067 1フレームの空白
ジョーカーの怒号と共にゴルドレイヴンは両手に持った短銃を構え、アルミラージに向けて射撃を始める。
短銃からはマシンガンの様に弾丸が放たれるが、その一発一発は歴戦のスナイパーの狙撃に匹敵するほど正確にアルミラージを捉えていた。
アルミラージは弾丸を擦れ擦れで躱しながら、全速力でレイヴンに向けて飛び立つ。
「ダキニ聞こえてるか、直ぐにバンダースナッチの拘束粒子を解け」
【ダキニ】「まだブラックホールは半臨界だぞ?それに解いたらコロニーが崩壊する」
「装置さえ生きてればいい、トラヴァルジンで覆ってんだから大丈夫だよ」
【ダキニ】「私の隠れる場所が無くなるではないか!」
「自分の身は自分で守れ、ちゃんと攻撃兵器"サミダレ改"も渡してあるんだし」
超兵器サミダレ改、持ち主であった超機体カメリアが破壊された後、超兵器"イチゴイチエ"と共にリメインの元に渡る。
その後リメインによって改造され、散弾数が少なくなった代わりに戦艦主砲並みの威力と射程を持つ連射ライフルへと生まれ変わった。
【ダキニ】「貴様がシールドだけ貼ってれば良いと言ったでは無いのか?」
「ったくしょうが無いなぁ、俺が担当してる無人機六百体、それらの操作権を渡す……それでいいだろ、さっさと解除しろ」
【ダキニ】「ぬかす事が二転三転……ふん、これだから人間は……」
ブラックホールによって発生した重力場を抑える為の拘束粒子が解除され、コロニーが捻じれながら圧壊を始める。
「よし――」
それと同時にレイヴンは"異様な射撃"を始めた。
アルミラージを狙った連撃の合間に、腕を鞭の様にしならせながら真横や後方など、見当違いの方向へ発砲を始めたのである。
【アイリス】『一体何を?……だが弾幕が薄れた』
回避で一杯であったアルミラージはビームライフルを構え、レイヴンへ向けてカウンターの射撃を始めた。
「精確なだけで通ってない射撃が、俺に当たると思ってるのか?」
高速で移動しながらもアルミラージからの狙撃はレイヴンの頭部やメインスラスターがある臀部を捉える。
「そんなもの吹かさず全弾回避出来るさ――」
レイヴンはその場から一切の移動をせずに、瞬時に射撃の姿勢を変える事で閃光を躱してのけた。
【アイリス】『掠ってもアウトなビームライフルをニーリングやプローンで躱す奴は初めて見た』
【アイリス】『でもいくら腕が良くても、その場から動かない射撃じゃ固定砲台と同じ、絶対俺には当たらない』
【アイリス】『やはり力量差が無い場合は近接戦でしか決着が――』
「……ふっ」
【アイリス】『っ!そうだ、ジョーカーには"羽"が――』
アイリスは間一髪、アルミラージの左右後方と真後方面から飛んできた弾丸に気づき、回避行動を取る。
【アイリス】『危なかった……放たれた弾丸の空間移動、あさっての方向を撃ち始めたのはこの為か』
「あっ、やっぱそう思うよな、ハズレだよ」
【アイリス】『えっ!?』
「超兵器頼りと思われるのが癪だから言うけど、回転による"技"で曲げてんだよね、弾道をさ――」
【アイリス】『ありえない!空気抵抗や重力が無い場所で、変化球みたいに弾の軌道を変えるなんて……』
「それを可能に出来る巨大な重力場があるとしたら?」
レイヴンが指し示した方向には、辺りの瓦礫や小惑星を飲み込む黒い点を中心とした禍々しい光の渦が存在していた。
【アイリス】『ブラックホール――』
「その通り、アルミラージは360度、四方八方からの"狙撃"に見舞われる」
【アイリス】『くっ!』
レイヴンから放たれる弧や円を描く予測不可能な弾道はアルミラージを完全に釘付けにする。
「弾や焼付いた銃身は羽によって即座に補充出来る、無尽蔵に弾をバラ撒く弾幕シューティングのボスキャラになった気分だ」
「さぁどうする?まさかこのまま一方的な中距離間での決着になる分け無いよな?鍵山白華ァ!」
【アイリス】『MRPシステム――』
アルミラージの廻りに蛍の様な小さな光の群れが発生すると、向かって来る弾丸の軌道上に幾つもの盾を造形させ行く手を阻んだ。
「そう来るか、いいね……"悪手"だけど」
レイヴンは舞う様にスナップを効かせた射撃から、腕を真っ直ぐと伸ばした射撃へと戻す。
放たれた弾丸はアルミラージを直接狙った物では無く、造形され宙に浮いている盾へと向かう。
弾丸は盾の紆曲した側面に当たり、弾性衝突によって跳ね返ると、ピンボールの様に次々と別な盾と衝突しながらアルミラージへ向けて飛んで行った。
(宇宙では衝突反射による運動エネルギー低下は少ない、到達点の本体に充分刺さるだろう)
(同じ変則だが"曲弾"より短距離で来る"跳弾"、お前自身が作った盾で弾の近道を作ってしまったんだ――)
盾から盾へと伝った弾丸は、やがてアルミラージ付近の盾に衝突する。
しかし、他の盾と同じように弾性衝突による跳ね返りが起きず、そのまま盾にめり込んだのであった。
【アイリス】『弾丸を曲げる妙技をやった奴だ、跳弾ぐらいして来ると予想してたさ』
(自機に近い盾をあえて低品質に造形したのか、MRPの応用力もだが)
(見るべきは初弾で完璧に対応した事、普通じゃ出来ない、俺と同じ"怪物"――)
アルミラージは弾丸を防ぎながらビームライフルでけん制しつつ、再びレイヴンに向かって飛び始める。
夥しい数の変則弾丸を造形した盾でこじ開け、突き進む姿はまるで"モーセの海割り"の様であった。
レイヴンとの距離が徐々に縮まり、接近戦に移行する間合となる。
「気に入らないな……まるで接近戦なら勝てると思っている動きだ」
【アイリス】『強さとしてのあんたは認める、だからこそ"俺の距離"で挑む!』
「――そうか、俺は認めない、お前の距離だと?道化も真顔になる冗談だ、近接だろうが潰してやる!」
レイヴンは両手の銃を放り、指を開き両腕を前に突き出す構えをする。
奇しくもなのか、必然なのか、アルミラージも同じ構えであった――。
二機の拳足による激しい攻防が始まる。
相手の攻撃を流し、掴んで体幹を崩す戦闘が主だったアイリスだが、ジョーカー相手には打撃を主とした攻め以外を許されなかった。
(思っていたよりも近接戦における反応速度が早い)
(俺、鍵山白華が18歳の時……こんな動き出来たか?)
蹴りやパンチの交差の中、十手に一度は回避では無く手足でのガードをお互い強いられる。
そんな中、先に限界が来たのはレイヴンの方であった。
(くっ!……蹴りをガードした前腕部位にヒビが入った)
(こっちも速撃を幾つか当ててるんだが、純粋な機体差、装甲の質が向こうのが上なんだ)
(お互い速撃しか当たらない状況、続けばこちらが不利になる……カウンターを貰わずに重撃を当てなければ)
(重撃が相手に当たるまでには"ワンフレーム"が必須、対面での打ち合いでは回避される、遅いんだ、俺達の世界では――)
(距離を取るか?……いや取ってたまるか、ふざけるな!近接でも俺が上なんだ)
(作るんだ、1フレームの"空白"を――)
レイヴンが防御した部位に、僅かな裂傷を与えている事はアイリスも気づいている。
真剣勝負に置いて、優位性を生かし弱点を付くのは常套――
道は違えどジョーカーとアイリスも同じ考えである。
アルミラージは徹底して距離を詰め、速撃での連打を一層強めた。
「俺達のバックボーンは子供の頃習ってた"合気道"、組関節や投げ技主体に見えるが当身7分投げ3分って教わるな」
【アイリス】『あぁ、今は当身10分で行ってるけどね』
「その他に"陰陽"教えがあったよな、うろ覚えだが……技をかける仕手と食らう受け、陽の攻撃を陰で受け、陰の攻撃を陽で受ける摂理――」
【アイリス】『今いる?その話、余裕無いだろ』
連打をガードし続けたレイヴンの前腕装甲は剥がれ、あと数発の打撃によって腕が使用不能になる所まで来ていた。
アイリスはジョーカーが距離を取る選択をすると予測、離れれば得意の銃撃や羽による転送によって腕の交換が可能だからである。
「先に言っておく、お前の攻撃は陰にも陽にもならない」
レイヴンは正面を向いたまま逆噴射によるバックステップで距離を取る動きを見せる。
行動を予測していたアイリスは引く一手によって出来た刹那の隙を見逃さない、スラスターは逆噴射より通常噴射の方が高加速であるのが常――
レイヴンの逆噴射と同時にアルミラージは急加速によって距離を詰め、大振りの重撃となる右ストレートを叩き込んだ。
アルミラージが放つボディを狙ったパンチをレイヴンが両手でガードするが、重撃に耐え切れず前腕が大破して使用不能、となるはずであったが――
「"無"だ――」
レイヴンはたった二本の指で、力の乗った重撃をピタリと止めた。
【アイリス】『なっ!?』
「羽による異世界からのエネルギー転用、当然その逆も然り――」
レイヴンは指の間に"無名羽"を挟み込み、パンチによるインパクトを異世界へ飛ばしたのである。
(当たると確信していた重撃の空振り、そこに生じた"1フレームの空白"に付け込む――)
動きが一瞬止まったアルミラージのボディ目掛け、レイヴンが重撃のパンチを繰り出す。
【アイリス】『くっ!!』
間一髪、アルミラージは両手の平によるガードを成功させた。
「やっぱ掴んだな、掴んどけよ……よーくなっ!」
攻撃を防いだ後に関節を掴む癖、同じバックボーンを持つジョーカーだから仕掛けれた"罠"、ジョーカーの狙いはパンチによる攻撃では無い。
レイヴンは完全に掴まる前に腕を引き抜くと同時に、アルミラージに羽を握らせていた――。
【アイリス】『しまっ……!!!!』
「言ったろ、無だと――」
羽が輝き、アルミラージの両手首から上が消滅……否、転送された。
(悦を出すのは二流、このまま攻め潰す)
レイヴンは間髪入れず再び重撃のパンチを、今度は確実にボディを狙って繰り出した。
【アイリス】『追撃時、相手の両足を見て距離を測る癖――』
レイヴンのパンチはアルミラージのボディ擦れ擦れの所で空を切る。
「なっ!?」
アイリスはアルミラージの両脚の僅か前方に、MRPによって両脚のみを造形し距離間を騙していた。
重撃を盛大に空振りしたレイヴン、発生した1フレームの隙をアイリスは見逃さない――
【アイリス】『掴んだぞ、よーーーーくなっ!』
アルミラージはレイヴンの右手首を掴むと、一瞬で背面方向へと捻り投げた。
(もう手首から上が再生してる、くそっ!ベクトル読みの失敗!俺が"四方投げ"を食らうなんて!!)
レイヴンは身体を捻りながら右腕をパージして拘束を解くが、すかさず頭部目掛けアルミラージの肘打ちが飛んで来る。
「やらせるか!」
レイヴンは肘打ちの軌道に羽を挿み込んで衝撃を消すと同時に、背部にある羽(大)を起動させ機体を異空間移動させた。
対となる銀の羽はアルミラージから二キロ離れた場所、第四世界で予備のパーツを繋げ治し、無傷の状態からの仕切り直しとなったがジョーカーの心中は穏やかでは無い。
(近接戦で押されていた……機体のパワー差もあるが、MRPでの再生が想定より早かった)
(空域に散布されたMRPの材料と機体に搭載された材料、どちらを使うかで造形・再生スピードが変わるんだ、無線と有線の違いか……)
(搭載場所は臀部にある丸い玉、掴まった時に福音の残光が見えた)
(あの造形速度はやっかいだ、近接戦に拘るのは改めなければならない……)
(プライドの為に敗北が過る事は許されない、機械は機械らしく勝利のみを渇望しろ――)
レイヴンは二丁拳銃を装備し、アルミラージに標準を合わせる。
アイリスもレイヴンが飛んだ位置に気づき、MRPによって周りに盾と手元にアサルトライフルを造形して中距離戦に備えた。
(やる事は変わらない、1フレームの隙を付く、中距離でも俺なら……)
レイヴンの二丁拳銃から弾幕が放たれ、それを造形した盾で防ぎながら接近を試みるアルミラージ、近接戦前と同じ様な状況となる。
(あいつはあくまで近接狙い、得意な距離でこちらの羽を消費させる、塩戦法だが堅実だ)
(淡々と勝利を目指す意識は当時の鍵山白華と同じ、だがあいつの戦い方は――)
レイヴンは弾幕で牽制すると同時に、アルミラージの予測進路上に羽をバラ撒く。
アイリスは撒かれた羽の役割に瞬時に気づき、弾幕を躱しながら撒かれた羽に向けて銃を撃ち始める。
【アイリス】『羽から飛翔体を転移して弾幕の増量が狙い、銀の羽は"出口専用"、ならばこちらの銃弾を打ち込んでも転移される事無く破壊可能だろ』
アイリスの読みは当たっていた。
次々と破壊される羽であったが、撃ち漏らした羽からは銃弾が放たれる。
直弾、曲弾、跳弾、そこからさらに異空間射出弾が加わった弾幕がアルミラージに向けて飛び交うが、一度受けた攻撃パターンに一手増えた所で通用するほどアイリスは甘く無い。
弾幕は釘付け所か足止めにすらならず、アルミラージは着実にレイヴンへと接近して行った。
「銃のスペルはこれで終わりじゃない――」
レイヴンは肩から手首にかけての関節をドリルの様に回転をさせ、腕を鞭の様にしならせた狙撃を始める。
【アイリス】『またそれ系か……』
放たれた弾丸は真っ直ぐとアルミラージへ向けて飛んで行くが、MRPによって造形された盾に当たる。
しかし、弾丸は弾かれる事は無く、盾の表面をスルスルと"走行"をして盾からアルミラージへ向けて飛び立った。
「発射されたのは球状の特殊な弾丸、ゴルフやテニスの"バックスピン"は知ってるか?それと似た現象を弾に引き起こさせた」
「弾道にどんな障害物があろうとも迂回によって弾着地点へと目指す」
三十六発の回転弾は跳弾対策用のやわらかい盾にもめり込むこと無く滑って行き、着弾まで数メートルまでに迫る。
しかし、アルミラージは回避行動をしなかった。
【アイリス】『弾丸がまるで生き物の様に……』
回転弾はアルミラージの手足や体に接触すると、螺旋を描く軌道で身体を這いずりはじめる。
【アイリス】『凄いな、俺には到底出来ない技……でもこれは"曲芸"に過ぎない――』
それでもアルミラージは回転弾を無視し、他に飛翔してくる弾の対応を淡々と行っていた。
(それでいい……三流は気づきもせず、二流は混乱し、一流は回避か防御を選ぶが、"怪物"は動かない――)
(回転弾は推進力を抑えられている事と数度軸受けを行った為に着弾地点に到達する頃の運動エネルギーは皆無に等しい、機体に傷一つ付けられないだろう)
(初見で、一瞬でそれを見抜いて余計なリソースを割かない……だからこそ)
「お前には刺さる――」
【アイリス】『なっ!?』
アルミラージのコクピットに配置されている外部の様子を映し出すモニタは計三十六台、それら全てが同時に真っ暗になった。
(回転弾はダメージや誘発を狙った物では無い、アルミラージに搭載されているカメラはメイン、サブ含め三十六台)
(カメラの位置はレンズから発せられる補助光で確認、アンドロイドだからこそ見える僅かな光……)
(そこを狙った三十六発の回転弾は同時にレンズに着弾)
(経由によって推進力が削られた弾丸は跳ね返らずにレンズ前にビタ付け、コクピットモニタはブラックアウトになる)
(お前が闇に陥る時間は0.3秒――)
ジョーカーは着弾と同時に羽を起動させ、機体をアルミラージの後方二キロ地点を漂う小惑星へと異空間移動させる。
("出口"となる銀の羽はいたる所に潜めておいた)
レイヴンは銀の羽が先端に刺し込まれた銃をアルミラージに向けて構えた。
(遠距離からでも生めたぞ、1フレームの隙を――)
「終わりだ……"王者の銃弾"」
後はトリガーボタンを押すだけのジョーカーであったが、コンマ1秒に満たない間の迷いが生じる。
(意識外から飛んで来る小さな光速弾、俺だとしても7割がた直撃する)
(でも、なんだ……頭の中であいつが避け切るビジョンしか浮かばない――)
「……くそっ!」
ジョーカーは銃の照準をアルミラージのボディから僅かにズラして、銀の羽を発動させた。
(確実に避けられる、それなら――)
銃口に現れた異次元への穴から一筋の閃光が放たれる。
【アイリス】『後……光っ!?』
アルミラージが振り返ると同時に、機体の直ぐそばを閃光が通り過ぎた。
王者の銃弾はアルミラージ後方に漂う小惑星に着弾し、核に匹敵する大爆発を引き起こす。
【アイリス】『狙いは衝撃波――』
アルミラージは即刻反転し、MRPによって複数の装甲板を造形して爆破の衝撃を防ぐ。
しかし、衝撃波への対応と姿勢制御に意識を多く割いたせいで銃弾を放ったと同時に急接近して来たレイヴンへの対応が遅れる事となった。
「王の駒は布石に――」
【アイリス】『本命は近接か!?』
アルミラージの背後に迫ったレイヴンから右の重撃が放たれ、アイリスはせめてボディへの致命的な一撃だけは避けようと、懸命な操作を行う。
【アイリス】『胴部ジョイント、捻ってベクトルを!』
レイヴンからのパンチが僅かに逸れるが、アルミラージの下腹部に軽い衝撃が走る。
アルミラージはそのままの勢いで廻し蹴りを放ち、レイヴンとの距離を広げた。
【アイリス】『危なかった……目隠し弾からのコンボを防げたのはデカい、一度見た技はもう食らわない』
「いや、……お前はちゃんと食らったよ――」
【アイリス】『そ、それは……!』
レイヴンの突き出した右手には、球状の白い物体が握られていた。
【アイリス】『MRPの"ストレージ"……』
レイヴンは手品を披露する様に、掴んだ白い玉に金の羽を被せて消し去る。
「ストレージに入っている具には素早く命令信号が送れるんだろ?……これで厄介な"高速造形"が出来なくなったな」
「……いや、巨大な衝撃波で宙域に散布されていた"無線用の具"も大分飛散しちまったんじゃないのか?」
【アイリス】『くっ……』
「…………」
「所で、一つ聞きたい事がある……戦闘スキルに関するから嫌なら答えなくても良いが」
【アイリス】『……なんだ?』
「お前はまるで視覚外領域も視えている様な動きをする時がある……」
「それは身体であるアンドロイドに備わった機能なのか?それとも独立したカメラを辺りに仕込んでるのか?」
【アイリス】『いや?なんて言ったらいいのか……頭の中でTPS視点みたいな画を浮かべれるんだ、距離もそんな広く無いし、まだ完全には出来ないけど』
「その"力"……いつ手に入れた?」
【アイリス】『"人間だった時"に、大会のチーム戦部門に一人で出る事を決めて、その練習として一対複数のオンライン対戦をしてた時にかな……」
【アイリス】『ってかなぜそんな事を聞くんだ、知ってるだろ!』
「……いや……いやいやいや、それはおかしい、ありえない!バカかっ!」
「一人でチーム戦にエントリー出来る分け無いだろ――――」
【アイリス】『えっ!?……あんたも使えるだろ?でなきゃあんな実弾での妙技は出来っこない』
「俺のは経験による空間把握能力と物理演算や運動予測による技だ……」
技と策謀によってMRPシステムのメインストレージを使用不能にし、主導権を握ったジョーカーであったが。
自身には無い"末那の智"と知らない過去を持ったもう一人の自分を前に、ジョーカーの心境は激しく動揺していた。
「お前は一体…………」
「"何者"なんだ――――」




