⑥-11-105
⑥-11-105
「何でも近々作戦が決行されるらしいから街から離れないようにって」
「君達は討伐隊は長いのかい?」
「んー、3ヶ月って所かしら」
「「「なっが」」」
「そう?」
「じゃぁ、結構殺ったの?」
「そうね、結構あちこちにいたから転戦してたのよ」
「そーいえば、そんな事言ってたな」
「あなた達は人を殺すの大丈夫?」
「あぁ、人と思ってないからね」
「ふふ、分かるわ」
「彼女達2人で1個ずつあいつ等のリンゴを射抜いてやろうと思ってる」
「ははは、いいわね。あんなクズ共に相応しい最後を見せるのよ」
「ダナ・・・怖い」
「だって、そうでしょ、フイネ!」
「そうだけど・・・」
「人でなし共よ、同情なんて必要ないわ!」
「同感だね。奴らの目の前で自身のリンゴを切り落としてウォーターリーパーに食わしてやる」
「あははは!いいわね!でもあいつ等の幹部が問題なのよ」
「魔法を使うって聞いたけど?」
「そう。しかも6人居るのよ」
「でもこちらもそれ以上いるんだろ?」
「結構スキルレベル高くて厄介な魔法使ってくるから」
「なるほどねー」
「盗賊は何人いるの?」
「マインだっけ?そーねー、50人って言ってたかしら」
「50人も?」
「前はもっといたのよ!ようやくここまで減らせたって感じね」
「たかが盗賊がなんでそんなに集まるのかな」
「そこなのよねー。なんか色々な地で声を掛けられて集まったみたい」
「ふーん」
「最初は300人くらい居たらしいわ」
「「「300!?」」」
「えぇ。凄いよね」
「スゲーよ。頭悪い奴がそんなに居たんだな」
「そっちかい!」
「じゃぁ作戦決行まで何して過ごせばいいのかな?」
「街周辺の魔物退治や依頼はこなしてもいいらしいから、私達はそれをするつもり」
「なるほど」
「この後は、ジャック?」
「あぁ。このまま解散して招集が有ればまた集まればいいらしい」
「招集はどうやって知る?」
「ギルドにいれば分かるってよ」
「分かった。じゃぁ、今日はこれくらいかな」
「えぇ。じゃぁまた会いましょう」
「「「こちらこそ」」」
解散して建物を出た。
「これからどうします?」
「魔物を殺して魔石を溜めよう。作戦決行までにはサーヤ君の防具も完成するだろう」
「そうね。私達のは魔法付与だから魔石が必要なのよ」
「そうなんですね」
「それと、決行日までに君達の攻撃スキルのレベルを出来るだけ上げよう」
「そうね。特に《弓術》」
「私は《弓術》と《槌術》ですね」
「あぁ。サーヤ君の《槌術》は《隠蔽》してるんだ。もし盗賊に《覗き見》出来る奴がいて《弓術》を警戒して近づいて来たらキツイのを1発お見舞いしてやれ!」
「はい!」
「先輩は?」
「僕は《カウンター》かな。あと雷魔法」
「魔法使うんですか?」
「切羽詰まったらね。見られても仕方ないだろう」
「そうですね。生きるか死ぬかだし」
「相手も凄い魔法使いが居るそうですしね」
「あぁ。ところでこの辺マイタケいないかね」
「ネムリマイタケがいるみたいですよ」
「・・・う~ん、どうしようか」
「いや、スキル上げの方が重要だからね!」
「そうだな」
「この辺では何に困ってるんだろう」
「ゴブリンって聞きましたよ」
「そうか、丁度いいな」
「そうですね。じゃぁゴブリン狩りますか」
「「おー!」」
それから毎日ゴブリンを殺し続けた。
菊池君は頭に必中する程の腕前となっていた。
サーヤ君のクロスボウも弓の射程より短いが必中の腕前になっている。
メイスとは交互に使っていた。
人型に対する忌避感も、度重なる戦闘で慣れていったようだ。
殺す事に慣れるのに忌避感を覚えるがこの世界では仕様が無い。
忌避感のせいで殺されるより、忌避感で後悔しつつも殺した方がいい。
そうした毎日を送っている内にサーヤ君の防具も完成した。
受け取って宿の部屋で着替えている途中。
「ちょっとくらい見てもいいだろ!」
「だーめ!駄目です!体のラインがはっきり出るんだから!」
「私は構いませんけど・・・」
「ほら!サーヤ君がそう言ってるじゃないか!」
「だーめ!見たら殺す」
「うっそだろ・・・」
「うん。似合ってるわ、サーヤ」
「ありがとうございます!」
「《魔力検知》!」
「あっ!どーせ見れないでしょ!」
「雰囲気だけでも」
「あほか」
「ようやく3人、同じ装備になったな」
「そうですね」
「ありがとうございます!」
「はっはっは。うれしそうだな、サーヤ君」
「はい!」
「まぁ、大熊の一撃を耐える程だからな。でも過信しちゃ駄目だよ」
「はい!」
「となると上着だな」
「「上着?」」
「僕達は森が主戦場だろう」
「えぇ」
「迷彩柄が良いんじゃないかなと思って」
「ふむー」
「どうした?」
(転生者ってバレません?)
「ふむー!」
「?」
「ひじょーに難しいところだね!」
「ですね」
「上からマントを羽織るとか」
「冬は良いけど夏は・・・」
「だよねー」
「とりあえずはっきりとした(デジタルな)迷彩にせず薄汚れてる感じにしたらどうだろう」
「イケるかもしれませんね」
「木や地面の色を下地に緑を塗っていくって感じかな」
「それじゃ下地の色の上着をまず買いましょう。それで染色してくれる所に持って行って染めてもらうと」
「だな」
急いで適当な上衣とついでに下衣を購入し染めてもらった。
迷彩上下衣はギリギリだが作戦開始日までには間に合った。
あらかじめ冒険者ギルドで知らされていたため、集合場所の衛兵の施設に向かった。
「5人探さないといけませんね」
「もう見つけてるよ」
「えっ?あっ!《魔力感知》?」
「あぁ」
「便利~」
敷地に入ると彼らの魔力を感じる。
「やぁ、ダナさん」
「あっ!エチル君、マインちゃんに、ターニャさん」
「お揃いかな」
「えぇ。元気してた?」
「えぇ。毎日ゴブリン狩ってましたよ」
「けっ!ゴブリンごときに」
「ゲイルも相変わらずですね」
「カイルだ!」
「あら、珍しい柄の服ねぇ」
「僕達のデザインで染めてもらいました」
「へぇ~」
世間話をしていると討伐に参加するのであろう軍兵が出て来て整列をしだした。
軍兵は300人程だろうか。
「おーい!冒険者も集まってくれ!」
冒険者はそんなに厳密に並ばなくても良いようだ。
適当に彼らの近くで並んでいた。
冒険者は50人くらいか。
「各パーティのリーダーは参集せよ」
ゾロゾロとリーダーだろう人達が集まる。
勿論俺もだ。
ジャック達とはパーティ登録の話は出なかった、つまりそういう事だろう。
「これからの予定を説明する。
先ずここから2日掛かる街まで進軍する。
その街から北西に3日行った森に盗賊団の拠点がある。
拠点近くで我々も拠点を設営、攻撃を開始する。
質問は?」
「はい」
「おまえ」
「誰の命令を聞けばいいんですかね?」
「俺だ。俺の小隊がお前ら冒険者中隊のリーダーとなる」
「了解」
「この後小隊分けを発表する。何番小隊になるか覚えておくように」
『了解』
「では解散」
やがてお偉いさんであろう着飾った軍服を纏った人達が出て来て皆の前に並んだ。
その中央に一段高い台がある。
なるほど、スピーチ台か。
グリフォンの紋章旗がはためいている。
と、そこにファーダネ卿が出て来て台に登った。