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HappyHunting♡  作者: 六郎
第7章 ライト・マイ・ウェイ (領都バレンダル:アルゴ、マリン、カーラ)
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⑦-30-160

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翌日からトロール捜索が始まった。

討伐隊はレネ嬢、クルトさんがそれぞれ小隊を率いて2小隊16人。

それに補給小隊と僕達を加えての計28人だ。

トロールは日没から活動を始める。

その前に森まで移動する為、朝から出発した。

街への被害を考えて街に近いエリアから捜索していった。

1日目は空振り。

2日目も見つからず野営をする。

と言っても昼夜逆転なので少し調子が狂う。


「村を拠点にすればいいんじゃないかな?」

「マヌイ」

「うん?」

「この国では勝手に村を作るのは違法なんだよ」

「あっ」

「村が見つかるとタリルコルさんにも迷惑が掛かる」

「そ、そうだね」

「そうなのですか?」

「勝手に村を作ったりすれば勝手に領地に住んでるから領主から罰せられる。税金も取れないしね」

「なるほど」

「村人は少しずつ街に戻ってるんだろ?」

「うん。タリルコルさんはそう言ってた」


3日目の夕方。

小隊リーダー同士で相談する。


「どこを探しましょう」

「・・・うーむ」

「以前殲滅したオークの集落周辺はどうでしょう」

「うん?」

「・・・しかしもう魔物に食われて死体は無いだろう」

「はい。しかし60匹居たので」

「・・・その魔物を狙って、か。なるほど」




果たして集落の更に南にその反応は有った。


「レネ様、クルト様。南に気配がします」

「何!?確かか?」

「はい」

「・・・レネ?」

「はい。エチルの察知は信用出来ます」

「・・・よし。南に向かおう」

『はっ』




「ブオオオォォォ!」


木々の向こうから雄叫びがあがる。

ランタンの灯りに気付いてトロールが吠えてやって来る。


「来るぞ!戦闘準備!」

『おう!』

「補給隊は下がって退路を確保!」

『おう!』

「・・・火矢の準備だ!」

『はっ!』

「火ですか」

「・・・そうだ。《自然再生》を遅らせるのに有効だ」

「その間に畳みかけるんですね」

「・・・そういう事だ」

「避けろー!」

「「!?」」


ドガァーン


木が暗闇から飛んで来た。


「あっぶな!」

「先輩!?」


《魔力検知》で視るとその辺りの木を折って投げ付けている。


「木を投げて来てるぞ!」

「こっわ!」

「きゃああぁ!」

「クルト様!」

「・・・何だ!」

「近づきましょう!」

「・・・どうする!?」

「この距離では我々には手も足も出ません!とりあえず近づかなくては!」

「・・・その通りだな!よし近づくぞ!」

「僕が先頭で囮になります!違う角度から進入を!」

「・・・大丈夫か!」

「任せてください!マリン!」

「ここよ!」

「メンバーへの指示は任せる!」

「了解!」

「ご無事で!」

「アル兄ぃ!」


木も魔力を含むため《魔力検知》で視える。

とは言えかなりの怪力、投げ付けて来る木の速さも脅威だが風圧が凄い。

横にして投げ付けるから広範囲攻撃だ。


「うっは!」


ギリギリで避けたら木の破片が散らばってくる。

チョロチョロと目障りな俺に苛立ち集中して狙って来る。

その間に反対方向からレネ隊、クルト隊がやって来た。


「ブアアアァァァ!」


背中に突き刺さった火矢でトロールが吠える。

振り向きざまに抱えている木で周辺を薙ぎ払う。

俺が使える有効そうなスキルは・・・《罠》?相手が大きすぎる。

《殺菌》?魔物に効くのか?効いたとしても2週間後だろう。

《カウンター》?・・・あの木にか?

無理!

唯一、雷魔法なら。

だが見せられない。

・・・詰み?

レネ嬢の火と、

クルトさんがわざわざ来たって事は何かスキルか策があるんだろう。

俺は囮に徹しよう。


「オッラァ!」


その辺に転がる石をぶつける。

的が大きいから外れる事はない。

しかし体に当たっても何のダメージも無いみたいだ。

頭を狙おう。


「ゴアアアァァァ!」


頭を執拗に狙う俺に苛立ちを隠さない。


ブウゥゥゥン


木が薙ぎ払われる。

そこに、


「《ファイアーアロー》!」


バババババッ


一斉に火矢が背中に突き刺さる。

レネ嬢の《火矢》だ。

あんなに数撃てたの!?


「ブオオオォォォ!」


流石のトロールもあれだけの火矢に苦悶の表情を浮かべる。


「《身体強化》!」


レネ嬢が俊足で背中に飛び込み連撃を加える。

辺りにトロールの肉が飛び散る。

削ぎ取っているようだ。

その速さは以前模擬試合をした時以上。

《身体強化》を発動する前、クルトさんと何やら話していたが・・・


「ブルアァァァ!」


削れていく己の肉体に悲鳴を上げる。

その間も俺は顔に向かって石を投げつける。

周りの兵士や彼女達からの矢も刺さっている。

連撃の圧力に押され片膝をつく。


「・・・今だ!押し込め!」

『うおおぉぉ!』


隊士も加わって一斉に攻撃を浴びせる。

槍で突かれ、剣で斬られ。

トロールは身をよじりながら呻き声をあげる。

やがて地面に手を付き頭が下がった。


「・・・頭だ!頭を狙え!」


回り込んだ隊士が次々と頭に槍を向ける。

しかしその間にレネ嬢の連撃は止まっていた。


「くぅ・・・」

「・・・レネでも削りきれんか!」

「ブルアアアァァァ!」

『うわあぁぁ!』


圧力が薄まったトロールは片腕を振り払う。

隊士が距離を取ればその分攻撃は止み、再生が始まる。


「ゴアアァァア!」


再生されつつある腕で木を掴み振り払う。


『うおぉぉ』


再び立ち上がったトロール。

しかし物理的に削り取った肉や傷の再生にエネルギーを使ったせいだろう。

最初の覇気はない。

《魔力検知》で視ても魔力は格段に減っている。

後一押しだ。


「・・・アルゴ!」

「は!」


俺はクルトさんの下に急ぐ。


「・・・もう少しだ!手はあるか!」

「はい!」

「・・・手伝おう!」

「?」

「・・・私は《強化支援》が使える!」

「!?」

「・・・短時間だが対象を1.2倍強くすることが出来る!」

「なんですって!?」

「・・・誰にする!?」

「カーラ!来い!」

「はい!」

「マリンは毒矢!」

「了解!」

「マヌイはサーヤのクロスボウは使えるか!?」

「うん!」

「毒矢だ!」

「分かった!」

「トロールが動きを止めたら口と鼻を水魔法で覆うんだ!」

「え!?」

「毒を自分で舐めちゃ駄目だぞ!」

「ブフー!」


サーヤが俺の下に来た。


「重いハンマーは持ってきたっけ!?」

「はい!」

「それを使う!」

「はい!」

「俺が囮になって注意を逸らす!」

「はい!」

「膝を破壊して頭を下げさせ、頭にトドメだ!」

「はい!」

「危険だぞ!」

「カズ、アルゴさんを信じてます!」

「頼んだ!」

「はい!」

「クルトさん頼みます!」

「・・・分かった!《強化支援》!」


俺はトロールに向かう。


「ゴアアァァァ!」


首・・・は無いか、顎に矢が刺さる。


「ブア!?ブアアァァァ!」


刺さった所が変色している。

毒が効いているようだ。

更に頭付近に俺の投石。

地味過ぎる!

しかし《隠蔽》を掛けた石はトロールに確実に命中している。


「ブルオオオォォォ!」


絶対許さん!

そんな叫びだろう。

叫んだ頭部を水が覆う。

いきなり溺れてパニックになるトロ-ル。


グボッガボッ


手で取ろうとするが水で掴めない。

そこへ、


バキィ!


サーヤ君の重ハンマーの一撃がトロールの左膝に決まる。

ハンマーの形に抉れた膝は骨をも失って体重を支え切れず圧し折れた。


「グアガァァァ!」


いきなり左足を失って地面に倒れ伏す。


「カーラ!来い!」

「はい!」


俺に向かって疾走するサーヤ。

俺は両手を組んで彼女の足裏を支え上空に放り投げる。

空中で反転したサーヤはハンマーを両手で掴み身体を思いっきり反らす。


ツーハンデッドウェポンは一般的に攻撃力が高いがそれを活かすには条件がある。

振りかぶり、いわゆる助走だ。

振りかぶらず腕だけで振る攻撃はその重さを活かしきれていない。


俺とサーヤ、

2人のステータスと《頑健》さんで高く跳躍し、

思いっきり反った事で振り下ろした時に生まれるであろうそのエネルギーは、

ツーハンデッド並みの重ハンマーをまさしく両手で振り下ろす事で速度を増し、

倒れたトロールの頭を完全に破壊して尚、

地面に当たってその威力を物語る音を夜の森に響かせた。


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