⑧-03-169
⑧-03-169
「《雷撃》!」
魔力反応は無かった。
だが念の為に撃ち込んだ。
悪魔と聞いたのでビビッて撃ち込んだ。
「殺ったみたいだ」
「「「はぁ~」」」
3人共その場にへたり込む。
網を解き悪魔とやらを観察する。
でかい。
というより細くて長い。
薄暮ではっきり分からないが、緑っぽい体色だ。
目はやはり無い。
代わりに顔の中央に何か捩れた様な痣みたいなものがある。
口が開かれており、中には尖った歯が見える。
髪の毛は無い。
手足が長いのが目立つ。
羽は皮膜というやつか。
手には鋭い爪があった。
喉の周りには鰓みたいなのがある。
触ってみると熱い。
体温の、ではないみたいだ。
「・・・どう?」
菊池君が近づいて来て尋ねる。
顔には疲労の跡が見える。
「うえ~。何これ」
「・・・悪魔、らしいな」
「オーマイゴッシュ」
サーヤ君とマヌイもやって来る。
「た、倒したの?」
「やりましたか?」
「あぁ。殺したよ。マヌイは大丈夫か?」
「うん。逃げる時転んで頭打ったけどヘルメットで大丈夫だった」
「そうか」
「あ、悪魔を?悪魔を殺したの?」
「これが悪魔か」
「醜悪な顔ね」
「悪魔だからね」
「キモイ身体だわ」
「悪魔だからね」
「羽は悪魔みたいね」
「悪魔だからね」
「そう言ってるじゃない」
「こっ、これからどうするの?」
「とりあえず休もう。悪魔は姿勢を伸ばして羽を畳めばこのまま収納袋に入るだろう」
「そうね」
「何を食ってたか確認に行く」
「「「えー!」」」
遺体を確認する。
「人間だ。冒険者だな」
「うわ~。食べられてる~」
「ギルドカードと貴重品は最寄りの街に持って行こう」
「えぇ・・・そうしてあげましょう」
「武器や防具と道具、食料は頂こう。遺体から取るぞ」
「「「うえ~」」」
急いで野営の準備をして食事を摂る。
「あんなの見た後だけど食べられるもんね」
「サーヤ君、マヌイ。悪魔は実在するんだね」
「うん。カズ兄ぃの世界にはいなかったの?」
「えぇ。想像上の魔物ね」
「え~。いいなぁ~」
「今でも倒せたのが信じられませんわ」
「収納袋に入ったって事は死んだって事だよ」
「生き物は入れないからね」
「前世では悪魔は人間が契約して呼ぶんだったな」
「メフィストフェレスだっけ?」
「それはこっちもそうだね」
「「!?」」
「古代にヒト族が召喚したという話です」
「「なんだって!?」」
「それもあって、他の人間はヒト族と仲が悪いんだよ」
「余計な事しやがって、ってか」
「うん」
「そりゃそうよね」
「しかし召喚って事は・・・」
「魔法!?召喚魔法!」
「今は伝わってないよ」
「禁忌ですわ」
「そりゃそうだな」
「でも私達が転生したのって!」
「向こうで死んでるから召喚ってのと少し違わね?」
「うーん」
「古代の悪魔が何で街道なんかに」
「悪魔は増えるんです」
「まっ、まさか人間と?」
「いえ、性交はするらしいんですけど子供は出来ないらしいです」
「血を飲むんだって」
「「!?」」
「悪魔の血を、飲むんだって」
「じゃ、じゃぁ、人間が悪魔になるってのか!?」
「うん」
「はい」
「なんてこった・・・」
「はぁ~」
「そう言えば、先輩」
「ん?」
「悪魔に石ぶつけてましたよね」
「あぁ」
「何で?」
「魔法で飛んでるようだったが」
「そうね」
「避けようとしてたけど避けられなかっただろ」
「「「うん」」」
「空間移動みたいな魔法じゃなく、浮いてるか飛んでる。つまりある程度物理法則に縛られてるのが分かった」
「なるほど。ススッって避ける風じゃなかったもんね」
「それで網を使ったんですね」
「あぁ。魔力を視ると羽に集まっているのが視えた。羽を拘束すればある程度制限出来ると考えた」
「ははーん。羽が魔力を使って飛ぶ器官だったと」
「あぁ。飛ぶスキルにせよ魔法にせよ、羽が無ければ使えないのかもしれない」
「喉に触ってましたよね」
「そういえば鰓みたいなのが有ったわね」
「フシューって言ってたね」
「恐らくラジエーターだ」
「「「ラジエーター?」」」
「放熱装置だ。火魔法使ってたろ」
「えぇ」
「口から発射してたね。あたし達は眼の前で出すけど」
「その為の放熱?」
「あの細い体では耐えられんのかもな」
「いやー、私達、悪魔を殺しちゃったか~」
「経験値良かったんじゃないかしら?」
「だといいが。売れるかね?」
「はい、多分」
「まぁ、今日はもう飯食って風呂入って屁ぇこいて寝ようぜ」
「こかないけどね」
「こかないよ」
「こきませんわ」
風呂も終えて女性陣と別々のテントに入る。
しかし。
「うぅ~寒い~。こっちで寝かせてくれ~」
「良いわよ。入って」
「1人だと寒いよね」
「4人用テントですから、どうぞ」
4人用のテントの中は4人の体温で温かかった。
2日後。
最寄りの街に向け歩いていた。
夕方には街壁が見えて来た。
5m程だろうか。
地方の街にしては高いな。
門衛もソルスキア王国の装備とは違う。
冬だからだろうか。
かなり着込んでいる。
高めの入街税を払い、ルンバキア公国の街アルビジェに入った。
「今日はもう宿に泊まるだけだ」
「そうね。広いお風呂に入りたいわ」
「うん。ゴエモン風呂があったとはいえ、あれ狭いしね」
「そうですね」
風呂のある宿に入り部屋で寛ぐ。
「とりあえず1日泊まろう」
「まとめて泊まらずに?」
「北部に近いからな、先ず様子見だ」
「そうね。それが良いかも」
「満室という訳でもなさそうだから延長はし易いと思うよ」
「じゃぁ、明日から活動を始めるとして、今日はお風呂に入ってゆっくりしましょう」
「美味しい物食べたいですわ」
「あたしもー!」
「美味いもん食って風呂入って屁ぇこいて寝よーぜ」
「「「だからこかねーって」」」