⑥-14-108
⑥-14-108
「2人共」
「先輩!」
「カズヒコ様!」
「作戦だ」
「「はい!」」
「俺が囮になって敵を引きつける」
「「えっ!」」
「お前らは射線が通る場所まで後退」
「「はい!」」
「兎に角数を減らせ!ロブは俺が対処する」
「「は、はい!」」
「お前らに向かって来た場合はそいつを優先すること」
「「はい!」」
「サーヤはミキの感知範囲以内にいるように」
「はい!」
「行動開始!」
俺は後退を続けるウルマン隊の下に行く。
足元に転がる石を何個か持って行く。
ロブ共が威嚇の咆哮を上げていた。
「グオオアァァァ!」
「ガアアア!」
「ブオオオォォォ!」
怖すぎる!
突進していたロブに全力投球!
ボグゥ
頭に命中したロブはフラつきながらも足元に落ちた石を見て何が起こったか悟ったようだ。
投げた奴を探して俺と目が合う。
「ブルゥゥアァァァ!」
「ひいぃぃ」
何人かのお供を連れてロブが俺に向かって来た。
「今の内に態勢を立て直せ!」
「わ、分かった!」
あいつらはジリジリと後退していく。
俺は罠の位置まで走る。
後方は振り返らなくても《魔力感知》でビンビンに反応が有る。
20匹くらいいそうだ。
3分の1だな。
3人で20・・・あれ?
罠は感知出来るので避けて待ち受け場所まで来た。
ロブは走るのは苦手なのだろうまだ来ない。
ゴブリンが走って藪を突っ切る。
罠に足を取られ地面に派手に転がる。
そこに矢が飛んできて頭に突き刺さる。
次々に現れるゴブリンはミキとサーヤの矢で倒れていくが如何せん数が多すぎる。
体力は温存しておきたいがそうも言っていられない。俺も攻めるとしよう。
《カウンター》でゴブリンの攻撃を受け流してそのまま手首を切り落とす。
首まではマチェーテでは踏み込まないと小さいゴブリンには届かない。
しかし踏み込むと別のゴブリンが飛び掛かって来るだろう。
手首を切り落として継戦能力を奪い失血死を狙う。
そうやってゴブリンの数を減らしていたらロブが追い付いてきた。
「ブルアァァァ!」
「うおぉぉぉ!」
咆哮を上げるがスタンはないようだ。
やってやるとばかりに思わず吠え返した。
ロブと対峙するが周りにゴブリンも集まって来る。
「グルァ!」
右手の棍棒を振りかぶり横薙ぎに払う。
大振りなので《見切り》易い。
しかもレネより遅い。
《受け流す》?
いや、攻撃力が高過ぎる。
マチェーテが折れるかもしれない。
これは避けよう。
ブオン
「ギャビィィ」
「グギャァァ」
ゴブリン達が薙ぎ払われる。
これは良い!
ロブに薙ぎ払われるのを恐れてゴブリンは俺に近寄れない。
そこに矢が刺さっていく。
これだ!
ロブの前に立ち攻撃を誘う。
ロブの攻撃を恐れてゴブリンは俺に近づけない。
その間に2人にゴブリンを狙ってもらう。
先ずはゴブリンの数を減らす!
「グルアァァァ!」
仲間が次々やられていくのを見てロブが激高する。
何匹かはお前だけどな!
ロブが振りかざす。
今度は縦振りのようだ。
横に避ける。
ズウゥゥン
地面にぶち当たる。
そこにマチェーテで腕を斬りつける。
「グアァァァ!」
いいぞ。
何もしないよりは傷つけていった方が良いだろう。
先ずは持久戦だ。
ゴブリンが減るまでの。
それに腕を痛めたロブが攻撃出来ないようになれば尚更好都合。
「ほら、攻撃して来いよ!」
ザシュッ
「グアァァァ!」
右腕に斬りつける。
牽制なので深くはない。
ロブは俺を捕まえようと左手を伸ばす。
俺は左手に握っていた石を顔に投げる。
ドゴッ
「グアァァァ!」
反射的に顔を覆うロブ。
右腕を斬りつける。
ザシュッ
「グアァァァ!」
右腕が痛むのか、棍棒を左手に持ち替えた。
しまった。
サウスポーは想定外だ。
感覚が違う。
ロブが振りかぶる。
横薙ぎだ。
ブウン
縦振りだと攻撃後の隙を突かれると学習したのか。
ゴブリンも距離を取っていて巻き添えは無い。
しかし容赦なく矢が突き刺さる。
「あとはロブだけです!」
ミキの声だ。
そうか、あとはこいつだけか。
集中しているから《魔力感知》してる余裕なんてない。
助かった、流石だ。
こいつを射線に晒す為にずれる。
伝わったのだろう、矢が飛んできてロブに刺さる。
「グアアァァァ!」
叫んでいる所に斬りつける。
左手を斬られ棍棒を落とす。
ロブと目が合う。
何を考えているんだろうか。
逃げるのか。
闘うのか。
「ドルアァァァ!」
けたたましい咆哮が森に響く。
その首にマチェーテを薙いだ。