⑧-22-188
⑧-22-188
翌日。
髭とエルフの店に寄り、品物を受け取る。
効果の検証の為に魔物を殺しに来ていた。
「・・・菊池君」
「・・・えぇ」
「すっごい!100m先の的を魔物射抜いたね!」
「射程も威力も凄いです!」
「《弓術》の影響も?」
「有るわ。誘導的なね。流石に100mは無いけどね。でもLvも上がって範囲も広がってるわ」
「凄いじゃないか・・・スナイパーだな」
「ただ、やっぱり大きいから森では使いにくいわね」
「うん。街道や開けた場所でだな」
「ミキ姉ぇが弓で私とサーヤ姉ぇがクロスボウか。同じ弓でも役割が出来たね」
「そうだね。菊池君は狙撃、一射必殺で、マヌイとサーヤ君は近距離連射か」
「サーヤ姉ぇは単射も持ってるから中距離もイケるしね」
「そうね、マヌイ」
「それで。先輩のヘルメットは?」
「今は効果が分からんだろうが、もうちょっと行動時間が長くなれば・・・」
「「「?」」」
狩りの時間が長くなるにしたがって俺のヘルメットの穴が開いて来た。
「「「おぉ!?」」」
「思った通りだ」
「熱を逃がしてる?」
「その通りだ。しかも排出してる」
「「「へぇ!」」」
「頭から湯気出てるよ!」
「冬ですしね」
「でも火魔法用の放熱じゃないの?」
「僕の魔力を感じてるから僕に合わせてるんだろう」
「「「へぇ~」」」
しばらくすると自動で閉じていく。
「「「へぇー!?」」」
「これは良い。自動で熱を排出してくれるな」
「いいなぁー!」
「サーヤ君も。ハンマーだと汗をかき易いし女性だから髪には良いだろうしな」
「「「!」」」
「わ、私にも付けようかしら」
「うーん・・・付けたい・・・かも」
「どうしたー。次行くぞー」
その日、テストは良好なものに終わった。
街へ帰り、武器屋に寄る。
「おう!弓はどうだった?」
「あぁ。良かったよ。今日はもう少し調整をして欲しい」
「分かった。嬢ちゃん、貸しな」
「えぇ」
「それと」
「ん?まだ何か有るのか?」
「僕の武器も頼もうと思ってな」
「武器、ってぇと使い捨ての・・・?」
「あぁ」
「うーむ」
「嫌なら余所で買う」
「いや!いい。それはお前の考え方だな。分かった」
「あぁ。僕用に作って欲しいのは護拳が有る柄だ」
「柄?」
「あぁ。護拳。ガードを付けて欲しい」
「ふむ?」
「剣が折れても付け替えれるように柄だけを僕用に作ってくれ」
「ガードを付ける理由は?」
「剣が折れてもガードが有れば僕は戦える」
「ふーむ。ナックルで相手の攻撃を受けるって訳か」
「そうだ」
「湾曲にするかい?」
「いや。意図した方向に流したいから直線に近い楕円曲線で頼む」
「ふむ」
「あと、親指も保護出来るようにガードを付けてくれ」
「ふむ」
「剣は折れても武器屋で新しい剣を柄に差せるだろう?」
「あぁ。しかしその分剣は細くなるぜ」
「構わない。剣は少し重くなっても構わないから頑丈にしてくれ」
「分かった」
「剣は剣先1/3に裏刃が欲しい」
「直剣じゃねぇのか」
「あぁ。マチェーテ・・・かな」
「マチェーテ。山刀ねぇ」
「それを左右両手に欲しい」
「ふーむ。何と戦うかは分からんが悪魔と魔女を倒したおまえさんだ、何か有るんだろう。任せときな」
ついでにサーヤ君とマヌイのクロスボウのアタッチメントグリップを依頼した。
彼女達の手にしっくりくるオーダーメイドだ。
またエルフの皮革店に来た。
「「「また?」」」
「あぁ。鰓はもう少しある」
「今度はどこに付けるの?」
「脇だ」
「「「脇!?」」」
「汗を掻き易い。夏には快適になるだろう」
「「「なっ、なるほど!」」」
「サーヤ君も付けるか?」
「はい!」
「これで鰓は無くなるな」
「「う~!」」
「どうした?」
「もう無理って分かると尚更欲しくなるのよね」
「分かるー」
エルフにサーペント装備の脇に悪魔の鰓の装着を頼んでその日は終わった。
悪魔の素材の買取額はまだ受け取っていない。
ギルド価格で受け取るよりも市場に転売してそこから幾らかバックしてくれるらしい。
調査のお詫びや口止め料と言った物だろう。
次の日に武器防具を受け取りテストを兼ね魔物を殺す。
新しいマチェーテは良い感じだ。
ガードで相手を殴ったりも出来る。
2刀で装備はしない。右手だけだ。
両手に持つ時は多勢に追い詰められ彼女達を逃がす時だろう。
そんな時が来ない事を祈る。
クロスボウのアタッチメントグリップも評判は良い。
今までは単なる棒だったが、自分の手に合ったグリップになったから疲れも軽減されるだろう。
俺の予備用の替え刃のマチェーテを作って貰っても良いかもしれない。
左右共有出来るから5本程作って貰うか。
サーペント装備に付けた鰓も冬服の中で風を出している。
夏には活躍してくれるだろう。
そうやって装備を整えて行った。
そろそろか。
この辺で旅立とうと思ったが菊池君によるとフリーエばあさんが会いたいらしい。
悪魔素材で世話になったし顔を見せて別れようと思う。
フリーエばあさんが帰って来るまで魔石を稼いで待つ事にした。
そして。
ギルドの応接室に通される。
昨晩にフリーエさんが帰って来て明日会いたいと言伝を聞いたからだ。
「いやぁ、マコル君達。随分待たせてすまなかった。これが悪魔素材売却代金の200万エナだ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
フリーエばあさんに会うなら一緒にと保留していた金を受け取る。
「200万って凄いね!」
「はっはっは。悪魔は滅多に現れないからね。良い値で売れたよ」
「それは良かったです」
「村の方はどうでした?」
「うむ。やはり村人に殺されておったな」
「・・・子供は」
「残念じゃが・・・」
「・・・そう」
「他の旅人が泊まった家はどうでした?」
「うむ。怪しい所は無かったの。家人も悪魔の気配は無かった」
「そうですか・・・」
「どうやらあの老婆1人で済んだようじゃ」
「では・・・」
「うむ。公国は今後ヨセフの足取りを追うが、難しかろうの」
「他にも悪魔が出没してたりは?」
「うむ。前に1匹出ておったが軍に討伐されておる」
「フリーエ様、その1匹も」
「かも知れんのぉ。さてさて、何が起こっているのやら」
「ルンバキアは怖いです」
「ほっほっほ。そう言えば旅立つそうな」
「悪魔が出る地に長居は無用ですよ」
「マ、マコル君!」
「マコルさん!」
「ヒェッヒェッヒェ。まぁ旅の者にはそうじゃろぅなぁ」
「フ、フリーエ様も」
「大臣の専横で困っている所に悪魔じゃからなぁ」
「・・・今のは聞かなかった事にします」
「フッ、フリーエ様!マコル君、頼むよ!」
「ヒェッヒェッヒェ。隠せるものでもなかろうて。アルビジェのギルドマスターのような者がマスターになれるんじゃからな」
「あれも専横の影響と?」
「じゃろうなぁ」
「フ、フリーエ様。マコル君。今公国は揺れているのだ」
「揺れている?」
「あぁ。先大公が身罷られ、幼い公女様が大公にお就きあそばす予定だが何分幼い。後見として大臣が政務を取り仕切っているのが現状だ」
「ほっほー・・・何故そのような事を僕達に?」
「ヒェッヒェッヒェ」
「こわー」
「ワシと共に公都に来んかえ?」




