⑥-18-112
⑥-18-112
「・・・ナイト」
「おぉーい!猪が居たぞ!」
「えぇー!?だからどうやって仕留めたのよ!」
「こう、バシュッ!ババッ!ズキューンって・・・言うのかな」
「途中までは良いけど最後が分かんない」
「まぁ食おうぜ。夜食な。サー・・・ターニャ君!解体しよう」
「はい!」
2人で猪を解体していく。
「魔物じゃないから魔石は無いな」
「そうですね。でも毛皮は売れるんじゃないですか?」
「いやー、売るまでに結構時間掛かりそうだからバッグに入れっぱっていうのもね」
「そうですね」
「ダナ」
「・・・何?」
「水出せるかい?」
「えぇ。鍋に?」
「あぁ。ジャックに飲ませてやれ。ポーションじゃぁ血は回復しないんだろう。あっ、水魔法で失った血は回復するの?」
「・・・いえ、回復しないわ。ありがとう」
「盗賊退治は・・・無理そうかな」
「・・・えぇ、多分」
「猟師のおっちゃんも、食べたかい?」
「え、えぇいただきました」
「遠慮して食べれなかったんじゃないの?騎士様や冒険者ばかりだから」
「い、いえ、そんな」
「猪食べなよ?」
「ど、どーやって夜の森で仕留めなさったんで?」
「こう、ドシュッ!ブバッ!ズキューンって・・・言うのかな」
「だから、分かんね-って」
夜食も食べ終え、寝る段になった。
「ウルマン様。この敷物をお使いください」
「これはドレッドベアの!しかしそれではエチルが」
「自分は別のを使いますから」
「しかし・・・」
「盗賊退治に風邪をひいて向かうお積りか?」
「むぅ・・・」
「私の匂いが付いてると駄目ですかね」
「いや、違う・・・分かった、使わせてもらう。ありがとう」
「いえ・・・拠点に着いたらちゃんと返してくださいよ?お気に入りなんですから」
「わ、分かってる。大丈夫だ」
「ホントかな、前みたいに権力を振りかざして取り上げたりしないで下さいよ」
「そっ、そんなことしたことないぞ!」
「あいててて、折れた腕が・・・」
「うぐぅ」
「お休みなさいませ」
「むぅぅぅ、お休み」
「カズヒコさん、私のを使って下さい」
「いやー、セクシーな女性の匂いが付いてると逆に寝られないわ」
「そ、そんな・・・セクシーでは・・・」
「さっきの猪の毛皮使えば?」
「血と獣臭くて寝れねーわ!」
「そう」
「大丈夫。さっきまで葉っぱを集めて来たから、これを敷いて寝るよ」
「風邪ひかないでね」
「《病気耐性》が仕事してくれるさ」
「だといいけど」
夜番は交代で就いた。
流石に激闘の後だ、眠っておかないと不味い。
翌朝。
とりあえず食事を摂る。
昨晩の猪鍋だ。
食事後、騎士達は死んだ騎士を埋葬していた。
火葬にする時間はない。
なるほど、こうやってゾンビが出るんだな。
僕達は使えそうな矢を回収した。
重傷の騎士は歩けないほどではない。
しかしジャックは無理だった。
聞くと、生命維持に重要な器官ほど高級なポーションやスキルレベル、魔力が必要らしい。
損傷を受けた時間が長くなると治る時間も長くなるとの事だ。
「ジャック・・・」
「ダナ、どうしよう」
「残って誰かが呼びに行くしかないか」
「お困りかな、君達」
「エチル」
「背負えねーの?」
「カイルもコールも怪我をしてて・・・私とフイネは体力無いから」
「マジか。《頑健》さんは?」
「習得してないの」
「あらー」
「どうした?」
「ウルマン様・・・ジャックは歩けそうにありません」
「むぅ」
「騎士様が背負う・・・訳ねーよなー」
「いや待て!」
「騎士様の援助が有ればなんとかなるが」
「ホントに?エチル!?」
「エチル!それは本当か?」
「あぁ。2本の槍を貸してくれればね」
「槍を?」
「騎士様の武器を貸してくださればね」
「勿論だ!ここまで一緒に戦って来たのだ!拠点までも共にゆく」
「じゃぁ槍を」
「あぁ」
「どうするんです?」
「いやー、網がこんな場面で役に立つとは」
「網?・・・あー、ハンモック的な?」
「あぁ」
バッグから網を取りだし広げる。
ジャックを寝かせ、2本の槍を穴に通して4人で担ぐ。
「穂先に注意して」
「分かっている」
「1人で背負うよりも4分担だから負担も軽いでしょう」
「ありがとう!エチル」
「助かる、エチル」
「いやー、重い荷物背負って来た甲斐があったよ!カイル君」
「あぁ、助かった。ありがとう」
「あら?」
「ほら!調子狂ってないで早く行きましょう」
拠点に向けて出発した。
途中、逃げて拾えなかった荷物を幾つか回収したが全部は無理だった。
先頭は俺とサーヤ君、最後尾は菊池君に任せた。
猟師のおっちゃんは俺とサーヤ君の後ろだ。
しばらく進んでいくと魔力反応がある。
手を挙げて集団を止めた。
「どうしました?」
「魔犬だ」
「魔犬」
「5匹だ」
「どうします?」
「戦わないならそれに越したことはないね」
「待ちます?」
「こちらが風上だ」
「!」
「気付いたな。来るぞ」
「はい!」
手を振って菊池君を呼ぶ。
「魔犬だ。5匹」
「了解」
「撃つタイミングは任せる」
「「了解」」
「君等が撃ったら突撃する」
「「!?」」
「大丈夫なの?」
「あぁ」
「無理しないで下さい!」
「大丈夫だ。任せろ」
「・・・はい」
「魔犬の目線に合わせる為に片膝立ちで撃った方が良い」
「「了解」」
俺の前で片膝立ちで武器を構える2人。
俺は右手にマチェーテを、左手にナイフを逆手に持つ。
魔犬が藪から飛び出して来た。
途端、額に矢が刺さり2匹の魔犬はそのままの勢いで地面を擦れながら倒れ込む。
その中を残り3匹が駆けて来る。
俺も駆ける。
1匹が飛び掛かる。
躱してマチェーテを振り抜く、
そのまま2匹目に突進、
口を開けて噛みついてくる、
牙をナイフで《受け流し》て《カウンター》発動、
手首を返してそのまま口角を裂き、
首を裂き、
胸元まで裂いた。
その勢いのまま3匹目に駆ける。
3匹目も口を開けて噛みついて来るが、
その口にマチェーテを突っ込み脳天からマチェーテの先が飛び出す。
魔犬たちは死んだ。




