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-03 追放されたプロゲーマーはゲームと同じ兵器がある異世界で無双する!?

 都内でも自然が多く残る某所


 小さな平屋建ての住居から男が出て来た。


 年は32歳、度の強い眼鏡とマスクを着けている。


 男は駅に向かう途中だが、家を出た時から跡をつけて来た男に声をかけられた。


「あの、"鍵山白華"さんですか?()プロゲーマーの」


 とっさの事で思わず「あ、はい……」と答えてしまった白華にメモ帳と録音機を持った男が微笑を浮かべて質問して来る。


「自分は"週刊新秋"の記者なんですが、お話を聞かせて貰ってもよろしいですかね?ちょっとだけなんで!」


 白華は反応した事に後悔し、小声で「忙しいので」と返すと、スタスタと歩き始めるが、それでも記者の男は一方的に質問を始めた。


「5年前に起きた"ギガント・スケアクロウ"世界大会で起きた"チート使用"問題についてなんですか?」


「…………」


 白華は記者の方に目もくれず、歩き続ける。


「これまで圧倒的強さで無敗だった"joker"こと鍵山さんですが、何故あの大会でチート行為を行ったのですか?」


「…………」


「その後、各大会を永久追放になりネットでも大きく非難され、プロゲーマーとしての道を絶たれて数年が経ちましたが、今の生活はどうですか?」


「…………」


「なんとか言ってくださいよ!」


 白華は徹底的に無視を貫きそのまま駅まで向かい改札を通ると、記者も諦めた様子で最後の質問をかけて来る。


「その瞳の色……、カラーコンタクトですか?」


 一瞬反応しかけた白華だが、振り返らずにスタスタとホームまで向かうのであった。



 20XX年、ゲーム"ギガント・スケアクロウ"を取り巻く状況は大きく変化していた。


 制作会社が経済成長の著しい某国の大企業に買収されると収益優先体制となり制作スタッフは分裂してほとんどが退社、ゲームクオリティが下がり衰退の道を辿る。


 企業は客層を日本から某国に切り替える事を考え、販売戦略の一環として重要視した"eスポーツ"のプロゲーマーにおいて、日本人では無く自国出身の新たなスターを求めていた。


 当然邪魔になるのは無敗の絶対王者"joker"、実力では降ろせない彼を企業は卑劣な手でeスポーツ界から追放する。


 それは五年前の世界大会、決勝戦中に突如試合が止められ、jokerが使う筐体にメモリースティックが刺されている事を指摘された。


 運営が調べた結果、内部には"チート(ゲーム改造)ツール"がある事が発覚する。


 jokerこと白華は否定するが大会運営側はjokerの失格と大会の永久追放を発表した。


 全て某国の企業と大会運営が仕組んだ謀略である。


 この一件はニュースでも報じられるとネットではjokerに対する罵詈雑言が溢れ、jokerに味方する者は誰も居なかった。


 十年以上"勝ち過ぎていた"jokerはスターやヒーローでは無く、界隈では完全に"悪役(ヒール)"や"ラスボス"として目の上のたんこぶ扱いだった事も拍車をかけたのである。


 巨大な組織に人脈も無い白華ではどうにもならず、プロゲーマーとしての道を絶たれ、今まで得ていた大会の賞金や企業契約金の貯金でひっそりと暮らして行くのであった。



 白華が電車で向かったのは病院、診察室で医師がカルテを持って病状の説明を始める。


「以前受けて貰った白華さんの検査の結果ですが、"ベーチェット病"であると思われます」


「ベーチェット病?……ですか」


「はい、国が指定する難病の一つです」


 白華は四年前から原因不明の歯周病と白内障に悩まされ続けていた。


「それって、治療は出来るのですか?」


「現在でも原因不明の病ですから完治は難しいでしょう……ただ命の危険にはなりにくい病です、ステロイド治療などで症状の緩和が可能ですね」


「め、眼の方は?大丈夫なのですか……」


「現在の所は軽度なので手術の必要はありませんが、"目を酷使"する様な事はやめた方がいいです、"失明"の危険がある病ですので」


「そう……ですか」


 "ゲームは?"と言いかけたが、そんなの駄目に決まっていると言葉を飲み込んだ白華であった。



 病院を出た白華は花屋に寄って仏花を買い、再び電車に乗ると郊外にある墓地へと向かう。


 墓の一つに仏花を供えると白華は語り掛けた。


()()()()、久々だね……」


 白華の父は十一年前に病で亡くなっている。


 母からの連絡で知った白華が父に会いに行った時は既に火葬されていて、死に顔すら見れなかった。


 結局白華は幼少期に父と離れ離れになってから、一度も会う事無く永遠の別れを遂げる。


「とおさんが死んでから、それでもプロゲーマーを続けて来たけど、追放されて首になって」


「そして今日でゲームその物が出来なくなったよ……、俺に何も無くなっちゃった」


 暫く墓に語り掛けた白華は「また来るよ」と残し、墓地を後にした。



 辺りは薄暗くなった帰路にある高架の上から国道を眺める白華。


 一般的な帰宅時の夕刻


 多くの車が流れており、規則的に動くヘッドライトの群れが美しく見える一方で暗く誰も居ない高架上に居る白華の姿がどこか"人としての流れ"に乗れなかった者の対比を表す様にも見えた。


「これから何の為に生きて行けばいいんだ……?」


 いっそここ(高架)から飛び降りて幕を閉じる事も(よぎ)ったが、多くの車から見える"電子の福音"の光に酔って白華は力無く座り込む。


「ははっ、何も出来ない……俺は"無"だ」


 今まで胸の内に溜め込んでいた負の感情が沸き上がって来る。


 病の発覚で自分がゲームから遠ざけられたのは"社会のせい"と恨む事すら出来なくなった。


「くっ……うっ……うぅ!」


 白華は高架の金網を握りしめ、声を殺して泣く


「俺はどこに行けばいいんだ……道が無い、誰も居ない、こんな所に居たくないっ……!!」


 その瞬間、白華に激しい頭痛が起きる。


「痛っ!?なんだ……身体が動かないし……頭がグルングルンする……声も……出せない」


「これって、もしかして……脳こう……そ――――――」


 そのまま白華は意識を失い、倒れ込むのであった。


 ………………


 …………


 ……


『ん……ここは?』


 目を覚ますと白華は見知らぬ部屋で寝かされている。


 様々な機材が置かれているのでどこかの病院かと思ったが、SFチックな大げさな機器類に違和感を覚えるのと同時に、自身の低下した視力が戻っている事に気づいた。


『白くぼやけて無い、よく見える』


 廻りを見渡すと白衣を着た中年の男が立っている。


「ゲートの向こう側からのダウンロード、成功したか」


『あの……ここは?お、お医者さんですか?』


「私は"キャロル・ラフマー"、科学者をやっている者だ」


『科学者?科学者が何で……なっ!?なんだこの手!!』


 白華は驚愕した。


 自身の手足や体が人間、否、生物の物では無く、"機械(アンドロイド)"の身体となっている。


『君は"別な世界"に住む人間の意識データを複製したアンドロイドだ』


「べ、別な世界……?」


 その後、白華はラフマーからこの世界の説明を受けた。


 人間の宇宙開拓、スペースコロニー、惑星同盟とレベリオ帝国との争い、そしてG・Sの存在。


 ラフマーの目的は人類抹殺を目指すAI"ダキニ"を完全に消し去る事、しかしダキニは既に各国の政治や軍を掌握しつつあり、それらに対抗する為の軍事力として白華にはG・Sに乗って戦って欲しいとの事だった。


 荒唐無稽な出来事に混乱する白華であったが、自身が居た世界に未練が無い為か、直ぐに現状を受け入れる。


 ラフマーに案内されたコロニーの格納庫で実際のG・Sを目の当たりにした白華は歓喜に震えた。


 "この世界は、あの世界で俺に与えた試練への……()が俺に与えた(つぐな)い"


 ネット小説の様な異世界転移、ギガント・スケアクロウの様な世界でG・Sで戦うという自分が求めていた最高の役割(主役)を与えられたんだ。


 そう白華は思っていた。


 この時までは――


《ここどこ?……おかぁさんは?》 


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