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私ですか?テイマーです

どうも皆さまこんばんは。ナリアです。


なんかかけたので予告なしで上げまーす。


私の場合、おかしなシーンにも意味があることがあります。

それではどうぞ。

──



この世界には『職業ジョブ』というシステムがある。


15歳になると同時に教会に行って選ぶことができるのだ。


現れるジョブは一人に一つ、神に決められたもの──



というわけではない


それまでに積んできた経験や素質によって現れる種類も数も人それぞれ。



剣を習えば【剣士】が、『魔法』を学べば【魔法使い】がというように、それぞれにそれに関する恩恵があり、己の学んできたことをさらに飛躍させることのできるシステムになっている。


無論、【剣士】が『魔法』を使えないなんてことはない。


いうなればジョブはその分野に関するアドバンテージなのだ。



故にジョブによる差別意識はほとんど存在しない。





「【冒険者】の登録をお願いします」

「ではこの用紙に必要事項を記入してください。代筆はいりますか?」

「大丈夫です──書き終わりました」

「拝見します──『グレイ』さん、出身はルイン村、年は18。経歴はなし、ジョブは──【テイマー】、ですか」


職員が微妙な顔つきになる。


「失礼ですが、誰かから【テイマー】について指導してもらったことは?」

「ないですが」

「『魔法』は?」

「【身体強化】くらいですかね」


淡々と答えるグレイに何とも言えない表情になる受付担当。



戦闘ジョブでないことも要因の一つではあるが、【テイマー】というジョブが大きくかかわっている。


他のジョブの恩恵が『身体能力向上』であったり、『魔力強化』であったりと比較的わかりやすいのに対して、【テイマー】の恩恵は『意思相乗』。魔力に意思が乗せられるといったものだが、それが何の役に立つのかがわからないというのが一つ。


もう一つは『自分で戦わなくて済む』という点から『貴族』が選ぶことが多いということが一つ。


そして、一番の理由が──魔物を『テイム』する技術がしっかりと確立されていないからである。


『貴族』の場合は生まれたばかりの魔物にしっかりと上下関係を教え込むことで忠誠を誓わせたりするのだが……それにはかなりの金と時間がかかる。


一般的な【テイマー】も戦っていたら何故か突然、心が通じ合って主従の関係になったり、稀にではあるが目が合った魔物が突然、などといった曖昧な条件で成り立つことも多いのだ。



──そんな曖昧な環境で初心者が魔物を御しきれず、暴走させてしまったのも無理のない話なのかもしれない。



意味の解らない恩恵、貴族に対する苦手意識や嫌悪。さらには体系化されていない技術、それによる被害の過去。


様々な要因が重なった結果、初心者の【テイマー】は忌避感を覚えられてしまうのだ。


「……やっぱりよく思われないか」

「すみません、顔に出てましたか」

「いや、気にしていない。この先実績を積んで信用されればいいだけだ」


それを知っている彼は嫌な顔ひとつせず淡々と事実を述べる。


──たとえ知らなかったとしても同じような反応だった可能性はあるが……



「取り敢えず登録を進めてもらってもいいか?」

「非戦闘職の方には戦闘試験を受けて頂きますが……よろしいですね」

「もちろん」

「では──ティーチさん、今日はクエスト終わってますよね。この人の戦闘適正を見てあげてください」


受付がロビーに呼びかけると一人の男が立ち会がる。

筋骨隆々の大男で所々に傷のある強面の、どこか貫録を思わせる人物であった。


「……俺か? まあ、構わねえが、ちゃんと功績として入るんだろうな?」

「もちろんです」

「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」


一緒にいた男たちにそう告げて歩み寄る男は、近くにいるとより一層威圧感を感じる。


「ティーチだ。お前さんは?」

「グレイです」

「ジョブは?」

「【テイマー】です」

「【テイマー】か。ああ、あと【冒険者】同士で敬語なんざいらねえよ。素でいいんだ、素で」

「では──よろしく頼む」

「おう。じゃあ、ギルドの裏でやるからついてこい」


その言葉について行く。


「……お前は、俺にビビらねぇんだな」


そんな中、ふとティーチが呟いた。


「なんだ急に」

「こんななりだからな。実力もそこそこ認められて、こうして頼られることも増えてきたが……いまだに俺を怖がる奴は多いんだ」

「まあ、見かけで判断する奴は多いからな」

「そういうこった。ま、それだけじゃないんだが──着いたな。そこの箱に入ってる武器を適当に選んでくれ」

「刃を潰した、鍛錬用の武器か……ティーチはどうするんだ?」

「普段は大剣だが、今回は普通の剣だな」

「じゃあ、俺もそれにしよう」


剣を選んだ二人は少し距離をとって向き合う。


「……お前、経歴はないって言ってた割に剣になれてるな」

「明記できる経歴がないだけで、剣の心得くらいはある」

「わかった、とりあえず打ち込んで来い」


その言葉に従い、踏み込んで振るわれる剣を捌いてゆくティーチ。


(なるほど、確かにそこそこ技術はあるようだな。だが、何か変だな……)


打ち合っているうちに言葉にできない違和感を感じ始めていたティーチは己の感覚に従い剣を振りぬく。


「っと、これは戦えるか見るためのものじゃなかったのか?」


突然首あたりをめがけて振るわれた剣を防ぎながら言う。


「なんだか随分と余裕層に見えたもんで──なあ!」


強引に振るわれた一撃はガードしたグレイの身体を吹き飛ばす。


「凄いパワーだな」

「さっき言いかけた、俺が恐れられる理由だが──俺のジョブは【狂戦士】なんだ」

「【狂戦士】、か──」


瞬間、ティーチは初めて自分に興味が向けられたのを感じた。


「ティーチ、何故お前は今、俺にそれを明かした? 深い関係でもない俺に、ここで明かすことにメリットなんてないだろう?」

「お前はジョブに思うところがなさそうだったからな。それと打ち合ってみて、お前は県以外のナニカを前提に戦っているように感じた。そしてお前は【テイマー】だ」

「──なるほど、【狂戦士】としてのチカラを少しとはいえ見せたんだから、お前のチカラも見せろと」


互いに顔を向けながら笑みを向ける。


「戦えることはわかった。だからお前がどこまでできるのかを見せてくれよ」

「わかった──『スライム』」


了承と共にグレイが呼びかける。


瞬間、グレイに紅い線が走ったように見え──ティーチの視界が赤く染まる。


アレは、敵ダ。俺が、■■ないト──





──気が付いた時には壁は所々崩れ、地面は荒れ果てていた。


「いったい、何が──」

「気が付いたか」


あたりを見回すティーチにグレイの声が届く。


「俺、は──くっ」

「なかなかに興味深いな、【狂戦士】というのは」


笑いかけながらグレイは歩み寄り、膝を着いたティーチに手を伸ばす。


「暴走、したのか……? なぜだ……?」

「いや、今回のはめぐり合わせというか、俺が悪い」


その手を取るか否か、迷ったティーチの手を強引にとって立たせる。


「いやあ、まさか本能的に気づかれるとは思ってもみなかった。人間に残された野性って言うのも侮れないな」

「……なぜ、笑ってられる。俺は今、お前を殺そうとしたも同然なんだぞ!?」


からからと笑うグレイにポカンとするティーチは思わず問いかける。


「そりゃあ、楽しいから。理性に隠されない人の強さをまざまざと見せられたんだ。楽しいに決まってるだろ。人間はこれほどの強さを持ってるんだぞ、ってな」


楽しげに語るグレイの言葉を理解してきたのか、ティーチも自然に笑みが浮かんでくる。


「ああ、そうだ……忘れてた。俺は誰よりも強くなるために【狂戦士】を選んだんだ」

「そうか、いいじゃないか」

「そういうお前は、どうして【テイマー】になったんだ?」

「俺は単純に、『魔物』っていう未知の奴らを知りたかったからだ」

「そうか。これからよろしくな。ダチとしても、同僚としても」

「ああ、よろしく頼む」


そうして二人は固い握手を結ぶのであった。







「さて、こうして最初の依頼として町の外に来たわけだが……『薬草採集』か」


どこかウキウキしている彼は早速あたりを見渡して──ため息をつく。


「やっぱり町付近だと魔物はいないよな」


視線を落とした先にたまたま目的の『薬草』を見つけて皮肉気に笑う。


「ま、宿代すらないんだ。とにかくやるしかないよな」


そうやって薬草を集めていると──スライムから感情が伝わってくる。


「薬草を食べてみたい? うーん、まあ、こんだけ集まるならちょっとくらいいいか」


そう言い訳して薬草をつかみ──ふと思う。

そう言えばいま、スライムは己の肉体の中にいるのだと。


「あー、どうやって食う? え、味覚を同調した? 何それ凄い」


という訳で。


「いただきまーす。……うーん、ニガイ、エグい。葉っぱの味。しかして仄かに香る爽やかな薬味」


何故か採取した薬草をその場で頬張り、食レポを始めるグレイ。


その体内にいるスライムは大喜びである。


実はスライムという魔物には味覚がなく、これが初めての味だったのだ。


「え、うまい? そ、そうか! ならもっと味わうといい!」


そんなスライムの新しい側面を垣間見たグレイは大喜びで薬草を頬張ってゆく。


「そうか、うまいか……!ここのところお前の好きな『魔力水』もあげられなかったからなぁ……ごめんな。お前にいろんなもの喰わせてやるためにも、稼がないとな」


そう言って視線を手元に落とせば、集めていたはずの薬草はどこへやら──というか、彼の腹の中である。


「……なくなっちゃったか。依頼で必要だし、何よりスライムが気に入ったっていうなら多めに持って帰ってやりたいしな」


そうして考えた末に導き出した答え。


「……やっぱり森の方が生えてるよな」


そう考えたグレイはどこか楽しそうに森へと入ってゆく。

そこで見つけた薬草の三本に一本を口に放り込みながら奥へと進んでゆく。


──その時だった。


近場の草むらが、がさりと揺れる。


「──ちょうど、今の身体でどこまでできるのか試したかったんだ。協力してくれるか?」


己の体内に問いかければ、“是”という意思が返ってくる。

同時にくさむらから複数の、小さな緑の人型──『ゴブリン』がわらわらと現れる。


「【テイマー】としてはやっぱり、従魔を増やしておきたいところだし、ちょうどいい──」


グレイの体表に紅い、血管のような線が走る。


「──さあ、【契】ろうか」

「ぎゃぎゃ!」


笑みを浮かべ、その拳で目の前の獲物に襲い掛かるのであった。

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