⑧-21-187
⑧-21-187
「「「「ど、ど、どーもー」」」」
「こいつ等が悪魔を!?」
「そうだ」
「信じられん・・・」
「魔女も生け捕りにしている」
「なっ、何だって!?」
「内密とは!」
「なっ、なぁおまえ!ワシに悪魔素材を卸すようクエイドに言ってくれんか」
「おまえだぁ?」
「あ、いや、おまえ・・・様」
「冒険者の武器の使い方も知らねぇ奴が冒険者の武器を作るぅ?」
「ぐむ」
「笑わせんなよ」
「ぐぅ」
「あと、あんまり近づくな。髭がうっとおしい」
「うぬぅ」
「悪魔の素材で何作るんだぁ?えぇ?魔女が使う大鍋でも作んのかよ」
「いぎぃ」
「使われねぇ武器作ったって意味ねぇんだよ!けぇれけぇれ!」
「待ってくれ!冒険者に死なれたくねぇんだ!」
「ん?」
「碌に武器の使い方も知らずにただ感覚だけで買って行って死んでいく奴」
「ドキ」
「高い金出して買った武器を持って強くなった気になる奴」
「ドキドキ」
「カッコいいからってだけで選んで悦に入ってる奴」
「やめろー!ピンポイントで抉んなー!」
「戦争じゃぁそんな奴はみんな死んでいくんだ。ワシは武器のせいで死んでほしくないんだ!」
「・・・追い返してちゃ意味ねーだろ」
「・・・武器を持たなければ戦えんだろ」
「お前ん所で買わなくても余所で買うさ」
「うぐ」
「ドワーフって作る事しか分かんねぇんだな!」
「うむむ」
「クエイドさん」
「うん?」
「こいつ、腕は」
「あぁ。それは確かだ」
「追い返さねぇって言うんなら口を利いてやってもいい」
「!?」
「知らねぇんならお前が教えてやりゃいいだろう」
「むぅ。冒険者が素直に聞くか・・・」
「それこそ余計なお世話だろう。聞かねぇんならそいつの責任だ。お前のじゃぁねぇよ」
「・・・」
「うっとおしいって思われようが教えてやれ。余所で買って死ぬ奴が1人でも減るようにな」
「あぁ!分かった。そうしよう!」
「と言う事で、クエイドさん」
「はぁ~。分かったよ。君にも卸そう」
「ありがてぇ!」
「ぐおっ!抱きつくな!髭がぁ!」
「「「ぞわわわ」」」
「しかしなんで鍛冶屋のあんたが悪魔素材を?使うのは《皮革》持ちだろうに」
「武器にも木材や皮革は使う。鉱物との相性もある。生産職は複数の生産スキルを習得するものなんだ」
「へー」
「そうだ!今回の礼に何か武器を作ってやろう。何が良い?」
「うーん。僕は使い捨てだからなぁ」
「またそんな事を!」
「・・・卸さないよ」
「むぐぐ。それは困る」
「そうだなぁ。マリア君のロングボウでも作って貰うか」
「そうね。丁度良いわ」
「よっしゃ!じゃぁウチまで来てくれ!作る前に調節したい」
「あぁ。また寄らせてもらうよ」
「いや。今から行こう」
「は?」
「さっ、行くぞ!」
「ちょ、待てって、ぐうぅ!お前ホントに生産職かよ!」
「鍛冶は金属を扱うからな、力はつえぇのさ。さっ、行くぞ」
「待てって、マーラくーん!助けてくれー!」
「マコルさーん!」
「マコ兄ぃ!どこ行くのよー!」
「は~。すいません、うちのリーダーが」
「ほっほっほ。賑やかなパーティじゃな」
「悪魔眷属を2匹も倒したとは思えませんね」
「ほっほっほ。あぁやってバランスを取っておるんじゃろう」
「「バランス?」」
「リーダーの責任とメンバーの命の重さ、その重圧のな。村を見捨てたのもあのお嬢さんに考えさせる為じゃろう」
「考えさせる?」
「捨てる事の意味をなぁ」
「捨てる意味」
「いつも上手くいくとは限らん。時には辛い決断を下さにゃならん。パーティを守る為に1人のメンバーを犠牲にする、とかなぁ」
「・・・」
「ワシも軍に所属しておるでなぁ。何度か有ったのさぁ」
「フリーエ様」
「ヒェッヒェッヒェ。婆ぁの繰り言さね。軽く聞き流しておきねぇ」
「ありがとうございました」
「ヒェッヒェッヒェ。明日から村に行くから暫く会えん。帰って来たらまた会っておくれな」
「はい。伝えておきます」
「うむうむ。じゃぁまたのうぅ」
「はい」
「おっそいよ!マリア君!」
武器屋のドワーフの工房に居た。
「君のロングボウの為に僕が髭の相手をしてたんだぞ!」
「髭ぇ言うな」
「お待たー」
「それで。悪魔の素材を弓に使えるのかな?」
「あぁ。悪魔の腱を使う」
「ほぅ」
「あの細い身体から繰り出される強烈な一撃はそのしなやかさにある。使えば張力と耐久性が増すだろう」
「なるほど」
「グリップも嬢ちゃん様に調節してやろう」
「じゃぁ、任せるか。いつ頃出来る?」
「明日には出来るよ。弓自体は有りもんだしな。弓の調節だけしていってくれれば良い」
「わかった。じゃぁ、また明日に来るよ」
「あぁ。待ってな!」
「よし!じゃぁ、次はエルフのお姉さんの所だ」
「「「えー」」」
「どうした?」
「何しに?」
「悪魔の鰓を持って行く」
「鰓。そう言えば何に使うの?」
「まだ出来るかどうか分からないから聞きに行くんだ。先ずはギルドに行って鰓だけでも貰って行こう」
ギルドに寄って悪魔の鰓を受け取り、エルフのお姉さんの皮革店に向かった。
「いらっしゃーい」
「どもー。お姉さんいます?」
「はーい、ちょっと待ってねー」
エルフの姉さんが奥から出て来た。
「あら、いらっしゃい。今日はどうしました?」
「今日はある素材が手に入りまして、その使い道でご相談が」
「そうですか。店頭では何ですので奥でお聞きしますわ」
「はい」
奥の部屋に通された。
寝袋の相談をした部屋だ。
「それでどのような素材でしょうか?」
「実は悪魔の素材が手に入りまして」
「まぁ!今噂の!?」
「そうなんですか?」
「えぇ!それでどの部位をお持ちなの!?」
「鰓です」
「鰓!?では火魔法の悪魔だったのね」
「!?」
「鰓持ちは火魔法か雷魔法持ちの悪魔くらいって聞いてますから」
「ほほー」
「雷はあまり居ないって言うし」
「ふむふむ」
「今お持ちなの?」
「えぇ。これです」
「こ、これが悪魔素材・・・」
「ちなみに解呪済です」
「そうでないと出回らないしね・・・流石高い魔力ね・・・」
「死んでいるのに?」
「魔物としてはね。素材としては生きてるのよ。魔力を流せば使えるの」
「なるほど」
「それでこれをどうするのかしら」
「この・・・よいしょと。兜の穴に嵌めて貰えませんかね」
「「「ヘルメットの穴に!?」」」
「あぁ」
「まぁ。面白い兜ね。しかも魔法付与・・・これって・・・」
「お分かりになりますか」
「・・・トロールの骨!?《自然再生》持ち!あなた達って・・・」
「トロール装備の特徴を活かしつつ悪魔の鰓を付け足すことは出来ますか?」
「えぇ。恐らく可能だと思う。剣や防具でも1つの素材で全てを作る訳ではなく、それぞれ寄せ集めて1つにするの。それぞれの相性や特徴を活かしつつね。このトロールと悪魔素材も、お互いが強力な魔物同士だから負けずに共存出来るはずよ」
「魔法付与は鰓にも?」
「えぇ。大丈夫よ」
「それは良かった。ではお願い出来ますか」
「えぇ。明日には出来てると思います」
「まだ鰓素材はあるから誰か作れるが・・・」
「「うーん・・・」」
「私のもお願いします!」
「サーヤ君か、いいのか?悪魔素材だぞ?」
「はい!おそろ・・・同じのが有った方が効果の検証に役立つと思います」
「そうか。それもそうだ。では2つお願いします」
「承りました」
「ではまた明日、お邪魔します」
「寝袋にあれだけの金額を掛ける事と言い、トロールに悪魔・・・見かけ通りじゃないってことかしら?」
「では」