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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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⑨-12-201

⑨-12-201




前を行く4台の馬車の後を尾いて行く。

流石首都、馬車が通るメインストリートは広く、尚且つ石畳だ。

道路に面する家屋が軒を連ね、独自の壁色を誇っている。

しかし高さは皆一定以上は無い。

高さ制限でもされているようだ。


かなり歩いてウリク商会に着いた。

建物は物を売ってる風はない。

倉庫なのだろう。

周りの建物も同じような造りだ。倉庫街か。

馬車はそのまま建物に入って行く。


「さて。護衛の方々、お疲れさまでした、応接室にどうぞ」


エウベルトに案内されて応接室に入る。

先の護衛に依頼票だろう皮紙にサインをして渡し、狼の証明部位を渡す交渉をしたあと護衛は礼を言われ部屋を後にする。


「さて、マルコさん。お待たせしました」

「いえ」

「それでお礼の件なのですが」

「はい、要望があります」

「お聞きしましょう」

「バリスタを・・・売ってもらえませんかね」

「バリスタ、というと兵器の?」

「えぇ」

「・・・」


エウベルトの顔が変わる。


「なんでまたそんな物を」

「用心の為に」

「用心?」

「あの狼の大きさにビックリしましてね。聞くとあれよりもっと大きなのも存在するとか」

「えぇ。グレイ・ウルフですね」

「えぇ。基本弓主体の攻撃なのでね、僕等のパーティは」

「と言ってもバリスタとは・・・」

「扱ってませんか?」

「えぇ。冒険者向けの物を揃えていますがバリスタは流石に・・・」

「そうですか」

「あなた方は北からいらしたので?」

(なるほど。北部に兵器を流したくないんだろう。冒険者用であれば兎も角、攻城兵器であれば疑われても当然か)

「いえ、南からです。ソルスキアから」

「そうですか」

「そうだ。ソルスキア王国ハグデル領領都バレンダルのビグレット商会はご存じですか?」

「えぇ。名前だけなら。うちと取引は無いですが」

「あ~、ルーラ君。タリルコルさんの封書を頼む」

「え、あ、はい。私ルーラです。ちょっと待って下さいね」


サーヤ君が収納袋をいれたバッグから封書を取りだして渡す。


「これはビグレット商会会長から会長の友人への紹介状です」

「お見せ頂いても?勿論封は開けません」

「どうぞ」


エウベルトは部下に頷いた。

部下も頷き返し壁際の台に置かれていた”物”を持ってきてテーブルに置いた。

エウベルトは封書を受け取り魔力を込める。

封蝋が魔力を受けて光りだす。


(なるほど!封蝋にも魔力サインと同じ効果が有るのか)

(ですね)


エウベルトは封書を”物”にかざす。


「なるほど」

「会長をご存じで?」

「いえ」

「え、では何故?」

「・・・公都や近隣国で指名手配になってる詐欺師等の犯罪者や牢獄からの脱走犯は、国から個人特定用の魔力サインが出回るのです」

「ほほー。出回るという事は偽造も出来るのですか」

「いえ、出回るのは魔導水晶という”物”で、この魔導水晶に対象の魔力をコピーさせます。読み取る事しか出来ず中の魔力を使う事は不可能なので偽造は無理です。ここムルキアは公都ですので真っ先に水晶が出回るのです」

「なるほど。ちなみに魔導水晶というのはダンジョン産ですか」

「その通りです。主に先ほど言った犯罪者の照会や王侯貴族や商会の継承などに使われますね。水晶だけではなくこの台座に組み込み使用します。かなり高価ですね」

「なるほど」

「それに該当が無いという事でこの紹介状はある程度の信憑性が有ると思われます」

「なるほど、とりあえず犯罪者では無いと。だがそれだと」

「えぇ。本当にビグレット商会の関係者だとは証明されません」

「ふーむ」

「ただ紹介先が結構な方なのである程度信用は出来ますね」

「結構な方?」

「御存じないのですか?」

「えぇ、まぁ」

「・・・そうですか。ルンバキアの東隣、塩の湖を擁するソルトレイク王国の商人です」

「塩の湖!?」

「えぇ、海亀が海から上がり、大地を旅し、その塩湖に入るのです」

「海亀!?」

「塩湖といっても海程に塩分が有る訳ではありません。ほぼ水です。しかし海亀が海に帰る湖という事で塩湖と言われています」

「ははー」


エウベルトさんは微妙な顔をしている。


「・・・宜しいでしょう。バリスタの件、扱ってる商人に当たってみます」

「ホントですかっ!?」

「えぇ。ソルトレイクやバレンダルの商人と関係が深い冒険者と誼を通じておくのが良いと判断しました」

「それほど深い訳では無いんですがね」

「はっはっは。紹介状を書かれるほどですのに?」

「ちょーっと護衛っぽい?事をしただけで」

「私達と同様という事ですね。尚更安心ですな」

「いえいえ。それではよろしくお願い出来ますか」

「承りました。しかし物が物ですので、少々お時間を頂く事に」

「勿論です。その辺はお任せしますので」

「分かりました。それで狼の件ですが」

「あぁ、そうですね」

「宜しければ買取致しますが、勿論証明部位は御渡し致します」

「魔石も頂けますか、素材はお売りします」

「承知しました。他に何か」

「宿を紹介してくれませんか。風呂の有る」

「お安い御用です。系列の宿を格安で手配致します」

「いえ、通常料金で構いません」

「え、しかしそれでは」

「バリスタが大変そうなので、それ以上は甘えられませんから」

「そうですか、痛み入ります。ではその様に」

「はい」

「では、このオランドが宿まで御案内致します。オランド、後は頼みましたよ」

「はい、旦那様」

「では、皆さん。申し訳ありませんがこれで失礼致します」

「いえ、葬送の準備も有るでしょうしお気遣いなく」

「重ね重ね痛み入ります。では」


エウベルトはそう言って部屋から出て行った。


「皆さん、これからはこのオランドが御案内致しますので宜しくお願い致します」

「こちらこそよろしくお願いします」


オランドに伴われ建物を出て行く。

聞くと倉庫街らしく、宿のある区画に行くらしい。


「御要望等をお聞きしても?」

「手頃な価格で風呂付、1人用と4人用の2部屋をお願い出来ますか」

「分かりました。御任せ下さい」

「武器も扱ってるんですね」

「はい。私共は規模や格は公都では中規模の商会ですが品物には自信が御座いまして、冒険者には贔屓にしてもらっています」

「なるほど。また紹介してください。明日にでも行ってみます」

「分かりました。そういえば明日の御予定を伺っても?」

「観光・・・かな?」

「そうね」

「うん」

「そうしましょう」

「では中央広場に行かれるのですね」

「中央広場?何か有るんですか?」

「中央広場には」

「あ~、オランドさん。そこは行ってからのお楽しみという事にしてくれないか」

「・・・なるほど。そういう訳ですか、承知しました」

「な、何が有るんだ!?」

「何でしょう?」

「この者達はムルキアの予備知識が無くてね」

「はっはっは。なるほどなるほど」

「何だー!」




やがて宿に着きオランドが手続きを済ませる。


「では今日の所はこれで。何か有りましたら宿の者に申し付け下さい」

「ありがとうございました」

「では」


オランドが去って宿の者が案内して部屋に入る。

1人用はケセラだ。


「いいのか?」

「まだ1人の時間が必要だろう。ゆっくりしてくれ」

「あ、あぁ」

「1人だと怖いのか?」

「そ、そんな事はない!」

「何なら僕が添い寝「ドゴッ」」

「とりあえず荷物を置いてご飯を食べましょう」

「う、うん」


部屋を検めてから集まって下に降りて一緒に食事を摂る。


「じゃぁ、明日は観光ね」

「あぁ、ゆっくりしようぜ」

「そうだねー」

「ケセラさんの情報はどうします?」

「街中で噂されてないか気にするくらいでいいだろう。積極的に聞くと逆に疑問に思われるだろうし」

「そうだな。何故そんな事を聞くのかと思われるな」

「聞くとしたら国境付近の噂って感じで聞くかな」

「そうね」

「武器屋にも行くんでしょ?」

「そうだね」

「サーヤの弓とケセラのプレートメイルね」

「よろしく頼む」

「矢も補充しないとな」

「結構買ったからまだ余裕有るよ」

「僕は心配性なんだよ」

「分かった」

「しかしソルトレイク王国か」

「知らなかったのも驚きだが」

「田舎者なんでね」

「海亀だっけ」

「ルーラ君との約束も果たせるな」

「マコ、マルコさん」

「勝手に決めちゃって!」

「いえ、うれしいです」

「名前考えるのも楽しいじゃない、ねぇマヤ」

「うん。ケセラはもう決めたの?」

「いや、まだだ。そうだな、明日冒険者登録するのかな?」

「うーん」

「観光。武器防具屋。明後日かしら?」

「そうだねー」

「公都ですし見る所多そうですしね」

「そうだな。明後日にしよう」

「分かった」


「しかしソルスキアの商人とも繋がりが有ったのだな」

「少しは安心出来たかな」

「あぁ、ありがとう」

「やっぱりバリスタ無いってね」

「結構警戒されてなかった?」

「あぁ。北部から来たんじゃないかって疑われてたな」

「だろうな。北部にバリスタを持って行かれるのを警戒したんだろう」

「なるほどー」

「バリスタ買うって、目立っちゃったんじゃない?」

「まーなー」

「騎士はバリスタなんか買わないんじゃない?」

「そこから足がつく可能性はあるなー」

「そっかー」

「まぁ、何かあったら逃げよう」

『はーい』




「旦那様。戻りました」

「オランドか。どうだった?」

「特に問題無く」

「そうか」

「バリスタとは驚きましたね」

「あぁ。北部の商人かと思ったが」

「冒険者に必要なんでしょうか」

「・・・ソルスキアは盗賊団の被害が大きいそうだ。職人や生産設備に被害があったのかもな。ビグレット商会が購入するのかもしれん」

「紹介状の方は?」

「信用は出来そうだ」

「では?」

「あぁ。バリスタの件、当たってくれ」

「承知しました」

「ソルトレイクに持って行く可能性も有るな」

「海亀の護衛ですかね」

「考えられる。狼も殆どが矢で仕留めていたからな」

「武器屋も紹介して欲しいそうです」

「冒険者だからな。冒険者だが宿代を辞退すると言い、こちらに気を使う程度ではある」

「粗野な者達とは違いますな」

「うむ。金も持っていそうだ」

「色を付けますか」

「あぁ、そうしてやれ」

「承知しました」


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