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令嬢とジャーニィ〜・守って!冒険者様!

掲載日:2020/09/04

ピンチの令嬢を助けた冒険者・・・ビジネスライク。

@短編その77

「嬢ちゃん!」

「スーバート様!」


俺は嬢ちゃんの手を引っ掴んで、引き寄せてキャッチ!抱き抱えて、突っ走る!!

腕の中の嬢ちゃんは、俺にしがみ付いている。

俺の後ろには数人の男達が追いかけて来てる。


「大丈夫、落とさねーって」

「スーバート様・・・ごめんなさい・・わたしのせいで」

「おもしれーから拘っただけだっちゅーの!気にすんな!さあ、ちょっと怖いかもしれねーから目を瞑っていろ!」

「はいっ!」

「うん、良い娘だ」


そして俺は嬢ちゃんを抱きしめ、崖を飛んだ。

落下しながら術を唱えると・・・


ぴーーーーー・・・

甲高い鳴き声が聞こえて。空に黒い点。それが一気に形になる・・ドラゴン急接近だ!


「よく来た!アリ!」

ピイッ!!


俺はドラゴンの背に乗り、そこから飛んで離れる。

地上には先ほど追って来ていた男達が何か騒いでいる。

さあて、この嬢ちゃんが悪なのか、先程の男達が悪なのか。

へへへ、面白くなってきたぜ!



俺はスーバート。ありきたりの冒険者だ。そしてこいつはゴールドドラゴンのアリゲーター。アリって呼んでる。

卵から育てているから俺に懐いている。アリは俺をにーちゃんと思っているようだ。

さて。


「嬢ちゃん。で、名前はなんていうの?偽名でも良いから言いな。言いたくないなら、嬢ちゃんと呼ぶ」

「・・・では・・・嬢ちゃんで」

「追いかけられてるんだもんな。ま、名無しでいいや。どうしたい?ここからは有料となるぜ?」

「あ・・・はい。そうですね・・おいくらですか?」

「どうしたいかで、額は変わる。ここはジューフェイ公国付近だ。ここの首都で下ろすなら、金貨2枚。ここより遠い所なら、金貨5枚から。ちなみに5枚はボッシュ国、セブライ国」

「・・では、セブライでお願いします」

「了解。トイレは大丈夫?お腹は空いてない?」

「・・・・・トイレ・・・お腹も・・・」

「いいから。恥ずかしがらないで。漏らされた方が困る。主に、アリが」


そして急降下。


「ビジネスライクで行こうや、な!」

「は、はいっ!!」


急速に降下するので、腕の中の『嬢ちゃん』は必死になってしがみ付いている。

うほ、胸がけっこうあるな。


俺の実家はニーマロン(旅行情報誌)でお馴染みのあそこだ。まあ、アニキが4代目、俺は次男で後継ではない。

アニキはひいじじいのマロン(ブロンズドラゴン)で旅をしたが、俺は自分で育てたアリで旅を続けている。

俺は冒険者となって、自由気ままに暮らしているがアニキは大変だ。あの偉大なニーマロンを継承だもんな。

でも、アニキはそんな重圧を軽々跳ね除けているからすげえ。

俺の手にはアニキの書いたニーマロン4代目版がある。

名所やグルメ情報、宿の施設とか、ドラゴン乗り用宿屋とか情報も充実している。

先ほど入った食堂も、アニキのニーマロンシールが貼られてあった。

シールが貼られているって事は、『ニーマロン御用達!』旨い店認定って事だ。

さすが食いしん坊なアニキだ。本当手頃価格でうまかった!

さて、アニキ情報では、ここに旅の休憩所があるはず・・・ああ、あそこか。


トイレ休憩ついでにお弁当を買い、領収書を貰う。これは嬢ちゃんのお食事代だ。

後で精算して頂くわけさ。ビジネスライクだよ。


「ああ。嬢ちゃん。まだ加算されるオプションがあるんだけど」

「あ、はい・・」

「戦闘になったら、俺たちは死ぬまでは戦わない。離脱する。その時は戦闘代は頂かない。でも、戦闘して勝ったら、頂くから。一回で金貨5枚。あとは、ポーション を飲んだらその分加算。分かったね」

「はいっ。頼りになります」

「そうか。やっぱり戦闘しなくちゃいけないか。早く乗って。来るから」

「えっ」

「アリ!!!」

ピーーー!!


追われている嬢ちゃんを助けた時から、これってもしかしたらかなりやばい案件かなとは思ったんだ。

でも俺は冒険者だ。

冒険を逃げてはダメだ。そうっしょ?


「アリは嬢ちゃんを守れ。落とすなよ」

ピイッ!


空を飛んで追ってくる3人に向かって・・・俺は飛んだ。

俺は空を飛べる。だからアリは俺をにーちゃんと思うわけだ。


「火幕!」


男達の目の前に、火の幕を引いた。

この魔法は、最近俺の国に来た大魔法使いに教わったのだ。彼は王子様の親友だけど気さくだ。

俺はニーマロンで有名な家の子だからね、王族や大魔法使いとも気軽に会えるんだよ。

本来の威力の火幕に触れると、一瞬で炎で体が焼かれて死ぬ。だから物凄く加減している。

ちょっと火傷する程度にな。


さあ、追手が怯んでいる隙に、遠くに逃げるぞ。

アリに取り付き、早く行けと指示すると、アリのやつすっ飛ばしやがった。

俺、まだしっかり乗ってねえ!!




ゴールドドラゴンは体を縮小させる事が出来る。

街に入ったらカバンに入れて移動だ。

ここからセブライ国まで、ドラゴンなら2日程度。

どんな理由で逃げているのかは知らない。というか、そこまで関わるのはどうか。


「さて、宿はどうするのかな」


女の子だから、あまり汚い宿はダメだろう。

すると、銀宿クラスか。銀宿は銀貨何枚って感じの宿で、小綺麗で女性に人気だ。

で。気になるのは・・・

彼女はちゃんとお金は持っているかな?

思い付きで逃げ出した娘は、だいたい持っていない。確率では85%。

俺はそこを納得して、引き受ける。

滅多にない冒険が出来るんだからな。

それと、嬢ちゃんは本当に令嬢か。

ちょっと小金持ちの平民かもしれない。

令嬢だと、後々面倒になる事案がある。

アニキも体験したし、父上、爺さん、ひいじじいも体験している・・・

それは・・・まあ、気にしないでおこう。多分大丈夫だ。


宿に入り、俺は隣の部屋に。明日は早くここを出て、山脈沿いを進むかなと地図を見て計画し、ちょっと小腹が空いたので外でパンとドリンクを買って・・と思ったら、依頼者の嬢ちゃんが宿の食堂でステーキを食べていた・・・

俺は・・・呆然としたぜ。危機管理とは。

急いで嬢ちゃんをかき抱いて、部屋に戻る。


「何やってるんだ!!お前、追われてるんだぞ!!追手に見つかったらどうするんだ!」

「でもお腹が空いて・・・」

「追われてる奴は、緊張して飯なんか喉を通らねえもんだ!!お前、どこまで図太いんだ?そして、食事代はチェックアウトの時に精算だったよな?お前の支払いだぞ?」

「あ、はい」

「ちゃんと払えよ」

「・・・はい」


大丈夫か?この嬢ちゃん。

先程の代金は、ちゃんとメモに記入して後で請求する。絶対だ。

可愛い()アリに干し肉とミルクを与えて、俺はパンを囓り、残りのミルクを飲む。

そっと外を見れば、もう追手が付近に待機だ。

ったく。

今抜け出す方がいいかな。


嬢ちゃんの部屋をノックするが、なかなか出てこない・・・


「出てこいっ!!来ねえなら、置いてくぞウラアッ!!」


ガン!!ドアを蹴り上げた。

『あ、はい・・』と、寝ぼけ声が聞こえる。


「すぐに着替えろ。5分しか待たねえ。受付にいるからな」


そして受付で精算。嬢ちゃんの分は領収書を書いてもらった。当然だ。

うへぇ、ステーキセットは銀貨2枚って!部屋は銀貨3枚だぞ?この娘、成金の娘かねぇ?

しかし暢気だな、この娘。大丈夫か?


5分ギリギリで出て来た。


「夜間手数料を頂きますからね」

「え?あ、はい」

「行きますよ」


見張りの目をすり抜け、裏通りから広場に出て、


「アリ!飛ぶぞ!」


ピッ!

小さくなっていたゴールドドラゴンが巨大化して、一度翼を羽ばたかせた。


「ごめんな、アリ。眠いだろうが、頑張ってくれ。後で旨い肉を喰わせてやるからな」


アリは俺の頬に頭をすりすりとしてくる。うん、俺の弟は可愛い。


「さあ、アリ。もう一気にセブライに飛ぶぞ。頑張ってくれよな」


回復魔法を掛けると、アリはふるふるっと首を振った。

そして一気に上昇、月夜を飛ぶ。



その後は妨害も無く。

途中休憩で降りても、追手の気配は無い。

1時間ほどアリを休ませる事にした。縮小させて俺の腕の中で眠らせる。


「ごめんな。昨夜眠らせてやれなかったもんな」


背中を撫でると、ピスピス寝息を立てるのが可愛い。

ついでに簡単な昼食、パンを囓る。

嬢ちゃんはパンでは不満のようだ。昨日ステーキを食べ終える事が出来なかったしな。

やれやれ・・・アリに負担がかかるが、さっさと依頼を終わらせるか。

金、貰えるかなー。

なんか貰えない気がする。今までの経験から言えばね。

さあて・・・

どうなるのかな?




嬢ちゃん side *******




護衛がうるさい、うざい。

だからちょっと悪戯で、困らせてやろうとしたの。

そしたら素敵な冒険者がいて、助けを求めたの。


「俺はスーバート。じゃ、ちょっと助けようか?」


きゃー!素敵!まるでおとぎ話のよう!

姫を助ける騎士、みたいな!


私を軽々抱え、ぴょーーんと飛んだり!すごーい!

冒険ね!きゃあ、警護隊長のスクワランが遅れを取ってる!


でもドラゴンの背に乗ってからは・・・有料って!


「ビジネスライクです」


ですって。名前も聞かないし。まあ、私もムッとしたから、嬢ちゃんのままにしたけど。


でも良心的価格かしら?あの場所からセブライまでは地上から行くと1週間、旅費も交通費だけで金貨5枚はする。それに宿代も入れると・・・まあ、親切価格!!


でも追って来た護衛の魔術師たちを、見た事もない術で追い払ってる。

凄い。護衛に欲しいわ。ゴールドドラゴンに乗っているし。

なんとかしてスカウトしたいわね。



なんて思っていたら、夜中に出立するとか言うし!

どうやら護衛に気づいたのね。ステーキも半分しか食べれなかったし。しかも代金は私が払うって!

『危機管理がなってない』とか言うし。

だって私の護衛だもん、安心しちゃうわよ。

追われている設定なんだから、大人しくするのは当然なんでしょうけどね?

あーーん、つまんなーーい!!

夜中に出立し、何度か休憩を挟みつつではあるけど、ずっとドラゴンの背中だし!

景色は綺麗だけど、退屈しちゃった!




で。

超特急で、セブライ国に到着!!


「では、代金は金貨21枚いただく」


そして明細を見せられた。

ドラゴン送料、夜間手数料、超特急代、宿代、食事代など細かく書かれてあった。

夜間と超特急がすごく取られていた。

当然金貨を5枚以上持たない。


「あ、あの・・お金」

「うん。無いとは思っていた!」


うっ。


「まあこういう冒険が楽しめた、って事で、チャラにする。じゃあな」

「あ、あのっ!!お金、払いますから!」

「どうやって?」

「私の・・・そう、親戚がここに住んでいますのでっ!建て替えてもらいますから!」

「金貨21枚は大金だよ?」

「大丈夫ですっ!さあ、来てください!」


そう。親戚と言うより、兄が住んでいるのです。外交官として、王城に勤務しているのです。

スーバートさん優秀ですもの、兄上に言って引き抜いてもらうのがいいわ!


「ふーん、王城にいるの?その親戚」

「はいっ」


門側の警備詰所で兄を呼び出してもらう、待つ事20分・・・


「ハリエ!何をしているんだ!どうやってここまで来れたんだ?」


兄様が息急き切って登場です。大慌て、急がせてしまいました。


「金貨21枚を貸して頂きたくて」


私の側にいるスーバートさんをちら、と見ます。


「冒険者に頼んで連れて来てもらったのか」

「これが明細です」


兄上、目を通します・・・ん?という顔をしたわ。どうしたのかしら。


「お前と言う奴は。冒険者殿、妹が大変お世話になった。これを持っていって頂きたい」


ひょいと出したのは・・・白金貨!!しかも深々と頭まで下げたのです!!


「貴方が誰か、俺は理解しています。本当に、申し訳ありませんでした」


え・・・ええっ?兄上が頭を下げるほどの人物だったの?


「あ。スーじゃないか、どうしたんだ、こんな所で」


知らない人がやって来ました。どうやらスーバート様の知り合いのようです。


「!」


彼らの登場に、兄上がびっくりしています。二人の学生はニコニコ笑って、片方の金髪くんが誘います。


「スー、せっかく来たんだ、泊まっていけ」

「いや、いいよ。今回は辞退する」

「そうなのかい?サトクラの『カコ』が、ついにドラゴン形態に進化したんだよ。見たく無いか?」

「見るっ!!!」

「あーははは!!やっぱし食いついたなーー」


黒髪の方がスーバート様の肩に腕を乗せて笑っています。

そして3人は和気藹々と笑って城門内に入っていきます。

兄上は3人の後から付いていきます。つと止まって、私の方を振り返ります。


「お前、彼が気に入ったんだろう。ダメだぞ、彼にはチョッカイを掛けるんじゃ無いぞ。でないと、我が侯爵家が取り潰しに合うかもしれないからな!帰りの馬車を用意したから、そのままここで待て」


兄上が門の中に入ると、大きな城門が閉まってしまいました。

私の冒険も、これでおしまいです・・・




国に帰ってから、父上に大変怒られてしまいました。

3ヶ月間、屋敷で謹慎です。


その後分かったのですが、スーバート様が名家の次男で、魔法の才能がおありな将来を約束された方であると。


「お前では全く相手にならん!二度と彼を煩わすで無い!」


でもあの冒険、数日だけでしたが、ちょっと楽しかったです。

私のような貴族の娘は、冒険なんて出来ないし、起こり得ないですもの。

素敵な青春の思い出になりました。

あの時の2人の学生は、セブライ国のギルブリット王子、そして護衛のサトクラだったのです!

本当、一生の思い出になりました。

兄上には金貨21枚、きちんとお返ししましたとも!


でも兄上は狡いのです・・・

あの後、殿下とサトクラ、そしてスーバート様と一緒に『ドラゴン形態』を見たそうです。

しかも試乗したとか!

おまけにアリの背にも乗って滑空したと言っていました!

さらに、サトクラが入れる紅茶も堪能したとか。

兄上は外交官としても有能ですもの。ロビイストですものね。いいなー。



なんて思っていたら、兄上が久しぶりに我が家に帰って来たのですが・・・一緒にスーバート様と!


「やあ、嬢ちゃん。元気だった?謹慎してたって聞いたけど」


クスクスと笑っています・・・んもう、兄上余計なことを言ったわね!


「サトクラがくれたんだけど、俺いらないから」


彼がポケットから何かを取り出しました。

凄くキラキラ光っている・・・ペンダント?


「まあ!これ、もしや竜骨のお守りですの?」

「エンシェントドラゴンの角から作ったそうだよ。嬢ちゃんにあげる」


そして私に近寄って、首につけてくれました。きゃあ、傍に寄りすぎ!


「そうそう、実は君に頼み事があってね。引き受けてくれる?」

「頼み事ですか?そうですね、私の頼み事、聞いて頂きましたもの。()()()()()ですわよ?」


そう答えると、スーバート様は目を見開いて・・ブハッと吹き出しました。


「あはは!やっぱり君は面白い子だ!頼み事というのはね」




今私はスーバート様の隣、彼にエスコートされてパーティー会場にいるのです。

一人では参加出来ないパーティーなので、エスコートするから一緒に来て欲しいと頼まれたのです。

また私の冒険の思い出が増えました!!


パーティーの熱気で熱くなった体の火照りを鎮めようと、ベランダに二人で出てたわいもないお喋りをして。

スーバート様と出会った時の話で、私の護衛にスカウトしようと思ったことを白状して、笑いを取りました。


「貴女の身分を知らなかったとはいえ、本当にご無礼しました」

「護衛かー。今まで出会った女性は、俺を婿に、夫にと思ってくれた人ばかりだったよ。護衛だったか」

「はい。とても強くて有能でしたもの」

「君は本当に面白いね、ハリエ嬢。これからも、宜しく」

「はい!」





こうして何か催しがあったり、パーティーがあるとスーバート様は私を連れていってくれるのです。


うーーーむ。

そんなに私は面白いのでしょうかねぇ?


この間はスーバート様のお城・・お宅にお呼ばれしてきました。

あの有名なブロンズドラゴンのマロンにも会えました!

お兄様の4代目様にもお目に掛かりました。スーバート様よりもひとまわり体が大きいです。


「やあ、よくいらっしゃいましたね。弟がお世話になっています」

「いえ、こちらこそ」


腰の低い方です。握手をしていると、スーバート様がツカツカとやって来て、私の手を引っ張って行くのです。

そういえば、4代目様はまだ独身でした。スーバート様の態度に、くすくすと笑っています。


「大丈夫、お前の娘だ、取りはしないよ!」


え、えええ?4代目様、何を言うんです!

それって、それって?

先に行くスーバート様の・・首や耳が、真っ赤です。



私の冒険は・・・まだまだ続くようです。




思いつくまま、ほぼ1日1話ペースで書いてたけど、そろそろペース落ちるかな。

9月は『令嬢』がお題。


タイトル右のワシの名をクリックすると、どばーと話が出る。

マジ6時間潰せる。根性と暇があるときに、是非。

とか書いているが、自分が怖い。まだネタはある。というか、手が動く。自動書記?


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