021 かごめかごめ
※このお話しは別人視点になります。
私の名前は"クレイン"
勝手にテレラ惑星同盟領とされてしまったコロニーで両親と共に暮らしている。
いや、正確には"両親と暮らして居た"と言った方がいいだろう。
私はこのコロニーから出たことが無い、産まれてからこの16年間、直接会う人間はずっと父と母だけだが。
決して暴力や罵声など浴びせられる様な虐待されること無く、むしろ私がネットで見つけて欲しい物があれば何でも買ってきてくれた。
なんでも両親は研究者で"オリハルコン駆動ケーブル"などの特許を幾つも持ってたらしく、それを企業に莫大な金額で売っているから資金には困らないらしい
基本的な学業は父と母が、足りない部分はネットの通信学習で学んでいたが、私は暇な時間にネットサーフィンをしていた時にある動画に目を奪われた。
"美しく宇宙を駆け巡るG・S"
何者にも縛られず、自由に羽ばたく鳥の様に広大な宇宙を駆け巡る金属の塊――
そんなG・Sの姿を見た私は……あのG・Sを
"撃ち落としたい"と思った――
両親は優秀な研究者で科学者で開発者ではあったが、ちょっと変わった思想の持ち主である。
それは"真の平和な争いの無い国"を作る事……テレラ惑星同盟、レベリオ帝国のどの国も干渉出来ない真の永世中立国。
父の言い分では中立国とされているアルクトス国は、条件と立場で惑星同盟と帝国双方に資源や武器を提供してるコウモリの様な国家だから認めていないらしい。
そんな国を作る為の最初の礎として今住んでいるコロニーを買い取り、他国からの侵攻を防ぐ為に"ナノエレクトワイヤー"と言う物で周囲を囲った。
それぐらいからかな……全てがおかしくなったのは、いや、最初から家の家庭も環境も狂っていたのかもしれない……。
父が自室やリビングのモニターで、通信先の誰かに怒鳴っていることが多くなった。
母は父の言うことを絶対だと信じているので何も言わないまま、コロニー周辺には両親が設置した対空砲火や自動操縦のタレットや攻撃ドローンが増えて行った。
そんな中、私はここぞとばかりにG・Sが欲しいことを父に伝えると、父は反対するどころか喜んでG・Sラスター4を買い与えてくれ、更にはビームライフルを改造して3連銃砲にした武器を開発して私に託すとこう言った。
「クレインは自由の女神として我が国家の独立を勝ち取るんだ!」
私は子供ながらに思った。
あぁ……この父は……この家族は……信念、正義、理論が完全に崩壊している――
その後、コロニーに近づく宇宙戦艦、G・S、全てに1度の警告後、聞き入れずに近づいた者は全て撃ち落とした。
恐らく全てが惑星同盟軍の船やG・Sであろう。
私はラスター4に搭乗し、トリプルバレルのライフルでナノエレクトワイヤーの探知範囲に入った物を撃ち落とす。
だが私の中に潜む"自由に飛び回るG・Sを撃ち落としたい"と言う、悪魔の様な感性も満たされることは無く、ただ淡々と流れ作業の様にトリガーレバーを引くだけだった。
だってあの人達も私と同じ籠の中の鳥だから……
殺人に対する罪悪感も余り無かった。
どうせ近いうちに私達家族は崩壊して直ぐにそちらに向かうのだから――
そちらがきっと"真の平和な争いの無い国"なんでしょう。
そしてそんな日々の中、父と母がレベリオ帝国に特許技術の一部を売却しに行くと言い、小型船で出かけたきり帰って来なくなった。
数週間後、センサー内部に熱源反応が出たのでいつも通りG・Sに乗って警告と狙撃に向かうと、音声通信が入る。
【ゲストA】「君の両親は事故で亡くなった……君を保護したいので狙撃せずに会ってくれないかな?」
あぁ……――、ついに来たんだな……終わる時が――
あまり悲しくは無かった、だって私も行くから。
私はいつも通り警告射撃の後、それでも近づいて来た同盟軍と思われる戦艦を撃墜した。
私は籠の扉が開かれても飛び立つことを拒んだ。
両親しか人を知らない私は、このコロニーという甲羅の中でしか生きられないと思ったから……
どうせ飛び立てないのなら、この甲羅の中に引きこもり、限界まで守りながら散って行こう。
………………
…………
……
そんな生活を続けること3年間……も生きてしまった――
好きなだけコロニー内部にある数十年分の備蓄食料を食べれる様になったので、バクバク毎日食べてたら身長が私の年齢の平均よりも随分高くなり、胸も無駄に大きくなってしまった……(Gカップという大きさらしい)
同盟軍の人達も私を捕まえることを諦めて、完全に殺すつもりで軍を送り込んで来るようになる。
その方がいい、躊躇わずに済むから――
今日もワイヤーレーダー内に熱源を感知する。
最近はマスコミやミステリー観光ツアーとして来る愚か者も居るから嫌になる……警告をしなきゃならないが、音声通信越しでも人と話すのは苦手だ。
今回はレーダーでの熱源を見る限り軍艦1隻と、とんでもないスピードでこちらに向かって来るG・Sの機影が見える。
「民間機なら……去って……去って……」
私は人とろくに話さなかったので普段の声が小さいのか、いつも話したことを聞き返されるので、肝心な言葉は2回言う事にしている。
『やぁ、私はアイリス……貴方の名前は?』
驚いた……なぜなら私と同じぐらいか少し下ぐらいな、女の子の可愛い声が聞こえて来たからだ。
「……クレイン」
いつもは絶対相手の質問など返さないのに、ついつい答えてしまった……
初めて同じ歳ぐらいの子と話せたから嬉しかった?……いや、そんな気持ちを持ってはダメだ、敵の新しい交渉術かも知れない
私はそんな微かに沸いた期待の感情を払拭する様に狙撃を始めた。
この子は中々腕が良く、ナノエレクトセンサーの行動予測で狙った三連銃砲からの1撃目を確実に回避し、2撃目をビームシールドで確実にガードしている。
やっぱ可愛い声してるけど、訓練された兵士なのね……傭兵団?だとか言っていたけど、遠慮なく狙撃させてもらおう。
3つの銃砲の一つを実弾用銃砲に換装すると、2撃目に"ビームシールド拡散弾"を放った。
予想通りあの子は2撃目をシールドでガードして、シールドは破壊される。
3撃目で確実に仕留めたかと思ったが、何故かビームが弱くなって右手首と実弾ライフルを破壊しただけに終わった。
だがこれで盾も無くなったから私の2撃目を防げない、このまま進んだら確実に死ぬ運命しか無いからあの子は引くだろう。
そんなことを考えて居たその時だった……。
ナノエレクトセンサーに今まで見たこと無い様な巨大な熱源がこちらに向かって来るのが見えた。
Aクラス戦艦としても大きすぎる……そう言えばあの子が『おっきなコロニー』がどうのこうの言っていた気がするが、この事だったのか。
なるほど、巨大なコロニーを衝突させて私のコロニーごとセンサー網を破壊する気なのね……いよいよもって私があちらの世界に逝く時が来たのか。
『クレイン、君を助ける』
え?
そう言ったあの子が乗る白い機体はこちらに向かって突っ込んできた――
何を言ってるのやら……盾も無くなったのに聞いたことも無い歌を口ずさみながらこちらに来るなんて……頭がおかしくなっちゃったのね
いいわ……一緒に逝きましょう。
私は突進してくる白い機体目がけて3連の狙撃をする。
1撃目……そして、驚いた事に2撃目も躱した!?だが3撃目は確実に軸に捉えている……回避は出来ないわね
と、思って居ると白い機体は手に持った何かをレーザーの光に向かってぶん投げた。
すると、ぶん投げられた物はレーザーと衝突し……なんとレーザーの光が四方八方に拡散して消滅したのであった!?
「え……何なの?何なの!?」
私は直ぐナノエレクトセンサーの探知画面を拡大する。
すると、白い機体の左手に何を持っているのかを理解した。
"実弾の弾倉"!?一体何故?……ビームを消せる弾?シールド拡散弾なの!?
そんなことが出来るの?……しかも投擲で――
白い機体が勢いを弱めずに突っ込んで来る。
『私を助ける』と言ってから明らかに動きが変わった気がする。
まるで以前動画で見て私が"撃ち落としたい"と思った自由に駆け巡るG・Sの様に――
「絶対に撃ち落とす……撃ち落とす!」
らしくない、熱い感情が沸きあがってしまう。
私は再び3連撃のビームを放つ――が、やはり1発、2発と躱され、投擲された弾倉で3撃目を消されてしまう。
「アナタなんなの?……銃いらないじゃない……銃いらないじゃん!」
既に白い機体はビームガンでも射程に入りそうな距離にまで私に近づいていた。
あと1回は3連撃を放てるギリギリの距離だが、銃砲が熱を持ち過ぎている。
『熱で銃砲が限界の様ですね、私の勝ですかねっ』
なっ!?むっかあぁぁ~
私は直ぐに予備として腰に下げていた3連銃砲を交換した。
「残念でした……残念でした~……撃つわ、撃つわよ~!」
『げぇ!んひぃ~』
「フフフ……」
楽しい――楽しいっ!
これが、歳の近い子と遊ぶってことなのかな?向こうもなんだが楽しそうだ。
もっと遊んでいたい――
そんな気持ちが沸いて来た時、ナノエレクトセンサーのモニタ表示がプツリと真っ暗になる。
向かってきた巨大コロニーが、周辺を囲ったセンサー網に衝突したのだ……。
G・Sカメラモニタに切り替えなきゃ、慣れない動作に少し手間取ってからモニタを切り替えると、肉眼でも確認出来るような距離まで白い機体は来ていた。
「わぁ……!」
焦った私はロクに狙わずに3連撃を放つが、2発をあっさり躱された後、奇跡的に相手軸に捉えた3撃目を……なんと白い機体は自身の肩からの腕を放り投げて、ぶつけ、閃光の速度を緩めて躱したのであった――。
「はは……何それ……何それ……」
そのまま突進して来た白い機体は、私の機体の後ろへグルンと回り込むと、一瞬で手足をナイフで切断し、残った左手で機体を抱きかかえた。
「強すぎ……アナタの勝ね、どうしたの……殺さないの?殺さないの?」
『私はクレインを助けるって言ったはずです』
そして、コロニーの上から狙撃していた私を抱きしめたまま、白い機体はスラスターから勢いよく火柱を立てて移動をし始める。
轟音と共に私のコロニーを覆っていたワイヤーを破壊しながら向かって来る衝突用コロニー、私達はすんでの所で脱出した。
初めて出る籠の外――
遠くで見えるコロニー同士の衝突と、誘爆で砕け始めるナノエレクトワイヤーの籠……。
あぁ……私はそちらの世界には行けないんだ――
そう思った瞬間、私の瞳から涙がこぼれだした。
あんな両親でも、私を籠に閉じ込めていた両親でも……もう会えないんだ……。
両親と過ごした時間が頭に駆け巡った。
「う゛……う゛っ……う゛う……うわ゛あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私は号泣した。
3年間、そちらの世界へ行くことを言い訳にして避けていた、両親の死を初めて受け入れたのだ。
そして、その涙の意味は、私はこちらの世界で生きて行くという決意の意味でもあったのだろう。
一通り泣いて、落ち着きを取り戻した後――
私はアイリスという、白い機体に乗る少女と話す。
「どうして危ない目にあってまで私を助けたの?……助けたの?」
音声通信であの子の返事が返って来る。
『う~ん、私達の団長が君を欲しがってると言うのもあるけど、君はどこか自分と似ていた所があったから……』
「どこが?どこが?」
『え!?……ん~、帰って来ない親を戦いながら待ち続けてる所かな?』
「私はもう両親が死んでたことを知ってたし、別に待ってた分けじゃないわ……」
『え゛!?そうなの!?』
この子、勝手に自身を私に投影させて張り切ってたのね……
「フフフ……」
おバカで、純粋で、かわいい……そして強い子ね。
いいわ、気に入った。
私の機体を抱えた白い機体は、母艦と思われる小型の宇宙船へと入って行くと、格納庫と思われる場所で自機を降ろした。
コクピットがある胸部がコンコンと叩かれたので、ロックを外すとハッチが開き、目の前で薄い青色の髪をした奇麗で、私よりも小柄な可愛らしい女の子が手を差し出して来た。
『クレイン、大丈夫ですか?』
この子がアイリスなのね……
「私はナノエレクトが無ければただの凡庸なG・S乗りよ……いいの?いいの?」
『最後の"ショット"は凄く良かったですよ、いいんです!』
まるで無邪気な少年の様な笑顔で答えてくれたアイリス
そんな笑顔を見て、あぁ……やはり私は自由に駆け巡るG・Sがただ羨ましくて撃ち落としたいだけだったんだな……と確信した。
"嫌な人間"だ、と苦笑する。
「私は籠が無いと生きて行けないの、そんな私を引っ張り出した責任は取れるのかしら?取れるのかしら?」
『え?それは……』
「アナタは私の籠…いや、私が潜れる甲羅になってくれるのかしら?かしら?」
この子には私の全てを見せてしまった。
だから私の嫌な部分を気概無く見せ付けて私を導く存在になって貰おう。
『えっと、じゃあ……お友達になろうよ』
「フフフ……それだけじゃダーメ、ダーメ」
私は自立の出来ない人間……誰かの導き手が無いと生きて行けない――
私はアイリスが差し出した手を握り返して、思いっきり引っ張り込むとそのままの勢いでキスをしてやった。
口に――
『んん゛!?』
フフフ……、貴方を私の甲羅にさせる為の既成事実だ!
「んっ……ふぅ、よろしくね、アイリス……アイリス……」
『あ……うぅ……』
顔を赤らめて放心しているアイリス、かわいい……かわいい……ギュっと抱きしめると頭が胸に埋もれてしまった。
ん?
私の内ももに何か硬いモノが当たりだした……。
これは…たしかネットの動物動画で見たことがある雄にしか付いて無いとされてるアレでは……。
そして、アレの使い方は――
「………………」
フフフ……フフフ……、これはこれは……
時間と、アイリスに隙があったら本当の既成事実を作ってしまおう…作ってしまおう♡
お父さん…お母さん…私はあちらの世界へ行く前にこちらの世界で好きに羽ばたいてみようと思います。
怖くなったら新しい甲羅に逃げ込みながら――




