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傍若無人王ロドルフ 【ブランシュ王国記2】  作者: 一狼
第1章 小麦事件と新開発
11/27

◇◇◇1-⑦墓参◇◇◇

4月、南部の港湾都市リノから、第5代国王のバンジャマンがやって来た。


バンジャマンの先の妃アレットの墓参のためであった。


バンジャマンの現在の妻はアレットの妹カロリーヌである。


バンジャマンは、当時ブランシュとは紛争の絶えなかった西海の海洋国家エーデランドとの和平協定を締結するため、全権委任の王太子として頻ぱんにエーデランドを訪れていた。


そこで、エーデランド王室の外戚にあたるアプルトン家の長女アレットと恋に落ちた。


和平協定締結目前だったとはいえ、長年紛争の絶えなかった国と国である。結婚に賛成するものは少なかった。


しかし、当時のアプルトン家の当主チャーチルは、バンジャマンの為人に惚れ、この男ならばと溺愛していたアレットを嫁がせることにした。


ブランシュとエーデランドの和平協定が為り、更には、バンジャマンとアレットの結婚という吉事に、当時の両国民は沸き立った。


しかし、二人の蜜月は長く続かなかった。


結婚から一年後、アレットは身籠った。


めでたく長女ヴィクトリーヌが誕生したが、それと引き換えにアレットは命を燃やし尽くしてしまった。


アレットには幼少から姉妹のように育ち、献身的にアレットに尽くす侍女がいた。


名前をオレリアといった。


アレットの死を受け止めきれないバンジャマンとオレリアは、一夜だけお互いに慰めを求めた。


誰にも責めることは出来なかった。


しかし、その一夜の出来事で王子が誕生することとなった。第6代国王レアンドルである。


しかし、レアンドルはオレリアの信念である『主家への忠節』を目の当たりにして育った。


レアンドルは、王位継承に当たり時期を見て『主家の長子』である次男のヴァレリーへの譲位を条件とした。


バンジャマンは、長子継承の原則を守りたかった。それにはバンジャマンの死後の王位継承問題を避けるため、若くして譲位する道を選んだ。


こうしてレアンドルは王位に就いた。


当事、ブランシュは長年にわたり東の隣国ダレツからの侵攻に手を焼いていた。


これは、ダレツの内陸国家としての性質から、南方に港のある領地を欲したという国情によるものだったが、ブランシュにしてみれば迷惑この上ない事であった。


しかしレアンドルは、ダレツとの国境地域であるサボワール城において、辛抱強くダレツとの和平に腐心した。


この頃から王都バルドーを留守にすることが多くなったため、実質上ヴァレリーに王権を委任し、ダレツ対策に当たりつつ、ヴァレリーに国王修行をさせた。


そして、ダレツ同様に紛争が絶えない北のロジリア問題をヴァレリーに一任し、自らダレツとの和平締結を為し、ヴァレリーがロジリアとの紛争に一応の決着をつけ、同時にエーデランドとナルウェラントという犬猿の仲であった2国の間を取り持って、3国による北海条約を締結したことで当面の紛争状態は解決したと判断したレアンドルは、かねてからの計画通り、王位を弟ヴァレリーに譲った。


そしてレアンドルは自ら国境のサボワールに入城し、東方総督として主にダレツを中心とする東方国家との窓口となった。


奇しくも、バンジャマンが譲位を機に南方の安定を図るために南方の拠点都市リノに移り住んだ例に倣った形となった。


ブランシュは、第7代国王ヴァレリーの時代、南に第5代の元国王、東に第6代の前国王が国境に睨みを効かすという特殊な国家構造となった。


更に第7代国王ヴァレリーが、長子ファブリスへの譲位を決行し、北の要衝プーリーにて国境に睨みを効かせると、ロドルフの時代、ブランシュは武力進攻に対して鉄壁の守りを完成させた。


これにより、国内の様々な産業が安全に推進され、周辺諸国よりも飛躍的に国力を増強させることとなった。


第5代のバンジャマンから第7代のヴァレリーまでの3人は、『三賢候』と呼ばれ、長く国民から尊敬を集めた。


その『三賢候』が、ブランシュの王都バルドーに集結していた。


バンジャマンが先の妃アレットの墓参のために現妃カロリーヌを伴いやって来ていた。


それに同道するためにレアンドル、ヴァレリーの元国王二人、レアンドルの母オレリア、アレットの唯一の子であるヴィクトリーヌ他、レアンドル、ヴァレリーの兄弟姉妹も揃っていた。


ロドルフは気が重かった。


当初はバンジャマンとカロリーヌのみの墓参予定であった。


しかし、ヴァレリーが来ることになり、それを聞いたレアンドルが来ることになり、更にはヴァレリーの兄弟姉妹が集まる事となり、ロドルフの叔父叔母一堂が勢揃いすることとなったのだった。


中でも伯母のヴィクトリーヌは苦手であった。

国王であったレアンドルもヴァレリーもこの姉には頭が上がらない。


「ロドルフぅ~、またいい男になったわねぇ~」


そう言ってヴィクトリーヌはロドルフを抱きしめ、顔を撫で回した。


「叔母上、お元気そうで何よりです・・・」


「まぁ!ロドルフ!ほんとに良い男振りだこと!」


さらに、一番年下の叔母であるアンジェルもロドルフの顔を撫で回した。


「アンジェル叔母上もお元気そうで・・・」


「これこれ、ロドルフが困っているではないか、のう、ロドルフ。」


そう言って叔母二人からロドルフを撫で回す権利を奪って、


より激しく撫で回したのはバンジャマンの妃、カロリーヌであった‼


「おばあ様、いとうごじゃりむふゆ・・・」


ロドルフは言葉にならない。


「まぁ!おばあ様だなんて!カロリーヌ様とお呼びなさい!カロリーヌ様と!」


ロドルフの頬は鷲づかみにつねられた。


「はははっ!」


その様子をアベルが笑ったが・・・


「アベルぅ~」

「アベルぅ~」

「アベルぅ~」


3人の矛先はアベルに向いた。

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