②-04-21
②-04-21
翌日も先ずはゴブリンから狩り始めた。
3匹、4匹のグループを狩った。
4匹目には雷を撃ち込んで対処出来たので昨日と同じ戦法で当分大丈夫だろう。
「あとはまた犬と幼虫にしよう」
「分かりました。これだけでプラスですもんね」
菊池君もホクホクである。
ガウウウゥ
「先輩!」
「かなりの数だな!木に登ろう」
魔犬の群れに出くわしてしまった。
「俺が土台になる。僕の掌に体重を乗せるんだ」
「は、はい!」
中腰になり手を組んで菊池君の足を乗せる。
そのまま持ち上げ菊池君は枝によじ登っていった。
俺もその後を登っていったが・・・。
「結構いますね」
「10匹はいるな」
犬たちは何匹か幹にすがって吠えている。
その周りの犬たちも思い思い吠えていた。
「ど、どうします?」
「とりあえず登っては来れないようだ。対策を考えようじゃないか」
流石に10匹にはビビったが顔に出しては菊池君を不安にさせるだけだろう。
ビビってはいるが対策を考えることで冷静さを取り戻そうと考えた。
「菊池君!」
「は、はい!」
「まず数を減らそう。近くの狙えそうな奴から仕留めてくれ」
「わ、分かりました」
「いや、ちょっと待ってくれ」
「どどど、どーしたんです?」
「風魔法って他者から見えにくいんだったな」
「私は見えるから分かりませんけど・・・先輩見にくかったんです?」
「あぁ。じゃぁ一番遠くの奴に風魔法を撃ってみてくれ」
「分かりました!」
「~~~~~~~~~~《風刃》!」
ザシュッ
「ギャワンッ!」
「いいぞ、菊池君!ただ一撃では仕留め切れないようだ」
「続けますか?」
「君は魔法で足を狙ってくれ。動けなくなったところを俺がクロスボウで頭を狙う」
「わっかりましたー!」
それからは一方的だった。
遠くの味方からやられていった為、幹にすがっていた犬たちは気付けば自分たち4匹しかいないことに気付いて怯んだ。
「逃がさん!」
網を放って2匹ほどを捕らえた。
そのまま俺は1匹の頭上から飛び降り様に剣を振り脳天を割る。
もう1匹は俺に飛び掛かってくるが、
「《雷撃》!」
口から血を吐いて死ぬ。
残る2匹はまだ網と格闘中のようだ。
「~~~~~~~~~~《雷撃》!」
「~~~~~~~~~~《雷撃》!」
無事魔犬10匹を討伐出来たのだった。
「やりましたね!先輩!10匹に勝ちましたよ!」
「あぁ、結構しんどかったな」
「しかも危なげなく。いやぁー、網も活躍しましたし順調ですね私達!」
「でも今のは木が有ったから良かったが平地だと危なかったぞ」
「うーん。それもそうですね。平地の対策を考えときます?」
「2人しかいないんじゃ逃げの一手だな」
「ですかー。せめて詠唱が短くなればマシなんですけどね~」
「まぁ今のところは、平地で遭遇したら森に逃げ込むってところか」
「網も時間稼ぎに有効でしたね」
「細いロープで微妙に大きい網目だから引っ掛かってたな」
「重りも付いてて外しづらそうでしたし」
「ゴブリンなんかの人型だと外せるんだろうが獣なんかにはいい感じだったね」
「問題は嵩張るところですか」
「今は魔物の素材をバッグに入れたりしてないが、そうなってくると厳しいな」
「まぁ、当分は強くなるために今のモンスター討伐ルーティーンでいいんじゃないですか。それだと嵩張らないし」
「そうだね。今ので1900エナか・・・過去最高稼いだぞ!」
「やったー!」
「うまいもんでも食べに行くか」
「宿代は食事込みだから勿体ないですよ。休みの日に行きましょう」
「ふっ、そうだな。じゃぁ少し疲れたし、早いけど帰るか」
「そうしますかー!」
それから数日は1日2000エナ以上を安定して稼げるようになった。
「オメェら凄ぇじゃねぇか!2人で2000エナ超えるってよ!」
「そうなんですか?」
「2人共Gランカーでこの稼ぎはそうそういねぇぞ。あ、そらギルドカード」
「「ありがとうございます!」」
「あとで本館に行ってみな」
「何です?」
「ランクアップだよ」
「ランクアップ!」
「Eランクのゴブリンも狩ってるからな、上がるのも早くなる」
「なるほど」
お金を受け取り納品館を出て菊池君と相談をする。
「ランクアップか~。どうしようか」
「ん~、上がってもメリットがさほど・・・というか無いですよね、今の私達には」
「そうなんだよな。依頼はランク関係無く受けられるし。名誉・・・くらい?」
「ちょっと納品館のおっちゃんに聞いてみますか」
「ランクアップのメリット?」
「はい。何があるのかなって」
「そーだなー。確かに依頼はランク関係なく受けられるが。例えば護衛依頼だと依頼主から断られる可能性が高いな」
「あっ、なるほど」
「同じ様に討伐・調査・採集も。ほぼ全部だな」
「討伐もですか」
「確かにギルドとしちゃ討伐失敗して死のうが自己責任で関係無いが、依頼失敗ってなるから依頼主に対する信頼というか面子というか。そーゆーのもあって低ランクには斡旋しねぇのよ」
「誰でも受けられるっていうのは・・・」
「規則的にな。他で有名だった高ランカーが何かの理由でこの街ではGランクから始めるってなったら、まぁ斡旋するわな」
「なるほど~。要は高い報酬のチャンスが有るってことですね」
「そーゆーこった」
「「ありがとうございました」」
「どうしようか、菊池君」
「ん~、今でもお金は稼げてますしね~」
「もっと贅沢したいとか思わないのかい」
「前世だったら幾らでも使い道が有ったんでしょうけど、この世界だと・・・」
「そうだな。まず衣食住か。嗜好となるとギャンブル・旅行・・・前世と変わらんな」
「ジャンルは一緒かも知れませんけど深さと広さが桁違いですよ」
「あと老後か」
「一番重要ー!年金や保険も無いし」
「しかしそれだと今のうちに稼いだ方がいいじゃない?」
「でも高いとそれだけ危険度が・・・」
「まぁな。今のペースでもあと20年くらいなら出来そうだしな」
「そうですよ。今は2000エナくらいですけど、もっと強くなったらゴブリンは倍くらい倒せるんじゃないですか?そうすると4000エナも夢じゃない!」
「確かにな、しかも1日でだ。しかしなぁ・・・」
「どうしたんですか?」
「戦争リスクが高いんだよな、この世界」
「あぁ!」
「10年くらい前にも世界戦争があったんだろう?小国同士の戦争もあるだろうし。国だけじゃなく魔物のスタンピードもあるらしいし。兎に角争いが多い印象なんだよな」
「安定した生活・・・安穏とした老後・・・」
「ちょっと宿に帰ってじっくりと考えるかい?」
「はい!」
部屋に入って一息入れる。
「考えたんだが」
「はい」
「我々はこの世界について全くの無知だ。その状態で将来設計をしても無意味で危険だと思うんだ」
「ふむふむ」
「まず世界を周ってみるってのはどうだろう」
「せ、世界一周旅行!?」
「いや、そんな大層なもんじゃないが。安定した生活と老後なら大国に住んだ方がいいだろうし。大国でも経済的か軍事的かとかお国柄もあるだろうし」
「水が合わないって言いますしね」
「そうそう。だから全ての国を周るって訳じゃなくある程度この世界を理解できるように周るってのはどうだろう」
「うん。いいんじゃないですか!」
「でだ。世界中を周るって言っても治安が悪い所もあるだろうし、当然魔物もいる。だから当面強くなるのが大前提なわけで」
「なるほど。まぁ結局今の生活を当分やっていくと」
「それが良いのかなと」
「良いんじゃないでしょうか」
「それでランクアップだが」
「あぁ!そう言えばそれで悩んでたんでしたっけ」
「そーなんだよ。そっから壮大に膨れていったな」
「世界一周しましたからね」
「依頼別で考えると、採集で強くなれるかというと」
「ちょっと想像出来ませんね。途中で魔物を倒すのが前提になるでしょうし」
「そうだ、同様に調査も。護衛だと魔物が出ずに無事に終わるパターンもある、賊を相手にするかも知れん。何より依頼主に魔法を見られる可能性が高い」
「確かに。となると討伐・・・」
「誰かが失敗したか何かしら被害が出たから討伐依頼になったんだと思う。それを狙うのはハイリスクだと思うんだ」
「そうなると依頼は受けずに今のまま・・・でも依頼を受けなきゃいいんじゃないです?だとランクは上げておいても構わないのでは?」
「もし緊急依頼による強制参加の義務が発生した場合、高ランカーほど危険な任務を負う気がするんだよ」
「!?それはありますね!止めましょう!」
「危険を冒して急に強くなるよりも徐々に強くなった方がいいのかなと」
「ランク上げ止めましょう!今のままいきましょう」
「とりあえず高ランカーはどんなスキル構成か気になるな」
「明日ギルド本館行って聞いてみます?パーティメンバー募集の掲示板も有ったように思いますし」
「メンバー募集?」
「スキルとか載ってるんじゃないですか?」
「なるほど!」




