。

僕も上機嫌で宿に帰る。


「ひゃーっほー!」

「はしゃいじゃって、まぁ」

「そんなに嬉しいんだ」

「燃料はウリク商会から安く手に入りますし」

「安い物だから纏め買いで値引きしてくれたしね」

「上得意だからね、私達」

「うむ、そうだな」

「それで何を作るんですか?」

「19人の騎士の装備をインゴッドにするんじゃない?」

「でもチェイン部分は良いとしてアーマーの方は窯に入らないぞ」

「いや、入らないのは体型に沿ってるからだ。潰せば入るだろう」

「そうだね」

「サーヤ君」

「はい」

「あいつの出番だ」

「!・・・分かりました!あいつですね」

「あ、あいつとは?」


宿と交渉して裏庭の使っていない物置を借りる。

そこに窯を用意し燃料を投入、熱くなる間にプレートメイルを潰す。


「サーヤ君、重ハンマーを」

「はい!」

「!?でっか!」

「久しぶりね」

「1ヶ月以上振りかなぁ」

「サーヤ君」

「はい」

「アーマーの正面からじゃなく横から、湾曲してるのをそのまま畳む感じで」

「了解です」

「やっちゃってください」

「分っかりましたー!えい!」


思いっきり振りかぶってに叩きつける。


グシャッ


『おぉー』

「畳んだわね」

「ぺっちゃんこだね」

「私としては少し悲しい気持でもある」

「着てたしね」

「よーし。どんどん潰しちゃって!」

「了解です!」

「で、インゴッドにしていくの?」

「あぁ。当分は鍛冶に慣れないといけないからな。インゴッド作りに精を出すよ」

「じゃぁ、私達は部屋に居るからね」

「あぁ」

「サーヤも終わったらいらっしゃい」

「はーいっ!」


グシャッ




それからは日中は街外に訓練と魔石狩りに出かけ、夕方は窯と格闘する日々を送った。

鍛冶はカルトに相談しつつプレートメイル数個を残してインゴッドにした頃にようやく慣れてきたのだった。

そこにウリク商会から待望の知らせが届く。


「お待たせ致しました。マルコさん」

「ありがとうございます。オランドさん」


ウリク商会の倉庫でバリスタと対面していた。


「おっきいねぇ!」

「ホントね!」

「大きいですが分解して移動出来ますので設置も楽ですよ」

「弾は?」

「はい。矢、槍、鉄球、それに類似する物に対応しています」

「素晴らしい!」

「何よりで御座います」

「早速持ち帰ろう」

「宿迄は私共の馬車でお送り致します」

「ありがとうございます」

「いえいえ。弾も幾らか用意致しておりますので試してみて下さい」

「重ね重ね、礼を言います」

「エウベルト様にもお伝え致します」

「今日も?」

「えぇ。多忙な方ですので」

「そうですか。では折を見てまた」

「はい」


宿から街外の森に移動する。

先ず土台を設置。

土台の上に射撃装置を載せる。


「射撃装置は狙いを付ける為にある程度自由に動かすことが出来る」

「へぇ~」

「土台が有るから射撃も安定、精度は高いぞ」

「凄いわね」

「射撃装置もある程度の範囲を狙えるから運用度は高い」

「何か船の機銃みたいね」

「きじゅう?」

「あ、何でもないわ」

「じゃぁ、サーヤ君、マヌイ、ハンドルを回してみてくれ」

「はい!」

「はーい!」

「「ううぅ」」


カチカチカチカチカチ


「重そうね」

「重い~」

「マヌイは辛そうだな」

「サーヤもね」

「重・・・ハンマー・・・程では・・・ないですが」


カチン


「よし。じゃぁ鉄槍を装填する。がんばったマヌイに発射してもらおう」

「えっ、いいの?」

「あぁ。潰して平たくしたプレートメイルを木に巻き付けてある。狙ってみろ」

「うん!」

「狙ったらマヌイのタイミングで撃って良いぞ」

「・・・せい!」


ドシュッ

ガンッ


全員でプレートメイルを確認しに行く。


「貫通は無理のようだな」

「でも凄い凹んでるね」

「あぁ。これは着てても相当なダメージだと思うぞ」

「そうか?」

「体の内部にもダメージが伝わるからな」

「じゃぁ騎士にも有効だな」

「あぁ、そう思う」

「じゃぁもう1回。次はサーヤ君が撃ってみよう」

「はい」


カチカチカチカチカチ

カチン


「・・・いきます」


ドシュッ

ガウンッ


「あれ」

「これ・・・」

「先っぽもう少しで貫通しそうじゃない?」

「うーん」

「やっぱ《弓術》適用されてるんじゃないかなぁ!」

「うーむ。騎士としては複雑だな」

「もう1回。こんどはサーヤ君とマヌイが装填して菊池君が撃ってみよう」

『はーい』


カチカチカチカチカチ

カチン


「・・・いくわよ!」


ドシュッ

ガウンッ


『・・・』

「・・・貫通したな」

「き、騎士として・・・」

「ミキ姉ぇが《弓術》レベル高いから?」

「多分な。矢の速さも少し変わって速くなったような気がしたが」

「えぇ」

「魔力的なものかもな」

「・・・なるほど。スキルも魔力を使うから、か」

「これで騎士にも有利になるね!」

「いや、貫通は無理だろう」

「え!?どうして?」

「騎士もスキルを持ってるからだ」

『あっ』

「そっかー」

「防御系持ってるわよね」

「うむ。そうだな」

「じゃぁ、どうするの?」

「鉄球が有る。実験してみよう。また菊池君が撃ってくれ」


カチカチカチカチカチ

カチン


「・・・いくわよ!」


ドシュッ

グワンッ

ドゴッ

バリバリバリ

ドサァ


『!?』

「木まで吹っ飛んだぞ!?」

「金属は衝撃が伝わり易いからな・・・」

「にしても!」

「凄い威力ですわ!」

「騎士にはこれで良いんじゃない!?」

「そうだな。槍で貫通しなくても鉄球で金的狙えば死ぬだろう」

『・・・』

「どうした?」

「いや、別に・・・」

「頭でも良いんじゃない?」

「む、そうだな。でも金的なら少々外れてもどこかしら当たるぞ」

「そうだけどさ」

「まぁ、その辺はサーヤ君に任せるよ。是非ものにしてくれ」

「はい!」

「よし。3人は弓の連携練習をしてくれ。僕とサーヤ君はバリスタの練習をする」

「「「はーい」」」

「やった!」


その日森の中から衝撃音が断続的に響いていたという。


ドサァ


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― 新着の感想 ―
[気になる点] インゴット(ingot)を、何か所もインゴッドと表記しているのは、単なる誤記なのか、それとも原語を知らずに誤認しているのか?
2022/03/15 03:04 退会済み
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