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傍若無人王ロドルフ 【ブランシュ王国記2】  作者: 一狼
第1章 小麦事件と新開発
13/27

◇◇◇1-⑨ユニオン ガレア◇◇◇

翌日、故アレット妃の墓参がしめやかに行われた。

当初よりは大人数となったが、元々バンジャマンとカロリーヌのみが行う予定の墓参であったから、国を挙げての行事とはなりえなかった。


墓参を終え、王宮に戻るとバンジャマンが先の小麦焼き討ち事件について話し出した。


「ロドルフよ、結局その事件の真相は分からずじまいなのか?」


「はい、爺様。州令が関与していたのは分かったのですが、どうやらその上が王宮にまで繋がるようだと言うことまでで途切れてしまいました。」


ロドルフの言葉に一堂はどよめいた。


「王宮に共犯者がいるというのか?」


レアンドルが声を荒げた。


「確定したわけではありませんが、ブルデアの商人の間では真しやかに噂されています。何より州令が刺殺されたことが王宮であれどうであれその上に首班がいると言うことだと思われます。


「小麦を買い占めていた商人は?」


「はい、今のところ州令に操られていただけと思われます。州候のダミアンは州令に良いように言いくるめられていたようです。」


ロドルフの説明に一堂はため息をついた。


「その王宮に繋がるという話だがな・・・」


バンジャマンが憂うるように続けた。


「何かご存じなのですか?父上?」


ヴァレリーが問うた。


「うむ・・・ブランシュの建国の時代に遡る話だが、初代リシャール王が建国した際、ある宗教組織の力を借りていたらしい。


この組織は宗教という衣を被ってはいたが、その実は暗殺や要人誘拐などを生業とする犯罪組織であったようだ。


もともとこの組織はガレア島の自警集団であったという事じゃ。


ブランシュ建国よりも昔、ガレア島は大陸の国々とエーデランド等の強国に攻められガレア島民は散り散りに大陸に逃れたらしい。


そして現在のブランシュにあたるどこかの土地にて地下組織を結成したという話が伝わっておる。」


現在、ガレア島は、レアンドル国王時代末期に、ヴァレリーがナルウェラント、エーデランドと結んだ三国条約、いわゆる「北海条約」の中心貿易地として機能している。


その時代は、既に住む者もなく、大蛇の巣食う蛇島であった。


「聞いたことは無いか?ユニオン・ガレアという名を。」


バンジャマンの問いにレアンドルが答えた。


「父上、以前ブランシュの歴史を学ぶに当たって、ガレア島の自警集団として教えられた記憶が有りますが、その実は犯罪組織であったということですか?」


「いや、犯罪組織と変貌したのはガレア島を棄てて大陸に移住した後の事であろう。

もともとガレア島は漁業と海賊行為で生計をたてていたというからな。

陸に上がれば犯罪に手を染めねば生きていけぬのであったやも知れぬ。」


「そのユニオン・ガレアがどのように関わっているのですか?」


ヴァレリーが問うた。


「まあ、最後まで聞け。初代王は建国にあたって今は併合されているいくつかの小国を攻略するのにこの組織を使ったらしい。詳しい事は不明じゃが、暗殺もあったということじゃ。」


誰かから呻き声が漏れた。


「そして建国を宣言した後、この組織は初代王を脅迫した。

建国にあたり犯罪組織を利用したとなれば、あっという間に生まれたての国が滅んでしまう。初代王は、この犯罪組織を邪教として滅ぼした。いや、実際は宗教組織としての表の顔を潰しただけであったようだが・・・」


「現実はユニオン・ガレアは残っていると?」


ロドルフは建国に隠された暗部に少なからず衝撃を受けたが、それはロドルフだけではなかった。


「分からぬ。当時の司祭と呼ばれた首領は間違いなく葬られたというが・・・」


皆言葉がなかった。


「しかし爺様、今の話が今回の焼き討ち事件にどう関わっているとお思いなのですか?」


ロドルフは話の繋がりが見えなかった。


しかしそれはレアンドルやヴァレリーも同じであった。


「わしの在位中、国の四方に紛争を抱えておったのは承知じゃろう。特にダレツの進攻にはほとほと手を焼いた。」


「はい、私もまだ幼く、父上は孤軍奮闘であったと聞いております。」


レアンドルが少年期の記憶を遡るように相づちを打った。


「そのような時期、わしにダレツ国王暗殺を持ちかけたものがおる。」


「なんと!」


「それは!」


一堂は口々に驚愕の声を発した。


「他ならぬ当時の執政ゴーチエじゃ。」

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