023 星を買おう
俺とテレイアがコロニーの繁華街で色々とあった日から一週間が過ぎた――。
クレインの体調も良くなり、自機も出撃出来る状態へと戻った。
今日はテレイアがクルー全員を母艦のブリッジに集め、次の目的について何か話すようだ。
「皆~!集まってくれてありがとう!じゃあ早速これからの虹の剣についてのブリーフィングを始めるわね!」
いつものブリーフィングという名のテレイア団長"強制指令"だ。
「現在、虹の剣の目標であるG・Sパイロットの補充だけど、考えて居る補充人員はあと1名、私は"惑星テレラ"でその残り1名を探そうと思うの!」
惑星テレラの人口はおよそ60億人らしく、他のどの惑星や大型宇宙コロニーの中でも圧倒的な人口らしい。
そんな惑星テレラなら団長が欲しがる女の子のパイロットが居るかもしれないかもな
「実は惑星同盟のコロニーに来た時に惑星テレラに上陸許可を申請していて、あと2週間後に許可が降りることになったわ!」
へぇ、あの地球に似た星に行けるのか……久々に天然重力の感覚も味わいたいから行ってみたいな
「でも流石に残りの2週間何もしないのは暇だからね!そろそろ、虹の剣の本拠地が欲しいと思ってたの!」
「本拠地か~、確かに何処かで休むにしても一々入港許可得るのは面倒じゃし、持ち込み不可なもんに引っかかったりするからのう……」
「そうよベスタ!だからこの1週間色々と不動産情報を見て回って何処かに小さな空コロニーでもあればいいと思ったんだけど……」
空コロニーって……この世界は空地感覚でコロニーがゴロゴロしてるのか
「でもそんな中である情報を見つけたの!これよ!」
するとテレイアは1冊の新聞を広げて見せた。
あっ、あれは"ハッタ"さんが記者をやってる所の新聞か
「ここの記事を見て!」
なになに?とクルー達はテレイアが広げた新聞の記事を見る。
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"恐怖!!長年放置され続けた小惑星、不動産関係者が調査中に謎の無人G・Sに襲われる!!不法投棄された自動操縦AIの反乱か!?"
頭を抱えた不動産会社、惑星同盟軍は民間事案に我関せず……。
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色々ツッコミ所が多い記事だが、俺はもうテレイアが何をするのか大体分かった。
恐らくこの小惑星を買って基地にしようとしているのだろう。
「実はもう不動産屋と連絡して買ったの!なんとたった10億senだったのよ!やす~い!」
既に買っちゃったのか……相場が分からないが、恐らく事故物件価格であろう。
「ってことだから、今から私達の星を不法占拠している不届きな無人G・Sとやらを追い出す地上げに行くわよ!」
こうしてもはや極道の様になった傭兵団虹の剣は装備を整え、その買ったとやらの小惑星へと向かうのであった。
………………
…………
……
惑星同盟のコロニーから母艦で出発して8時間―― そろそろ目的の惑星に付くということなので格納庫で待機している。
格納庫にあるパイロットが待機するベンチには俺とクレインが座っていて、いつもは1人だったから何か新鮮だ。
なぜか座るスペースの空はあるのに俺の真横に座るクレイン、俺の内ももに手を置いてスリスリとしながら呟く
「私大丈夫かしら……ナノEセンサー無しでのG・S戦闘は初めてだから、ちゃんと出来るかしら……出来るかしら……」
『だ、大丈夫ですよ……クレインは中距離狙撃なら普通に出来ますし、長距離なら私がなるべく座標を指定するので、アタッカーの自機後方を移動すればそうそう敵に狙われませんよ』
「そ、そうね……基本は貴方の指示に従うわ……従うわ……」
そう言ったクレインは俺にもたれ掛かる様に耳元に顔に近づける。
押し付けられた大きな胸と、耳元にかかる甘い吐息で出撃前なのにドキドキしてしまう。
「もし、言われた通りにうまく出来たら……しちゃう?交尾しちゃう?♡」
『こっ!?』
え?今、交尾って言ったの?
俺の頭の中が真っ白になり、まるで止まった時の中に居る様な気分になっていると
「オホン!オホン!」
後ろの方からわざとらしい咳払いが聞こえた。
「そ、そろそろ出撃準備をした方がええんじゃないかのう!?」
G・Sのシステムチェックを終えたベスタが出撃を急かす。
『そ、そうですねベスタ……では行って来ます』
俺はそそくさと前かがみで自機に乗り込むと、気持ちを切り替えて出撃した――。
出撃すると既に肉眼でも確認できる場所に1つの小惑星が見える。
小惑星と言っても結構デカいな……ムジナ一家の小惑星"ラスピナウス"の3倍はありそうだ。
兎にも角にもまずはG・Sで先行して安全を確保しないとな
《セーフティ解除開始 残り120秒》
俺は音声通信を繋げ、ラスター4で出撃したクレインに指示する。
『クレインはWPの後方Kヒトマルを追行』
【クレイン】「了解……了解……」
『狙撃援護はWPの軸とモニタセル2枠分の回避予測位置以外でお願いします、もし単騎になった場合はフリーに撃って構いません』
【クレイン】「単騎はいや……そうなったら、逃げるわ……逃げるわ」
う~ん、正直俺は指揮系は苦手だと思ってるから、いざと言う時は自由にやってもらいたいのだが……まぁクレインは慣れてないから仕方ないか。
『了解、基本はペアで行きましょう』
【クレイン】「うん……♡」
徐々に目標の惑星へと降下を始めと、後方からゆっくりと進行している母艦から音声通信が入る。
【テレイア】「どう?アイリス、攻撃とかはされてない?」
『今の所は……いや、待ってください!』
《惑星内洞穴から3機のG・S熱源を確認》
《セーフティ解除まで残り30秒》
『敵機と思われるG・Sを確認、これより戦闘行動を開始します』
【テレイア】「了解、無理しないでね!」
モニタに捉えた3機のG・S、こちらに向かってやって来ている。
黒兎、G・S内部の生体反応は確認できるかい?
《いえ、サーマル、心音、共に生体反応無しと示しています》
やはり無人機か……。
《あのG・S、惑星同盟軍、帝国軍双方には無いデータの機体です》
いや、俺は知っている。
あの白くて肩が膨れ上がったフォルム、2本の角がある牛みたいな頭部、あれは"ギガントスケアクロウ3"に出て来たG・S"ナンデイン"だ。
《3……2……1……0 セーフティ解除》
おっ?今回は会敵が遅かったせいか、最初から俺が操縦出来る事になったな
俺はビームガンを構えると、向かって来る敵機1機の足元に様子見とけん制を兼ねて1発放った。
すると狙われた1機はビームを難なく回避すると編隊を組んでいる残り2機と共に、実弾アサルトライフルを構え、こちらに撃って来た。
自動操縦の"最適回避距離"か、二撃の偏差撃ちで落せるな、俺はアサルトライフルの弾幕を旋回するように躱すと(流石にあれを縫うように避けるのは無理)ビームガンを構えて、2機に向けて連続した偏差撃ちを放った。
ドドッシュ!という轟音と共に放たれた4つの閃光は1撃目を回避され予測して放たれた2撃目に2機とも命中し、爆発した。
《敵機2、撃墜》
俺はあえて残しておいた3機目の座標をクレインに伝える。
『クレイン座標N13方向の敵機へロック撃ちをして直ぐにモニタセルC6方面へ2撃目を撃ってください』
【クレイン】「了解、撃つわ……撃つわ……」
クレインのG・Sが持つ"トリプルバレルライフル"から2つの大きな閃光が放たれた。
1撃目を躱した敵機、2撃目を軸から微妙に外れてしまったが、ビームライフル特有の強力な閃光により腹をえぐられた敵機は行動不能となった。
『ナイスです、クレイン』
【クレイン】「うふふ……」
とりあえず3機は倒した。
どうやらこの先にある大きな洞穴に何者かが作った基地があるっぽいな……。
《アイリス、惑星の洞穴方面から音声通信号が届いてます》
ん?繋いでくれ、母艦にも経由させよう。
【ゲストA】「オンドリャー!何してやがるデスかぁ~!?私が見つけたパーフェクトなトレジャーアイランドでぇすよぉ!さっさと出て行きヤガレデース!!!!」
まるでバラエティ番組の外国人タレントみたいな片言口調溢れるかん高い女性の声が機内に響き渡った。
【テレイア】「人!?……貴方ねぇ!ここは私達傭兵団が既に買い取った星なの!何者か知らないけど、アナタが出て行きなさいよ!!」
【ゲストA】「やかましいのデース、オメーラみたいなスットコドッコイよりも、この天才科学者"コハク"がこの星を持って居た方が有効活用出来ますネー!」
はいはい、音声表示を"コハク"に変更っと。
【テレイア】「何をぉ!?トサカに来たわ!科学者だか何だか知らないけど不法占拠しているろくでなしは絶対追い出してやるからね!」
この世界では空き地に野良の科学者が住み着く風習でもあるのか?
【コハク】「オウ、ヤッてやろうじゃねぇデスかぁ!私のナンデイン3兄弟を壊した怨みハラサデオクベキカー!いでよ!私の最終兵器!」
《洞穴から巨大なG・S熱源を確認》
ゴゴゴ……!という轟音と共に洞穴をこじ開ける様に4本の手を持つ巨大なG・Sが現れた。
【コハク】「見るがいいデース!これが私が生み出したサイキョーG・S"マッハサフェード"デースよぉ!」
《全長40mはありそうですね、私のデータにはありません》
俺はこのG・Sも知っている……"ギガントスケアクロウ3"のラスボス"マッハサフェード"だ。
【コハク】「更にオッタマゲる物も見せてあげまショーウ……この惑星にある3つの物質が可能にさせた新技術!!新兵器!!」
【コハク】「その名も"ミラージュリング・プリンタシステム"……デスッ!」
"ミラージュリング・プリンタシステム"?……その名前は初めて聞く物であった。
どうやらこの世界では俺が知っているギガントスケアクロウ以外の未知の兵器……"ナノエレクトワイヤー"の様な物の攻略法も考えなければ行けないらしい――。




