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序章②『刀傷の男』

ロドルフが誘拐された!

犯人はヴァレリーも知るあの男だった!

前作で行方がわからなくなった男とは?


ロドルフは船の中にいた。

縛られてはいないが、船底の小部屋に閉じ込められていた。


城から連れ出され、小船で川を下り、西海の沖合で大きな船に乗せられた。


ロドルフを拐ったのは、三十歳前後のブランシュ人だった。

端整な顔立ちであったが、左頬に大きな 刀傷があった。


ロドルフが何を聞いても答えなかったが、ただ一つ、ロドルフの持つ短剣を見て


「それは!・・・」


と言って取り上げ、ひと言


「キミヤス様・・・」


とだけ声を発した。


ロドルフは「キミヤス」という名前に心当たりがあった。

それは、ヴァレリーに仕えた将軍、キミヤス・ダテであった。


キミヤスは、ヴァレリーが王位に就く前に「ロジリア戦役」で活躍したが、戦闘で片足を失い、怪我から復帰した後、西海のエーデランドと北の隣国ナルウェラントとの「北海条約」締結に尽力し、多大な功を成した。

しかし、キミヤスの父と同じく、肺病のため若くして亡くなった。


ブランシュ王国王族の墓所は、王族に連なるものだけが埋葬されるが、その入口に守護神としてキミヤスは葬られていた。

それだけ「キミヤス・ダテ」は、ブランシュに貢献した人物であった。


「ダテ将軍を知っているのか?」


返事はない。


「その短刀は、ダテ将軍が亡くなる直前に父上のために拵えた長短一対の刀の一つだそうだ。

父上が長刀は兄に、短刀を私に守り刀としてくだされた。」


「・・・」


「ダテ将軍には養子にしようと考えていた従僕がいたというが・・・」


「おしゃべりが過ぎると命を縮めるぞ・・・」


その男は背中越しに言った。


「そうか。」


ロドルフはそう言って黙った。


船が動いた。


ロドルフは、どこへ向かうのか知るよしもなかったが、不思議と恐いとは思わなかった。


ロドルフ8歳の春だった。


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