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傍若無人王ロドルフ 【ブランシュ王国記2】  作者: 一狼
第1章 小麦事件と新開発
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◇◇◇1-⑤家族◇◇◇

アベルは王都を立ち7日でプーリーに到着した。


「アベル!良く来た!少し背が伸びたか?」


ロドルフとアベルの父親、第7代国王ヴァレリーはこの年50歳、本来ならばまたまだ国王として現役で活躍している歳であった。


北の隣国ロジリアとの度重なる戦を勝利で収めたが、国境守備のため自らプーリーに赴き、王位を長子ファブリスに譲った。


しかし、ファブリスは半年後、狩の際に落馬し、呆気なく死んでしまった。

そして妻子のなかったファブリスに代わり次男のロドルフが王位に就いたのであった。


「父上!おひさしゅう御座います!」


「良く来た!皆息災か?」


「はい、兄上は相変わらず城を抜け出してガストンを困らせております。」


「はははっ、私も良くガストンに叱られた!」


久しぶりの親子の対面であった。


アベルは来訪の意を告げた。


「小麦はしかと送ろう。しかし、その放火事件はかなりきな臭いな。ロドルフの事だ、自らあちこち走り回っているのだろう。」


「私が王都を出発したときはまだいらっしゃいましたが、兄上のことです、城にじっとしている訳がありません。」


親子はやれやれといった体で笑った。


「しかし、運河作りとはロドルフも考えたものだな。」


「はい、さすが兄上です。それから、別の輸送手段も同時に開発を指示なされました。」


「ほう、それは?」


アベルはデメトリオに詳細な説明をするよう求めた。


「はい、運河を建設しても河を遡り物資を運ぶにはかなりの労力を必要とします。

それにたいしてブレソールが蒸気機関という動力装置を船に積んで、風や人力に頼らない船を作ることを提案しました。」


「蒸気機関とな?」


「はい、要するに火を焚き湯を沸かし、蒸気を作り、その圧力を利用して水車を回し、水を掻くと言うもののようです。」


「なるほど・・・それは面白いな・・・」


「更にロドルフ陛下は、蒸気機関を小型化して馬の代わりに陸上を走れる車の研究も指示なされました。」


「可能なのか?」


「ブレソールが言うには、理論上可能だということです。」


「それが実現すれば、運送だけでなく、軍事戦略も根本的に変わってくるぞ、ロドルフはそこを理解しているのか?」


ヴァレリーはアベルに問いただした。


「まだそういった話は為されていませんが、兄上のことです、考えはあると思います。」


「一度ブレソールから直接聞いてみたいな・・・そうだ、来月父上が王都に来るな!よし、私も行くぞ!」


「お婆様も喜ぶでしょう。ところで父上、プーリーにおいては、王都近郊の焼き打ち事件のようなことは起こっていないのでしょうか?」


「うむ、プーリーにおいては発生しておらぬ。」


「去年はリノの北部付近で同様の事件が起きております。

小麦相場を操ろうとするのであれば、焼き打ちなど行わなくとも買い占めれば済むと思うのですが、焼き打ちまで行った犯人の意図はどこにあるのでしょうか?」


アベルは、ヴァレリーの意見、判断を聞きたかった。


「確かに焼き打ちなど行って捕まれば死罪は免れぬからな。

とすれば、相場を操作して利益を得る以上の目的があるということだろう。

去年から続いているとすれば、政治的な目的があるのか、もしくは、ブランシュの国力を低下させるための敵対国の仕業か・・・」


「ロジリアでしょうか?」


「わからぬ、確かにロジリア以外の周辺国とは近年友好状態にある。

しかしだからといってロジリアとも言い切れまい。

むしろ、国内に国家転覆を企む組織が在るのやも知れぬなぁ。」


「ブランシュにおいてですか⁉」


「どのような国でも政府に反する考えを持つものは存在する。有り得ぬことではない。」


扉が開く音に振り返ると二人の女性が部屋に入ってきた。


「アベル!」

「アベル兄様!」


母のマルスリーヌと妹のクローディーヌであった。


「母上!クローディーヌ!お久しぶりです!」

「アベル、息災であったか?」

「はい、この通り元気です!」

「兄様お話は終わりましたか?王都のお話をお聞かせください!」

「アベル、もうよかろう、久しぶりに家族で食事をしようではないか、バルトロも同席せよ。」


その夜は和やかな晩餐となった。

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