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傍若無人王ロドルフ 【ブランシュ王国記2】  作者: 一狼
第1章 小麦事件と新開発
14/27

◇◇◇1-⑩ゴーチエ▪アルドワン◇◇◇

時は遡る。


「ゴーチエ!暗殺などでは一時的に凌げても国は治まらんぞ!」


バンジャマンの即位以前、第4代国王が、病床に伏してから、執政は歴代執政を勤めてきたファルギエール家ではなく、財力を背景にのしあがってきたアルドワン家のゴーチエがその任に就いていた。


当時のファルギエール家当主ブレアックは、権力闘争を嫌い、高齢を理由に執政辞任を申し入れた。


第4代国王リエールは病床にあり、太子のバンジャマンは和平交渉のためエーデランドに赴いていたため、ゴーチエに反対できるものは居なかった。


「然れど陛下、エーデランドとは和平が成ったとはいえ、まだロジリア、ダレツという強国の他にも、南方リノにおいて海賊や海を航ってくる南方大陸の国々の脅威に晒されております。三方に兵を分散できるほど国力は御座いませぬ。ブランシュの仕業とは分からぬように手配り出来ますゆえ御一任頂きとうございます。」


「そのような輩を飼っているのか?」


バンジャマンはゴーチエに対して不快感しか持てなかった。


「飼っているなど滅相もない。蛇の道は蛇と申します。何処にでも裏の稼業はあるもので・・・」


結局バンジャマンは暗殺策は受け入れなかった。


北のロジリアは国内に権力闘争問題を抱え、ブランシュへの進攻どころではなくなっており、

南方リノの治安問題も、喫緊に領土が侵されるというほどのものでもなかった。


そのためバンジャマンはダレツ対策に集中し、サボワールの要塞化を成し、当面のダレツ対策を成功させた。


しかしこの間、バンジャマンがサボワールに於いて陣頭指揮を取っていたため、王都バルドーには居なかった。


その間にゴーチエは権力を手中にしてしまった。


バンジャマンは王都へ帰還した後、王宮対策に忙殺された。


ゴーチエには悪い噂が絶えなかった。


バンジャマンは一つ一つゴーチエの悪行を暴いていった。


そして、決定的だったのが、第4代国王リエール毒殺計画であった。


第4代国王リエールは病床に伏していたが、その原因が毒物であると判明、ゴーチエが送り込んだ医官の犯行であった。


ゴーチエは関係を否定したが、執政辞任は避けられなかった。


ゴーチエは、蟄居謹慎を言い渡され、翌年病死したと報告された。


ゴーチエには一人娘がいた。


名をドロテといった。


しかし、ゴーチエの死後姿をくらませた。


アルドワン家は断絶した。


◇◆◇◆◇


「爺様、そのアルドワン家が関与していると仰せなのですか?」


ロドルフはバンジャマン時代の暗闘が、まだ終わっていない可能性に心が冷える思いだった。


「しかし父上、そのアルドワン家の娘ドロテと言いましたか?消息がわからないのですよね?王宮に繋がっている、少なくとも上級官僚には該当しそうな女人は居りませぬ。どのような女官にしても身元は確認されておるはずですが?」


ヴァレリーがカミーユに確認を求めた。


「はい。王宮の人事にあたっては、ヴァレリー様の御代の改革によって縁故による採用は行われておりません。しかし、それ以前から王宮に働く者については、一応の身元確認はしておりますが、それに間違いがない保証は御座いません。」


「カミーユ、もう一度王宮に働く全ての者、一切の例外もなく身元の確認を行え。配偶者、子供、孫に至るまで明確にせよ。」


「畏まりました。陛下、ここ二年ほどの間に王宮を辞したものも調べとうございますが、御許可頂けますでしょうか?」


「許す。」


こうして王宮に働くものの全てが調査の対象となった。


それはロドルフの腹心の者たちも例外ではなかった。


アルドワン家に繋がるものを見つけるための調査であったが、意外な事実が次々発見され報告された。


ヴァレリーの治世下、様々な改革が行われ、縁故による王宮人事や収賄などは撲滅されていたはずだった。


しかし、末端に於いては、未だ賄賂がまかり通っていたり、縁故による官吏採用があったりと、不正が横行している事が明るみに出た。


ロドルフはカミーユに不正の一掃を命じた。


「陛下。不正を処断するのは容易いことです。しかし、再発防止策を講じなければいたちごっこになります。いかがなされますか?」


カミーユの問いにロドルフは腕を組み、じっと目をつぶって考えた。


「分からぬ。カミーユ、少し時間をくれ。」


そう言ってロドルフは執務室を出た。

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