①-10
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「えっ!みんなと会ったんですか!?」
「あぁ、無事だったぞ」
「良かったぁ。ってみんな同じ街の周辺に転移したんですね」
「あぁ。でもあの世にいた約100人全員同じ街じゃないと思うが」
「どうしてそう思うんですか?」
「この街の人口約2千人だろ。そこに100人一気に来るってまずくないか」
「なるほど。人口の5%の難民ですもんね」
「一度みんなが泊ってる宿を見せてから飯屋に行こうと思う」
「どんな宿でした?」
「俺は泊まりたくないな」
「お、おぅ」
「ここより安いが・・・」
「分かりました。今後の参考までに見に行きましょう」
「ないですね」
「だろぅ」
「食事付かないし、ちょっと」
「前世で言うと、外国の相部屋の安宿ってところかね」
「《クリーンアップ》や《殺菌》があるにしても精神衛生面が不安ですね」
飯屋の戸を開け2人で中に入ると声が掛かってきた。
男A「おぉーい!加藤!こっちだ!」
店の奥にテーブルを置いて作ってもらったスペースに10人程が待っていた。
△△「おぉ!菊池さん!こっ「ミキぃー!」」
ミキ「きゃー!女A!」
女B「ミキ無事だったのね!」
ミキ「女Bも!女C女D!」
女A~D「きゃー!!」
ミキ「そうなんだ。みんな同じ場所に転移したんだね」
女B「ホントに異世界なんてびっくりしたよ~」
女C「もう働いてるなんてすごいね!」
ミキ「う、うん。お肉屋さんでね・・・」
△△「き、菊池さんは今まで大丈夫だったの?」
ミキ「?はい。なんとか無事に今日まで生き延びてます」
男A「街壁工事だって?辛そうだな」
カズ「あぁ。始めて数日だがまだ筋肉痛だよ。そっちはまだ働いてないんだって?」
男B「あぁ。当分情報収集してからの方がいいってことになってな」
男C「右も左も分からねーからな。そっちの仕事は信用的に大丈夫なのか?」
カズ「街壁工事って公共工事だろ?」
男D「それもそーだな。それ候補にしとこう。決めた時紹介してくれよ」
カズ「あぁ。分かった」
××「加藤君!」
カズ「あぁ、××さん」
××「部長って呼んでくれよ」
カズ「(はっ?異世界で前世の役職を?)・・・・・・××部長。元気そうで何よりです」
××「あぁ、ありがとう。ところで君のスキルを教えてくれないか?」
辺りを見回すと皆はぁ~、と溜息ついている。
カズ「調理ですね」
××「魔法は?」
カズ「火です。料理人には火でしょう」
××「なるほどなるほど」
カズ「ところで部長は何を取ったんですか?」
××「あ、あぁ・・・あっ、菊池君!君はどんなスキルを取ったんだい?」
ミキ「私はパティシエと火魔法です。部長は何取ったんですか?」
××「あ、あぁ・・・あっ、ちょっとトイレ行ってくる」
カズ「相変わらずだな」
男A「あぁ、全く」
カズ「異世界で『部長』って」
ミキ「他人の情報は聞くけど自分のは言わないって、子供みたいですね」
男B「そういうところも前世と一緒さ」
男C「能力伴わず役職に就いてしかも固執してる。かなわんよ」
カズ「あーゆー性格はこの世界ではヤバいんじゃない。金の管理はしっかりしておけよ」
男A「あぁ、勿論そのつ」
△△「菊池さんも僕らの宿に来なよ」
ミキ「えっ、あそこはちょと・・・」
女A「だよねー」
女B「ミキんところはどうなの?」
ミキ「まぁまぁ清潔だよ。トイレットペーパーなくて葉っぱだけど」
女C「それねー」
女D「まだ慣れないわー」
男A「幾らだい?」
カズ「夜朝飯付きで500エナだな」
男B「まぁまぁするな」
カズ「あぁ、働いてること前提だな」
△△「僕らもそこに移ろう」
男D「お前が今のところにしようって言ったんじゃねーか」
男C「そうそう。仕事見つけるまでは倹約だって」
△△「加藤と2人っきりだと危ないじゃないか。それに金に関しては当てがあるんだよ、菊池さん」
ミキ「えっ、どういうことですか」
△△「実は奥の手にしてたんだけど・・・前世の商品をこの世界の技術で作って売るんだよ」
ミキ「えぇ・・・なるほど」
男B「まー、誰でも考えるわな」
男C「転生者なら誰でもな」
△△「大ヒット間違いなしだよ!お金の心配は要らないようにしてあげるよ!」
カズ「商品作るための資金を貸してくれって言うんじゃねーよ?」
△△「うぅっ」
結局全員僕達の宿に来ることになった。
男達の何人かは俺と一緒の街壁工事へ、女性は飯屋で給仕等をして稼ぐことになった。
若干働かないヤツがいるが周りとも話し合って自己責任ということになった。
知らんぞ。
俺達5人は今、街壁工事で汗水を流している。
カズ「前世で夕日なんて久しく見てなかったな」
男A「全くな。殆どデスクワークだし、汗流すこともなかったしな」
男B「働いた後の飯のうまいこと」
男C「最初来た時の飯は不味かったが、今は平気だな」
カズ「塩が足らなかったんだろう。今は慣れたんだろうな」
男D「あー、そういうもんか。確かに調味料ってないよな」
男A「商売するならその辺りか?」
男C「何にせよ、先ずはまとまった額が要るだろう」
「「「「それな」」」」
「おーい!そろそろ上がりにするぞー!」
「「「「「わかりましたー!」」」」」
「マッサージします?」
「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「早くないですか?」
「《頑健》さんが仕事してるんじゃねーかな」
「《頑健》君ですか、そういえば私も解体やってるからか疲れにくくなってるんですよね」
「やっぱ《頑健》さんだと思うよ」
「《頑健》君、様様ですね」
「そういや菊池君、女性陣との相部屋じゃなくてよかったのか?」
「女は私入れて5人ですからね。2人部屋と4人部屋の2種類しかないんじゃ4-4-2-2でいいんじゃないですか」
「まーな、2の方はあの2人だからな。僕達と合わせて4人部屋は俺でも嫌だわ」
「絶っっっっっ対、嫌です!だから私達はこのままでいいんですよ。部屋移るのも面倒ですし」
「面倒っても荷物ないけどね。まー、何か不都合があれば言ってくれ。あっ、女性の日とか」
「デリカシー!って現状そういうわけにもいかないですね」
「バツイチだからその辺ある程度わかってるから気を使わなくていいよ。まぁ、君が気を使うだろうが」
「聞いていいですか?」
「何だ?」
「離婚してから結構時間経ってるじゃないですか。再婚とかは・・・」
「そうだな・・・」
「あっ、別に言いたくないのなら」
「まぁ、今となってはどうしようもないから構わないんだが」
「どうしようもない?」
「あぁ。離婚前から仕事しつつ副業をしてたんだよ。それで近々独立する予定だったんだ」
「独立!?」
「あぁ、それで婚活?それには時間を割けなくてね。まずは食えるようにしないとってな」
「あー、先輩会社に執着っていうか、そんな感じなかったですもんね」
「まぁ、今の時代って言っても前世の事だが。流行り廃りの移り変わりが速すぎる時代で、収入の線が会社の1本しかないのは不味いと思ってな」
「それだと会社と副業の2本でいいんじゃないですか?」
「給料よりも副業の方が断然上回ってな。会社にいる時間を副業に回した方が収入的には良いんだよ」
「なるほど」
「まぁ、今となってはどうでもいいことだが」
「すいません。プライベートな事聞いて」
「その程度の事聞かれても大丈夫ってな人間って分かってただろ?」
「まぁ、先輩と一緒に仕事するようになって結構経ちますからね」
「あぁ、だから今更だな。さっきも言ったが気を使わなくていいぞ」
「それで再婚は・・・?」
「あぁ。だから独立してある程度目途が立ったらって考えてたが・・・今だと考えられないな。主に金銭的に」
「ですよねー」
「将来の展望が全く描けないのはなぁ・・・」
「年金も保険もありませんしねぇ」
「実はちょっと気になってるというか気掛かりというか、職があるんだよ」
「何です?」
「冒険者」
「あっ、やっぱり!私もです。折角魔法取ったんですもんね。そういえば魔法って使える人そんなにいないみたいですよ、聞くところによると」
「そうなんだよ。土魔法なら街壁工事とかで重宝されそうなんだが」
「風魔法だと・・・洗濯物乾かすぐらいですか」
「俺の雷なんて一番生活の中で用途ないだろう」
「じゃぁ、やっぱり。冒険者?」
「気になってるんだよな」
「一度なってみるのもありなんじゃないですか」
「うーん、君も気になってるんだったら目指してみるか」
「とりあえず初期装備揃えるぐらいは貯めないといけませんね」
「全くもってその通りだよ。は~!前世でようやく金稼ぎ始めたってのに、また初めっからかー」
「しゃちょー!がんばりましょーよ」
「・・・菊池副社長これからよろしく頼むよ!」
「秘書でいいですよ」
「副社長の方が偉いだろう?」
「ガラじゃないですよ」
「そんなこと言ったら俺もだよ」
「先輩は独立しようとしてたんでしょ?」
「せざるを得なかったというか、ね。将来を考えれば」
「じゃー、今の状況もそうじゃないですか」
「・・・それもそうか。では改めて。菊池君!よろしくお願いします」
「しゃちょー!こちらこそよろしくお願いします!」
人の名前について:この物語ではメインストーリーにあまり関わらない人名は極力出さない方針です。しかし主人公との関わりからメインストーリーに関係なくとも出てしまう人も居るのでそこは御了承下さい。
男A~D、女A~D、△△、××:メインストーリーに関わりますが、それ程重要でもないけども演出上名前が必要な人達はこういった演出になりました。特に人数が多かったのでこういう描き方になりましたが、同僚たちはずっと後の章にまた出て来る予定で、その時に重要な役柄を演じる人達はその時に名前を出す予定です。