⑧-14-180
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「ば、ばあちゃん。ヤーガばあちゃん。今帰ったよ」
「ブゥゥゥカぁぁぁ遅かっっっっっっっ、、、たじゃないかっ」
「お客さんを連れて来たんだ」
「っきききゃくぅぅぅぅ」
「どーも、おばあさん。先程ぶり」
「わかわかわかわかわかっっっっっ兄ちゃんじゃないかえっ!」
「どーもー」
「おやおやおやおやおやおねっっっっっちゃんもいるじゃーないっ!」
「お、お邪魔してまーす」
「う、手押し車を・・・見たいんだとさ」
「うううぅぅぅばばばば婆婆婆バババァァァ!?」
「ちょーっと、そこの手押し車の中、見せてくださいねー」
俺は壁際にあった手押し車の中を開けようと手を伸ばす。
シュッ
なんだっ!?
慌てて顔を後ろに反らす。
次の瞬間、
見ると顔の横の壁には小刀が突き立っている。
ビイイィィィン
震えて音を鳴らしていた。
また次の瞬間、
俺の顔の横にババアの顔が有った。
「うおっ!?」
ガチン!
慌てて避けた空間に、
歯の噛み鳴らした音が響く。
「ばっ、ばあちゃん!?」
「だぁぁぁぁぁれがぁ婆ぁだぁぁぁぁぁ!!!」
『うわあああ!』
バキバキバキ
ヤーガばあさんの体が大きくなっていく。
手押し車を首を直角に曲げて押して行っていた、
あの小さな体が、
俺よりも高くなっていく。
「う・・・そ。だろ」
「バババ婆婆婆ぁぁぁってのぉぉぉどぅあああれにぃ言ってんだぁぁぁ!!!」
口から牙が生えて来る。
「ままま魔女だぁぁぁ!!」
「な、なんだってー!?」
魔女だと!?
たっ、確かに魔力を視ると悪魔と同じ様な固有魔力だ。
「キエヤァァァー!」
ズガッ
壁に刺さった小刀を力任せに引き抜く。
「わかわかわかわかわか若いヤツのぉぉぉ肉ぅぅぅ」
「決まりだな!」
「ばあちゃん!」
「ブゥゥゥッッッカァァァバアアアァァァカァァァ」
「くっそ!調査だけのはずがっ!」
「先輩!」
「やるしかねぇぞ!」
「肉肉肉肉肉憎らしいぃぃぃ!若さがぁぁぁ欲しいぃぃぃ!!」
俺達は武器を構える。
「待ってくれ!ばあちゃんは!待ってくれー!」
「んな場合か!村長ー!どうすんだよぉ!」
「うあああ!」
「村長ぉー!」
「ブッ叩いて目ぇ覚まさせろぉー!」
「こらー!村長ぉ!」
バシィ
マヌイの一撃!
「ぐあっ!」
「どーすんの!?殺すの殺さないの!?」
「どどどどっちって言ったって!」
「待ってくれペルトォ!」
「こここ殺すなっ!捕まえろ!」
「じゃぁ、お前らがやれよぉ!その契約だろっ!」
「むむむ無理だぁ!ベべべ別に払う!だから捕まえてくれ!」
「クソが!」
「先輩!」
「うおっ」
ヒュウゥゥゥン
小刀の薙ぎ払い。
良い音鳴らすじゃん!
クッソ怖い!
「生きてりゃ良いんだなっ!」
「あぁ!頼む!」
「っち!」
「ベェェェレロレロレロレロレロレロォォォォォ!」
小刀を舐めまわす。
「ひいいい。怖いよぉ!」
「先輩!」
「室内じゃぁ弓は邪魔だ!外出てろ!」
「でも!」
「命令を聞けぇ!」
「「「りょ、了解!」」」
ヒュウゥゥゥン
ヒュウゥゥゥン
凄いスピードだ。
だが力任せに振っている。
故に《見切り》もし易い。
怖さで体が強張っていたが視える事で見えてきた。
扱いは素人。
力だけだ。
魔女が小刀を振りかぶる。
《見切っ》て《受け流す》。
《カウンター》発動。
手首を返すと小刀はどこかに飛んでいく。
そのまま更に手首を返し魔女の右手首を斬り落とす。
ザシュッ
「キィアァァァー」
斬り落とされた痛みに魔女が叫ぶ。
と、
前蹴りが飛んで来る。
「ぬくっ」
腕をクロスに構えて受ける。
ドガアァ
蹴られた勢いで木の窓を打ち破り俺は通りに転がり出た。
「いったぁ・・・」
「先輩!」
「屋根に上がって遠目から弓ぃ構えろ!」
「「「了解!」」」
「ヌガアァァァ!」
ズゴオオォォォ
玄関の戸の壁の高さが低いので頭突きでブチ破って出て来た。
「ダッ、ダイナミック過ぎる」
『きゃあああ!』
付近は大パニックだ。
魔女と言っても属性魔力は視えない。
魔法は無い。
「血血血血血ィィィィィがぁぁぁ足りぃぃぃぃぃんんん!」
「ワライマイタケだ!」
「えっ!?眠りじゃなく?」
「聞き出す事が有る!」
「「「りょ、了解!」」」
3人は別々に家の屋根によじ登り射撃位置につく。
魔女の左手の爪が伸びる。
「ワカイィィィ肉ゥゥゥ」
左手を振りかざし襲い掛かって来た。
バキン
《受け流す》途中でマチェーテが折れてしまった。
そのまま右手首を突き出して魔女の左手を《受け流し》つつ半身を捻り攻撃を躱す。
そのまま《カウンター》で左手を斬り落とす。
が、
折れたマチェーテでは切断まではいかなかった。
しかし骨までは切断出来たようだ。
「キヤアァァァー!」
「今だ!」
ドスドスドス
肩や足に矢が突き刺さる。
「キョアアアァァァ!」
やがて魔女は興奮が冷めていったのか人間の姿に戻っていった。