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HappyHunting♡  作者: 六郎
第9章 轍 (公都ムルキア:マルコ、ジーナ、ルーラ、アヤ)
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僕達も手伝って後始末をしている。

2人の護衛と御者が亡くなっていた。

積んであった食料も地面にぶち撒けられ狼に食べられたが無事なのも有った。

最後尾の馬車を直すのにここで野営する事になった。

護衛が野営の準備をしている中、商員は馬車の修理をしている。

僕達もテントを張っている。

襲撃のショックもあり収納袋を入れた大きなバッグから取りだしても気付かれる事は無かった。


「明日にはムルキアに着きそうだし古そうな食料を消費するか」

「そうね」

「今夜はお風呂無しかー」

「そうだな、しまったな」

「仕方ありませんよ」

「出す訳にはいかないだろうしな」

「しかしデカい狼だったな」

「ホントよね」

「以前戦った狼よりも大きかったですわ」

「そうなんだー」

「あぁ。南部よりも北部の方が大きいのだよ」

「へぇ~」

「もっと北に行くと更に大きいグレイ・ウルフというのがいる」

「まだ大きいの!?」

「うむ」

「寒い地域ほど大きくなるって話を聞いた事が有るよ」

「へ~」

「南の砂漠に行くとラドニウスよりも大きな蠍がいるという話だぞ」

「「「「・・・」」」」

「ほっ、哺乳類の話だし!」


「グレイ・ウルフって寝袋の素材ね」

「グレイ・ウルフの素材を使ってるのか!?高かったろ!」

「えぇ、マジックアイテムだしね」

「にしても30匹くらいいたぞ。多くないか」

「あぁ。群れで狩りを行う」

「あれが普通?」

「まぁ少し多いがな。更に1匹があの大きさだ。狼の魔物はここいらでは脅威だ」

「ベルバキアこぇーな!」




食事を摂っているとエウベルトがやって来た。


「皆さん、改めてこの度はありがとうございました」

「いえ、お悔やみ申し上げます」

「ありがとうございます。それでですね」

「はい」

「馬車は直りそうですので3人の遺体を載せようと思ってます」

「えぇ」

「街で葬送したく思いまして」

「分かります」

「皆さんの狼を載せる事もあり荷台にスペースが無く、御乗り頂く事が出来ない状況でして」

「僕達は元々徒歩ですから構いませんよ」

「はい。それもあり我々も徒歩で向かおうと思っています」

「よろしいのですか?何なら僕達は置いて行ってくれても構いませんが」

「いえいえ。この距離だと早朝に出れば徒歩で1日、夕方には着きますから大丈夫です。それにあなた方にも護衛して頂いた方が安心ですので」

「分かりました」

「では宜しくお願いします」

「こちらこそ。あ、護衛の方を紹介してくれますか、夜番の調整をしたいので」

「分かりました、こちらへどうぞ」


その後、護衛と夜番を調整した。


「30台前半か半ばって所かしら」

「ん?」

「エウベルトさんの歳ですね」

「えぇ」

「番頭って言ってたよ」

「じゃぁ、会長が別にいる訳ね」

「何の話?」

「マヤ、お金を貯めるには稼ぐだけじゃなく出費も抑えるのよ」

「ふーん」

「宿代ですね!」

「ほー」

「あぁ。しかしマーラ君」

「はい」

「今回は3人も死者が出てる。この場合宿代をまけてもらうのは道徳上問題が有る。宿を経営してるか分からんしな」

「なるほど」

「えっ、今更?」

「オホン。では何で礼とするのか」

「はい」

「バリスタだ」

『!?』

「バリスタを手に入れる為に使おう」

「そう言えば今まで入った武器屋にはバリスタなんて物無かったものね」

「当然だろう。主に冒険者相手の店なら置いてるはずがない」

「なるほど!商会の伝手を利用するのですね」

「その通りだ」

「へー」

「ついでにケセラのプレートメイルも当てにしよう」

「む」

「そうしましょう。商会もお金が入る訳だしお互いにとって悪くないしね」

「なるほどねー」




その夜は何事も無く過ぎて翌早朝、僕達は出発した。

先導は護衛に任せ僕等は最後尾についている。

前の襲撃は最後尾が襲われた為であり、襲われた場合僕等が対応している間に隊商はムルキアに向かう為だ。

しかしその懸念も現実になる事も無く夕方になった。

ベルバキア公国公都ムルキアの街壁が見えてくる。


「流石首都、高いな!」

「最も高い所だと20mは有るという話だ」

「に、20m!?」

「あぁ」

「それは凄い!」

「大きいねぇ!」

「あぁ。人口6万人と聞いている」

「凄いねぇ!」

「6万か。あれ、ヴィヴィエントって確か・・・」

「3万人ね」

「ヴィヴィエントとはルボアール王国の?」

「あぁ。知ってるのかい?」

「勿論だ。昔の都だぞ」

「「え?」」

「昔に遷都したのだ」

「そ、そうだったんだ」

「都だった矜持を今でも持っていて、自分達を”ヴィヴィアン”と言ってるらしい」

「そ、そう言えばそんな事言ってた様な・・・」

「そんな気がするわね」

「もう1年前か」

「早いわね」

「だからヴィヴィエントは普通の領都の中でも人口が多いのだ」

「「へー」」

「6万人はアレク3国の中でも最多だ」

『ほほー』

「何より歴代国の首都でもあり、建国王の首都でもあったのだからな」

「ってことはアレク3国の中でも中心的な国なのかい?」

「うむ。何かにつけてな」

「おっと。藪蛇だったかな」

「ふふ、そうでもない。ただ、他2国の人間にはそう感じる人もいるだろうな」


「あ、そうだ」

「何?」

「僕もう名乗っちゃったんだよね」

「エウベルトさんに?」

「そう」

「何て?」

「マルコ」

「「「安易~」」」

「いやいやいや。咄嗟だったからさ」

「まぁ、そうよね」

「ケセラも名前考えときなよ」

「名前か」

「潜伏するんだから当然だろう」

「そうだな。分かった」




やがて街壁も大きく高くなり行列も見えてきだした。

流石歴史ある公都、冬だと言うのに長い行列だ。

僕達は商人用の列に並ぶ。

ウリク商会の護衛という事で列に並んでいる。

一般の列とは違い商人用の列なのだがこれほどの馬車の数を見るのは初めてだ。

門周辺は20mの高さなのだろう、結構な威圧を感じる壁だ。

街壁にも兵士が並んでいる。

当たり前だが兵装は他国と違う。

街壁の兵士は毛皮のようだ。

門衛も女性衛士がいるようだ。安心だな。

ソルスキアと違って門脇の八角塔は無く像も無い。

ベルバキアの紋章旗なのだろう旗がはためいている。

列が進むにつれ門が近づいて来る。

見上げると壁上の兵士と目が合った様でちょっと怖い。

他に見ない兜を被ってるから目立ってるのかな。

それぞれ身体検査も終え、門を越えて直ぐの広場に出た。


「おい!止まらず進め!」


周りの景色を見ていたら門衛に注意された。

この街に限らず門前の広場は活動禁止エリアだ。

商店の出店禁止は勿論、貴族ですらも留まる事を基本許されていない。

いざという時に邪魔になるからだ。

今までの街では多少足を止めても目こぼしされていたがこれほどの人だかりだと危険なのだろう。

なので初めての首都の門を潜った感慨も一瞬で終わり、ウリク商会へ向かう。


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