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HappyHunting♡  作者: 六郎
第7章 ライト・マイ・ウェイ (領都バレンダル:アルゴ、マリン、カーラ)
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翌早朝に護衛の人達は帰って行った。

マヌイの事をよろしくと。

マヌイは寝ている。

食事をしつつ休息を取って大分持ち直してきた。


「しかしどの口が言ってんだって思いましたけどね」

「盗賊団の幹部を殺した奴が、って?」

「えぇ」

「盗賊が生まれるって・・・」

「あぁ、嘘だよ。今回で潰れるから大丈夫だろう」

「可哀そう!」

「方便だよ方便。ヤヌイも許してくれるだろうさ」

「まぁね」

「《隠蔽》の経験値も貯まったな」

「もう!」

「自殺・・・する気だったのでしょうか」

「どうかな。若い子の気持ちは分からんよ」

「21才でしょ」

「体はね」

「気持ちは?」

「もう老後の心配をするお年頃だよ」

「そろそろね」

「サーヤ君、菊池君はね、さん「おらっ」じゅっほぉ!」

「ふふ」


「それよりマヌイよ」

「ぐふぅ、ん?」

「あいつ等を焼いたのよ」

「あぁ。聞いたけど?」

「魔法で焼いたのよ」

「・・・あれ、マヌイって水と」

「風よ」

「ヤヌイが」

「火と風よ」

「・・・?」

「習得・・・したんじゃないかって思うの」

「3属性を・・・か?」

「えぇ」

「サーヤ君」

「はい、聞いたこと有りません」

「・・・ヤヌイの思い・・・ってのはセンチメンタル過ぎるかね」

「火だもの、私もそう思うわ」

「はい、私もそう思います」

「3属性あればこれからは大丈夫、っていうのは安直かな」

「えぇ。2属性持ってても・・・ね」

「そうだったな。使い方次第だ」

「えぇ」

「ファーダネさんに預けるのが彼女の為だと思う」

「村人じゃ終われない?」

「周りが終わらせないだろう」

「・・・そうね。領主にも目をつけられてるし」

「彼女は変われても周りが変わらない。豚族というのは一生付き纏うだろう」

「ファーダネさんなら安心だわ」

「はい。私達にも真面目に対応してくださいました」

「まぁ、でも本人に確認しないとな」

「そうね」

「はい」

「そういえば連絡は?」

「あぁ。伝書鳩飛ばしたよ。予定通りならもう着いてるはずだ」

「ロムスコに?はやっ!」

「空飛んでるからね」

「でも来るのは地上でしょ」

「まぁね。そこは仕方ないよ」

「それまでここで?」

「マヌイの世話も有るしね」

「そうだったわ」

「笛の練習でもしようか」

「そうね」

「そうしましょう!」




マヌイはここ数日で順調に調子を取り戻していった。


「ありがとうね」

「ううん、ヤヌイを助けられなかった思いは皆同じ、気にしないで」

「うん」

「先輩がごめんね、きつい事言っちゃって」

「ううん。ホントの事だから。私達は全滅してあなた達は全員生き残った。結果にはちゃんと責任を持つ、だったよね」

「・・・そうね。あの人、無傷でお金を稼ぐって言ってたけど」

「うん」

「ピンチになったら真っ先に飛び込んでいくの」

「そうなんだ」

「私達の為にね」

「・・・」

「自分がどうなっても構わないって思っちゃ駄目よ」

「・・・」

「悲しむ人がいるから」

「うん」

「1人って寂しいよね」

「・・・」

「私達3人共家族いないから」

「え」

「1人ぼっちよ」

「そうなんだ」

「でも楽しくやっていますよ」

「そう」

「私は奴隷だったんです」

「え」

「10才くらいに攫われて以来16年くらいですか、ずっと奴隷で」

「そうだったんだ」

「でもアルゴさんとマリンさんに助けていただいて、パーティに入れさせていただきました」

「もう半年経つんだ。早いね」

「はい。ホントにあっという間。楽しいからなんでしょうね」

「楽しい?冒険者が?」

「いえ。3人での旅が。私達は幸せになる為に旅をしてるんです」

「幸せになる為に旅?」

「はい。幸せを見つける為に。でも私は3人一緒に居るのが今の幸せです」

「お金は必要だけどね」

「はい。お風呂に入ったり、美味しい物を食べたり、珍しい物を見たり。お金は必要ですね」

「まぁ、ね」

「奴隷でしたからお金の大切さは身に染みてますけど、お金の為に生きたくはないですね」

「カーラは十分お金で苦労したからね」

「3人でくだらないことで笑ったり、美味しい物食べたり、お風呂に入ったり。あ、アルゴさんとは入ってませんよ」

「ふふふ」

「これ、アルゴさんがプレゼントしてくれました」

「ネックレス」

「はい。宝物です」

「綺麗ね」

「100万エナするんです」

「ひゃ、ひゃく!?」

「『僕が死んだらこれを売って安全に暮らせ』ってそう言って」

「・・・」

「あの人は冒険者をやってますが、それで死ぬ事も覚悟してやっています。死ぬ時は私達を逃がす気で戦うでしょう」

「・・・責任ってこと?」

「どうなんでしょう。聞いた事ありませんから」


「皆!」

「どうしたの?そんなに慌てて」

「ヤバい」

「何が?」

「魔物でも出ました!?」

「盗賊達ってバカだから洞窟内でトイレして処理してなかったんだよ」

「ふんふん」

「それでこの前から洞窟の外に捨ててたんだがね」

「ふんふん」

「そのふんふんってトイレだけに?」

「おら!」

「ぐふっ」

「続きを言いなさい」

「ふぅぅ、はい。それでその捨てた所に虫が湧いててさ」

「いや~!」

「その虫を食べに小動物が来ててさ」

「うー」

「それを食べに魔物が来てさ。今すんごい状態」

「「「うわー」」」

「やっぱり穴掘って埋めないと駄目だね」




そんなこんなで数日後に《魔力感知》に反応が出る。


「来たぞ」

「ファーダネさん?」

「いや、レネ嬢だ」

「死体は・・・大丈夫よね」

「定期的に《殺菌》してたし大丈夫だ」

「言い訳は?」

「冬で洞窟内だから、って所で」

「了解」


入口に立ってレネ嬢を迎える。


「エチル!」

「レネ様。お久しぶりです」

「あぁ。エチルも変わりなさそうでなによりだ」

「護衛の方々も案内ご苦労様です」

「いえ」

「それでは詳しい話は洞窟の中で」

「分かった」


「お話はレネ様と我々だけでしたいのですが」

「ウルマン様」

「大丈夫だ。其方達はここで待っていてくれ」


レネ嬢の連れの騎士達は不満そうだが事が事だけに誰にでも耳に入れて良い話ではない。


「これを」

「何々・・・こ、これは!?」

「そしてこれも」

「・・・な、何だと!?」

「更にこれを」

「・・・あ奴らめ~!」

「正直僕達の手に余る物が出て来まして」

「余るどころか溢れ出しているわ!」

「それでこの焼死体が・・・」

「帝国の?」

「はい」

「そうか・・・しかし生け捕りにしたのだろう?何故こんなことに!」

「申し訳ありません」

「証人どころか幹部だぞ!」

「申し訳ありません」

「あの!」

「うん?」

「アルゴは悪くないんです」

「アルゴ?」

「ここではアルゴです」

「そうか。それで君は?」

「私が殺したんです!」

「む?」

「ご説明します」


レネ嬢にマヌイヤヌイの件を話した。

火魔法の事は伏せて。


「ううぅぅ・・・そべばきのどぐにな」

「レネ様は、それは気の毒になと仰ってるよ」

「はい」

「レネ様、ハンカチを」

「すばんば、マイン」

「いえ」


「ふぃ~。それなら仕方ない。マヌイの気持ちも十分分かる」

「はい。でもそんな重要な奴だったなんて」

「済んだことだ、気にするな。君は十分苦しんだ」

「ありがとうございます」

「証拠の書類で大丈夫でしょうか」

「恐らく大丈夫だとは思うが、魔力反応もあるし。しかし詳しい事は本隊が来てからだ」

「承知しました」

「この件に関して緘口令を布く。マヌイ、君も協力してくれ」

「はい、分かりました」

「しかしこの焼死体に手足が無いのは・・・エチル?」

「はい、ごうも・・・尋問しておりました」

「・・・まぁいい。とりあえずバレンダルに運ぼう」

「領主の敷地・・・ですか」

「正確には領軍の敷地だな。盗賊討伐隊は勅命である為領軍も我々の指揮系統の下に置かれる。安心していい」

「分かりました。タリルコルさんには連絡が着いたという事ですよね」

「うむ。協力を申し出てくれた」

「そうですか。ファーダネ閣下は今どの辺でしょう?」

「南東の街に着くころだな」

「バレンダルに着いたら伝書鳩を飛ばして到着を早めてもらいましょう」

「む?」

「領主が逃走や証拠隠滅の恐れも」

「む、その通りだ。分かったそうしよう」

「それと、お願いが有るのですが」

「うん?」

「盗賊は仲間割れ、という事でお願いしたいのですが」

「・・・また目立ちたくないと言う気か」

「はい」

「・・・分かった、報告書にはそう書くが」

「ありがとうございます」

「筋書きは?」

「マヌイヤヌイを追って洞窟に潜入したら彼女らを巡って仲間割れしていた、どうでしょう」

「良かろう、マヌイもそう心得てくれ」

「いいの?アルゴ。報酬とか」

「あぁ。気にしないでくれ。軍に目立つと厄介な依頼ばかりやらされる」

「エーチールー?」

「ささっ、バレンダルへの準備を始めますよ」




街道に軍の馬車が有り、死体やら証拠品になりそうなものを積んでいった。

レネ嬢は馬でバレンダルに駆けた。

伝書鳩を飛ばす為だ。

ヤヌイが乗った馬車にマヌイも付きそった。


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