①-14
①-14
数日後、△△も無事に確保され事情聴取の結果、共犯の疑いは晴れた。
なんでも、××が脅されてるのを見て怖くて野宿をしていたらしい。
なので俺達に起こったことも知らずにいたが、聴取で聞いて自分に疑いがかけられているも疑いが晴れ、逆にバティストからはもう逃げないでいいと知ると安心したようだったとの事だ。
「漸く一段落ですね」
「んー、もう一波乱有りそうな気もするな」
「えっ、どういうことです?」
「気もするってだけで、確信があるって訳じゃないが」
「何か含みのある言い方ですね」
「ん~」
数日後、仕事終わりに俺はラザールさんと少し話す為に同僚たちは先に宿に帰った。
冒険者になった時の為にこの世界の情報を日々少しずつだが集めるために。
仕事中は流石に聞けないからだ。
その帰り道に△△に会った。
「オイ!加藤!」
「ん?」
「こっちだ!」
「え、△△か?何やってんだ」
「実は相談があって来たんだ」
「金は貸さんぞ」
「うっ!な・・・何故」
「風俗通いに貸す金はねー」
「ううっ!ち、違うんだ」
「何が違うんだ?」
「事業の、そう。新たに起業する為、視察に行ってたんだ」
「娼館にか。まぁ、風俗は時代や好景気不景気に関わらず安定してるが」
「そ、そうだろ!だから少し出資してくれないか」
「いくら?」
「1万ほど」
「たったそんだけで何が出来るんだ?」
「い、いや。他にも出資者を募るんだ」
「立地は?」
「まだ決まっていない」
「従業員は?」
「まだ決まっていない」
「当座の資金は借金か?」
「そ、そうだ」
「今日の飯はなんだろなー」
「ま、待てって」
「お前アホだろ」
「な、なんだとっ!」
「俺以外から何人借りてる?いねーんだろ」
「あ、あぁ」
「しかも1万って・・・生活資金しかねーっての」
「か、金があれば上手くいくんだよ!」
「真面目に働いて貯めなさい。それじゃ」
「待てって!」
「あ、あと、うちの女達には会わない方がいいぞ」
「な、何故だ」
「××とつるんで奴隷で娼婦として働かされそうになったから怒ってたぞ。いや、ブチ切れてたぞ」
「あ、あれは俺じゃない!」
「風俗通いもポイント高いな」
「そ、それは・・・」
「風俗通いで資金ショートか、短い人生だったな。ナムアミダ。あれ、この世界仏さんいるのかね?」
「そ、そんなこと言わずに貸してくれよ」
「返って来ねーだろ」
「返すよ!」
「今何か就いてるのか?」
「い、いや・・・まだ」
「返す当てもない奴に貸すバカはいねーよ」
「だから金があれば成功するんだって!」
「1万じゃ何も出来ねーだろ」
「・・・」
「先ずは働いて信用を作りなさい。タダでさえ今マイナスだよ、チミは」
「・・・じゃー、どーすりゃいいんだよ!」
「・・・知らねーっての」
「助けてくれよ!」
「風俗通いで破産した奴なんかどうでもいいんですけど」
「じゃ、じゃぁ仕事紹介してくれよ!」
「断る!」
「何でだよ!」
「お前みたいなのを紹介してトラブル起こされてみろ。俺の信用が落ちる」
「じゃぁ、どーすりゃーいいんだよ」
「一つ方法がある」
「な、なんだよ!?」
「自分を売る、つまり奴隷になるんだよ」
「クソがっ!今に見てろよ!金持ちになって復讐してやる!」
「復讐って・・・こっちのセリフなんですけど。あと、もう二度と会うことは無いと思いますよ」
悪態を吐きながら△△は去っていった。
ああいった人種とはもう二度と会いたくないな。
それから数日後、ガルトさんから刑が確定したと教えてくれた。
「20年だと!20年!こわ~」
「奴隷法違反って厳罰ですね!」
「単純に奴隷法違反と娼館への借金、君達への賠償金。金が無いからその分上積みされたみたいだね」
「初犯による情状酌量とか無いんですね」
「犯罪者に人権なんて、この世界にはないんだろ」
「××には必要ないです」
「でも金持ってたら君等に払われてたのはビックリだな」
「前世でも無かったですもんね」
「公権力で徴収して払わせるのはな。まぁ今世だと、どっちも金が無くなって潰れちまったら税金取れないし、その点はいいな」
「簡単に喧嘩両成敗で済まされるのは納得いきませんもんね」
「明文化されていない慣習法みたいだけどね」
「それにしても判決早いですね」
「こわー。絶対に捕まらないようにしような」
「いやそこは犯罪犯さない、でしょ!」
「やれやれ、やっと静かに貯金出来るな」
「はい、明日からまたがんばりましょう!」
「おー!」
それから10日ほど経っただろうか、仕事が終わって宿で寛いでいる所でガルトさんに呼び出された。
一応菊池君も付いてきた。
「おめぇ、昨日は何処で何をしてた?」
「昨日ですか?いつも通り朝から街壁工事で、終わったら宿に帰って飯食って寝ました」
「工事はラザールに聞くとして、仕事が終わって直ぐに宿に帰ったのか?」
「少しラザールさんと話をして帰りました。1時間も掛かってないんじゃないですかね」
「どうしたんですか?何かあったんですか?」
「そうか・・・実はバティストが死んだ」
「「えぇっ!?」」