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HappyHunting♡  作者: 六郎
第6章 盗賊団 (領都ロムスコ:エチル、マイン、ターニャ)
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⑥-26-120

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「ここから鐘2つ、4時間ほど西に行った所に盗賊の野営地がある。4人で留守番してるらしい。夜明けに出発しようと思うが、エチルどうだ?」

「今すぐ行きましょう」

「む?」

「明るくなれば発見される恐れが有ります」

「それはそうだが皆疲れてるだろう。休んでから向かった方が良いのではないか?」

「恐らく盗賊も、ここを襲ったらそのままここで夜を明かすはずだったのでは?であれば、留守番は今頃寝てるかもしれません」

「むう、しかし寝ていないかもしれない」

「えぇ。どちらか分かりません。しかし寝てる可能性は夜の方が高い。であれば味方の被害が無いように宵闇に紛れて襲う方が良いでしょう」

「そうか」

「閣下。我々は戦闘直後。興奮して眠れませんしどうせ眠れないのなら・・・」

「そうか、そうだな。分かった。では眠れそうにない者を募ってくれ」

「は」




ウルマン以下4名の騎士と第3小隊の計11名が盗賊野営地に行くことになった。


「ウルマン様は残った方がよろしいのでは?」

「いや、エチル。部下にだけ戦わせるわけにはいかない」

「そうですか」




1名の盗賊の案内を連れ、残る者に捕虜の見張りを頼み僕達は野営地に出発した。

先の戦闘は1時間もせずに終わったので野営地に着いてもまだ暗いままだった。

藪から野営地を観察する。


「確かに4名です。ウルマン様」

「うむ。ではどうする?」

「僕等だけで充分です」

「3人でか?いやしかし」

「お任せください」

「うーむ。分かった、頼む」

「はい。マイン君、ターニャ君、援護は任せた」

「「了解!」」


《魔力検知》で視ると、見張りは1人。

後の3人はテントに入って寝てる。

野営地と言っても僕達の居た所とは違い、柵は無い。

雨の音が聞こえる中、

《隠蔽》の俺を察知出来ず、並んだ2つのテントの入り口の中間で丸太に座って舟を漕いでいた合羽を着た賊は後ろから延髄を切断され声も無く崩れ伏せた。

その後、2つのテントに入って残りの賊を仕留める。




「ウルマン様」

「うわっ!びっくりした。エチル、脅かすな」

「すいません」

「どうした?忘れ物か?」

「いえ。終わりました」

「・・・終わった?もう?」

「はい。4人仕留めました。もう大丈夫です」

「・・・そうか。分かった。諸君、行くぞ!」

『は!』


野営地に入って状況を検分する。


「確かに4名の死体を確認した」

「書類などを捜索致しますか?」

「いや、もう直ぐ夜が明ける。それからで良かろう」

「は!皆の者、これから夜明けまで休息を取る!」

『了解!』


それから夜明けから少し経ってみんな起きてきた。

流石に雨中で疲れたのだろう。十分とは言えないが寝たようだ。

明けてから捜索したが情報になりそうなものは無かった。

幾ばくかの金と食料を奪い僕達の野営地に戻る。




野営地で食事を摂りながら今後を話し合う。


「今日はもう拠点に向けて出発は無理だ」

「そうですね。捕虜を連れてますし、その方が良いでしょう」

「あぁ。しかし重要な情報などは無かったな」

「まぁ、別動隊は1人も残さず全滅ですし砦に集中出来るでしょう。意味は大いにあったと思いますよ」

「そうだな。・・・エチル」

「はい」

「・・・いや、何でもない。皆、良くやってくれた、寝足りないだろうから休息を取ってくれ」

『は!』




その日は十分に休息を取り明くる朝出発した。


「全員で行くんですね」

「あぁ。少数であそこを守るよりもその分を補給隊に回して多数で野営した方が安全なのだ。なにせ人が足らん」

「人手不足ですか」

「討伐隊は2000人程だが、各地の盗賊を討った後はある程度その地域を守らねばならん。今回みたいに全員を討つこと等出来ないからな」

「むしろ全員で籠城されなくて助かりましたね」

「うむ、そうだな。各個撃破し易い」




夕方間近、拠点に着いた。

レネ嬢は捕虜の引き渡しと報告に行き、

僕達は明日一杯、休みをもらった。


「報告!盗賊の別動隊32名の内、捕縛5、討伐27。全滅させ我が方の被害無し!以上で有ります」

「うむ。御苦労!全滅で被害無しか、上々だな」

「・・・はい。士気も高まりましょう」

「良くやってくれた、レネ」

「ありがとうございます!補給が1日遅れてしまいましたが」

「襲撃が有ったのだ仕方無かろう。むしろ被害無く補給された方が良い」

「は!・・・」

「どうした?」

「・・・・・・いえ」

「言ってみなさい」

「・・・・・・は。実は我々の捕虜の尋問では賊の情報を引き出せなかった為、エチルに任せたのですが・・・」

「・・・拷問か」

「・・・・・・はい」

「レネ」

「・・・・・・は」

「我々は騎士だ。騎士道に基づき騎士道を尊び、騎士道に縛られる」

「はい」

「騎士道は自分を律するものだ、何の為に?」

「・・・・・・力。権力や能力を持ってるからでしょうか」

「そうだね。時に」

「?」

「正義は弱い」

「・・・・・・は?」

「悪に対するに正義では弱くて立ち向かえない・・・どうする?」

「悪を持って悪に対するのが正義ですか」

「力なき故」

「しかしそれでは悪と同じレベルでは?」

「騎士道を守りなんとか賊を討ち滅ぼした、しかし国土は消耗し民の怨嗟は王国に向かう」

「・・・・・・」

「騎士道を逸脱しつつも賊を討ち、民の被害も最小限に抑えられた」

「どちらが良いかと・・・?」

「我々の騎士道は誰に対するものなのか」

「己を律する。何の為、誰の為」

「自分の為?自分の騎士道の為に民を犠牲にするのか」

「・・・・・・」

「それは我儘・・・と言えるのではないか」

「わがまま」

「自分の騎士道を貫きたい為に民を見捨てる」

「自分の騎士道を貫きたい為に、民の税で買った鎧を着、民の税で買った剣を持ち、民の税で買った食料を食し、民の税で給金を頂く。そして見捨てる」

が為の騎士道ならんや」

「・・・・・・しかし」

「もしエチルが拷問して情報を引き出せなかった場合、我が軍に被害が及ぶ可能性は?」

「・・・・・・有りました」

「砦に追い詰めた盗賊団に逃げられる可能性は?」

「・・・・・・有りました」

「結果、民に被害が出る可能性は?」

「・・・・・・有りました」

「100%の正義など無いのではないか?」

「100%」

「我々騎士が100%正義だと思ってるものは、民にとっても100%なのだろうか」

「民が居なくなった王国に我々騎士や貴族だけが存在しても、それは国なのか」

「確かにエチルの行いは褒められたものではない」

「しかし最悪でもない」

「・・・・・・最悪」

「最悪は盗賊を逃がし味方に被害を出し、民に被害を出すことだ」

「最高でもないが最悪でもない」

「後から幾らでも後悔出来るが、戦では瞬時に判断せねばならない時が有る」

「最悪を回避する。それもまた必要な事だ」

「私自身拷問は正義だとは思っていない。しかし・・・今日はもう休みなさい」

「・・・・・・は?」

「いまレネに必要なのは休む事なのよ」

「・・・・・・は」

「お休み、レネ」

「失礼・・・致します」




「・・・寝れますかな」

「悩むでしょうね」

「・・・結論は出ますまい」

「えぇ。でも今回、32名の討伐に対して被害はゼロ。大きくなってるんじゃないかしら」

「・・・奴は劇薬ですが」

「ほほほ。そうね。ポーション酔いみたいにね」

「・・・しかしこれで前面に集中出来ます」

「そうね。それは相手もそうでしょうね」


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