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傍若無人王ロドルフ 【ブランシュ王国記2】  作者: 一狼
第1章 小麦事件と新開発
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◇◇◇1-⑪お、お姉ちゃん◇◇◇

ロドルフはセレスティーヌを伴いヴィクトリーヌを訪ねた。


ヴィクトリーヌはレアンドル、ヴァレリーの姉に当たる。レアンドルが即位した当時、「姉上が男であったら・・・」と、レアンドルは何度もヴァレリーに愚痴をこぼしたという。


「ロドルフゥ!いらっしゃい!」


ヴィクトリーヌはロドルフに抱きついて頭を撫で回した・・・というより、髪をクシャクシャに掻き回し、頬をつねり回し、肩といわず背中といわず叩きまくった。


「叔母上、痛いです!痛いです!」


「まあ、また叔母上などと!お姉ちゃんとおっしゃい!お姉ちゃんと!」


レアンドルが王座にあった際、王宮護衛の女性だけの部隊『ルージュ・レオポルト』と呼ばれる部隊を結成し、初代隊長となった烈女である。


レアンドルやヴァレリーが王位に就くにあたっては、バンジャマンもでさえもヴィクトリーヌの意見を求めた。


ブランシュ一の才媛と言われ、求婚された数は数えきれないほどだった。


しかしヴィクトリーヌが最終的に選んだ男は、誰もが驚く男だった。


「陛下、いらっしゃいませ。」


「義叔父上、お邪魔してます。」


「陛下いらっしゃぁい!」


「ジュディット、元気にしていたか?」


コランタン・バルテレミー、ヴィクトリーヌの夫は、男爵の爵位を持つが元々は平民であり、

王城の西に広大な土地を持つ農園主である。


主に葡萄を栽培し、ヴァン醸造元でもある。


王宮にもヴァンを納入する蔵元で、そのヴァンの美味しさにヴィクトリーヌが農園を訪れ、その結果ヴィクトリーヌはコランタンに嫁ぐ事となった。


もちろん反対はあったが、ヴィクトリーヌは強引に、レアンドルの協力を取り付けた。


元々男であったら国王、しかも名君になったであろうと言われていたヴィクトリーヌである。


誰にも止めることが出来るはずもなかった。


また、コランタンもその為人からレアンドルに好感を持たれ、当時の国王から「姉をお願いする。」と言わしめたのだった。


そして数年後、ジュディットが産まれた。


「ジュディット、ママは陛下とお話があるの。陛下はお食事をされてから帰りますから、その間おとなしく遊んでいてね。」


「では私がお相手しましょう。ジュディット様、何して遊びましょうか?」


そう言ってセレスティーヌがジュディットの手を引いて表へ出た。


「セレスティーヌは良い娘ですね。ロドルフ、嫁に貰ってしまいなさい。」


目を細めて娘とセレスティーヌを見送りながら、ヴィクトリーヌは当たり前のことのように言いはなった。


「それは良い、陛下もそろそろ身を固めてもよろしいでしょう。セレスティーヌ殿ならば申し分ない。」


「義叔父上まで何を言われますか・・・」


ヴィクトリーヌの夫となれる程の男である。

貴族に産まれていれば一軍の将たり得たかもしれない。日焼けして逞しい二の腕からは想像も出来ないほどの優雅で繊細なヴァンを作り出す。


ヴィクトリーヌはコランタンの、その見かけとは裏腹な繊細で誠実な仕事振りに惹かれた。


コランタンも王族とは思えぬヴィクトリーヌの気さくな言動、何よりも飾らない笑顔に魅了された。


二人はほどなく恋に落ちた。


「大事な話があるようですね。私は席をはずしましょう。」


そう言ってコランタンはジュディットとセレスティーヌの後を追った。


庭からは三人の楽しげな笑い声が聞こえた。


「叔母う・・・ヴィクトリーヌさ・・・ま・・・」


「お、お姉ちゃん・・・」


「なぁに?ロドルフゥ。」


ヴィクトリーヌの視線に負けたロドルフであった。


「ジュディットはますます綺麗になっていきますね。」


「あげないわよ。」


ロドルフは危うく口に含んだ茶を吹き出すところだった。


「従妹ですよ!」


「あら、無い話しじゃないわよ。」


どこまで本気なのかわからないヴィクトリーヌであった。


「ところでおば・・・お、お姉ちゃん・・・せめて『姉さん』で勘弁していただけませんか?」


「仕方ないわね!」


「ありがとうございます。ヴィクトリーヌね、姉さん。」


理不尽さを拭いきれないロドルフであった。


「小麦焼き討ち事件の事はお聞き及びですか?」


「なに?もう少し楽しい話を持ってきなさいよ。まあ、仕方ないわね。」


ヴィクトリーヌは手ずから焼いたクッキーをつまみ、ロドルフにも勧めながら話を続けた。


「聞いているわよ。先日父上がリノへ戻る前に遊びに来たわ。ジュディットと遊びたかったのでしょう、三日も泊まっていったわ。その時に聞いているわよ。」


「では、王宮に繋がるという犯罪組織の事も?」


「ええ、父上が王位に就いた時代だと私はまだ生まれていないわ。だから直接見聞きした訳じゃないけど、父上から昔語りに聞かされたことはいろいろあるわ。」


「ヴィクトリーヌ姉さんの見解を伺いたいのですが?」


ヴィクトリーヌもバンジャマンが知る以上の事は知るよしもないのは当然の事であろう。


それでもロドルフは、『男であったら名君の器』と評される叔母の意見を欲した。


「ジョスランに聞いてみなさい。」


「ジョスランとは、あの父上の御代に執政を勤めていたジョスランですか?」


「そう。もうかなりの高齢だけと、今でも元気に庭仕事などしているみたいよ。私もしばらく振りに会ってみたいわね・・・明日にでも一緒に行ってみようかしら?それが良いわ!そうしましょう!決定!」


ヴィクトリーヌはそう言ってジュディット達のところへ行ってしまった。


「叔母上には敵わぬな。」


そう言ってロドルフも後を追った。

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