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HappyHunting♡  作者: 六郎
第6章 盗賊団 (領都ロムスコ:エチル、マイン、ターニャ)
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⑥-21-115

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翌朝。

食事を食べていた。


「エチル」

「なんだい、ダナ」

「メンバーとも話し合ったんだけど」

「あぁ」

「今回の報酬はエチルたちが全部受け取って」

「?」

「私達は受け取れないわ」

「失った荷物の中に金も有ったんだろう?ジャックの入院費用も必要だ」

「それでも受け取れないわ」

「でも」

「いいえ、マイン。受け取れないの」

「・・・分かった」

「ありがとうエチル」

「と、言う事です、レネお姉さま。今回ロブが3匹もいたんです。弾んでくださいってファーダネ様によろしく言ってください」

「あ、あぁ。分かった。言っておく」




準備を整え出発する。

途中の昼休憩も気が軽くなっていた。

もうすぐ拠点だ。

ようやくゆっくり眠れる。

そんな気でいた僕達にそれは聞こえた。

夕方にはまだ早い頃。


空気を斬り裂く音、

地面を揺るがす音、

何かが破裂する音、

音のする方へ近づくほどその音達は大きくなっていく。

遠くから怒号と悲鳴が近づいて来る。

みんなの顔が一変する。

レネ嬢が叫んだ。


「もう始まったのか!?」


鬱蒼とした森を抜けると大きな砦が有った。

高い。

20mはあろうかという高さの壁。

砦はすごい年季で所々崩れている所も有る。

と、

壁の上から火の玉が放たれた。

着弾した地面は抉れ土砂が舞い上がる。

そこらの地面はみな同じような感じだ。

砦は丘の上に建てられていた。

周囲で1番高い丘に高い砦。

そこから放たれる火の玉や矢は20m以上下の人間たちに圧倒的な恐怖を刷り込ませるに十分だった。


「間に合わなかった!?いや攻撃開始は明日のはずだ!」

「とりあえず合流しましょう!」


爆発音や衝撃音、怒号罵声で自分達の声も聞こえづらい。

大声で話し合い本隊へ合流を急ぐ。

周囲は森だが戦っている空間は木の1本も生えてはいない。


「エチル!こっちだ!」


騎士隊の後を辿っていく。

流石にここまで魔法や矢は飛んで来ない。

しかし音は容赦なく耳に突き刺さる。

今まで森の中で戦って来た僕達に、他人が戦う音がこんなにも不快だとは思わなかった。


先頭のレネ嬢が移動した先々の兵士と喋っている。

戦闘音で何を話しているのか全く聞こえない。

レネ嬢も相手の耳元で喋っている。

やがて喋り終えたのか、レネ嬢が手招く。


レネ嬢と話した兵士が振り返って或る方角を指さす。

さされた方向の、前線から離れた位置に高官らしき人物達がいる一角があった。

音もやや緩んでいるようで少し落ち着く。

一角は地面にテーブルを置いただけの簡素なものだった。

テントなんか無い。


「ゴブリン集落殲滅部隊ただいま帰還した。ファーダネ様に取り次ぎを願う!」

「了解した!ここで待たれよ!」


番兵の1人が奥に走っていく。

待ってる間戦場を振り返る。

戦いは依然、激しいままだ。


「ファーダネ様が会われる!代表者だけ参られよ!」

「了解した!諸君らはここで待て!」

『了解!』


レネ嬢が番兵に伴われ奥に行く。

立ち止まった所にファーダネ様がいるのが遠目に見える。


「報告!ゴブリン集落殲滅部隊!作戦成功!ただいま帰還しました!」

「うむ!ご苦労!詳細は後で聞く!下がって休め!」

「・・・」

「下がって休め!」

「はっ!休みます!」


レネ嬢が帰って来た。


「恐らく戦闘終了後に詳細な報告を求められるだろう。それまで後方で休憩だ」

『了解!』


僕達は後方へと向かった。

様々な音を背に。


後方には拠点が作られており周りには柵が有った。

テントが並び、竈が並び、怪我人が並んでいた。

拠点に入りテントを宛がわれた。


「後ほど声を掛けるまで休んでいてくれ」

『了解!』

「レネ様!ジャックを頼みます!」

「そうだったな!分かった任せてくれ!」


テントはパーティに1つだが4人用だ。

ダナのパーティはジャックが抜けて4人で使える。

小隊は隣り合ってテントを使う。


「水を貰ってこよう。女性陣に先ず水浴びをしてもらう」

「ありがとう。そうしましょう」


水浴びを待ってる間にカイルとコールと話し合う。


「女4人に男3人か。贅沢な小隊になったな」

「はっ、ちげーねぇ」

「ここまで世話になった、エチル」

「済んだ話だコール。これから戦争だ。先ずはじっくり休もうぜ」

「・・・そうだな」

「同感だ。こっからが本番だ」

「しかしあれが戦争か。ビビったよ」

「ロブ3匹殺した奴がビビんのかよ」

「当り前だ。ビビるから色々考えるんだよ」

「なるほどな」

「2人の怪我はもう良いのか?」

「あぁ。まだ痛むが傷は塞がった。問題ねぇ」

「俺もだ。ジャックの分までやるぜ」

「張り切り過ぎないように頼むよ」

「あぁ。始まったばかりだからな」

「そう言えばレネ嬢は明日からって言ってなかったか?」

「そう言やぁ、んなこと言ってたな」

「あぁ」

「何かあったのかな」

「あとで聞いてみるか」

「そうだな」

「お待たせー」

「あぁ。じゃぁ俺達も浴びさせてもらおう」

「「あぁ」」


水浴びの後全員仮眠という名の本寝をとった。

本気で寝た。




「レネオーラ・ウルマン部隊長入ります!」


辺りは夕暮れ。

今日の戦闘は終わった。

拠点の一際大きなテントでファーダネとクルトがレネを待つ。


「報告します!ゴブリン集落殲滅部隊。任務成功。ロブ・ゴブリン3匹含むゴブリン62匹を殲滅致しました!」

「うむ。ご苦労。詳細を聞こうか、お座り」

「い、いえ。私は立ったままで」

「どうした?」

「は、はい」

「・・・・・・」

「私は判断を誤り部下2名を死なせ、他重傷者を多数出してしまいました」

「・・・・・・そうか。ロブが3匹もいたからな」

「いえ。私とジャックのパーティは撤退したのですが、エチルのパーティがロブ3匹を含む50匹以上を倒してくれました。彼らがいなかったら任務は成功しなかったでしょう」

「・・・な、なに?」

「ロブ3匹、50匹以上殺したと?」

「はい」

「どういうことだ?詳しく」

「はい。集落を発見した時、エチルは作戦を建てようと言ったのですが私が却下して突撃、集落の中央付近まで押すもロブ2匹に阻まれ膠着している所に別のロブが突進。隊列が崩されそのままなし崩しになり撤退。その撤退をエチルのパーティが支援しそのままゴブリンを担当して殲滅しました」

「・・・・・・そうか」

「因みにエチルのパーティは無傷です」

「なんだと!?」

「・・・1人もか?」

「はい」

「・・・・・・そうか」

「今回、任務は成功しましたが犠牲は出る必要は無かった、私のミスにより出たものです。犠牲者の手厚い手当てを願うと共に私に罰を与えて下さいますよう願います」

「・・・・・・そうか」


レネは決意のこもった目をしていた。


「何か有ったのか?」

「はい。私の指揮官としての責任を痛感しました」

「うむ」

「厚かましいようですが1つ願いが有ります」

「何だ」

「罰はこの作戦終了後にお願いしたく。どうか討伐に私も参加させて下さい」

「・・・・・・」

「私のミスで死なせた2人の為にも。この討伐に参加させられなかった分、私が代わりに働いて見せます」

「死ぬ気かい?」

「いえ!死に場所が欲しくて言ってる訳ではありません。勿論戦って死ぬのは吝かではありませんが、私はフランベルジュ!閣下なら討伐成功の為に私を使って下されるものと思っています!」

「・・・・・・何を見た?」

「・・・・・・まことの騎士道を」

「誠。真じゃなく、かい?」

「はい」

「・・・・・・ふーむ。それではエチルの戦闘は見ていないのかな」

「いえ。集落で1泊して移動中に魔犬5匹に遭遇。マインとターニャの弓で2匹を射殺。残り3匹をエチルが瞬殺しました」

「なるほど。特筆するべきものは無いが」

「3匹を走りながら1度も立ち止まらず殺していきました。私には出来ません」

「何!?」

「・・・1度も立ち止まらず?」

「女のスキルか?」

「いえ、発動していませんでした」

「な、なに」

「・・・素のステータスでか」

「恐らく」

「3匹を瞬殺はある程度腕の立つ者であれば出来るが、1度も立ち止まらずとは」

「・・・試合に勝ったではないか」

「エチルは2刀流でした」

「何だと!では試合は・・・そうか」

「ステータスのスキルを隠すことは出来るのでしょうか」

「・・・《隠蔽》か?あれは知覚を阻害させるスキルでステータスを隠すことは出来なかったはず」

「其方の《覗き見》を阻害したのではないか?」

「・・・であればステータスその物が見れないはずです」

「スキルが2つ。しかも在り来たりなスキルのみ。分からんな」

「・・・詳細を直接聞いては」

「秘密と言うだろうよ」

「・・・ですな」

「だが話は聞きたい。呼んでくれ」

「はっ」

「騎士ウルマン!」

「はっ!」

「其方の罰は本作戦が終わった後行う。それまで本作戦に精進せよ」

「・・・・・・はっ!有難く・・・うぅ」

「死なないでおくれよ。レネ」

「はいぃ」


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