⑥-27-121
⑥-27-121
「ここは短期決戦です!賊の別動隊が全滅した今!奴ら気が削がれておろう」
「左様!ここは一気に砦を攻略し、我々の武勇を知らしめましょうぞ!」
「然り!」
大きなテント内では作戦会議が行われていた。
「・・・今無理をせずとも賊はいずれ食料が無くなり降伏する者も出るでしょう」
「ハンセン卿!むしろ死に物狂いで向かってくるのではないか!?」
「・・・それは戦っても同じでしょう」
「同じならば戦って何が悪い!」
「然り!」
「しかしそうなれば我が軍にも被害が出ますぞ!」
「これはフランベルジュともあろう者が。別動隊を全滅させた者の発言とは思えませんな」
「然り!」
「ウルマン殿は別動隊を全滅せしめ功なり、我々にはその機会を与えぬお積りか?」
「功などと・・・今はこれ以上の被害を抑えつつ勝つ算段を考えるべきなのでは?」
「いや!今こそ一気にケリをつけるべきでござる!味方の士気が上がった今こそ!」
「然ぁり!」
休日の夕方。
僕達は報告でファーダネさんに呼ばれた。
「諸君。今回もまた良くやってくれた。これで我々は目の前の砦だけに集中することが出来る。ありがとう」
『は!』
「ウルマンの小隊には後日褒賞が出される」
『は!ありがとうございます』
「第3小隊には依頼達成報酬と盗賊の討伐・捕縛報酬を合わせた100万エナを支払うものとする。パーティで分けてくれ」
『は!ありがとうございます』
「それで帰って直ぐの所を悪いが、明日の昼に総攻撃となった。その心積もりでいてくれ」
『明日・・・』
「そうだ。350人で50人を攻める」
「ま、まぁ、なんとかなるかぁ?」
「何か質問はあるかな」
「はい」
「エチル君」
「はい。今回相手の魔法使いは6人と伺ってましたが」
「うむ。そのうちの1人は今回君達が捕まえてくれた。残りは5人だ」
「どんな魔法使いか分かっているので?」
「うむ。水、風、土が1人ずつ。そして火が2人だ」
「水魔法。食料はまだしも、水は大丈夫そうですね」
「そうなのだ。兵糧攻めも時間が掛かろう」
「・・・特に気を付けなければいけないのが火魔法の2人だ」
「・・・・・・あの火の玉の」
「そうだ。上位レベルの魔法、《ファイアーボール》だ」
「ファイアーボール」
「君達も見ただろう。火の玉が飛んで来るのを」
「はい。何よりその飛距離が」
「そうだ。普通、魔法は射程が有るのだが」
「私の《ファイアーサージ》も射程が有る」
「私の《エアロエッジ》もそうだ。射程限界になると消滅する」
「・・・殆どの魔法の射程は長くても20mだ」
「しかし上位レベル魔法の《ファイアーボール》は実質、着弾するまで消えない」
「「えっ」」
「ただでさえ台地の上から、更に砦の上から放たれると50m程も届く」
「「げぇ!」」
「我々が苦戦しているのもそこなのだ。たった2人だが脅威だ」
「矢で射殺せば」
「・・・スキル《捕手》持ちがいる」
「スキル《捕手》?」
「・・・あぁ。どうやら投射物を全て受け止めてしまうスキルのようだ。更に土魔法の使い手だ」
「そいつが火魔法使いの周りにいると」
「そうだ」
「夜に忍び込んで暗殺とかは」
「・・・敵に《気配察知》持ちがいるみたいでな」
「《気配察知》?」
「あぁ。範囲内の気配を察知出来るらしい。何度か間諜を送っているが悉く失敗している」
「そうだったんですね」
ブリーフィングが終わり出て行こうとするが、
「エチル君は残ってくれたまえ」
「?」
「先輩?」
「大丈夫だろう。先にテントで待っててくれ」
「「分かりました」」
テント内に4人が残った。
「繰り返すが別動隊の殲滅御苦労だった」
「ありがとうございます」
「現在捕虜を尋問し更なる情報を引き出している最中なのだが」
「はい」
「君は今回の事をどう思う?」
「今回の事?」
「別動隊然り、挑発然り、だ」
「はぁ」
「正直に答えてくれて構わんよ」
「オホン」
レネ嬢を見ながら咳をする。
「・・・・・・レネ。明日の総攻撃を詰めてくれ」
「え?は、はい」
レネ嬢はテントを出て行った。
「これで良いかな」
「ありがとうございます」
「うむ」
「そもそも砦に立て籠もるのが下策でしょう」
「・・・我々がそこまで追い詰めたとも言えるが」
「僕が盗賊ならさっさと逃げますがね」
「なぜ逃げないのだろうか」
「勝てると思った。いや、思っていた」
「ふむ、続けて」
「勝てると思っていたから砦に籠り、戦力を分散してでも補給隊を襲った」
「つまり」
「内通者が居るという事でしょう」
「ふむ」
「・・・誰が怪しいと思う」
「兵士に居たとしても下っ端でしょう。幹部でしょうね」
「だろうな」
「閣下はもっと慎重に攻撃すると思いましたが」
「明日の総攻撃か」
「はい」
「押し切られてな」
「強硬派が怪しいですね」
「討伐隊の勝利の公算が高くなり保身の為・・・か」
「繋がりを消すとかも」
「ふむ」
「最初の挑発で誘き出された部隊って・・・」
「・・・強硬派の1人だ」
「被害は出ました?」
「クルト」
「・・・出ていませんな。被害はその後の砦襲撃でのものです」
「茶番だったという訳か」
「王族の敵なのですか?、閣下の敵なのですか?」
「両方と・・・言った所か」
「あらまぁ」
「レネを外したのは顔に出るからか」
「ポロリしちゃう子なので」
「ふっ、将来有望なのだよ」
「炎が熱くなってる気がしますよ。鉄は熱いうちに・・・ってヤツですか」
「一緒の部隊に配置した。火を消さないように頼むよ」
「うへぇ!」
テントに戻って食事と摂る。
「何の話だったんですか?」
「内通者の話」
「「内通者?」」
「あぁ」
「討伐隊に?」
「あぁ」
「誰でしょう」
「幹部だろうね」
「ブッ殺しますか?」
「まぁ、待て。その辺ファーダネさんが上手くやってくれるだろう。君達は顔に出さないようにね」
「「はい」」
「ダナ達が、報酬は7割を受け取ってくれって」
「それは駄目だな」
「ですよね。そう言ったんですけど」
「後で言っておこう。5割で良いだろ?」
「えぇ」
「はい」
「補給の護衛任務で騎士の戦いを見たが凄まじかったな」
「ですねー」
「集団戦に特化している感じでした」
「君もそう思うかい。戦争用のスキルなんだろうな」
「《盾術》は有るでしょう」
「《剣術》は基本じゃないかな。そこから向き不向きの武器を選んでいくって感じか」
「投げ槍もしてました」
「そうだな。《槍術》、投げ槍って《投擲》?《槍術》?」
「《槍術》でしょう。《投擲》で更に威力アップとか?」
「なるほど。重量のあるプレートメイルを着て吹き飛ばして相手の隙を作る、か」
「フルプレートじゃないから《弓術》持ってる私達なら隙間を狙えるわ」
「はい」
「盗賊には《捕手》持ちもいるって話だからな」
「そうだったわね」
「あれに《身体強化》だろ、《頑健》さんも合わせれば・・・近づきたくないねぇ」
「先輩は雷が有るじゃない」
「そーだけど。目撃者全員殺さなきゃいけない。面倒だな」
「出来ないとは言わないのね」
「《殺菌》が有るからな」
「・・・それもそうだわ」
「どのくらいで殺せるんです?」
「時間かい?うーん、Lv上がると共に掛かる時間は少なくなってるよ」
「死ぬまでは2週間なのよね」
「あぁ、そこは変わらないな。スキルじゃなく病死だからね」
「解析されても病死だし、まさに暗殺者ね」
「盗賊の捕虜で試してみるか」
「情報引き出さないと!」
「勿論その後でだよ。どーせ死刑だしね」
「ブッ殺しましょう!」
スキル大全
《弓術》
弓を扱う者は必ず取得しなければならないスキルである。
命中補正と威力が増す必須のスキルだ。
弓は魔法よりも射程が広く、しかし命中補正は魔法程の射程だ。が威力は多少残る。
武技スキルも種類が多く、近接武器スキル以外の中ではトップクラスの人気だ。
エルフや一部の獣人に適性が有り、女性にも持つ者が多い。
男性諸氏、自分のリンゴを射抜かれない様にし給えよ。




