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HappyHunting♡  作者: 六郎
第7章 ライト・マイ・ウェイ (領都バレンダル:アルゴ、マリン、カーラ)
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「レネオーラ・ウルカン!入ります」

「あぁ、お入り」

「失礼します!」


レネが執務室の戸を開けるとファーダネとクルトがいる。

いつもの光景だ。

あれから、

砦を落としてから大盗賊団は壊滅して盗賊被害は出ていない。

他の土地で逃げていた者もボチボチ捕まっている。

大盗賊団壊滅の報は王都へ伝わり、評判は上々との事だった。

内通疑惑のある貴族共が鼻高々なのが気に障る。

その貴族共も、大盗賊団壊滅により盗賊討伐隊の規模縮小に伴い領地ではなく王都に向かった。

凱旋という訳だ。

事後処理もおざなりに、そのツケはファーダネに払わせる。

レネは砦を落とした際の第1功に挙げられていたが、そうした内情で悶々たる日々を過ごしていた。

加えて、スポンサーの件と始まりの街に関する情報収集は捗々しくない。


「レネ、これを読んでくれ」

「は?」


渡されたのは小さな文だった。


「これは?」

「先ほど魔術師ギルドに届いた伝書鳩からもたらされたものだ」

「では、諜報員の?」

「いや、諜報員の暗号ではない」

「?」

「まぁ、読んでみたまえ」

「は、拝読します」


「ベアボアハッケン ナカミハオオモノ バレンダルニコラレタシ エマタ」


「?」

「分かるかね」

「私に分かるのは。ベアボア、バレンダル。これくらいでしょうか」

「ベア・ボアと聞いて思い浮かべるのは何かね」

「・・・・・・はっ!最近ですとエチルの!」

「うむ」

「しかし最後のエマタと言うのは」

「頭文字だろう」

「頭文字?」

「3人の」

「あ、エチル、マイン、ターニャですか」

「うむ」

「ではこれはエチルから!?」

「・・・まず間違いなかろう」

「でしたら何故このような変な内容で?」

「伝書鳩を使う際に暗号を勧められたが我が軍の暗号など知りようもない。咄嗟に捻って考え出したもの、そう思う」

「なるほど」

「・・・バレンダルに来られたし。これはそのままで宜しかろうと思います」

「うむ」

「では問題はベアボアですか」

「ベア・ボアと言うと、大盗賊団だな」

「・・・左様ですな」

「幹部を飲み込んだんでしたね」

「となると、やはり大盗賊団に関する事か」

「・・・バレンダルは始まりの街の西隣の領の領都です」

「ベア・ボアは幹部を飲み込み」

「・・・中身は大物」

「スポンサーに繋がる情報を得た・・・か?」

「!?」

「・・・可能性が有りますな」

「閣下!」

「うむ。先ずレネ、君は先発隊としてバレンダルに向かってくれ。至急だ!」

「はっ!」

「クルト、我々も準備を整えてレネを追う。急げ!」

「・・・畏まりました」

「レネ、嬉しそうだな」

「い、いえ。そんな」

「何かしら期待をさせてくれるな、彼らは」

「・・・左様ですな」




「どうした!何が有った!?」

「マヌイが・・・」

「マヌイは無事か!?」

「えぇ」

「アルゴさん」

「カーラ君、マヌイは?」

「休ませています」

「何が有った?」

「先ほど目が覚めまして」

「あぁ」

「あの2人を・・・焼いてしまったのです」

「・・・何だって!?」


俺は走って奥の部屋に急ぐ。

奥に近づくにつれ焦げ臭さが強くなってくる。

こんな空調の乏しい洞窟で火を使ったのも信じられないが3人が無事だったのはやはり何処かに通風孔が有るのだろう。

奥の部屋に着くと2人の遺体から煙が出ていた。

手足の無い遺体だから間違いないだろう。

周りを見ると書類は無事だった。


「カーラ君」

「は、はい!」

「ケースをバッグに入れて別の部屋に」

「分かりました」

「この部屋は使えんな。封鎖だ」

「はい」




「護衛の方達、すまないが奥は使えない。寒いだろうが入口近辺で今日は休んでくれ」

「分かりました」

「申し訳ない」


マヌイが休んでいるスペースに向かう。


「・・・」


マヌイは下を向いて何も喋らない。


パシッ


俺は平手打ちをした。


「先輩!」

「アルゴさん」

「何よ!あいつはヤヌイを殺したのよ!殺されて当然じゃないの!」

「捕まえたのは僕達だ。僕達の獲物だ」

「冒険者って訳!?」

「そうだ。君が捕まえたんなら君に権利が有るが、権利が有るのは僕達だ」

「権利なんてどうだっていいわよ!」

「だったら君は盗賊と変わりはないな」

「な、何ですって!?」

「僕達の獲物を勝手に殺した。人のものを奪ったんだ、盗賊と同じだ」

「・・・どうせ死刑になる奴じゃない!」

「・・・だから君が死刑にしたと」

「そうよ!ヤヌイを殺したんだから私が殺しても良いでしょ!」

「まぁ、気持ちは分かるがね」

「何がいけないのよ!」

「マコル達は死んだよ」

「えっ!?」

「あの時の戦いで殺されたよ。全員」

「う・・・そ」

「全員死んだ」

「マコ・・・ルも?」

「あぁ」

「ううあ」

「君が殺した」

「先輩!」

「アルゴさん!」

「え!?」

「約束したよね。10人より多かったら撤退するって。でも君は約束を守らなかった」

「で・・・でも!」

「君の様子を見てマコル達も覚悟を決めたようだ」

「そん・・・な」

「君のせいでマコル達は死んだ」

「わたしのせい?」

「違うのかい?約束を守っていたら・・・どうだったろうな」

「わたしの?」

「ヤヌイは・・・助けられなかったかもしれないが、マコル達は」

「せい?」

「この盗賊は大盗賊団の幹部だったんだ」

「え?」

「こいつ等を王国軍に引き渡して情報を得られれば盗賊を全滅にさせる事も出来たと思うよ」

「え?」

「でも、こいつ等が死んでそれも無理になった」

「幹部?」

「他に居たらこれからも盗賊団は生まれるかもしれない。罪もない人達が奪われ殺され犯されるかもしれない」

「こいつらが?」

「ヤヌイやマコルのような犠牲がまた出るかもしれない」

「うそ」

「あの村も襲われるかもしれない」

「うあ」

「君には責任が生まれた」

「責任?」

「あぁ。こいつ等を殺したんだからその責任を取らなきゃ」

「責任?」

「これから生まれるかもしれない盗賊達を殺すんだ」

「盗賊を?」

「もし君が自殺したら」

「先輩!」

「カズヒコ様!」

「それは無責任だろう」

「・・・」

「ヤヌイはどう思うかな」

「うぅ、ヤヌイィ」

「あの負けん気の強かったヤヌイは君の自殺をどう思うかな」

「ヤヌイは最後に何て言ってたっけ?」

「え」

「自分の分まで生きて、って。そう聞こえたけど」

「・・・」

「今、ヤヌイに会ったとして、君は何て言うんだい?」

「・・・」

「仇は取ったから自殺したって?」

「・・・」

「ヤヌイは喜ぶかね?」

「・・・」

「君は1人にしないでって言ってたけど」

「・・・」

「村の人達やタリルコルさんもいるだろう」

「・・・うん」

「勿論。僕達も力になる」

「・・・ホント?」

「助けに来ただろう」

「・・・うん」

「君達の家族は2人だけかい」

「うん」

「ヤヌイの事、皆忘れてしまうよ」

「やだ」

「マヌイが覚えててあげないと、忘れられてしまう」

「やだぁ」

「マヌイがヤヌイの分まで生きて、幸せになるんだ」

「でもマコルは」

「許してくれるさ。ヤヌイと見守ってくれるよ」

「わたしのせいで」

「マヌイのせいじゃない。盗賊のせいだ、マコルを殺したのは盗賊だ。仇は盗賊だ」

「盗賊がいなければこんな事にはならなかった」

「・・・」

「ヤヌイもマコル達も、マヌイの幸せを見守ってくれてるよ」

「・・・うん」

「あいつらは優しい奴らだった」

「うん」

「最初はすっごいつっかっかって来たけどね」

「覚えてる」

「でも仲良くなれた、ヤヌイもマコルも同じ事を言うと思うよ」

「うぅ」

「皆でがんばって生きていこう。村長もタリルコルさんも帰りを待ってたよ」

「うあぁぁ」

「菊池君、サーヤ君。頼む」

「えぇ」

「はい」


2人がマヌイを抱きしめる。


「ごめんなさいぃぃぃ」




洞窟に響く泣き声とは違うすすり泣きが入口の方から聞こえて来た。


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