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HappyHunting♡  作者: 六郎
第7章 ライト・マイ・ウェイ (領都バレンダル:アルゴ、マリン、カーラ)
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⑦-23-153

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「ここが執務室だ」


広い。

流石伯爵。

僕達が全員入るほどの広さだ。

そして狙う書類のある部屋でもある。


「さぁ!どこから探す!?さぁ!」


開き直ったのだろうか。


「そうですねぇ」


有る場所は分かってるが調べるフリをしつつ部屋の中を見回る。


「どうした!?見つからないのか?どうしたのだ!」


すっげぇ煽るなコイツ。

周りもそんな目で見ている。

知らぬは本人ばかりなり、哀れだ。

もういっかな。

なんかこいつに時間掛けるの無駄に思えて来た。


「この、この書棚」

「しょ、しょ、書棚がどうした?」

「向かいにもありますね。どうしてです?」

「べべべ別におかしくはないだろう?」

「おかしいなんて言ってませんよ。どうしてここに有るのかと聞いてるんです」

「ここに置きたかったからだ!」

「そうですか」

「どうしたのかね?」

「普通並べませんかね。書棚」

「まぁ。しかし部屋のインテリア的にそういう調度の仕方もあるぞ」

「そうだ!」

「なるほどねー。ふーむ」

「何か気になるのかね」

「この書棚に隣接する部屋を見せていただけますか」

「断る!」

「奥方」

「は、はい。どうぞ」


部屋と執務室の間の壁の厚さが分厚い。

よくあるやつだ。


「壁が厚いですねー」

『!』

「何か有ると?」

「何も無い!次の部屋に行くぞ!」

「であれば怪しいのはやはり書棚ですか」


執務室に戻り書棚を観察する。

《罠》がある本に反応する。


「『瞳で囁いて』?」

「昔流行った恋愛小説だな」

「レネ様。意外です。そんな本を読まれるんですね」

「ちちちちちち違うぞエチル!わわわわたしは」

「なんでこの本が書棚に?」「えーちーるー」

「ななな何で!?べべべ別に意味はない!」

「他に同じような恋愛小説も無く。この1冊だけ。ふむ」


本を改めようと掴み出す。


ガタッ

グワーン


書棚が横にスライドしていく。

しかし小棚にぶつかり止まってしまった。

小棚を移動させる。

1人で移動させるほど軽い。

もう1度本を掴み出す。


ガタッ

グワーングワーングワーン


『あっ』


目の前に目的の金庫が現れた。


「伯爵」

「ななな何だ!ファーダネ卿!」

「これは?」

「ききき金庫だ!オーレ家の!」

「奥様やお嬢様はご存じで?」

「い、いえ。知りません」

「私も」

「当然だ!代々当主しか受け継がれないのだ!」

「なるほど!」

「そういう事だ!」

「では開けてください」

「な、何!?」

「うむ。捜索の一環だ。開けて頂きたい。中を検める」

「断る!!」

『・・・』

「あな・・・た」

「お父様」


俺は金庫を調べる。

鍵を差す穴がある。

今までもずっと《魔力検知》で視ていたが更に集中する。

穴に指を当て《罠》で探知してみる。

なるほど。

魔力線が放射している。

この鍵穴に合致した鍵だけでは駄目なのだ。

鍵穴に合致しても魔力線が鍵に当たり通電ならぬ通魔しないのだ。

通魔した状態でなければ鍵を回すことが出来ないのだろう。

その魔力線が奥行きに3段階放射されている。

つまり鍵に3つの何らかの仕掛けがある訳だ。


「鍵が・・・要りますね」

「伯。鍵は?」

「知らん!」

『・・・』

「ふむ。最悪壁をぶち抜いて金庫を王都に持って行くか」

「や、やめろー!」


「『瞳で囁いて』ねぇ」

「・・・ふむ。レネ。本の感想を聞きたいな」

「ククククルト様!」


この部屋をざっと見渡す。

ふーむ。

瞳。

目か。

目と言って目につくのは執務机の奥、

窓側に置かれた胸像か。

女性の胸像だ。

胸像まで行って胸像に手を当てながらハグデル伯爵を見る。

顔色が変わっている。

分かり易くて助かるな。

胸像にはネックレスが付けられており、3つの石が嵌められている。


「この石は宝石ですか?」

「ししし知らん!」


目がすごい泳いでいる。

胸像にはネームプレートが、


「目は口ほどに物を言う」


確かに。

胸像は何を見ている?

胸像の視線を探る。

胸像は金庫のあった書棚の、反対の書棚を見ている。

書棚に移動する。

視線はこの辺りだろうか。


「うーむ」


書棚にはびっしり本が並べられている。

びっしりって事は使ってるのかね?

大方が埃を被っている。


「ここは掃除しないんですか」

「は、はい。そこは掃除するなと言われてます」

「ぐっ!」

「ふーむ」


金庫も本がスイッチだったから今回も本かな。


「『涙で語るわけ』・・・レネ様?」

「う~。『瞳で囁いて』と同じ作者の恋愛小説だ」

「なるほど」


俺は本を取りだす。

取りだせた。

特に何も起きない。

本を見る。

表紙を開いてみると中はくり抜かれた、

というか紙は無くくり抜かれた空洞の中に鍵が置かれている。


「ファーダネ様」

「うむ」

「や、止めろ!」

「伯を拘束しろ」

「はっ!」


鍵をファーダネさんに渡す。


「鍵には3つの何かを嵌める箇所があるな」

「胸像の石を持って参りました」

「おぉ。なるほどな」

「止めろ!止めてくれ!」

「ピッタリ嵌った」


全員で金庫の前に移動した。


「やーめーてー!」


ハグデル伯爵は涙ながらに叫ぶ。

ファーダネさんが鍵を金庫の鍵穴に刺す。

石が順番に3色に輝く。

3つ全てが点いてから鍵を回す。


カチャリ


「開いたぞ」


金庫の扉を開けると中には書類と小袋が入っていた。

そしてもう1つ大きな袋も入っていた。

ファーダネさんが小袋を開ける。


「金貨だな。そして書類は・・・」

「やめ・・・て、くれ」

「3つの対の書類の片割れだ。揃ったな」

「あなたぁー!」

「お父様ぁー!」

「うああぁぁぁ!」


ハグデル伯が床に崩れ落ちる。


「ハグデル伯。申し開きは有るかね」

「ちが、違うんだ」

「何が違う?」

「あいつ等が。あいつ等に脅されて」

「書類が見つかったら罪を認める。約束だったが、認めるのだな?」

「違う。私は・・・脅されて仕方なく」

「何々、ギルドウォーでドサクサに紛れて前領主を嵌めた証拠を握っている。バラされたくなければ言う事を聞け?脅されたのはホントみたいですね」

「そうなんだ!脅されて仕方なくやったんだ!」

『・・・』

「あなた・・・」

「おとう・・・」

「その証拠も取り戻してここに有りますね」

「なるほど」

「奥様、お嬢様。この書類をご覧ください。ハグデル伯爵はこのマヌイを愛人奴隷にしようと盗賊達と契約していたんですよ。豚族が気になって仕方なかったようですね」

「「・・・」」

「ちが、そうじゃ、嘘だ!」


すっと、2人は伯爵から離れる。


「ファーダネ様」

「何かな」

「ティラミルティと内通した事、獣人に反乱させようとした事、違法な奴隷契約をさせようとした事、前領主を嵌めた事・・・あーもうキリがねぇな」

「何が言いたい?」

「全部ひっくるめて刑はどんなものに?」

「死刑だ」

「ちょ、待ってくれ!」

「奥方やお嬢様は?」

「貴族は連座制が適用される。揃って死刑だ」

「いやあぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁ!」


2人は気絶した。


「待って!妻は!娘は知らなかったんだ!関係無いんだ!」

「オーレ家は?」

「取り潰し。断絶だな」

「待ってくれ!頼む!見逃してくれ!」

「建国以来の名門オーレ家もここまでかぁ」

「待って!そうだ!金、金をやる!だから」

「金は返してもらいますよ。当然」

「なら!」

「元々無実の人達から殺して奪った物でしょ」

「うあ・・・」

「マヌイ。何か言ってやることはあるかい?」

「・・・」

「た、助けてくれ」


ハグデル伯がマヌイに縋りつく。


「貴様!マヌイから離れろ!汚らわしい!プッ」


俺はハグデル伯を蹴倒してマヌイから離して唾を吐きかけた。


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