⑨-16-205
⑨-16-205
翌日、朝にまたカルトの下にやって来た。
「おう!どうだった?」
「素晴らしい出来でした。流石ですね」
「はっはっは。まぁ、悪い気はしねぇな。で、今日は何を作るんだ?」
「図面を用意しました」
「どら・・・ほぅ。昨日より大きく複雑だな」
「はい、どうでしょう」
「これだとほぼ金属だな。また耐火か?」
「えぇ、その通りです。更にこの部分の素材は断熱が望ましいんですけど」
「大丈夫だ。あと木材も必要だな」
「えぇ、それは別注しようかと」
「いや、大丈夫だ。うちの職人にやらせよう。任せてくれ」
「よろしくお願いします」
今回のは昨日のよりも大きく複雑だったので魔力も時間も結構掛かった。
しかしそれでも昼には終わったのでまた5人で工房外に運び出し収納袋に入れる。
今回は3万エナ掛かった。
その足でケセラの装備を受け取りに行く。
プレートアーマーだから上着ではなくマントを買った。
冬用のマントだ。
「よーし。じゃぁ先ずは外に行ってそれぞれの装備の調子をみよう」
『了解!』
マヌイとサーヤ君は長弓ではなく森でも使い易い弓だ。
《弓術》のレベルが高いサーヤ君は魔犬相手に良く当てていた。
しかし《弓術》を習得したばかりのマヌイは苦戦していた。
「難しいなぁ」
「もっと《弓術》のレベル上げてから使った方が良いか?」
「そうだね。その方が早いと思う」
「じゃぁ、ルーラ君はその弓を使って、クロスボウをアヤに渡してやってくれ」
「はい。アタッチメントグリップを交換するだけですから簡単ですね」
「そうだね」
「アヤにその大きさのクロスボウはきつくないか?」
「コッキングロープが有るから大丈夫だよ」
「コッキングロープ?」
「力なくても大丈夫なんだ、やってみる?」
「いいのか?・・・おぉ!軽いな!」
「でしょ」
「これなら大丈夫だな」
「セラナも、調子はどうだ」
「うむ。やはり着慣れているし高価なだけあって調子は良い」
「そうか、しかし・・・」
「どうしたのだ」
「軽装の僕等からすると動き難そうなんだよな」
「それは仕方が無い。プレートアーマーなのだ。可動域が狭くなるのは仕方無い」
「そっか。金属だもんね」
「特に肩とか、動き難そうね」
「振りかぶるのも難しいだろう。セラナは防御に徹してくれ。彼女達が倒すから」
「分かった。惹き付けに徹する」
「よし。じゃぁ、セラナも加わった事だしこれから逃げる練習をするぞ」
「逃げる練習?」
「どうした?」
「戦う練習じゃなく逃げる練習?」
「生き残るのが最優先だ」
「いや、分かるが。だったら敵を減らす練習をすべきでは?」
「それは戦ってる内に身に付く。逃げる事こそ練習がいるんだ」
「うーむ」
「先ず逃げる時は余裕があるうちに決める。その場合、敵を消耗させつつ逃走する」
「余裕が無い時は?」
「全力で逃げる。それしかない」
「うーむ。それはそうだが」
「逃げる時はセラナが最後尾だ。惹き付けろ」
「分かった」
「アヤとルーラ君がその援護」
「「了解」」
「ジーナ君は後退しつつ退路を確保」
「了解」
「確保したら合図、セラナは後退、2人はその援護をしつつ後退。後はその繰り返しだ」
「「「「了解」」」」
「マルコはどうするんだ?」
「僕は相手を撹乱する。僕がいない時はジーナがリーダーだ」
「分かった」
「じゃぁ、練習しよう」
森の中で逃走の練習をする。
何度も繰り返し意見をすり合わせた。
「よーし、練習はこれくらいにしよう。ここらで今日作ったロケットストーブを試そう」
みんな汗だくだ。
俺やサーヤ君はヘルメットから湯気が流れ出ている。
「ご飯作るの?」
「いや、風呂だ」
「「「「風呂!?」」」」
「あぁ」
午前に造った物を収納袋から出して組み上げていく。
「これ浴槽だったんだ」
「木材ってこれだったのね」
「広い!足伸ばせるじゃん!」
「あぁ」
30分ほどで沸いた。
「じゃぁ、順番に入って感想を話し合ってくれ。僕は楽器でも作ってるよ」
「分かったわ!」
「わーい!」
女性陣は各々風呂を楽しんでるようだ。
俺も入ろうと思ったが止めた。
こういうのは女性陣の意見を参考にした方が良いだろう。
風呂に入り終えて街に帰る。
「どうだった?」
「最高だよ!」
「アヤは風呂が好きだな」
「うん!足を伸ばせるのが良いね!」
「修正点は?」
「うーん。今は特に思いつかないなぁ」
「君等は?」
「私も特に無いわ」
「私も」
「そもそもジーナの《クリーンアップ》で綺麗だからな。特には無い」
「便利だよねー」
「あぁ。汚れや臭いは精神的なものもあるからな。軍でも欲しいくらいだ」
「よーし。じゃぁ後はオプションだな」
「まだ作るの!?」
「あぁ。まだまだ終わらんよ!」
「変な所にエネルギーを使わないでよね」
「男ってそんなもんだぞ、ジーナ」
街に帰り工房へ赴いてカルトの予約を取る。
宿に帰って各自思い思い過ごす。
翌日カルトに会って今度は土管を作って貰う。
街外へ出て狩りが終わってストーブを設置、土管をストーブに組む。
「椅子?」
「あぁ」
「こんな長くていいの?」
「パーティ用に5人を考えたが一応の為に8人分を考えて作った」
「いや、そーじゃなくて」
「ストーブの排熱を利用して土管、ベンチを温める」
「はー、ベンチそのものを温めるんだ」
「あぁ」
しばらく時間が経つがあまり温かくならない。
「あんまりだね」
「そうね」
「うーん。どうやら土管のハメ込み部分が甘かったのかな。もう少し・・・ブツブツ」
「凝り性だな」
「えぇ。お風呂だけでも良いと思うのにね」
「お風呂は凄く良いねー!」
「アヤのお気に入りね」
「うん」
「多分、アヤが狭いって言ってたから、ずっと考えてたんだと思うわ」
「あ、悪い事しちゃったかな」
「良いんじゃない?本人も冒険者を辞めても食べていけるようにって言ってたし」
「スキルの習得は難しいでしょうけどね」
「「「あははは」」」
「?」
「セラナも。何かあったら遠慮せず言うのよ。何とかしてくれるわ」
「常にパーティメンバーの事を考えているのだな」
「そういう性分なのよ」
「ブツブツ・・・そういえば土管だけなら宿の裏庭で十分だな・・・ブツブツ」
その後、何度か試行錯誤を繰り返しベンチも完成した。
女性陣からも好評だ。
そして本命の移動用窯を発注した。
移動用で小型の窯に流石のカルトも面食らっていたが、
「面白そうだ!」
乗り気になっている。
流石に初めてでもあり試しつつ作るので多少時間が掛かるようで、俺が見ている訳にもいかず完全に任せる事になった。
その間に結構減ったお金を稼ごうという事になった。
宿で夕食を摂りながら何の依頼を受けるか5人で相談をしていると宿員から言伝を受ける。
バリスタの件で明日にでも商会に来て欲しいそうだ。




